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【合作】( ^ω^)ブーンが世界を巡るようです

第10世界  料理人◆RDnvhIU7bw

6 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 19:33:19.61 ID:E2RE4V3X0

   ぎしぎし…

          その物語は終わった筈だった。

                    あんあん…

     彼らは出会い、別れ、それぞれの道を歩いている筈だった。

   ぎしぎし…

       しかしその日。一つの流れ星が空に輝いた夜。

                   あんあん…。

        彼らの物語は一夜限りの復活を遂げる。

   ぎしぎし…。

         ( ^ω^)が世界を巡るようです

                    あんあん…。

       【IN ( ^ω^)が料理人になるようです】




         川 ゚ -゚)が大空を駆けるようです


9 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 19:35:24.02 ID:E2RE4V3X0


     プロローグ 旅人


ぎしぎし…。

あんあん…。

(主;^ω^)『……』

それは〈彼〉にとって衝撃的な映像だった。
一人のキモメンが全裸の女性の腰を抱え込み、何度も己の腰を突きつけている。
〈彼〉も年頃の青年だ。
裸の男女が抱き合って何をしているか?
経験はなくても知識はある。

(主;^ω^)『さて…これからどうするかお』

〈彼〉は困惑していた。
この空間近辺にDATの気配を感じて転移してみれば、
狭い浴槽に張られたお湯の中。

…そして、なぜか〈彼〉は全裸だった。







13 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 19:38:03.87 ID:E2RE4V3X0
〈彼〉が所有するDATの欠片。
それは空間転移と、その場に相応しい服装に衣服を変化させる能力を持つ。
確かに浴室という場所を考えれば、全裸こそが最も相応しい服装といえたかもしれない。


だが…しかし…。

(主#^ω^)『この状況からどうやって欠片を探しに行けって言うんだお!!
       空気嫁お!!!』

こうなれば、2人が寝静まった後にこっそり服を頂戴して脱出するしかない。
いつしかベッドが軋む音は静まっている。

〈彼〉は明かりの消えた浴室で
1分でも早く2人が寝入ってしまうのを神に祈った。

その時。











唐突に浴室が明るくなり、扉が開けられた。


17 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 19:40:06.02 ID:E2RE4V3X0

(;*゚∀゚)『………』(^ω^;主)

見つめあう2人。

     『…こ、こ…』(^ω^;主)

(;*゚∀゚)『…ひ、ひ…』

ちなみに当然の如く2人は 全 裸 である。

     『…こ、こんばんわ素敵なお嬢さん。月が綺麗な夜ですね』(^ω^;主)

(;*゚∀゚)『…ひゃ、ひゃ…』



  『 ひ  ゃ  ぁ  ぁ  ぁ  ぁ  ぁ  ぁ  ぁ  ぁ  ぁ  ぁ  ぁ っ !!!!! 』


夜空に響きわたる金切り声。
そして破壊音。

ともかく、この世界での〈彼〉の物語はこうして始まったのだ。


20 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 19:42:13.90 ID:E2RE4V3X0


     第一章 シンデレラ(灰の中から)


同時刻。明かりの消えたアパートの一室。
僕は埃臭い布団に胡坐をかいてい座っていた。
トランクスの窓から顔を出したゼニガメは、すでにカメールへと進化。
しっかりと右手でGETしている。

( *^ω^)『…ょぅι゛ょ…/ヽァ/ヽァ』

…誤解がないように言っておくけど、僕にも大切に思うパートナーはいる。
でも、

ξ゚听)ξ『あたし今日はあの日だから。鬼平見て寝るわ』

その一言を残してツンは帰ってしまった。
やむなく一人股間のポケモンを可愛がっている…という訳なのだ。

( *^ω^)『…それにしても…ツンは…生理になりすぎだお。
       血の気が…多いから…生理になるんだお…』

そんな事をブツブツ言いながらも、閉じた瞳の奥では妄想は全開状態。
右手は規則正しく上下運動を繰り返す。いい感じだ。
今夜は眠れないぜ…そんな事を考えていると



突然、部屋の天井間近の空間から光の粒が放射された。

21 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 19:45:20.65 ID:E2RE4V3X0

 ( *^ω^)『…? なんだお…?』

その一部の空間内を舞い踊る、優しく輝く色とりどりの灰の粒。僕はそれに目を奪われた。

やがてその中から裸足の女性の足が姿を現す。
続いて、足首。
ほっそりしたふくらはぎ。
柔らかそうな太もも。
ふわりと宙に舞い上がった白いフリルのついたスカートの奥に見えるひよこパンツ。
それに気付いて慌てた風にスカートを押さえる細い両手。
大きく開いたワンピースの背中から生える白い翼。
緑がかった黒髪。

やがて全身を光の中から現した彼女は重力など存在しないかのように
静かに畳の上に降り立ち、ゆっくり振り向いた。

僕を見据える紫水晶色の瞳。

( ゚ω゚)『……!!』

彼女が全身を現すと共に光は消え、部屋は元の薄暗い空間に戻っている。
月明かりを背にしてその顔はよく見えない。
それでも僕には彼女が誰なのか。すぐに分かった。

川 ゚ ー゚)『久しぶり…でいいのかな?』

二度と会えないはずの人…最大の恩人がそこにいた。


24 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 19:47:18.37 ID:E2RE4V3X0
 ( ゚ω゚)『…ク、クーさん…』

川 ゚ ー゚)『…内藤…』

思いもしなかった。何度も夢に見た再会。
胸は感動に打ち震え、時間は止ま………らなかった。
僕の右手は煙を上げるほどの高速ピストンを続けている。

川;゚ -゚)『ちょ、ちょっと待て!! お前は何をしているんだ!!』

( ゚ω゚)『僕の…僕の妄想力もついにここまで来たんだおっ!!』

川;゚ -゚)『何だそれはっ!?』

妄想が現実になる…とでも言うべきなのだろうか。
卓越した想像力(インスピレーション)は時としてそれを実体化させる。
ある格闘家が想像で生み出した蟷螂と対決した話は誰もが知っているだろう。

( ゚ω゚)『…っ!! 天使姿のっ…!! 恩人にっ…!! 見られてるっ…!!
      悔しいけどっ…!! こんな興奮初めてっ…!! 感じちゃうっ…!!』

新たに発掘された己の性癖に僕のテンションは最高潮。
目の前の彼女はその場にへたり込んでしまっている。

川;゚ -゚)『や、やめろバカッ!!』

( ゚ω゚)『ビクビクッ…!! アッー!!』

川;゚ -゚)『…!! ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!』


30 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 19:49:13.14 ID:E2RE4V3X0
 …戦いは終わった。

( ‐ω‐)『人の夢と書いて儚い…虚しいもんだお…』

僕は瞳を閉じて呟いた。
ため息を1つ吐き出すと、あらかじめ準備してあったティッシュを2〜3枚引き抜き
共に戦った股間の相棒をいたわる様に汚れを拭き取る。

( ‐ω‐)『…さて、寝るかお。明日も仕事だお』

万年床に倒れこんで、ようやく気がついた。
所謂女の子座りでこちらを睨みつける、顔全体を白い液体で汚した天使の姿に。

( ;^ω^)『…へ?』

何も言わずににじり寄ると、僕には目もくれずティッシュを引き抜き顔を拭う。

( ;^ω^)『おかしいお…まだ妄想が実体化してるみたいだお…』

川#゚ -゚)『…内藤。わたしは今とても怒っている』

顔に飛び散った蛋白質を拭き取り終えると、
天使は手近にあった豚の貯金箱を掴み振りかぶった。

( ;^ω^)『な……何ぃ?』

     バンッ

そのままそれを僕の額に叩きつける。そして僕は気を失った。


32 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 19:51:06.74 ID:E2RE4V3X0
 ( ‐ω‐)『…ん…』

頭が痛い。
耳元で水を絞る音がする。
冷たいタオルが額に乗せられる。

内藤…すまない。

遠くの方で鈴のように響く声が聞こえた気がして、僕は意識を取り戻した。

( ‐ω‐)『…クーさん…』

やけにリアルな夢だった。
夢じゃなければいいと思う。
でも、現実な筈が無いんだ。
クーさんはあのクリスマスに死んだ。

クーさん。
僕の大切な道標【みちしるべ】。
天国から僕を見守ってくれているであろうクーさんに褒めてもらいたくて、僕は頑張ってきた。
誰にも言えないような弱音を抱え込んでいる時。クーさんは何時でも夢に現れて僕を励ましてくれた。
横でツンが可愛い寝息を立てている時、クーさんの夢を見て軽い自己嫌悪に陥った事も数え切れないほどある。
それにしても…こんなにリアルな夢は久しぶりだ。
僕はゆっくりと瞳を開く。

……そこには窓から差し込む明かりを背にした天使の姿。

川;゚ -゚)『内藤、すまない。力の加減がイマイチ掴めないみたいだ』


37 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 19:52:56.39 ID:E2RE4V3X0
 クーさんは落ちたタオルを当たり前のように僕の額に戻す。

( ゚ω゚)『……』

夢の中じゃなく、現実の世界で。
会いたかった。
成長した僕を見て欲しかった。

亡くした時に気が狂いそうになったほどの大切な存在。

憧れではない。恋愛でもない。言葉では説明できない。

只ひたすらに僕の人生を…僕の道を照らしてくれる人。

川 ゚ ー゚)『気がついてくれてよかった。心配したぞ』

二度と見ることが出来ない筈の光が、今僕の目の前で輝いていた。

( ゚ω゚)『…ク…』

( ;ω;)『…クーしゃん……』

目の前が真っ暗になる。

気付けば僕はクーさんの膝に顔を埋め号泣していた。



38 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 19:54:14.67 ID:E2RE4V3X0
 ( ;ω;)『…クーしゃん…クーしゃん…クーしゃん…』

涙が。
鼻水が。
涎が。
これでもかと溢れ出す。
嗚咽ばかりの声は何を言っているのか分からないけど、
何度も恩人の名前を繰り返す。

そんな僕の髪をクーさんはまるで母親のように撫で続けていてくれた。

( ;ω;)『クーしゃん…良かった…また会えて良かったお…』

川 ゚ ー゚)『…そうだな。わたしも会えるとは思わなかったよ』

( ;ω;)『…死んじゃったと…ずっと…思ってたお…』

クーさんの肩が一瞬ピクリと跳ね上がった。

川 ゚ -゚)『…そうだ…わたしは死んだ…あの雪の日…車にはねられて…』

( ;ω;)『え?』

その言葉に僕は顔を上げる。
スカートと僕の鼻の間に、鼻水が一本の橋を作りあげた。

クーさんは…真っ直ぐに目の前の壁を睨みつけていた。


39 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 19:56:54.68 ID:E2RE4V3X0
川 ゚ -゚)『……』

クーさんの指が僕の肩にきつく食い込む。

川 ゚ -゚)『分からない…何故わたしはここにいるのか…。
     確かにわたしは死んだ。それは間違いない…。
     …覚えている…見ているんだ…。
     雪の中全身の血が流れ出す恐怖も…。
     機能停止した肉体が火葬場で灰になる熱さも…。
     わたしの墓の前で涙を流してくれているみんなの顔も…。
     そして…内藤がわたしの死を乗り越えて立派な料理人になってくれた事も…』

そう言ってクーさんは僕の頭を抱きしめた。

川 ; -;)『…怖かった…寂しかった…悲しかった…でも…でもそれがわたしの最期で…
     なんで…どうして、わたしは今ここにいる…? 何故…死んだ後の記憶があるんだ…?』

首筋にぽたりぽたりと温かい水滴が落ちてくる。

僕は頭を上げるとクーさんを抱きしめた。

( ;ω;)『理由なんて要らないお…クーさんはここにいる…それが全てだお…』

川 ; -;)『…内藤…わたしは怖い…これは夢ではないのか? 何かの間違いではないのか?
     朝になれば…日光に照らされた雪が溶けるように消滅する…それが運命ではないのか…?』

それが運命だというならば。

( ;ω;)『…僕は…僕は運命に喧嘩を売ってやるお…!!』


44 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 19:59:21.53 ID:E2RE4V3X0
僕らは泣きながら抱き合っていた。

不思議と性欲は感じない。
一回出すべき物を出した…って事もあるかもしれない。
でも巨乳貧乳・幼女熟女・白人黒人・二次元三次元(バーボン三姉妹含む)…なんでもありの僕にとって、
おそらく唯一性欲の対象にならないのがクーさんだ。

人生が真っ暗な荒野を歩いているような物ならば、
ツンは横を歩くパートナー。
クーさんは僕らを照らす月明かり…いや、正に天使というべき存在に思える。
いくら僕でも天使を押し倒すほどダメ人間じゃない。

クーさんは泣き止んでからも僕の首に抱きついていたけど、
やがて静かに顔を上げた。
涙を溜めた瞳。
熟れたサクランボの様な唇。
女性特有の甘い香りに頭がクラッとする。

前言撤回してそのまま布団に倒れこもうかと本能が命令しかけた時、
クーさんが口を開いた。








川 ゚ -゚)『内藤。お腹が空いた』


49 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 20:02:11.92 ID:E2RE4V3X0
 ( ;^ω^)『…あの…今なんとおっしゃいました?』

川 ゚ -゚)『お腹がペコペコだ。出来れば酒もあるとなお嬉しい』

( ;^ω^)『……』

正直萎えた。

川 ゚ -゚)『仕方ないだろう。こっちは死んでから何も食べてないんだからな』

おかしい。
クーさんはこんなに空気が読めない人だっただろうか?

( ;^ω^)『…死んでから何も食べてないって…なんかおかしいおwww』

川 ゚ -゚)『ごーはーん!! ごーはーん!!』

はぁ。
僕は溜息を1つついて僕は店から無断で借りた前掛けを手に取る。

( ^ω^)『ありあわせの物で簡単なの作るから、
       ビールでも飲みながらちょっと待ってて欲しいお』

川 ゚ ー゚)『わ〜い。でも服は着た方がいいと思うぞ』

…そこでようやく僕は自分が下半身はトランクス一枚なのに気がついた。


50 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 20:04:44.25 ID:E2RE4V3X0


     ( ^ω^)が夜食を作るようです


( ^ω^)『まずは【トマトの卵炒め】だお』

@ トマトを湯剥きして種を取り除き、適当に切ります。

( ^ω^)『面倒だったら切るだけでもいいけど、皮は剥いた方が絶対美味しいお。
       種は取り除かないと水分が出てべっちゃりしちゃうお』

A フライパンに油を引いてスクランブルエッグを作ります。

( ^ω^)『ここでは超半熟にするのがコツだお
       出来あがったら何でもいいからお皿に移して欲しいお』

B フライパンに中華固形スープと水を注ぎます。

( ^ω^)『あまり多くなくていいお。ただ、しっかりスープは溶かしてくれお』

C Bのフライパンに@とAをぶち込みます。

( ^ω^)『ぶち込んだら強火で一気に加熱だお。大雑把にかき混ぜてやるお』

D 塩胡椒で味を調え、水溶き片栗粉でとろみをつけて完成。

( ^ω^)『時間をかけると卵が硬くなるし、トマトが崩れちゃうお。
       ちなみに、トマトを苦瓜と豚肉・お豆腐に変えるとゴーヤチャンプルーになるお。
       豆板醤やニンニク、醤油を入れても美味しいお』

55 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 20:06:26.37 ID:E2RE4V3X0
( ^ω^)『次は【なんとなく韓流うどん】だお』

@ 小鍋に胡麻油を入れ加熱。粒ニンニクをじっくり揚げます。

( ^ω^)『必ず胡麻油。ニンニクはじっくり焦がさないようにするんだお』

A ニンニクがホクホクになったら肉をぶち込みます。

( ^ω^)『豚でも牛でもどっちでもいいお』

B 水を注ぎ沸騰したらうどんを投入します。

( ^ω^)『冷凍うどんがあると重宝するお』

C 市販の麺つゆで味付け。最期に胡麻油を一垂らしして完成。

( ^ω^)『たっぷりの油を使ってるのに全然しつこくない味だお。
       葱や卵を落としても美味しいお。
       食欲が無い時や寒い冬に是非食べて欲しい一品だお』







川 ゚ -゚)『…何故説明口調なんだ?』

( ^ω^)『気にしたら負けだお』

62 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 20:08:49.88 ID:E2RE4V3X0
 それから僕達は小さなテーブルを挟んでささやかな夜食を取った。
クーさんはいきなりグラスに注いだ缶ビールを一息に飲み干し、
テーブルに叩きつけるようにグラスを置いた。
口の周りについた泡を手の甲で拭い取る。
背中の真っ白な翼が猫の尻尾のようにぴょこぴょこと動いていた。

川 ゚ -゚)『…旨い。この1杯の為に生きてるって感じだな』

( ;^ω^)『…なんか違和感ありまくりだけど同意だお』

川 ゚ -゚)『何を言うか。一度死ななくてはこの感動は分からん。どうだ? 内藤も一度死んでみては…?』

( ^ω^)『 謹 ん で お 断 り し ま す お 』

川 ゚ -゚)『残念だな。今なら漏れなく花束とお菓子を贈呈するのだが…』

( ^ω^)『…仏花と葬式饅頭はご遠慮させていただきますお』

川〃_ _)σ‖ 『…ノリが悪いヤツめ……』

( ^ω^)『いじけたフリしても駄目ですお。つか、ノリで死にたくありませんお』

そんな事を話しているうちに、テーブル上の料理は跡形も残さず僕らの胃に消え去り
ついでに冷蔵庫にギッシリ詰め込んだばかりのビールの買い置きも1本を残して全て無くなった。
クーさんは自身の風変わりな立場にも慣れたのか受け入れるしかないと達観したのか、
自虐的なジョークを言うまでになっていた。

やがて窓の外から新聞配達のスクーターのエンジン音が聞こえてくる頃、
クーさんが大きなあくびをした。


65 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 20:11:56.16 ID:E2RE4V3X0
 川 ゚ -゚)『…随分夜更かししてしまったな。そろそろ寝るか』

( ^ω^)『把握した。クーさんは布団使うといいですお。
       僕は床にクッションでも敷いて…』

川 ゚ -゚)『何を言っているんだ? ここはお前の部屋だ。そんな事をさせられる筈が無いだろう』

さらにクーさんは続けた。

川 ゚ -゚)『見た所、布団だって小さくない。2人で寝るには十分なスペースがあると思うのだが…』

( ^ω^)『……』

川 ゚ -゚)『……』

( ^ω^)『…mjd?』

川 ゚ -゚)『うむ』

( ^ω^)『……』

川 ゚ -゚)『……』

( ゚ω゚)『!!!!!』

川;゚ ー゚)『…!?』

キタ━━━(^ω^)━( ^ω)━(  ^)━(  )━(  )━(^  )━(ω^ )━(^ω^)━━━!!

67 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 20:14:34.80 ID:E2RE4V3X0
 ( ^ω^)。o○(はたして今クーさんは何歳なのか…そんな疑問は置いといて。
         年頃の女性が。
         年頃の男性の部屋に泊まる。
         しかも同じ布団で寝るという。
         これは

         川 ゚ -゚)『 や ら な い か ? 』

         と言われているも当然。
         ここでやらねば男が廃る…いや、股間の夜王子に申し訳なさ過ぎる!!!)

僕はすばやく枕元に極々自然に置かれた『ポケット式和独辞典』に視線を走らせる。
このどこでも見かける『和独辞典』は、僕独自の工夫によって中に【近藤さん】が収納されているのだ。

落ち着け。
落ち着け………心を平静にして考えるんだ…こんな時どうするか……

2…3、5…7…11…13…17……19。

落ち着くんだ…『素数』を数えて落ち着くんだ…
『素数』は1と自分の数でしか割ることのできない孤独な数字……

僕に勇気を与えてくれる。




                   (−−−この間0.2秒)


70 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 20:18:33.92 ID:E2RE4V3X0
( ^ω^)。o○(確か【近藤さん】の残り枚数は…3枚のはずだお。
         ちっ。こんな事ならあと2ダースくらい追加しておくべきだったお…。
         それより問題はクーさんに僕のテクニックが通用するかどうかだお。
         ツンは意外とMだからちょっと乱暴にしたり、
         アダルトな玩具使うと興奮するけど…クーさんは…?
         いや、迷ったら負けだお、ホライゾン!!
         嫌よ嫌よも好きのうち…この名言を信じるんだお!!
         僕はあの頃の僕じゃないお!!
         童貞は捨てたし、ギコさんに連れて行ってもらったおっぱいパブでは
         すでに何人ものおっぱいを見てきたんだお!!
         そう、言うなれば百戦錬磨!!
         二次元で鍛えた妄想力と、3次元で培った経験!!
         これがあれば勝てない相手はいないはずだお!!
         負けるな、僕!!
         歌舞伎町のアイドルマスターの名は伊達じゃないトコを見せてやるんだお!!
         そう言えば、ツンに使った玩具洗わないでそのままクーさんに使ってもだいじょうb)




                   (ーーーこの間0.33秒)

川 ゚ -゚)『あらかじめ言っておくが、付き合いでたまに行く風俗はともかくとして 
     わたしは彼女がいるのに他の女とやっちゃうような男が大嫌いだ。
     君を信頼しているが…こうして再会できた喜びを台無しにしてくれるなよ?』

( ;^ω^)『……』

                                                   ………読まれてた。


76 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 20:24:42.94 ID:E2RE4V3X0
 それから僕とクーさんは1つの布団に入り込んだ。

川 ゚ -゚)『…そう言えば内藤は幼女が好きなのか?』

( *^ω^)『幼女と二次元を語らせたら僕の右に出るものはいませんお』

川 ゚ -゚)『…流石のわたしも引いた』

そんな他愛もない雑談をしながら眠りにつき、朝を迎える…筈だった。



77 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 20:27:40.62 ID:E2RE4V3X0
…雀の鳴き声が聞こえる。飲みすぎたせいか、膀胱が破裂寸前だった。
トイレに行こうと布団を抜け出すと…
そこにはぶかぶかのワンピースに包まれて呆然と座り込む…クーさん?

川;゚ -゚)『…内藤…こんなになっちゃった…どうしよう…』

( ;^ω^)『……』

どうしよう…言われても困る。
OK。
なんとか解決策を考えようじゃないか。

( ;^ω^)『でも…その前にトイレだお』

僕はトイレに駆け込み、放尿しつつ寝起きの頭をフル回転させる。
落ち着け。 あ ん な 事 はありえない。
いや、死んだはずのクーさんが天使になって僕の前に降り立つ事自体がありえないんだけど…
見間違えただけに違いない。
そう自分に言い聞かせながらトイレのドアを開ける。

川;゚ -゚)『…内藤…』

( ;^ω^)『……』

嗚呼。
残念ながら見間違いではなかったらしい。
立派な翼は、どう見ても玩具のそれに変わりーーーーー
不安げにワンピースの裾を掴んで僕を見上げるーーーーー

幼女がそこに立っていた。

78 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 20:28:45.73 ID:E2RE4V3X0


     第2章 メリーゴーランド


川 ; -;)『…っく…ぐすっ…ひっく…』

( ;^ω^)『…頼むからいいかげんに泣き止んでくれだお』

川 ; -;)『……ふえ〜ん…』

( ;^ω^)『…僕だって泣きたいお…ほら、飴玉あげるから…』

川 ; -;)『…えぐっ…子供扱いするな!! わたしは…君より年上なんだぞ!!』

( ;^ω^)『そりゃすまんかったですお』

川 ; -;)『…ふぇ〜ん…』

( ;^ω^)『……』

かれこれ3時間。
僕とクーさんはこんな無限ループなやり取りを続けていた。
死んだ筈の人間が天使の姿で生き返ったと思ったら、朝になったら幼女になっていた。
急すぎる展開にも程がある。
大人版クーさんは自分の身に起きた出来事を諦め半分とは言え受け入れるだけの事は出来たが、
幼女版クーさんはそれも出来ずにただ泣くばかり。
流石の僕も幼女が苦手になりそうだった。


83 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 20:32:24.11 ID:E2RE4V3X0
( ;^ω^)『…こりゃ、僕一人じゃどうにもならないかもしれんね』

そう考えた僕は助っ人を呼ぶべく携帯を手にする。
自体は非常にややこしい事になっているが、
どのみちクーさんが生きかえった事はみんなに報告するべき事なのだ。

余談だけど、股間の自家発電に夢中になっている時に
いきなり携帯電話が鳴り出すのは非常に興醒めするものだ。
だから僕は一人ファイト倶楽部中は携帯の電源を切る事にしている。

昨夜は予想できる筈も無いドタバタがあったせいで携帯の電源をOFFにしたまま寝てしまっていた。
電源を入れ、リダイヤルの先頭にある彼女の番号をコールする。

( ^ω^)]『……』

       トゥルルルルルルルルル・・・ガチャ

( ;^ω^)]『ぐ、ぐもーにんナンシー』

       『もしもし、内藤? なんでずっと電源切ってるのよ』

受話器越しに聞きなれた不愉快そうな声が聞こえてきた。



86 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 20:34:24.07 ID:E2RE4V3X0
( ^ω^)]『すまんお。ちょっと色々あったんだお』

       『…色々ねぇ。で、今どこにいるのよ?』

( ^ω^)]『家だお。それよりちょっとピンチなんだお。ツンの助けが欲しいお』

       『その色々…ってのがピンチになってる原因って考えればいいのかしら?』

朝早いせいもあってか、ツンは普段より不機嫌度30%増(当社比)らしかった。
約束していた筈の『おやすみコール』をバックレてしまった事も大きな原因のひとつだろう。

( ^ω^)]『そうなんだお!! 電話じゃ説明しづらいから会ったらすぐ話すお』

       『分かったわ。10分で行くから。首を洗って待ってなさい』

( ;^ω^)]『……』

物騒な捨て台詞を残して電話は切られた。

( ;^ω^)『…本能が危険を告げているけど、ツンが来てくれれば安心だお。
       ……………………………………………………・…………………多分』

そうして正確に10分後。

ピンポーン♪

ドアのチャイムが鳴らされた。
僕は体育座りで泣き続ける幼女版クーさんをなだめつつ玄関に走る。

( ^ω^)『ツン!! 待ってたお…・・・って、え??』

88 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 20:38:19.25 ID:E2RE4V3X0
  l   l     l         ||  /   ./    /  .l,   .| .|   .l     |; |:::::::::'
      l   l   ├ーーーートト--L,__  ./   ./   .l,   .| |   ゙l    l;; |:::::::"
     l    l    l      | |  l゙  ~"メ=ュ。、/    l,   .| |.  ゙l     |;; ト、::
     ヘ,   i),   l       | |  l   .l゙ _,_ミミミ<;-、,_ヽ,   ゙l, ゙l,  l,    |;; |::.ヾ:,
      ヘ,  i, i    i,       |. |, l _,.、ト爨爨鈩***+ミミュ;、,_.゙l,;゙l,   l,   |;;; |:::'
      |l;  i ゙i!  ゙i,     .| |, ,l‐' .|少'´:::::,、‐'""`ヾミミミミミミ;;゙l,,_ ゙l,  |l;;; ゙|::: ..,/ ;
ヽ      i,i  i ゙i,  ゙i,     | λ  /l:::::::::;/'<つ;;/l;;;;;;;;'),`ヾ默ミミiミミ゙ト;、,,_I」;l」ャ=',ノ::  ::..
 |        i;'i, i, ‘i,   ゙i,     λ爨lλ  ト''´ /ブ~ ;;lllll;; ~';;),''::::`爨ミi,~~;'‐┼'F'ト;".‐'"  ';ヽ
 ヽ.     ゝ i,i, . ゙i,  ゙i,  ./ 儻"゙l;i  l  |;;;;  ;;ll ll;;;‐-,;;),  \キ, 》、 ゙l, ,|::ベ,l;:::::ァ ,,,,,,,,,,,_
  ヽ     ゝ.ヾ  `i;. X.ヘ.  Y:::::;'l;i l,  .|;;;;  ;;ll ll;;  ;;;|    ヽ`::::゙l, ゙l, |::::ヘ,l, =''''''''''''''~~
    ヽ     \   ,X~.ヽ \;、 l,::;. ヾ, l,  |;;;;  ;;ll,ll;;  ;;;|    :::::::::ヽヽ, |,::::: ヽ        ←ツン
.     ヽ.      \ ´ ゞ、ヽ. ヾ、ヘ;,. \.', ゙ャ;;,  'ヾll;  ;;;    ,::::::::::::.ヾi、ヾ;;::. \-=-
ヽ、   \      \  ヘヽ.\.  `ド;、  ヾ、 \;, ,,     ノ    ,ノ::::::::::::::::.ヾ;,l,ヾ;,
. | ヽ,   \     \  ヘ \\ `i,::\_, ヾ  `ヾ、;;;;;/  _,.。;_,,::l゙゙゙'''::;;;::''''''::.ヾ、 \
`1 ヽ、   \     \. \. \\ '、ヽ`ヽ、    _,,.。ャェィン'"  ...:::::::::ァ   '':::.ヽ
ヽ,\  ヽ、   \     \.ヽ, `ヾ;.、\`'主王王玩=""   _....:::::::ッ"      '':.
_| \ヽ.  ヽ、    \       \ヘ,.  ヾ、.ヾー----    ....::::::ヌ”"゛
゙|  ヽヽ ノ| `ヽ、  \     `ヾ;;、   `ヾ:;.、
,|   ~ヾ、」     `ヽ、_. `ヽ、.     `ヾ;     ~`ー                   /|
,.\ /   l`ヽ、    `ヽ、_`ヽ、__   `ヽ、                         ノ/
こ,_\    l   `ヽ.       T‐t、_`'‐ュ,__ `ヽ、                       `(,
 ./ゝぃ、. l.              | ゝ `"'-、,王-、こ;ェ、
../   ~" l   il         |. \    ~`''''‐-ニニ>、      .:  /ヒュ、,___     __,,,,、-ー-、
/       l  /|         |   \                   .:::// ./`´ ~~ ̄^''''~~~~~~~~ ~`''´~~`)\
      l /|        |    |)、               .:::// ,、ゝ ,、,               ノ ノ
/       .l ./ .|      i  .|   ノ゛.\           :::::il./ ゝ・'´~`''''''  ''''''' '''''''''''''''''''≦ミ彳´
      ,l /  .|       .ノ  |   ./   ゙ヽ、_         :::::|| (
      l/  .|     .ノ  ‖  ノ      `ヽ、_        `';`ゝ、〜〜-ー〜-----、,、-〜-、,,,,...ノーェッー
      ノ   |/    /./  ./l /            .>、.,_       ̄ ̄ ̄ ̄~~~~~~~~~~~ ̄ ̄ ̄ ̄~゙
         /    ノ ノl   |/ /            /    |`'‐ュ,

92 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 20:40:19.52 ID:E2RE4V3X0
( ゚ω゚)『ヒ閼。窩ィカ。●騁釵チ。ァ、!!!!!』

瞬間。
開いた扉から襲い掛かった物質的暴力によって
僕は玄関から正反対の壁まで吹き飛ばされた。
衝突のショックで年代物のアパート全体が大きく揺れる。

ξ#゚听)ξ『…内藤…あんたって人はっ!!』

赤。青。緑。
様々な花火が乱舞する視界に、土足のまま部屋に上がりこむ悪鬼羅刹の姿が映る。
その攻撃力は昔物語で読んだ『影』を吸収したのではないかとさえ思えた。

( #^ω^)『ちょwwwいきなり何するんだお!!』

ξ#゚听)ξ『自分の胸に聞いてみなさい…この裏切り者っ!!』

( #^ω^)『何言ってんだお!! この平面乳女っ!!』

言い返すやいなや、暴風をまとった拳の一撃で再び僕は壁に叩きつけられる。

(メ)ω )『…身、身に覚えが無いですお…』

ξ#゚听)ξ『身に覚えが無いですって…?』

言うとツンは玄関に向けて一瞥をおくる。

(#*゚∀゚)『…その台詞…わたしの前でも言えるかしらねぇ…!!』

…そこには第二の修羅が立っていた。

97 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 20:43:07.57 ID:E2RE4V3X0
 ツーさんはツン同様に土足のまま部屋に上がりこんでくる。
古くて痛みかけていた畳に細いヒールが突き刺ささるが、そんな事はお構いなしとばかりな勢いだ。

( ;^ω^)『……』

ちらと部屋を見渡すとクーさんの姿はない。
盛り上がった布団が小刻みに震えているところを見ると、おそらくあそこに避難しているのだろう。

(#*゚∀゚)『…さてと…!!』

ツーさんは壁際にへたり込む僕の前に立つと、腰に手を当て僕の顔を覗き込むように前屈みになった。
その為、柔らかそうな谷間が目の前にあるのは眼福と言わざるを得ない。

(#*゚∀゚)『質問た〜いむ。ブーちゃん、昨日の夜何してた?』

…目が笑っていない。正直に答えなくては殺される勢いだ。

( ;^ω^)『…漢の浪漫溢れる幻の大地を目指して、股間の小宇宙を燃やしてましたお』

ξ#゚听)ξ『日本語でおk』

なぜかツンまで僕を威嚇するように顔を近づけてきた。
それにしても、こうやってマジマジと見比べると本当に血の繋がった姉妹とは思えないサイズの差だ。

(#*゚∀゚)『…なんか妙な現実逃避してるけど…マジメに答えないと酷い事になるよっ』

ポキポキと指の関節を鳴らす姿に僕は渋々答えた。

( ;^ω^)『タガログ語で言う所のバテバテ…つまり、その…マスターベーショってましたお』


101 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 20:45:37.52 ID:E2RE4V3X0
         ぷちん。

ツーさんの後頭部からそんな音が聞こえた気がした。
いや、実際に音がした。
明るい色の髪をポニーテールにしていたゴムが弾け飛んだからだ。

(#*゚∀゚)『ああああああああああああああんたはそんな事までえええええええええっ!!』

(;'A`)『ま、待てって!! まずは落ち着いて!!』

叫ぶやいなや僕に掴みかかってくるツーさんをドクオが背後から羽交い絞めにする。

( ;^ω^)『……ドクオいつからそこにいたんだお?』

('A`)『あ? ツーやツンと一緒に入らせてもらったぜ』

全然気付かなかった。
ダンゴ虫並に存在感がない男だ…。

( #^ω^)『3人ともいい加減にするお!!
       ロンドン・マスターベーションマラソン参加を狙ってる
       僕に対してあまりにも失礼だお!!』

(#*゚∀゚)『問題はそこじゃないさっ!!』

ドクオに抱きかかえられたまま、じたばた暴れつつツーさんが叫ぶ。
まるで活きのいい魚だ。

(#*゚∀゚)『どこで!! 何を見ながらしていたかが問題なんだよっ!!』


103 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 20:47:58.30 ID:E2RE4V3X0
 ( ;^ω^)『……』

どこで? と聞かれれば、それは僕の部屋だ。
しかし…何を見ながらと言われれば返答に困る。
ツンの目の前で

     ( ^ω^)『天使姿のクーさんに顔射しましたお』

などと答えれば、『VIP公園で男性の惨殺死体発見』って感じで明日の朝刊の一面を飾る事になるのは目に見えている。

(#*゚∀゚)『ブーちゃんが言えないならわたしが言ってあげるさっ!!
     ブーちゃんは昨夜全裸でドッ君の家の浴室に忍び込んで
     わたし達がギシアンしてるのを見ながら自主トレに励んでいたんだっ!!』

興奮冷めやらぬ感じで暴れるツーさんをドクオが必死に止めた。

('A`)『で、それをツーが発見。縛り上げてベランダに放置していた筈がいつの間にか逃走。
    証拠は全部揃ってるんだぜ。これ以上罪を重ねるな。大人しく殴られちまえ』

ξ#;;)ξ『内藤…あたしは情けないわ…。変態なのはずっと前から分かってたけど…。
      お願い。正直に罪を認めて。今なら9分殺しで許してあげるから…』

そう言ってツンは顔を真っ赤にしながら涙を流し始めた。
しかし。

( ^ω^)『……』

( ;^ω^)『は? それ何の事ですかお?』

105 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 20:49:44.55 ID:E2RE4V3X0
 (#*゚∀゚)#;;)ξ'A`)『……』

僕の一言で空気が凍った、と思ったのも一瞬の事。
ドクオに抱えあげられたまま両足をブンブンと振り回しツーさんが叫んだ。

(#*゚∀゚)『あああああああああんたはまだシラ切るつもりかぁっ!!!!!』

( #^ω^)『嘘じゃないお!! 僕は昨夜はずっと部屋にいたお!!』

('A`)『おいおい…往生際悪いぜ。俺とツーは間違いなくお前を見た
    …つーか2人がかりで散々殴った後、縛り上げたんだからな』

(#*゚∀゚)『そうだよっ!! ブーちゃんがずっとココにいたってのを
     証明できる証人でもいるってのかいっ!?』

              『証人』

その単語に僕の頭はサッと冷静になる。
確かに『証人』は存在する。
しかし今その存在を顕にする事は、この誤解されまくりのややこしい状況を更に混乱させる。
言わば火にガソリンを注ぐ愚行に等しい。

さらにゆっくり部屋を見渡せばそこにあるのは散乱したビールの空き缶。
ちょうど2人分の食事の後。そして、ツンの足元であきらかに怪しく盛り上がった布団。

( ;^ω^)『…なんだか危険が危ない予感がするお』

騒ぐツーさんを放置して、ちらとツンに視線を向ける。
ツンはジッと小刻みに震える布団を見つめていた。

113 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 20:51:38.62 ID:E2RE4V3X0
ξ^ー^)ξ『ヘイ、ジミー』

振り返ったツンが満面の笑みを僕に向ける。
そして、かすかに震え続ける布団を指差し言った。

ξ^ー^)ξ『ここにいる方はひょっとして【証人さん】じゃないかしら?』

その言葉にツーさんとドクオはピタリと動きを止める。

ξ#^ー^)ξ『…わざわざ携帯の電源まで切って…ずいぶんお楽しみだったみたいじゃない?』

('A`)『そう言われれば…』

(*゚∀゚)『…明らかに酒盛りの後っぽい部屋の雰囲気だね』

( ;^ω^)『……』

('A`)『…え〜と』

(*゚∀゚)『…浮気? それともデリヘル?』

( ;^ω^)『ど、どっちも違いますお!!』

嫌な予感は的中した。
どうやら覗き魔の疑いは晴れそうだけど、3人の頭の中ではギコさん並のロクデナシ男指定されようとしているのは間違い。
更に言えばツンは嫉妬深い上にデリヘルとかの風俗が大嫌いだ。
一度ギコさんとおっぱいランドに行った事がバレて潰れる寸前まで踏みつけられた経験がある。

ξ^ー^)ξ『そう…違うんならいいんだけどね…』

117 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 20:53:35.19 ID:E2RE4V3X0
 僕はその言葉にホッと胸をなでおろした。
…のもつかの間。

ξ#゚听)ξ『…なんて言うとでも思ったかぁっ!!!!!!』

怒号一閃。
力任せに布団を剥ぎ取った。

川;゚ -゚)『ひゃあっ!!』

突然の騒動から身を隠そうと布団にしがみついていたクーさんは
その勢いで当然の如く放り出される。
1回2回と床を転げた後、ペタンと尻餅をついて僕ら4人の中心に座り込む格好になった。

ξ;゚听)ξ;'A`);*゚∀゚)『……』

( ;^ω^)『……』

川;゚ -゚)『……』

重苦しい沈黙を破って3人がそれぞれの疑問を口にする。

(;*゚∀゚)『これって…新手の風俗?』

(;'A`)『まさか…隠し子?』

ξ;゚听)ξ『ひょっとして…幼女誘拐?』

( ;^ω^)『あるあr…ねーよwww』


122 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 20:57:53.29 ID:E2RE4V3X0
 (メ)ω )『…お茶が入りましたお』

それから一悶着を終えてようやく僕は3人の闖入者を大人しくさせることに成功した。
言葉にすれば一言だけど、かなり苦労したのも事実で。

(;*゚∀゚)『…なんつーか…昨夜部屋にずっといたってのは本当みたいだけど』

(;'A`)『…流石にこれは引くわ』

ξ;;)ξ『内藤!! あたし情けないわ!! あんたも、あんたを信じた自分も情けない!!』

こんな感じで騒ぎ立てる3人をなだめすかし、口説き、威嚇し、殴り、殴られ、蹴られ、張り飛ばされ、
叩かれ、物をぶつけられ、後楽園ホールを埋め尽くした超満員観客の「幕の内」コールの中デンプシー・ロールを喰らい…。
そんな経緯を経て、3人は小さなテーブルを囲んで座り込んでいる。

(*゚∀゚)『それにしても…これがクーさんねぇ…』

言いながらツーさんは幼女の頬をつついたり引っ張ったりして遊んでいる。

川#゚ -゚)『これって言うな。わたしは年長者だぞ』

('A`)『いや、年長者言われても無理がありすぎる』

ξ゚听)ξ『確かに言動や物腰はクーさんなんだけどねぇ…』

( #^ω^)『みんな、しつこいお!! 何回説明したら分かってくれるんだお』

僕はテーブルにお茶を並べながら答えた。

125 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 21:00:04.96 ID:E2RE4V3X0
 (*゚∀゚)『しつこいって言われたってねぇ』

ツーさんがお茶をふーふーと冷ましながら言う。

(*゚∀゚)『知り合いの家に行ったら幼女がいて、
     しかもそれが死んだ筈の人間が生き返った姿であると。
     それを無条件で信じてくれって言われてもねぇ…』

('A`)『簡単には信じられないよなぁ。常識的に考えて』

ξ;;)ξ『内藤…あんたは疲れてるのよ。一緒にホスピタル行きましょう。
     入院すれば外出の自由はないし、自殺防止の為に壁がウレタンで出来てるけど
     全部あなたの為なのよ…大丈夫、怖くないから』

( ;^ω^)『勝手に精神病扱いするなお。
       みんなはあの光景を見ていないから信じられないんだお』

そう言って僕は身振り手振りを交えながら、今日何度目かになる説明を開始する。

( ^ω^)『ハァハァしてたらぱぁ〜ってなって、ドピュっでうひゃぁぁぁぁぁで、
       な、何ぃ…!?でパンッなんだお!!
       で、ご飯食べて寝て朝起きたら幼女になってたんだお!!
       ちなみに黄色い救急車は都市伝説で存在しないから覚えておけお!!』

(*゚∀゚)'A`)゚听)ξ『 そ の 説 明 じ ゃ 分 か り ま せ ん 』

( #^ω^)『みんな、しつこいお!! 何回説明したら分かってくれるんだお』

僕が再度説明を繰り返そうとした時、突如クーさんが毅然と立ち上がった。


128 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 21:02:05.92 ID:E2RE4V3X0
 川#゚ -゚)『条件とか…常識とか…くだらない!!』

言いながら窓に近づいていく。

川 ゚ -゚)『わたしはずっとお前達に会いたかった。
     ただ、お前達を見ているだけしか出来ない場所で…どんなに寂しかったか…
     今こうしてお前達と会えて…どんなに嬉しかったか…!!』

窓を開ける。部屋に風が吹き込みクーさんの黒髪を躍らせる。

川 ゚ -゚)『わたしは…お前達も喜んでくれると思っていた。
     この喜びを分かち合えると思っていた!!』

叫ぶやいなや、その体を包みこむように輝く火の粉が舞い落ち、
一瞬にして小さな体に不釣合いな翼が背中に広がった。

川 ゚ ー゚)『しかし…しかしお前達は常識とか…そんなくだらない物だけでわたしを否定するのだな』

ξ;゚听)ξ;'A`);*゚∀゚)『……』

3人はただその光景を口をポカンと半開きにして眺めている。僕にはクーさんが何をしようとしているか分かった。

( ゚ω゚)『ま、待ってクーさ』

川 ; -;)『わたしはここにっ…間違いなくここに存在しているというのにっ!!』

僕の制止の声はクーさんの悲痛な叫びにかき消される。
クーさんは開いた窓から身を投げだしーーーーーそのまま空に羽ばたき空に消えた。
光り輝く羽がひらひらと舞い落ちてきた。


133 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 21:04:12.23 ID:E2RE4V3X0


     第3章 あの娘にタッチ


( ゚ω゚)『クーさんっ!!』

僕はクーさんが飛び出した窓から身を乗り出し、その姿を追う。
しかそこにあるのは一点の曇りもない青空だけ。

( ゚ω゚)『そんな…せっかく会えたのに…』

僕はガックリとその場に膝まづく。

ξ;゚听)ξ『ちょ…あれって…』

(;*゚∀゚)『本物の…天使?』

(;'A`)『って事は…マジでクーさん…なのか?』

ぼくは呆然と立ち尽くすドクオに掴みかかった。

( #゚ω゚)『だから何度もそう言った筈だお!!
      クーさん、あんなに辛そうな顔して…。
      みんな酷すぎるお!!』

(;'A`)『…すまん』




137 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 21:07:52.23 ID:E2RE4V3X0
( #゚ω゚)『謝って済む位ならVIP警察はいらんお!!』

そう言って項垂れるドクオになおも掴みかかる僕を
ツーさんが止めにかかる。

(;*゚∀゚)『ブーちゃん、落ち着きなよ!! 
     んな事したってクーさんが戻ってくるわけじゃないんだよっ!!
     こんな事言えた義理じゃないけど、今はどうやってクーさんを見つけるかを考えないと…』

ξ#゚听)ξ『そうよ!!
      第一ね、死んだ人間が生き返りましたなんて話を信じなかったからって
      責めらんなきゃいけない義務はないわ!!
      この際言わせてもらうけど、あんたは昔っからクーさんの事になると目の色変えて…!!
      どー考えても川 ゚ -゚)>ξ゚听)ξです!!
      本当にありがとうございましたっ!!』

( #゚ω゚)『逆ギレかお!!
      そんな、「ハルヒとすき焼きどっちが大切なのよ!?」
      みたいな事考えてるから仲間を信じられないんだお!!』

ξ#゚听)ξ『…!! 屁理屈言ってんじゃないわよ!! この、ラード・ボール!!』

( #゚ω゚)『黙るお!! 陥没乳女!!』

一触即発の僕とツンの間に再度クーさんが割って入った。

(*゚∀゚)『はいはい、それまで!!夫婦喧嘩は犬も喰わないよっ!!
     それよりブーちゃん!! んな事してる間に大事なクーさんはどっか行っちゃうよっ!!
     少し頭冷やさなきゃねっ!!』

140 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 21:10:13.69 ID:E2RE4V3X0
 それで僕は少しだけ冷静になれた。

( ´ω`)『…正直すまんかった。確かに喧嘩してる場合じゃないお…クーさんを探さないと…』

(;'A`)『いや、俺達も悪かったんだし…。でも正直どうすりゃいいのかわかんねぇよ』

ドクオはそう言ってツーさんをちらと見た。

(;*゚∀゚)『…そんな目で見られたってわたしだってどーすりゃいいのか…』

('A`)『どっかクーさんが行きそうなトコ探してみるしかないんじゃねーか?』

(*゚∀゚)『そーすると、ショボンさんとかギコさんの力借りた方が良さそうだね』

そう行動方針が決まり、僕がギコさんに。ツーさんがショボンさんの携帯に連絡を入れる。
『クーさんが生き返ったけど行方不明になった』とか言うと話がややこしくなるので、
とりあえず『相談がある』と言ってバーボンハウスに呼び出す事にした。
休日の暇を持て余していたらしいギコさんはすぐ承諾してくれたのだけど…。

(;*゚∀゚)]『それは違うって!! 絶対人違いだから!!』

なにやらツーさんがショボンさんとの会話で悪戦苦闘している。

ξ゚听)ξ『ちょっと、お姉ちゃんどーしたのよ?』

(*゚∀゚)『いやね、ショボンさんが公園でいい男に襲われていたブーちゃんを保護したとかイミフな事言ってるんだよね…』

( ^ω^)『……』

( ^ω^)'A`)゚听)ξ『は?』

151 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 21:14:04.73 ID:E2RE4V3X0
 【本日定休日】のプレートがかけられたバーボンハウスのスタッフルーム。
僕らが到着した時、ギコさんは季節外れの電気ストーブをどこからか引っ張り出してきて
その前で背を丸めて座り込んでいた。

( ,,゚Д゚)『…で、今日はなんの集まりだゴルァ』

赤外線で両手を炙りながらギコさんが言う。

( ^ω^)『…ショボンさんが来るまで…待って欲しいお』

( ゚∀゚)『…なんだそりゃ?』

(*゚∀゚)『そう急かさないでおくれよ。正直わたしらも混乱してるさ』

(*゚ー゚)『……?』

困惑顔の僕ら4人を更に困惑顔の3人が見つめる。
そんなシュールな光景の中、静かに時間だけが過ぎていく。

ξ゚听)ξ『貧乏ゆすり止めなさいよ』

( ^ω^)『…すまんかったお』

ドクオがタバコを3本灰にするほどの時間が過ぎて、ようやく最後の一人が到着した。
ボロボロの毛布に包まれた【何か】を乗せた、ゴミ捨て用の台車を押している。

(;´・ω・)『お待たせ。内藤君が重くてね…って、あれ?
      なんで内藤君がここにいるの?』


156 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 21:17:26.06 ID:E2RE4V3X0
 ( ;^ω^)゚听)ξ'A`)*゚∀゚),,゚Д゚)*゚ー゚)゚∀゚)・ω・`)『・・・・・・』

(主゚ω゚)『・・・・・・』

車座になって困り果てている僕らの中央には傷だらけで失神している醜い豚男がいる。
首からペンダントを下げただけの全裸で全身に縛られた痕がある。特に臀部からの出血が酷いようだ。

( ^ω^)『・・・なんだお、この豚』

('A`)『どう見てもお前じゃねーか…つか、こいつが覗きの犯人じゃねーか?』

(*゚∀゚)『あの時も思ったけど、見事なまでにお粗末だねぇ…ブーちゃんもこんな感じかい?』

( ゚∀゚)『おいおい・・・こんなんで満足できるのか?』

ξ///)ξ『うるさいわねっ!! 大切なのは相性よっ!!』

( ,,゚Д゚)『満足できなかったら何時でも言ってきていいぞゴルァ』

(´・ω・`)『…何にしても、この豚君に目を覚ましてもらわないと話になりそうにないね』

そう言ってショボンさんはジャケットの裏ポケットからウィスキーの小瓶を取り出した。

( ゚∀゚)『そんなんで目ぇ覚ますのか?』

(´・ω・`)『アルコール度数が高いお酒は気付け薬になるんだよ。
      ま、大丈夫さ………多分ね』

そう言ってショボンさんは気絶しているそいつの口をこじ開け、ウィスキーを流し込んだ。


162 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 21:19:30.77 ID:E2RE4V3X0
 (主゚ω゚)『…も……もるすぁ…』

なんだかワケの分からない事を呟きつつ、ゆっくりと目を開く。

(´・ω・`)『お、良かった。成功した』

( ;^ω^)『…失敗したらどうするつもりだったんだお…』

そいつは二度三度と頭を横に振ると、状況を確認するように周囲を見渡した。
そして、一人の女性と目があうとそこで視線を固定する。

(主^ω^)『………』(゚∀゚*)

(主゚ω゚)『いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! さ、殺人鬼っ!!』

(#*゚∀゚)『っこの・・・覗き魔がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!
     聖域を汚した罪は重いよっ!!
     その粗末なの切り落として糠漬けにしてやるさっ!!』

掴みかかるツーさんをドクオが必死に止める。

('A`)『待て待て待て待てっ!!!! とりあえず落ち着けっ!!
    こいつの話を聞かない事にはどうにもならねぇ!!』

(#*゚∀゚)『・・・分かったよっ!! あんたが何であんなトコにいたのか・・・?
     あんたは何者なのか・・・? しっかり話してもらうよっ!!
     誤魔化したりしたら熱々おでん・しかもがんもどきの刑だからねっ!!』

(´・ω・`)( ,,゚Д゚)( ゚∀゚)(*゚ー゚)『・・・?』

167 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 21:23:51.21 ID:E2RE4V3X0
 コックコートを着込んだそいつの口から出た話はとても信じられるものではなかった。

ーそいつが異世界の人間である事。

ーそいつの住む世界はFOXと言う男に滅ぼされた事。

ーFOXを倒す為、『DAT』と呼ばれる魔石の欠片を求めて旅をしている事。

( ,,゚Д゚)『…俄かには信じられねぇなぁ』

(´・ω・`)『うん、酔っ払いの戯言としか思えないね。なんだか彼、少しお酒臭いし』

半信半疑・・・いや、一信九疑の大人組。
でも、僕はこの豚男の言葉を信じる他なかった。
つか、お酒臭い原因を作ったのはショボンさんだ。

( ^ω^)『・・・もしかして、そのDATの力でクーさんは生き返ったのかお・・・?』

僕の呟き声にギコさんが反応する。

( ,,゚Д゚)『クーが生き返った!? 内藤!! そりゃ、どーゆー事だ!!』

( ;^ω^)『おっ、おっ・・・それは・・・』

( ,,゚Д゚)『言え!! とっとと言わねぇと只じゃすまさねぇぞゴルァ!!!』

( ;^ω^)『・・・分かりましたお』

ギコさんに胸ぐらを掴まれ、今度は僕が長々と説明を始める番だった。


172 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 21:28:18.38 ID:E2RE4V3X0
 (´・ω・`)『なるほどね・・・この世界に存在しないDATの力で死んだ筈のクーが生き返ったと・・・』

( ;゚∀゚)『そんなバカな・・・と言いたいトコだが・・・』

ξ゚听)ξ『実際あたし達もクーさんを見てるのよね』

(*゚∀゚)『しかも幼女になって・・・』

('A`)『羽生えて空飛んでった・・・』

( ,,゚Д゚)『・・・ここまで目撃証言があると、集団幻覚ってワケじゃなさそうだぞゴルァ』

(*゚ー゚)『ドッキリ企画って訳でもなさそうだしね』

ギコさんはなんとか納得したのか、ようやく僕のシャツから手を離した。

(´・ω・`)『…事は緊急を要するね』

ショボンさんが微デブのクセに軽くポーズを決めて呟く。

(´・ω・`)『ブタ君の話だと、FOXとやらもDATを狙っているみたいじゃないか。
      早くクーに知らせないと、彼女の身が危ない』

僕はその言葉にハッとした。

( ゚ω゚)『そ、そうだお!! 早くクーさんに知らせないと危険がデンジャラスだお!!』

すぐにでも駆け出そうとする僕をショボンさんが止めに入る。

(´・ω・`)『内藤君、落ち着いて!!』

178 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 21:34:49.23 ID:E2RE4V3X0
 ( ゚ω゚)『ショボンさん!! なんで止めるんだお!!』

上下関係も無視して怒鳴りつける。
鼻息が異常に荒くなっているのが自分でもわかった。

(´・ω・`)『いいかい。敵は1つの世界を滅ぼした程の化け物だよ。
      当然、クーを探すうちに敵と遭遇する事もあるだろう。
      そんな奴を相手に一般人の僕らに何が出来るんだい?』

その言葉はもっともだった。
僕は無意識のうちに拳を硬く握り締める。

( ^ω^)『…それでも僕はクーさんを探しに行くお』

(´・ω・`)『…本気かい?』

( ^ω^)『…みんなはここで待っていてくださいお。僕一人でクーさんは探し出してみせるお』

(´・ω・`),,゚Д゚)*゚ー゚) ゚∀゚)*゚∀゚)'A`)『……』

( ^ω^)『必ず…必ずクーさんとココに戻ってきますお』

そんな僕の肩を背後から軽く叩く誰かの腕。

('A`)『…水臭い事言うなよ。俺も行くぜ、親友』

( ^ω^)『…ドクオ』


184 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 21:38:15.16 ID:E2RE4V3X0
(*゚∀゚)『包丁は当然武器になるだろうし…中華鍋は盾代わりになるね』

( ゚∀゚)『豆板醤なんか目潰しになるんじゃないか?』

( ^ω^)『…ツーさん…ジョルジュさん』

(*゚ー゚)『ギコ君はどうするの? 当然行くんでしょ?』

( ,,゚Д゚)『あぁ。俺にはクーに会ってやらなきゃならねぇ事があるからな』

( ^ω^)『ギコさんまで…』

ξ゚听)ξ『……』

ショボンさんが言うように敵の力は強大だ。
それでも僕らは行く。行かなくてはいけない。
もし、殺されても後悔はない。笑いながら殺されてやる。

(´・ω・`)『…そうだね。君達ならそう言うだろうね』

ショボンさんが諦めたように溜息をついた。

(´・ω・`)『本当は君達にはここで待っていてもらって僕一人で行こうと思ったんだけどね。
      全く…君達はバカだよ…バカだけど…最高のスタッフだ』

そういうショボンさんの瞳には今にも零れ落ちそうな涙が輝いていた。

(´;ω;`)『何言ってるんだい…君だって目に涙溜めてるくせに…』

( ;ω;)『そ…そんな事ありまs』

185 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 21:41:18.04 ID:E2RE4V3X0














(主^ω^)『あの…盛り上がってるトコすいませんけどこの世界にはFOXの手下は100%来ていませんお』













( ^ω^)'A`)*゚∀゚)゚∀゚)*゚ー゚),゚Д゚)・ω・`)゚听)ξ『………』

189 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 21:43:07.29 ID:E2RE4V3X0
( #^ω^)『…このビチグソがぁ』

(主#^ω^)『失礼な!! 勝手に盛り上がったのはそっちだお!!』

( ,,゚Д゚)『醜い争いしてんじゃねぇぞ、バカとブタ』

これ以上脱線してはいられないとばかりにギコさんが口を挟む。

( ,,゚Д゚)『解せねぇな…そのFAXとやらもDATを集めてるんだろ?
      なんでここには手下を送り込んでこねぇんだ?』

(主^ω^)『理由はいくつか考えられますお』

そいつは『こんな奴には構っていられない』的な態度で僕から視線をはずし答えた。

(´・ω・`)『理由?』

(主^ω^)『はいですお。まず、この世界に落ちたDATの力がFOXにとって実用的じゃないからですお』

('A`)『よく分からねぇな』

(主^ω^)『つまり、ここの欠片は僕達の世界ではほとんど無力。
       FOXにとっても僕が入手するのを妨害するほどの価値はない代物だお。
       でも、僕にとってはDATを完成させるために必要であって…』

(*゚ー゚)『なんとなく…分かったような分からないような…』



196 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 21:44:57.05 ID:E2RE4V3X0
 ( ゚∀゚)『お前らの世界では無力って事は…逆に言えば俺達の世界では力を発揮する、と?』

(主^ω^)『多分ですけど…それしか考えられませんお。
       この世界と欠片の相性が良かったんじゃないかと思いますお』

(´・ω・`)『なるほどね。じゃ、次の質問。
      その欠片とやらはこの世界でどんな力を発揮するのか?』

ショボンさんの質問を聞いた豚は目を閉じて首から下げたペンダントを握り締めた。

(主‐ω‐)『ちょっと待って欲しいお。DATに聞いてみるお。
       …これはすごいお。よっぽどこの世界と欠片の相性が良かったんだお』

ξ゚听)ξ『もったいぶらないで早く言いなさいよ』

(主^ω^)『…DATに触れている者の願いの実現化だお』

(´・ω・`)『……? つまり、手にした人の願いが叶うって事でいいのかな?』

(主^ω^)『しかも、触れている者の願いを無差別に叶えていく…やっかいな代物だお。
       欠片の力には制限があるから永続的な願いは無理だけど…』

( ,,゚Д゚)『…って事は、DATとやらを手にした誰かが意識してかしないでか
     クーが生き返る事を願っていた…と?』

その言葉にみんなの視線が僕に集中する。

( ;^ω^)『な…なんだお…?』


199 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 21:47:15.76 ID:E2RE4V3X0
('A`)『なんだじゃねーだろ…』
(*゚∀゚)『どう考えても…』
( ゚∀゚)『一番怪しいのはお前だよな…』
ξ゚听)ξ『さぁ!! 早く出すもん出しなさい!!』

( ;^ω^)『何言ってるお!! 僕は何も持ってないお!!』

本当に心当たりがないんだから仕方がない。
否定する僕にツーさんが詰め寄る。

(*゚∀゚)『ムキになるトコが一層怪しいっさ!!』

( ^ω^)『ちょwww待つお!! なんで脱がす必要あるんだお!!』

(主^ω^)『…残念ながらここにいる人は誰も【欠片】を持っていないみたいですお』

(*゚∀゚)『…ちぇっ』

その言葉でツーさんは半分まで脱がしかけた僕のジーンズから手を離した。

( ;^ω^)『いやいや。ちぇっ、じゃないですお!!』

僕は言いながら慌ててズボンを引き上げる。

(´・ω・`)『って事は僕らはクーを探すと同時に、その【欠片】を持ってる誰かを探さなくちゃいけないのかな?』

ショボンさんの言葉に豚はキザな外人がやるように人差し指を立て、器用に左右に振った。

(主^ω^)『そうとも言い切れませんお』


201 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 21:49:10.88 ID:E2RE4V3X0
(´・ω・`)『って言うと?』

(主^ω^)『いくらこの世界と欠片の相性が良いって言っても、
       死んでいる筈の人間を生き返らせる為にはよほど強い願いが必要なはずですお』

(*゚ー゚)『クーさんと密接な関係にあった人が持っている可能性が強いって事かな?』

(主^ω^)『そうですお。もしくは彼女が直に欠片を所有しているか…』

( ,,゚Д゚)『それはねぇんじゃねぇか? 願いを叶えるもクソもクーが死んでから一年以上経ってるんだぞゴルァ』

(主^ω^)『…もし、欠片とクーさんの願い事が共鳴したのが彼女が亡くなる直前で力を発揮したのが最近だとしたら?
       もしくは、彼女の残留思念が残る物質とDATが共鳴した…。
       ありえない話ではありませんお…』

(´・ω・`)『あくまで仮定の範疇を出ない話だけどね。
      現状ではクーとDATの両方を探さなきゃいけないみたいだ』

( ゚∀゚)『なんか先の見えない話だなぁ…もっとさ、ヒントになるようなネタはねぇのか?』

彼は額に指をあてて考え込むポーズを取った。

(主^ω^)『…欠片はその世界ごとに形を変えているみたいですお。
       あっても不自然じゃないけど、見る人が見たら違和感を覚えるような…。
       その形が分かれば皆さんなら推理出来るのではないでしょうかお?』

(´・ω・`)『それだ!! なんとかそれが分からないかな!?』

彼は再びペンダントを握り締め、意識を集中させる。僕らはただそれを見守り彼が口を開くのを待った。

203 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 21:52:03.99 ID:E2RE4V3X0
 (主‐ω‐)『…白…純白?』

('A`)『範囲広すぎだろ…常識的に考えて…』

(主;‐ω‐)『…この世界は僕の持っている【欠片】と相性があまりよくないみたいだお』

(*゚∀゚)『弱音吐いてんじゃないよっ!! 牡だろっ!!』

(主‐ω‐)『……鳥…? いや、……翼…?……』

そこまで言ってブタは大きく息を吐き出した。

(主;^ω^)『はぁ…はぁ…すまんですお…ここまでが限界ですお』

(´・ω・`)『いや、十分なヒントだよ』

ショボンさんは労う様にブタの肩を軽く叩く。

(´・ω・`)『キーワードは【違和感を感じる物】【白】【翼】。総合すると【欠片】の持ち主は一人しか考えられない』

(*゚ー゚)『…服におもちゃの羽を飾るの好きだったしね☆』

そう言えば。僕の頭に思い当たる事がある。

( ^ω^)『いきなり幼女になった時も、僕に幼女は好きか?って質問してからでしたお』

( ,,゚Д゚)『決まりだな、ゴルァ』

(´・ω・`)『あぁ。彼女は事故にあった日もコートにおもちゃの羽を飾り付けていた。
      【欠片】を持っているのは間違いなくクーだ』

212 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 22:00:27.69 ID:E2RE4V3X0
 ( ^ω^)『それじゃ、早速クーさんを探しに…』

( ゚∀゚)『ちょっと待て。1つだけ気になることがある』

丸太の様に太い腕を組んで、なにやら考え込んでいたジョルジュさんが口を挟んできた。

(*゚∀゚)『? どしたんだい?』

( ゚∀゚)『いやな。さっき、そいつが「永続的に効果は続かない」みたいな事言ってたよな?
     もし、タイムアップになったらどうなるんだ?』

(主^ω^)『……欠片は力を失ってただの石ころと見掛けが変わらなくなりますお。
       そうなったら探し出すことはまず不可能ですお』

( ,,゚Д゚)『んな事はどうでもいい。クーはどうなる?』

(主^ω^)『…分かりませんお。霧のように消えるか、体が腐ってまた死んでしまうか…。
      おそらく日没まででタイムアップですお…』

その言葉に僕は慌てる。

( ^ω^)『そ、そんな…!! 早くクーさんを探し出さないと大変じゃないかお!!』

( ,,゚Д゚)『お前さっきからそればっかじゃねーか。ま。その意見には賛成だぞゴルァ』

ギコさんがその後に続けた言葉は僕ら全員を驚かせた。

( ,,゚Д゚)『クーがそんな醜態を晒す前にちゃんと殺してやらねぇとな…』



224 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 22:05:31.53 ID:E2RE4V3X0


     第4章 歩く花


( ;^ω^)『僕の聞き間違いかお…?今、クーさんを殺すって聞こえちゃったお』

(;*゚∀゚)『あ、あたしもさっ!! 耳がおかしくなっちゃったかなぁwww』

( ,,゚Д゚)『聞き間違いじゃねぇよ。俺はクーを殺すって言ったんだ』

( ゚ω゚)『そ、そんな!! ギコさんはクーさんが生き返って嬉しくないのかおっ!!』

( ,,゚Д゚)『嬉しくねぇぞゴルァ』

ギコさんは落ち着いた態度を崩さず言った。

( ,,゚Д゚)『人生ってのはたった一度しかねぇから美しいんだ。
     たった一度しかねぇから後悔しないように生きるんだ。
     バットだか【欠片】だか知らねぇが、突然生き返った挙句腐って死んじまうんなら
     この俺の手で引導を渡してやるぞゴルァ』

ギコさんの意見は正論かもしれない。
それでも…それでも…。

( ゚ω゚)『僕は納得いかないですおっ!!』

( ,,゚Д゚)『好きにしろ。俺も納得いってねぇんだ』

僕らは睨みあう。そして、同時に扉を飛び出しクーさんを探して駆け出した。

226 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 22:09:19.87 ID:E2RE4V3X0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(;*゚∀゚)『あ〜ぁ、行っちゃったよ…』

('A`)『ったく、しょーがねぇなぁ。あいつクーさんが行きそうな場所なんて分からねぇだろうに』

(主^ω^)『間違いなく、この街のどこかだと思いますお』

( ゚∀゚)『ほぉ。根拠は?』

(主^ω^)『この世界が【欠片】と相性がいいっていうのは先ほどお話しましたけど、
       特にこの街が、ずば抜けて相性がいいんだと思いますお。
       だから【欠片】も引き付けられる様にこの街に落ちたんだろうし、
       この街を出ようとするとなんらかの制御がかかって出られないと思いますお』

(´・ω・`)『ふむふむ。つまり、秋葉原・原宿・乙女ロードといった
      クーのお気に入りスポットは削除できるわけだね。ずいぶん絞られてきたぞ』

(*゚∀゚)『で、候補としては?』

(´・ω・`)『この店の他には、母校の【難杉高】・お気に入りの公園・事故にあった現場。
      こんなもんだと思う』

ショボン達が顔をつき合わせる様にして話し合っていると

ξ#゚听)ξ『…納得行かないわっ!!!!!!!』

突然ツンが大声をあげた。

231 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 22:12:08.61 ID:E2RE4V3X0
 (;*゚∀゚)『うわっ!! びっくりしたっ!!』

('A`)『ななななななななななんだ、突然っ!!』

その場にいた全員が一斉に彼女を見る。

ξ#゚听)ξ『さっきからクーさんクーさんクーさんクーさんクーさん…!!!!!
      あたしに喧嘩売ってるとしか思えないわっ!!
      5・6発殴ってやんなきゃ気がすまないっ!!』

( ゚∀゚)『…気の毒としか言えねぇな』

         ゴスッ!!

ξ#゚听)ξ『そこのブタっ!!』

(主^ω^)『……』

(^ω^主≡主^ω^)

σ(^ω^;主)『?』

ξ#゚听)ξ『あんたの他にブタがどこにいるのよっ!! あんた、クーさんがどの辺にいるか分かるんでしょっ!!』

(主;^ω^)『いや…この街は僕の【欠片】と相性が悪いらしくて』

ξ#゚听)ξ『殺されたくなかったら死ぬ気で探しなさいっ!!
      あいつは絶対にクーさんを探し出すはずだわっ!! 先回りするわよっ!!』

そう言うとツンは哀れな異邦人の顔面を鷲掴みにし、外に飛び出した。

234 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 22:13:57.29 ID:E2RE4V3X0
 (*゚∀゚)『…似たもの同士だねぇ』

(メ)∀゚)『で、お前らはどうするんだよ?』

右頬を腫らしたジョルジュが尋ねた。

(*゚ー゚)『ごめん…あたしはどうすればいいのか分からない…。
    ギコ君が言う事ももっともだけど
    でも、全面的に賛成できない気持ちなの
    だからギコ君を探して…もっとギコ君の気持ちを話してもらおうと思う』

それを聞いたショボンは納得したかのように頷く。

(´・ω・`)『いや、その方がいいよ。ギコが言う事は正論かもしれないけど、
      正論が全て正しいわけじゃないし、ギコはとにかく口下手で誤解されやすいからね。
      ギコの事を頼むよ』

('A`)『途中で内藤やクーさんに会ったら連絡してくれ』

しぃは俯いていた顔を上げ、もう一度『ごめんね』と呟くと扉の外へ駆け出した。




236 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 22:15:33.21 ID:E2RE4V3X0
 (´・ω・`)『さてと。それじゃ僕も行こうかな』

ショボンは寄りかかっていた壁から、腰に勢いをつけて身を離す。

(*゚∀゚)『…? 一緒に探してくれないのかいっ?』

(´・ω・`)『すまない。彼女とは2人で話をしたくってね』

('A`)『ショボンさんが一緒に行ってくれれば力強かったのになぁ』

口ではそう言いつつもツーとドクオが無理には誘おうとしないのは、
ショボンの表情に決意めいたものを見出したからだろう。

(´・ω・`)『…ジョルジュはどうするんだい?』

( ゚∀゚)『あぁ。俺様には俺様の考えってヤツがあるんでな』

(´・ω・`)『分かった。それじゃ、また後でね』

3人はジョルジュに別れを告げると扉の外に出る。
それを見届けたジョルジュは一人バースペースに向かうと、
冷蔵庫から缶ビールを取り出した。

( ゚∀゚)『さて…俺様はどうするかね』

プルトップを空けながら呟く。
誰よりも確実にクーを見つけるためにはどうするべきか?

ジョルジュはソファに体を埋めると、思考を開始した。

239 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 22:17:09.38 ID:E2RE4V3X0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー('A`)(*゚∀゚)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 

ぼべべべべべべべべべべべべべべべべべ。

そうとしか形容できない不気味な音を立てながら俺はスクーターを走らせる。
最近ツーがイヨゥから安く買い上げた代物だが、
随分と長く乗ってきたものなのか、走らせる度に『壊れるんじゃないだろうか?』
と俺を不安にさせる昨日が初期設定されていたのには閉口した。

イヨゥはかなり頑張って稼いでいるから、スクーターなんてすぐに買い換えられると思うのだが…
借金でもあるのだろうか?
そんな意味のない事を考えてしまう。

(*゚∀゚)『ほら!! もっと急いで!!
     今何キロ出てるの!? …って20キロ!?
     何やってんだい!! 日が暮れちまうよっ!!』

(;'A`)『いや、元々コレ一人乗りだから。2人乗りってのが無理があるんじゃないか?
    そもそもコレ、法律違反だから』

俺は荷台に無理矢理座ってヘルメットをペシペシ叩いているツーに答えた。

(*゚∀゚)『何言ってんだい!! 男なら法律に縛られるより、法律を作る立場になることを考えなっ!!
     あ、そのボタンなんだい!? もしかして押したら翼がにょろ〜んって出るとか…?』

('A`)『どっかのドクスペと一緒にするな。
    これは只のクラクションだ』

(*゚∀゚)『…あ、そーなんだ』

246 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 22:19:16.90 ID:E2RE4V3X0
 ('A`)『…それにしてもツンも可哀相になぁ』

俺は誰かに聞かせようとするでもなく口にする。

(*゚∀゚)『ん? 何がだい?』

当然耳ざとくそれを聞いたツーが尋ねてきた。

('A`)『…内藤の事だよ。
    あいつ、クーさんが生きてる時も死んじまってからもクーさんにベッタリだっただろ?
    俺、ツンとは幼馴染だったからさ。
    分かるんだよなぁ…表面じゃただキレてるようにしか見えないけど、
    誰にも見せない部分で悲しんでる。
    それが見てて可哀相でなぁ』

言いながら俺は更にスピードを落とし、フラフラしながらカーブを曲がる。

(*゚∀゚)『そんな事わたしだって気付いてたさっ!!
     それにドッ君とブーちゃんは親友なんだろっ!!
     だったら何で言ってやらないのさっ!!』

カーブを曲がりきった俺はゆっくりと速度をあげる。

('A`)『…んな事はとっくに言ってやったよ』

(*゚∀゚)『……そしたら何だって?』

249 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 22:20:36.74 ID:E2RE4V3X0
 ('A`)『………』

言ってもいいのだろうか?
少なくとも内藤は俺が誰にも言わないと信じて俺に話してきたはずだ。

(*゚∀゚)『ちょっと、ドッ君!! 聞いてるのかいっ!!』

いや。
俺はツーに話したかった。
聞いて欲しかった。
話すべきだと思ったからこそ、こんな事を言い出したのだろう。

俺は再びボロスクーターを減速させ、コンビニの駐車場に駐車した。
完全に駐車したのを見計らってツーが荷台から飛び降りる。
俺はヘルメットの風除けを上げると、煙草をくわえ火をつけた。

(*゚∀゚)『…そんなにマジメな話なのかい?』

俺は答える代わりに肺に溜め込んだ煙を吐き出す。

('A`)『…あいつにとって俺達は本当の家族だったんだよ』

そう言って俺は再び煙草をくわえた。





250 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 22:21:48.55 ID:E2RE4V3X0
(*゚∀゚)『…なんだい、それ?』

('A`)『うん。本当はあまり人に話すべき話じゃないんだけどさ』

俺はそう前置きして続ける。

('A`)『…あいつがバーボンに入社する前。
    すげー駄目人間だったのは知ってるだろ?』

(*゚∀゚)『うん。なんとなく聞いた記憶があるさ』

('A`)『あいつ、すげー甘やかされて育ったらしいんだわ。
    で、自分だけが特別…つーか、世界は自分を中心に回ってる。
    自分の考えどおりに物事が進まないのは間違ってるくらいの思考の持ち主だったらしい』

(*゚∀゚)『…そりゃ…まぁ…なんつーか…捻じ曲がってるねぇ』

ツーは小さなリュックをガサゴソと漁ると、小分けのチョコレートを取り出し口に放り込んだ。

('A`)『そんな性格だから、どこに行っても心の底を打ち明けられる友達なんか出来ない。
    同じ様な負け犬だけが集まる場所に逃げ込んで…
    誰かと話しながらずっと孤独を感じてたって…あいつは言ってたよ』

(*゚∀゚)『ご両親は…何も言わなかったのかねぇ』

('A`)『…甘やかされてたって言っただろ。
    いつか内藤が自分から立ち上がるまで見守るつもりだったんだろうな』


251 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 22:22:52.32 ID:E2RE4V3X0
 俺は備え付けの灰皿に煙草を放り込むと、すぐ2本目の煙草をくしゃくしゃの箱から取り出した。
ツーはチョコレートをかじりながら苦々しい顔をしている。

(*゚∀゚)『…あたしなら嫌だなぁ、そんなぬるま湯みたいな生活。
     生きてる実感がないって言うか…
     もっと【めがっさ!!】【にょろ〜ん】って生きたいと思うさっ!!』

俺は頷く。

('A`)『うん。あいつも心の底ではそれを望んでいたんだと思う。
    でも、そんな環境でも居心地が良ければ居ついちまうもんなのかもな。
    なにせ周りには自分の味方しかいないんだ。
    表面上じゃ居心地良かっただろうぜ』

俺が黙って手を差し出すと、その上に包装紙の解かれたチョコレートが乗せられる。

('A`)『丁度いい湯加減の底なし沼ってあいつは表現してたよ』

チョコを口に放り込み、言いながら俺は顔をしかめた。
その顔がよほどの物だったのか、ツーが心配そうに言う。

(*゚∀゚)『…ドッ君、大丈夫? 無理して話さなくてもいいんだよ』

違う。
違うんだ。
確かに話していて気持ちのいい話じゃない。
でも、話さなくてはいけない。
それより、むしろ…。



256 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 22:24:18.00 ID:E2RE4V3X0
(;'A`)『苦いよ、コレ!! 人間の食べるもんじゃないよ!!
    何これ!? 俺に何食べさせたの!?』

(*゚∀゚)『…カカオ120%』

(;'A`)『やばいよコレ!! 毒だよ!!』

(*゚∀゚)『…はまると癖になる味なんだけどなぁ』

俺は口直しに煙草を思い切り吸い込む。
うん。
口の中で苦味が倍増して痺れる感じで最悪だ。

('A`)『…まぁ、でもここまで聞けばあいつにとって俺達が本当の家族だって理由がわかっただろ?』

ツーはそれを聞いて頭の上に大きな電球が輝いたような顔をした。

(*゚∀゚)『あ…そうか…』

そう。
内藤にとって俺達は本当の家族だった。
自分のエゴをぶつけ合い、
喧嘩し、
心の底から相手の事を思いやれる。
あいつが求めながらも手に入れられなかった絆で結ばれていたんだ。



259 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 22:26:55.69 ID:E2RE4V3X0
 ('A`)『あの時は偶然クーさんが死んじまったけど、
     俺達の誰が死んでもあいつは同じ位悲しんだと思う。
     ただ、ずっと自分を見守ってくれていた人が死んだショックは大きかったんだろうぜ』

(*゚∀゚)『…だからあの時あんなに取り乱したのかねぇ…』

そうかもしれない。
そうじゃないかもしれない。
真相はあいつにしか分からないけど、俺はきっとそうだろうと思う。

(*゚∀゚)『……あたしらは、ブーちゃんにとってそこまで大切な再会を駄目にしちゃったのかね』

ツーが珍しく肩を落とす。
俺は答える代わりにスクーターにまたがり、エンジンキーをひねった。

('A`)『あぁ。だからってここで立ち止まるわけにはいかねぇ。
    俺達が出来る罪滅ぼしは1分でも早くクーさんを見つけ出してやる事だけだ』

ツーは顔を上げると俺の背に体を押し付けるように荷台にまたがる。

ぼべべべべべべべべべべべべべべべべべ。

不気味な振動音と共にスクーターは加速を始めた。
目指すはクーさんが好きだったという公園。
速く。1分1秒でも速く。
俺は運転に全神経を集中させる。

だから、俺はコンビニの側の電柱の上に翼を持った女性が立っていた事も
彼女が俺達のはるか上空を飛び去っていった事も気がつかなかった。


261 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 22:27:57.19 ID:E2RE4V3X0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(*゚ー゚)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(*゚ー゚)『はぁ…はぁ…はぁ…』

わたしは今、全力で走っている。
腕が。足が。なにより胸が重い。
ツン姉みたいにぺたんこだったら走りやすいんだろうなぁ…と、
本人が聞いたら激怒しそうな嫉妬が頭をよぎる。
走ってる時ってどうして余計な事が頭に浮かぶんだろう。
そんな余計な考えがまた頭に浮かぶ。
今は少しでも速く足を動かさなきゃいけないのに…。

(*゚ー゚)『はぁ…もぉ…駄目…限界…』

わたしの足はそんな考えが浮かんだ瞬間、ついに止まってしまった。

(*゚ー゚)『…何やってんだろ、わたし…目的地も決まってないのに…』

わたしはブロック塀に寄りかかると、大きく酸素を吸い込み呼吸を整えようとする。
わたしがこっちに走っている理由は1つ。
この方向にはクーさんが住んでいたマンション、好きだったという公園、事故現場が集中している。
別の方向に走るよりギコ君を見つけ出せる可能性が高いと思ったからだ。

(*゚ー゚)『…でも…こんなにあちこちマンションだらけで…見つかるわけないよ』

口の中が粘りつく唾液で気持ち悪い。
わたしは更に酸素を取り入れやすくしようと顔を空に向け・・・・・・

それを見つけた。

265 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 22:29:29.69 ID:E2RE4V3X0
 (*゚ー゚)『…鳥?』

青い空を気持ちよさげに駆ける真っ白い一羽の鳥…。
違う!!
あれは鳥なんかじゃない!!
ワンピースを着た鳥なんかいるはずがない!!

(*゚ー゚)『…クーさん…本当に生き返ったんだ…』

わたしは溢れそうになる涙を堪え、動かない両足に気合を入れる。

(*゚ー゚)『大丈夫…まだ走れる…』

クーさんが向かう先にギコ君がいるかどうかはまだ分からない。
でも、クーさんと合流する事は決して無意味じゃない。

(*゚ー゚)『クーさん…待って…』

わたしは声にならない声をあげながら大空を羽ばたく天使を追う。
不思議と、みんなに連絡する事を忘れてしまっていた。


266 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 22:30:32.46 ID:E2RE4V3X0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー( ,,゚Д゚)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

( ,,゚Д゚)『ここで降ろしてくれ』

運転手『わかりやしたwwwwww1020円になりやすwwwサーセンwww』

( ,,゚Д゚)『…高いな。遠回りしたんじゃねぇだろうな?』

運転手『んな事ないっすwwwでもお客さん物好きッスねwwwこんな空き地に向かってくれなんてwww』

( ,,゚Д゚)『黙れ』

運転手『サーセンwww』

俺はお喋りな運転手のタクシーを降りると、その空き地の片隅に向かった。
元々マンション建設予定地だったそこは、死亡事故現場という縁起の悪い場所のせいか建設は見送り。
今ではただの空き地になっている。

無法者によってゴミが投げ捨てられ近隣住民は随分迷惑しているそうだが、
その一角だけは今でも綺麗に掃除され
ポツンと立った石の前に花や酒のミニボトルが供えられていた。

俺は手にした花をそっと置くと膝をつき、その事故の犠牲になった唯一の人物の冥福を祈る。
どれほどの時間そうしていただろうか。
背後に誰かが立つのが分かった。

『不思議な物だな。自分の死亡現場に花を供えてもらうシーンを見るというのは』

俺は自分の直感が正しかった事を確信した。


267 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 22:31:59.97 ID:E2RE4V3X0
 ( ,,゚Д゚)『…本当に生き返りやがったんだな』

俺はゆっくりと立ち上がり振り向く。

黒すぎて緑がかった長い髪。
光を反射して紫色に輝く瞳。
御丁寧に服装まであの頃と同じやたらヒラヒラしたの着てやがる。
あの頃と違う事といえば、背中につけた羽が玩具じゃなくて本物だって事くらいか。

懐かしい。
全く懐かしすぎて反吐が出そうだ。

川 ゚ -゚)『…全然驚かないんだな』

俺は反吐の代わりに唾を吐き出す。

( ,,゚Д゚)『内藤達から話は聞いていたからな。
     それより、内藤からはクソガキになっちまったと聞いたが?』

川 ゚ ー゚)『あの時のわたしは何も分かっていなかったからな。混乱もしていた』

クーはふふ…と笑い、言葉を続ける。

川 ゚ ー゚)『内藤の部屋を飛び出て…何度も自分に問いかけたよ。
     何故、わたしは生き返ったのか…とね。
     そうしたら【欠片】は答えてくれた。
     夢中になって【欠片】と語り合ったよ。
     今では【欠片】の力の全てを知っているし、使いこなす事が出来る』


270 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 22:35:07.71 ID:E2RE4V3X0
 ( ,,゚Д゚)『【欠片】と語った…だと?』

答えつつ身構える。
アドレナリンが全身から噴出すのが分かった。

川 ゚ ー゚)『そう。今のわたしはいわゆるOVER ZENITH状態というわけだ』

( ,,゚Д゚)『…なら、俺が何をしようとしているか…分かるよな?』

クーの顔が真剣なそれに変わった。

川 ゚ -゚)『あぁ。だが、わたしはまだ死にたくはない』

その言葉が終わるか終わらないかのうちに俺は跳びかかった。
クーは大きくバックステップして身をかわす。

川 ゚ -゚)『…何故、お前はそこまでわたしの死を望む?』

( ,,゚Д゚)『……お前なら分かるんじゃねぇか?』

川 ゚ -゚)『分かる。だが、ギコ。お前の口から聞かせて欲しい』

…ちっ。
どの道ここからではクーの所まで一跳びでは届きそうにない。
俺は構えを解くと、クーに向き直った。

( ,,゚Д゚)『…死んだ人間が生き返る。そんな事はあってはいけねぇんだ』



273 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 22:37:05.74 ID:E2RE4V3X0
 ( ,,゚Д゚)『人生ってのはな…一度っきりだから意味があるんだよ』

俺はついさっき内藤に言った言葉をもう一度口にする。

( ,,゚Д゚)『…人はいつか必ず死ぬ。それは避けられねぇ。
     だからこそ人はその人生を輝かせる為に必死になる。
     一期一会…人との絆を大切にする。
     二度と会えない人との思い出を守り、
     自分がくたばっても誰かの心に自分が残るように…命がけで生きようとする』

川 ゚ -゚)『……』

いつしか目の前が滲んできた。俺はそれを無視して続ける。

( ,,;Д;)『…そうやって…肉体は滅んでも心の中の真実の絆は永遠に続いていく…
     それこそが生きる意味…生きる全てだゴルァ』

頬をつたう涙が地面に落ち、染みを作った。

( ,,;Д;)『…お前が死んじまった時、悲しかったぞゴルァ…辛かったぞゴルァ…生き返ったと聞いて嬉しかったぞゴルァ…』

川 ゚ -゚)『……』

( ,,;Д;)『…でも…お前はすぐにまた消えちまう運命なんだゴルァ。
     そうしたら…残された俺達はどうやって生きればいい?
     また奇跡を待って…二度と起きない奇跡を信じて…
     心の中の本当のお前を否定して…妄想の中のお前を信じて…そんな人生に何の意味がある!!
     お前との思い出を…美しい思い出を壊したくねぇんだよ!!』

俺の叫びが2人きりの空き地に響きわたった。

278 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 22:39:46.50 ID:E2RE4V3X0
 川 ゚ ー゚)『…ありがとう。お前の気持ちはよく分かった』

( ,,;Д;)『ゴルァ?』

川 ゚ ー゚)『【欠片】の力で知っていたよ。どんなに暑い日も寒い日も。
     どんなに疲れていてもお前はここを綺麗にしてくれていたんだな』

( ,,;Д;)『…あぁ。ここに来ればお前に会える気がして…毎日毎日話しかけてたぞゴルァ』

川 ゚ ー゚)『それも知っている。嬉しかったよ。わたしが死んでもお前は変わらないでいてくれた。
     偏屈なトコも。頑固なトコも。口下手なトコも。昔どおりだ』

( ,,;Д;)『…!! だったら!!』

川 ゚ -゚)『それでもわたしにはやらねばならない事がある!!
     それを成し遂げるまでは死にたくないっ!!』

俺はその言葉を聞いてコートの袖で涙を拭う。
滲んでいた視界が一気にクリアになった。

川 ゚ -゚)『わたしは死ねないっ!! 皆の心の中のわたしの…』

( ,,゚Д゚)『お前を殺すっ!! 皆の心の中のお前の…』

川 ゚ -゚)( ,,゚Д゚)『 思 い 出 を … 絆 を 守 る 為 に っ ! ! 』

一陣の風が吹く。
それが戦いの合図になった。


281 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 22:41:22.47 ID:E2RE4V3X0
 川 ゚ -゚)『……接続…』

クーが呟く。同時に折りたたまれていた翼が大きく開いた。
その体が白く輝く。
光は突風となり、枯葉とともに俺を吹き飛ばそうと襲いかかってきた。

川 ゚ -゚)『……アクセス…』

その言葉と共にクーの右手に全身を包み込んでいた光が集合。
神々しい輝きの剣となった。

( ,,゚Д゚)『…これが…DATの力かゴルァ…』

初めて体験する圧倒的なプレッシャーに足が震えそうになる。
なるほど。
【欠片】とは言え、1つの世界を構成していただけの事はあるってか。
しかし俺も引くわけにはいかねぇ。

両腕を十字に組んで顔面をガードする。
暴力的なまでの風に逆らい、俺は地を蹴った。

狙いはこの事件の全ての元凶。

クーの背中で輝く翼……DATの【欠片】だ。

 



286 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 22:42:29.97 ID:E2RE4V3X0
 川 ゚ -゚)『剣状光!!』

( ,,゚Д゚)『ゴルァ!!』

俺が駆け出すと同時にクーは光の剣を下段に構え突っ込んできた。
すれ違いざま。俺は光の剣をかわしつつ、その翼めがけて渾身の一撃を叩き込む。
クーは俺の拳を避けつつ、光の剣を切り上げる。

交差は一瞬。

俺は疾走の勢いを殺すと同時に、背後からの追撃を警戒して
二度三度地面を転がって立ち上がる。

胸元にかすかな痛み。
しかし、俺の拳も確実にその翼を捕らえていた。
純白の羽が数枚。俺の体の周りを舞い落ちる。

振り向くと、クーは俺に背を向けて大地に膝をついていた。

女に手を上げるのは好みではないが、今のクー相手に手を抜けるほどの余裕は無い。

( ,,゚Д゚)『まだまだだぞゴルァ!!』

俺は叫び、剥き出しの標的目掛けて飛びかかる。

その攻撃をバク転の要領でかわし、クーは上空に舞い上がった。


291 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 22:44:12.67 ID:E2RE4V3X0
 ( ,,゚Д゚)『降りてきやがれ!! 卑怯だぞゴルァ!!』

俺は手の届かない上空にいるクーに無駄と知りつつ叫んだ。
しかしクーは冷ややかに俺を見つめるのみ。

川 ゚ -゚)『戦いは終わった。すでに君の勝ちは無い。
     いや。剣状光に目を奪われていた時から結果は決まっていた』

そう言って左手にした茶色い皮で出来た何かを見せ付ける。
あれは…? 俺はそれの正体に気付き、胸の裏ポケットをまさぐる。やっぱりない。

( ,,゚Д゚)『…俺の財布?』

何をする気だ? 全く理解できねぇ。
俺はその意表をついたクーの行動に一瞬戦意を削がれた。

川 ゚ ー゚)『ふっ…。これでわたしの勝ちは完璧なものとなる』

クーは言うやいなや、俺の財布の中身を空から撒き散らし始めた。
財布を奪い金を撒き散らす事で俺の集中力をそらす作戦か…いや、違う。
クーがそんな陳腐な策をとるわけがねぇ。

(*( ,,゚Д゚)『てめぇ!! 何しやがる!!』

川 ゚ ー゚)『はははははは。この財布の××××××は108枚まであるぞ』

その途端。
背後から俺を襲う新たな殺意のオーラ。
あぁ。そういう事か。
俺はクーの目論見と自身の敗北を理解した。

297 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 22:46:35.48 ID:E2RE4V3X0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(*゚ー゚)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

涙を流しながら絶叫するギコ君。
その姿を見たわたしは、ただ2人を見守る事しか出来なかった。

突然の風を合図に話は終わり、戦いが始まる。
ギコ君がその涙を拭い、クーさんの右手に光の剣が発動した。

(*゚ー゚)『!!』

すれ違いざまに一撃を叩き込もうとする2人。
互いに身をかわし、ギコ君の続いての攻撃を避けるやクーさんは上空に飛び上がる。

(*゚ー゚)『…あれって?』

クーさんが取り出したもの。
それは確かに見覚えのある…絶対に触られせてもらえないギコ君のお財布。
クーさんはニヤリと笑うと、その中身を宙にばら撒き始めた。

(;*゚ー゚)『…何やってんだか…』

その時、風に乗って数枚の紙幣とレシート。そして【それ】がわたしの足元に舞い落ちた。
わたしは【それ】を拾い上げる。
【それ】にはこう書いてあった。







303 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 22:47:54.83 ID:E2RE4V3X0
    【おっぱい女学園 あけみ ギコちゃんまた遊びに来てね(はぁと】

    【破廉恥超特急 みどり 090−×××・・・・・・・】

    【セクシーメイド喫茶 ご主人様。ちかは貴方の奴隷です】

(* ー )『……』

キレタ…キレチマッタヨ…

わたしは足を前に進める。
この戦いに終止符を打つ為に。

そして、敗者に鉄槌を下す為に。

クーさんは楽しそうに財布の中身を宙にまく。
ありがとう、クーさん。
ギコ君の不審な行動の意味がよ〜く分かったわ。

大事なお話の途中で悪いけど、ちょっとギコ君借りるね。







川 ゚ ー゚)『はははははは。この財布の風俗嬢の名刺は108枚まであるぞ』


310 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 22:50:23.05 ID:E2RE4V3X0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー川 ゚ -゚)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

戦いは終わった。

川 ゚ -゚)『人の夢と書いて儚い…か。虚しい物だな』

         し、しぃ!?いつからココに!?

どこかで聞いた台詞を口にしながら、わたしは闘いが終わった後の冷たい風を身に受ける。

         ちょっと待て!! 今はそんな事言ってる場合じゃ…!!

ギコの気持ちは分からないわけではないし、少し嬉しくもあった。
だが、わたしはまだやる事がある。死ぬわけにはいかない。

         うるさいうるさいうるさい!!

川 ゚ -゚)『さらばだ、ギコ。この身があるうちにもう一度会いたいな』

ありがとう。   や、やめ…落ち着け…ハニャーーーーーーーーーン!!

聞こえただろうか?
最後にそう投げかけ、騒々しいBGMを背にわたしは翼を羽ばたかせた。





         (#*゚ー゚)『10回殺してやるーーーーーーーっ!!!!!!!』

316 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 22:52:46.38 ID:E2RE4V3X0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(*゚ー゚)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(#*゚ー゚)『…はぁ…はぁ…はぁ……』

戦いは終わった。
足元にはボロ雑巾のようになったギコ君が転がっている。

(*゚ー゚)『風俗と書いて浮気。思い知ってね…』

呟いてからわたしは空を見上げる。
そこにはもうクーさんの姿は無い。
それを確認してからわたしはその場に座り込み、ギコ君の頭を胸に抱え込んだ。

あの時。ギコ君の背後に立った瞬間。
わたしには何故かクーさんの考えが理解できた。
クーさんが残された時間で何をしようとしているのか? 心の中に流れ込んできた。
だから、こんな形だけどクーさんの味方になってギコ君を止めた。

(*゚ー゚)『…ごめんね、ギコ君』

そう呟いて愛しい人の頭を強く抱きしめる。

(*;ー;)『最初から全部聞いてたんだ…。
    でも…何でも一人で抱え込んで解決しようとしないで。
    2人で乗り越えよう…それも…私達の絆でしょ?』

         すまなかったぞゴルァ。

胸の中でギコ君が小さな。本当に小さな声で言った。
でも…お願いだから風俗は控えてね。                                  コロスヨ

324 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 22:54:21.98 ID:E2RE4V3X0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(´・ω・`)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(´・ω・`)『ふぅ』

僕は小さく溜息をついて目の前の金網を握り締めた。
金網の向こうのグラウンドでは体操着姿の女子生徒がバレーボールを楽しんでいる。

(´・ω・`)『……ハズレだったか』

そう呟いて缶コーヒーを一口。

僕は今、クーの母校である【難杉高】に来ていた。
学校の周囲をグルリと一周してみたのだけれど、クーは影も形も見えなかった。
僕なりに確信を持ってココに来たのだけれど……。

いや。
冷静に考えればココは僕とクーが初めて出会った場所だ。
個人的な思い入れが強すぎたのかもしれない。
僕はもう一度考えを整理しなおす。

……。

(´・ω・`)『やっぱりここしか考えられないや。もう少しここで待ってみよう。
      行き違いになった可能性だってあるしね』

そう結論を出した僕。
その時…背後から僕に声をかける者がいた。



327 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 22:55:40.87 ID:E2RE4V3X0
 竹刀マッチョ『君。こんなトコで何をしているのかね?』

(´・ω・`)『ウホッ』

竹刀マッチョ『ウホッじゃねーよ。質問に答えなさい』

その、いかにもタフガイな感じのする男は威嚇するように竹刀をもてあそびだした。

(;´・ω・)『あの…人を探しているんです』

竹刀マッチョ『あ? ここの生徒?』

(;´・ω・)『いえ…違いますけど…』

竹刀マッチョ『じゃ、どっか行ってくれませんかね?
       最近この辺で変質者が多くてね。生徒が脅えてるんだよ』

(;´・ω・)『…僕、変質者に見えますか?』

竹刀マッチョ『見えるね』

(´・ω・`)『…ふぅ』

僕はもう一度溜息をつくと、その場を後にした。



329 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 22:56:48.70 ID:E2RE4V3X0
 (´・ω・`)『難しいもんだね』

【難杉高】そばの公園のベンチで僕は禁煙パイプを揺らしている。
人探しがこんなに大変とは思わなかった。
どうやら僕には探偵は務まりそうにない。

(´・ω・`)『そう言えば…』

僕はハッと気がつく。どうしてこんな簡単なことに気がつかなかったのだろう?
全く。自分がどうかしていたとしか思えない。
厨房で培った冷静さもこんな時には無意味かと思うと悲しくなる。

(´・ω・`)『ここは内藤君にそっくりな彼を見つけた公園じゃないか!!』

つまり、いい男専用ベンチがある公園でもある。

(´・ω・`)『もしかして、学校の人はいい男さんを変質者と勘違いしたのかも!!
      あの人誤解されやすいからなぁ…教えてあげればもう少し近辺を探索できるかもしれない』

僕はそう考えてベンチから腰を上げようとして


突然目隠しをされた。

(´つω⊂`)『ウ、ウホッ!?』

高くも低くもない。美しく響く声で尋ねられる。

???『だ〜れだ?』

334 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 22:58:21.50 ID:E2RE4V3X0
 (´つω⊂`)『……!!』

懐かしい。
僕は思い出していた。
そう言えばあの頃も、こうしてここで毎日待ち合わせたっけ。

仕事。学校。夢。ファッション。最近出来たケーキ屋。車。
話題は何でもよかった。
何時間も語り合った。

完全なアルコール中毒だった僕が禁酒するか?
ベッドを共にするか?
そんな賭けをして深夜に飲み比べ対決をしたこともあったっけ。
結局負けたけど。

あの時、すでに僕は恋に落ちていたんだ。

半開きの口から禁煙パイプが落ちた。
その声を聞いただけで僕の瞳からは涙が溢れる。
その柔らかい手のひらを濡らしてしまうのは本当に申し訳なかった。

僕は麻痺したように動かない舌を必死に動かし、ようやく言葉を口にする。

(´つω⊂`)『あ……』

???『……あ?』


(´つω⊂`)『阿部さん?』


340 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:01:18.75 ID:E2RE4V3X0
         違 う ! ! ! ! !


その怒声とともに僕の頭は強引に背後に向けられた。
そこにはあの頃よりも成長して大人っぽくなっている…
見慣れた。
でもずっと会いたかった美しい女性の顔。 

川 ゚ ー゚)『……このやり取りも懐かしいな』

(´・ω・`)『違うのはお互いに年を取った事と、僕の手に酒瓶が握られてない事だけだ』

川 ゚ ー゚)『代わりに裏ポケットに入ってるみたいだがな。中身は…ローゼス?』

(´・ω・`)『参ったな。ギコから連絡は受けていたけど本当に全てお見通しなんだね』

僕は降参とばかりにポケットタンブラーを取り出し、あの頃と同じようにクーに手渡す。
クーはキャップをひねると、それを一息に飲み干した。

川 ゚ ー゚)『美味い。まさに命の水【スピリッツ】だな』

僕らはまじまじとお互いの顔を見つめる。

クーは満面の笑みで。
僕は涙でくしゃくしゃになった顔で笑った。

342 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:02:55.31 ID:E2RE4V3X0
 ひとしきり笑いあってから僕らは並んでベンチに腰を下ろした。
クーは生前に一緒に原宿に買いに行ったお気に入りのゴスロリ風メイド服。
背中ではどう見ても玩具の羽が意思を持つように揺れている。
ただその服の色は好んで購入していた黒ではなく、
かすかに光沢のある白でそれだけが少し残念だった。

川 ゚ -゚)『すまないな。お前が買ってくれた服を着たかったのだが、
     【欠片】が天使のイメージにそぐわないと言って白以外認めてくれなかったのだ』

(;´・ω・)『え? え? 何で分かっちゃうの!?』

思わず口にしてから気付く。

(´・ω・`)『そうか…君には隠し事は出来ないんだったね』

川 ゚ -゚)『あぁ。ある程度接近する必要はあるがな。正直、お前の心の内を知った時戸惑ったぞ。
     こんな状況でなければ何日か時間が欲しかったほどだ』

(´・ω・`)『うん。ごめん』

川 ゚ -゚)『謝るな。わたしだって嫌なら姿を見せたりせんさ』

(´・ω・`)『…うん』

その言葉を最後に僕らは続く言葉を失った。
僕はそよ風に揺れる花をなんとなく見つめる。
僕らの手はどちらから求めるわけでもなく固くつながれていた。

344 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:04:30.28 ID:E2RE4V3X0
 じろじろ。ひそひそ。

そんな効果音が聞こえてきそうなほど、
目の前を歩く人達は僕らを物珍しそうに眺めつつ去っていく。

(´・ω・`)『…なんか僕達注目されてるね』

川 ゚ -゚)『あぁ。珍獣になった気分だ』

(´・ω・`)『珍しいってのは否定しないよ。ここはBLの聖地だからね。
      男女が並んで座ってるなんて一年に一度あるかないかだよ』

川 ゚ -゚)『いや、下っ腹が弛んできた中年男と美女の組み合わせが珍しいのだろう』

(;´・ω・)『ぼ、僕はまだ中年じゃない!! それに自分で美女とか言っちゃうのはどうかと思うよ』

僕の必死の否定にクーは楽しそうに声をあげて笑い出す。
それが嬉しくて僕も釣られて笑い出した。

しばらくの沈黙を忘れるように笑う僕達。
しかし、やがてそれはまた沈黙に変わった。

川 ゚ -゚)『…どうしてだろう。あの頃みたいに笑えないな』

(´・ω・`)『…うん。君が死んで落ち込んでる時…ギコに言われた言葉を思い出したよ』

川 ゚ -゚)『……』

(´・ω・`)『人生は一期一会。過ぎ去った時は戻らない。
      後悔したくなかったらそれだけは忘れるなって…ね』

345 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:05:31.49 ID:E2RE4V3X0

 川 ゚ -゚)『…重い…重い言葉だな』

(´・ω・`)『…うん。ギコは親父さんのお店を乗っ取られて追い出されて…。
      僕らと会うまでは相当荒れた生活だったみたいだからね。
      自分の経験から感じとった事も多いんだろうね』

僕は片手で禁煙パイプをクルクルと回しながら言う。

川 ゚ -゚)『そう…だな』

過ぎ去った時は戻らない。
彼女に想いを告げても、その想いが叶う事はない。
僕は留まる者で、彼女は明日にはこの世界を立ち去る者。
あの頃とは…何もかもが違いすぎている。
変わらないようで違いすぎているんだ。

それじゃ、また言葉に出さずに終えるのか?
そして、また明日【今日】言葉にしなかったことを後悔しながら生きるのか?

川 ゚ -゚)『ショボン!!』

僕は…僕はどうすればいい?
この後悔の連鎖を止める為には…どうすればいい?
いっそ、クーと同じ世界の住人になれば楽に

川 ゚ -゚)『ショボン!!』

叫ぶやいなや、クーは僕の首にしがみついた。


346 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:06:32.63 ID:E2RE4V3X0
 川 ゚ -゚)『バカな事を考えるな!! わたしは【欠片】を持っているんだぞ!!
      もし、万が一、【欠片】が君の願いに反応してしまったら…!!』

クーは強くしがみつき叫ぶ。僕も負けじと、その細い腰に両手を回し叫んだ。

(´;ω;`)『バカなのは十分承知さ!!』

そして、心の奥底に隠していた自責の念を曝け出す。

(´;ω;`)『僕は…!! あの時の内藤君の苦しみは…僕の苦しみだ!!
      あの日から何度も考えた…
      もし、僕が君に想いを打ち明けていたら…
      何があっても君を護ると言えていたのなら…
      君はもしかしたら死ななかったんじゃないかって…』

川 ; -;)『もしかしたらの…仮定の話にすぎないじゃないか…!!』

(´;ω;`)『それでも…僕は可能性を捨ててしまった…
      こんな終末が待っていると知っていたなら…どんな事をしてでも君を護ってみせたのに…
      あの時…生涯を懸けて君を護ると誓ったのに…
      それでも…時は戻らない…過ぎ去った時は戻らないんだ…』

川 ; -;)『…それならっ!!』

クーが翼を広げ、僕らを包み込む。

川 ; -;)『わたしが…君の願いを叶えてやるっ!!』

その翼が白く輝き、一瞬にして僕は光の濁流に押し流された。


350 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:07:56.50 ID:E2RE4V3X0
 (´・ω・`)『…いい気持ちだなぁ』

僕は今、光の中を流されている。

春に草原の木陰で昼寝しているような。

夏に母なる海に一人浮かんでいるような。

秋に紅葉降り注ぐ街道を歩いているような。

冬に雪を眺めながら程よく酔っているような。

それらを全て1つにしたような気分だ。

(´-ω-`)『…一生このままでいたい気分になるね』

そう言って僕はすぐそばにあった【モノ】に抱きつく。
柔らかくて…。
暖かくて…。
いい匂いがして…。
何かが鼻をくすぐる。

(´-ω-`)(…ここは本当に天国なのかなぁ)

そんな事を考えた瞬間

???『こぉのぉっ!! バカショボンっ!!!!!』

僕は罵声とともに地獄に叩き落された。


354 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:09:16.31 ID:E2RE4V3X0
 (;´・ω・)『痛っ!! な、なんだなんだ!?』

僕は尻餅をついて辺りを見渡す。
そこには、草原も海も街道も雪も存在しない。
あるのは見慣れたベンチ。大時計。誰も乗らない錆びたブランコ。

(;´・ω・)『ここは…』

間違いない。
毎日のようにクーと話しこんだ。さっきまでクーと抱き合っていた公園だ。

(;´・ω・)『…夢…だったのかな?』

俯き、地面を見つめる僕の視界に誰かの足が映った。
踵を潰したローファーと、明らかに校則違反の短いスカート。ルーズソックス。

???『…夢…ならよっぽど幸せな夢だったんだろうね』

(´・ω・`)『……』

僕はその足の持ち主の顔を見上げる。

o川*゚ー゚)o『女子高生と抱き合って夢を見られるなんて普通ないわよ。
      ほら。いつまで座り込んでるのよ!!』

懐かしい。
なんて懐かしいんだろう。
僕の前に立っていたのは…【難杉高】の制服を着た。
出合った頃の姿のクーだった。

356 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:10:43.86 ID:E2RE4V3X0
 (´・ω・`)『よいしょーーー』

僕はセーラー服姿のクーの手を借りて立ち上がった。
クーは艶やかな黒髪を大きなリボンでオサゲにしている。

o川*゚ー゚)o『あ〜あ。泥だらけ』

クーはそう言って僕の尻についた泥を叩き落とした。

(;´・ω・)『あの…ちょっと痛いんだけど』

o川#*゚ー゚)o『…痛くしてるのよっ!! もう2度とあんな事しないでよねっ!!』

これでお終いっ!!と言って最後に思い切り強く叩かれる。

(´・ω・`)『え…あんな事って?』

o川#*゚ー゚)o『…もう忘れたのっ!! バカショボンっ!!』

言うやいなや彼女は僕の鼻先にその幼さが残る顔をずいと近づける。
その柔らかい髪の毛が僕の頬を撫でた。

o川*゚ー゚)o『君、話してたら突然抱きついてきたんだよっ!! びっくりしたじゃないかっ!!』

(´・ω・`)『え…?』

僕は理解できないまでも何とか思考を整理しようとする。
でも…何だか…何かを思い出せそうな気がするのは何故だろう。

361 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:12:19.01 ID:E2RE4V3X0
 ペンキが剥がれかけたベンチに座るクーに促されながら僕は隣に座った。

o川*゚ー゚)o『さっきの話の続きだけど、勝負は0時スタートだからねっ!!
      遅刻しないでよ!!』

(´・ω・`)『勝負?』

o川*゚ー゚)o『…君、覚えてないのっ!!』

クーは『あちゃ〜』と言いながら手の平を額にあて、首を横に振る。

o川#*゚ー゚)o『飲み比べ勝負の事だよっ!! 負けた方が勝った方の言う事を何でも聞く。
      わたしが勝ったら君のアル中が治るまで完全禁酒してもらうからねっ!!』

あぁ、なるほど。
僕はその言葉で全てを思い出した。
デジャブを感じるのも当然。

あの時、クーは僕の願いを叶えてくれたんだ。

審判はギコが務めてくれるとか、お酒はあらまッチが準備してくれるとか
一人話し続けるクーを余所に僕は必死に当時の事を思い出す。






(´・ω・`)『…ここは…初めてクーとあった頃の…10年前のあの場所だ』

366 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:13:49.36 ID:E2RE4V3X0
 過ぎ去った時は戻らない。
戻らない筈だった。
でも、僕は戻ってきた。
戻してくれたんだ。
クーが。【欠片】の力で。

o川#*゚ー゚)o『…ちょっと!! 聞いてるのっ!!』

クーは僕の両頬を掴み、自分の方に強引に向かせる。
そう言えば、この勝負はクーが何度も禁酒の約束を破る僕を心配して企画考案したものだった。
口調や行動に若さゆえの勢いこそあるが、
仲間思いな性格はこの時から変わっていなかった事を再確認して僕は嬉しくなる。

(´・ω・`)『そう言えば…』

【今】のクーの制服の背中にもおもちゃの羽が揺れている。
教師がうるさいってボヤいてたっけ。

o川*゚ー゚)o『む〜。で、ちゃんと罰ゲームは考えてきたんでしょうねっ!?』

(´・ω・`)『罰ゲーム?』

反射的に答えつつも、僕の脳裏には当時の苦々しい思い出が甦ってきた。



368 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:15:24.29 ID:E2RE4V3X0
 『僕と付き合ってほしい』

あの頃は…いや、この頃と言うべきなのだろうか?
とにかく、僕は何度もその言葉を口にしようとした。
でも、出来なかった。
酒に酔わなければ包丁も握れない料理人には彼女は眩しすぎたから。

この時も僕は言おうとしていたんだ。
言おうとして彼女を抱きしめた。

『僕が勝ったら僕と付き合ってほしい』って。

それなのに…いざとなって口から出た言葉は

『僕が勝ったらそこのラブホテルで一晩僕のモノになれ』だった。

クーは顔を真っ赤にし、散々文句を言いながらもそれを了解した。

勝負の結果。
僕は負けた。
正直に言うと、まだまだ体はアルコールを受け入れる余地はあった。
でも、未熟な体に青ざめながらも無理矢理酒を流し込んでいるクーを見ていると
このまま勝ったら自分が二度と立ち直れないような気がして…。
負けたフリをして寝てしまったんだった。

そして、僕は今。あの頃に戻ってきた。言うのは今しかない。
そう考えたから、クーは僕をこの時間に戻してくれたのだろう。
僕は決意を込めて口を開いた。

(´・ω・`)『クー。僕は君が好きだ』

369 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:17:11.23 ID:E2RE4V3X0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー( ゚∀゚)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーー舞台はバーボンハウスに戻る。

業務用冷蔵庫のモーター音が鳴り響くスタッフルームに俺様はいた。

【団長】と書かれた三角錐の置かれたスチール机に足を乗せ、
自慢の太い腕を組み目を閉じ座っている。
ときおり、安物の椅子が尻の下でミシミシと不平そうな声を上げた。

消滅する前にクーが必ず訪れる場所はどこか?
それはココ、バーボンハウスしかありえないと言うのが俺様が出した結論だった。

直情型の内藤・天然暴走女・ギコの3人はただ静かに待つなんてのは絶対に出来ないだろうし、
この3人が動けば自然にまな板娘・ドクオ・Fカップの3人も動く。
ショボンは本来どんな時も冷静沈着な男だが、過去にクーさんと何かあったのか
(まぁ、興味ねぇがな)今回ばかりは熱くなってたみてぇだ。

つまり、留守番役は自然と俺様の役目となるわけだ。

元々俺様は俺様自身と愛する家族の事。
それにスイーツの事しか興味がない。

そりゃ、クーさんが生き返ったと聞いた時は驚いたし嬉しかった。
会って礼の1つでも言いたいと思う。

だが、全てを忘れて走り出すまでに…?、と質問されればそうでもねぇ。
自分を見失わない程度に冷静さは保っているつもりだ。


374 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:19:09.71 ID:E2RE4V3X0
 ( ゚∀゚)『……ハイン…』

俺様の口から無意識に愛する妻の名が漏れ出す。

初めてハインと出会ったのは、俺様がまだパティシエ修行中のパリ。
彼女は科学者になる為に大学に通いながら小さなカフェでアルバイトをしていて、
偶然俺様がその店に入った時豊かな胸をピアノの鍵盤に乗せて休んでいた。

その表情。雰囲気。声。
全てに惚れこんだ。

『おっぱいよりも君が好き』

気付いた時には気持ちを伝えていた。

今では愛する彼女との間に9人もの宝物に恵まれ、騒がしいながらも幸せな毎日を送っている。
何一つ憂い事などない。

…いや。
1つだけある。

子供を産むたび、ハインの豊かな胸は小さくなっていった。
俺はおっぱいも好きだが、ハインの全てを愛しているから不平などない。

だが、【衝撃!! AAカップが一週間でDカップに!!】と書かれた広告を見て
溜息をついているハインを見ていると、何とかしてやりたいと思う。

その願いも【欠片】の力を借りれば簡単に叶える事が出来るだろう。

376 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:20:09.05 ID:E2RE4V3X0
 『あの素晴らしい乳をもう一度』

そんな事を考えながら、俺様はクーを待つ。

果報は寝て待て。
昔の人は本当に良い事を言った。
某団じゃあるまいし、足を棒にして捜すなんてのは意味がない。

ちょっと頭を回転させれば、果報なんてもんは葱と鍋背負って歩いてくるもんだ。

うはwww俺様天才wwwっうぇwwwww

…もし、この完璧すぎる作戦に穴があるとすればーーーーーー。

( ,,゚Д゚)『…こいつ、なにやってやがるんだ?』

(*゚ー゚)『…さぁ?』









俺様が待ちくたびれて寝てしまった事だけだろう。

( ゚∀゚)『むにゃむにゃ…ハイン…愛してるぜ…』

379 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:21:22.79 ID:E2RE4V3X0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(´・ω・`)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(´・ω・`)『クー。僕は君が好きだ』

決意を込めた僕の言葉は想像していたよりも
はるかにさらりと口から流れ出た。

自分が今どんな顔をしているか自分で見る事は出来ないけれど、
クーは目を点にして僕の顔を凝視している。
やがて、ようやく言葉の意味を脳が理解したのか一瞬にして赤面した。

o川*///)o『な、なに言ってんのよ!! バカショボン!!
     罰ゲームの内容を言いなさいって言ってるでしょ!!
     からかうの止めてよね!!』

(´・ω・`)『からかってなんかいないよ。それに飲み比べ勝負なんか意味がないんだ』

一度堰を切った僕の言葉は止まらない。

(´・ω・`)『君がそばにいてくれさえすれば、僕はいつだって禁酒してみせるよ。
      お酒に逃げる必要がないからね』

o川*///)o『でも…でも…』

クーは俯き、困った様につま先で足元の小石を突付いている。

(´・ω・`)『僕は本気だよ。君を護りたい。…君を襲う不幸から君を護りたいんだ』


380 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:22:47.70 ID:E2RE4V3X0
 o川*゚ー゚)o『で、でも、例えばさっ!!』

クーは思いもよらなかったであろう僕の告白に流されそうになる自分を
押し留めるように声を上げる。

o川*゚ー゚)o『例えばだよっ!! わたしが急な事故とか病気で死んじゃったらどうすんのさっ!!
      そしたら今度はわたしを護れなかった事を後悔するんだよっ!!』

(´・ω・`)『それでも、可能性を捨ててしまうよりはるかにマシだ』

o川*゚ー゚)o『わ、わたしおばけになって出てくるかもよっ!!
      枕元に立って毎晩お皿数えるかもよっ!!』

(´・ω・`)『それでも構わない。それならおばけの君を愛してみせる』

o川*゚ー゚)o『ででで、出切るワケないじゃない!! おばけと人間じゃ立場が違いすぎるよ!!』

クーは緊張しているのか回らない舌を必死に動かし、荒唐無稽な反論をしてきた。

(´・ω・`)『人が誰かを愛するのに立場なんかクソ喰らえだ』

僕はクーの両肩を掴み、真正面からその紫水晶色の瞳を見据えて言った。

( `・ω・)『例え、君が幽霊でも幻でも関係ない。                                ('A` )
      例え、明日には二度と会えなくなる運命だとしても関係ない。                  (゚∀゚*)
      クー。僕は君が好きだ。
      この想いだけは伝えなければいけないんだ』


386 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:25:33.36 ID:E2RE4V3X0
( ´・ω・)『……』                               ('A` )(゚∀゚*)

(´つω⊂)ゴシゴシ

( ´・ω・)『……』                               ('A`*)(゚∀゚*)

              ねぇ、クー。

o川*゚ー゚)o『な、なによバカショボン!!』

              僕、目がおかしくなっちゃったのかなぁ。幻覚が見えるんだ。

僕の言葉にクーは背後を振り返る。そこに頬を赤らめる2人の姿を認めるとぷっと吹き出した。

o川*゚ー゚)o『あ〜ぁ、バレちゃったか』

悪戯を見つかった子供のようにペロリと舌を出すと、クーは一歩僕から下がり離れる。
同時に背中のおもちゃの羽が白鳥のような翼に変わり、その場で身を翻すと
彼女の姿はルーズソックスの女子高生から純白のメイド服姿に【戻った】。

( ´・ω・)『…クー』

川 ゚ -゚)『言いたい事は分かるが…なんだ、ショボン』

( ´・ω・)『…時間を戻してくれたんじゃなかったの?』

僕の問いにクーは照れくさそうに答える。

川 ゚ -゚)『本当はそうしたかったのだが、流石に【欠片】でもそこまでは無理なようだ。
     よって、私自身の姿をあの頃に戻して一芝居うたせてもらった。で、自分がバーボンを喰らった感想はどうだ?』

392 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:26:56.90 ID:E2RE4V3X0
 (´・ω・`)『そ…そんな…』

その場にガックリ膝をつく僕に、ドクオとツーが駆け寄ってくる。

(*'A`)『あの…その…なんだか…フヒヒ、スイマセン』

(*゚∀゚)『それにしてもビックリだよっ!!
     ショボンさんがクーさんの事をねぇ…。
     なかなか熱い告白だったよっ!!
     お姉さん見ててキュンとなっちゃったさっ!!』

(´;ω;`)『いやぁぁぁぁ!! 言わないで!! 聞きたくない!!』

僕は両手で耳を塞ぎ大声をあげる。そこにクーが割って入った。

川 ゚ -゚)『全くだ。2人とも、あーゆー場合はせめて隠れて見ているものだぞ』

その言葉で2人は僕をからかっている場合ではない事にようやく気がついたようだ。
揃って直立不動の姿勢をとり、クーに向き直る。

('A`)『あ…クーさん…スイマセン、失礼しました』

(*゚∀゚)『それに…朝もゴメンなさい…まさか、また会えるなんて思ってなくて…
     ブーちゃんがまた変な妄想始めたのかとばっかり…』

川 ゚ -゚)『気にするな。わたしも短絡的過ぎたと思っている。
     本当なら今すぐ君達に抱きつきたい所なのだが、それより今は…』

そこでクーは言葉を遮った。

395 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:28:14.70 ID:E2RE4V3X0
 (´・ω・`)川 ゚ -゚)('A`)(*゚∀゚)『……』

4人の間に不自然な沈黙が流れる。
しばらくしてドクオが胸ポケットから煙草の箱を取り出し、舌打ちとともにそれを握りつぶした。

('A`)『くそ…タバコきれちまってるわ。ちょっと買いに行って来る』

そう言ってツーの手を引いて歩き出す。

(*゚∀゚)『ちょ…ドッ君!! こんな時に煙草なんてどうでもいいじゃないかっ!!
     そんなに行きたければ一人で…』

ドクオはその言葉を無視して僕らに言った。

('A`)『10分!! ぴったり10分で帰ってきますからね!!
    どこにも行かないでくださいよ!!』

(*゚∀゚)『あ…そっか…』

ツーはそれでドクオの言葉の真意を理解したのか、素直にドクオに従った。

(´・ω・`)川 ゚ -゚)『……』

やがて2人の姿が見えなくなると、クーは僕の前に膝をつき肩に顔を乗せるようにして抱きついてきた。
先ほどとは全く異なる、ただひたすらに優しい抱擁だった。


396 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:28:58.51 ID:E2RE4V3X0
川 ゚ -゚)『ショボン…騙すようなマネをしてすまなかった』

耳元で囁くように言う。

(´・ω・`)『…いや。僕のほうこそありがとうを言わないといけないよね。
      君がああしてくれなかったら、僕はいつまでたってもウジウジ悩んでいるだけだっただろうし』

答えながら僕はクーの腰にそっと手を回す。

川 ゚ -゚)『全くだ。君は考えすぎるんだよ。あの頃もそれが祟ってアル中になってたんじゃないか
     考える必要なんてないんだよ。君はちゃんと言ってくれたじゃないか?』

(´・ω・`)『…そうだっけ。実は興奮しすぎて自分でなんて言ったか覚えてないんだ』

川#゚ -゚)『…この、バカショボン』

クーはそう言って僕の頭に軽い頭突きを当てる。

川 ゚ -゚)『アル中だから…立場が違うから告白できない。
     過ぎ去った過去は戻らないから告白できない。
     わたしが明日にはこの世にいない者だから告白できない。
     そう言っていたのは君自身だぞ』

(´・ω・`)『…うん』

川 ゚ -゚)『人が誰かを愛するのに立場なんかクソ喰らえ。
      わたしがが幽霊でも幻でも関係ない。
      明日には二度と会えなくなる運命だとしても関係ない…か。
      嬉しかったぞ。これで安心して死ねそうだ』     


398 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:30:05.18 ID:E2RE4V3X0
(´・ω・`)『…悲しくなる事言わないでくれよ
      僕はこれから心の中でしか会えない君を愛し続けながら生きなきゃならないんだぞ』

川 ゚ -゚)『…すまない。
     しかし、逆に言えば何時でも君の心の中でわたしは君に会えるという事だな?』

(´・ω・`)『ふふ…そうだね』

川 ゚ -゚)『…わたしは死んでいる間、ずっと寂しい思いをしてきたと【欠片】は教えてくれた。
     しかし、皆の心の中にわたしがいて。わたしはいつでも皆に会える。
     そう考えると次の死は寂しくなさそうだ』

(´・ω・`)『…うん』

川 ゚ -゚)『想う心は力になる。
     不可能を可能にし、可能を不可能にするほどの力だ。
     それを忘れないでくれよ』

それから。僕ら2人の間に言葉は要らなかった。
僕はただ、ただクーを抱きしめた。
この感触を忘れぬように。
この温もりを忘れぬように。

程なくしてクーが名残を惜しむようにそっと僕から離れる。
立ち上がると、すぐそばの茂みを睨みつけ言った。

川#゚ -゚)『ぴったり10分経ったぞ。そこで隠れている2人出てこい』



400 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:31:35.22 ID:E2RE4V3X0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(*゚∀゚)('A`)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

('A`)『ほら、言ったじゃねーか。やっぱり見つかった』

(*゚∀゚)『にょろ〜ん』

わたしはクーさんの真似をしてペロリと舌を出してみせる。
ドッ君はそんなわたしにはすでに慣れっこなのか…半分諦めたのか。
溜息を1つ吐き出して立ち上がった。

('A`)『…もしかしてバレバレでした?』

川 ゚ -゚)『うむ。今のわたしは【欠片】の力で全能に近い力があるからな。
     (…それに茂みの影からドクオのガイルヘアーが丸見えだ)』

(*゚∀゚)『すごいねぇ。生きてた時も凄かったけど…
     昔のクーさんがツイストサーブなら今のクーさんは波動球って感じさっ!!』

(;´・ω・)'A`)『……?』

全国80万人の腐女子大爆笑モノのわたしの例えは
どうやら男2人には伝わらなかったらしい。
1人クーさんは首を縦に振って納得していた。

('A`)『そんな事はどうでも良いんだけどよ…。 ショボンさん、クーさん。話は終わりましたか?』

そうだよ!! それが一番大事なんじゃないかっ!!
ドッ君、話がすぐ脱線するのは君の悪いクセだよっ!!

川 ゚ -゚)『あぁ。おかげさまで全部終わったよ』

402 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:32:56.57 ID:E2RE4V3X0
 ('A`)『そうッスか…』

(*゚∀゚)『そう…』

…。
う…。
うぅ…。

川 ゚ -゚)『?』

( ;A;)(*:∀;)『うぇぼおぇあぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁ』

川;゚ -゚)『!?』

これ以上我慢する必要がないと分かった途端。
突然涙が溢れ出してきた。
『日本語で(ry』と言われそうな奇声を漏らしながらクーさんの胸に飛び込む。

( ;A;)『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……クーさん…俺…俺…』

(*;∀;)『クーさぁぁぁぁぁぁん…本物のクーさんだぁぁぁぁぁぁぁぁ…』

涙と鼻水と涎でべったりと染みを作りながら、わたし達はクーさんに抱きつく。
ひたすら泣きじゃくるわたしの髪をクーさんは優しく撫で続けてくれた。


406 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:33:58.92 ID:E2RE4V3X0
どれ程の時間そうしていたか全く分からない。
ちょうどクーさんの胸に顔を埋めていたわたしは、クーさんのおっぱい柔らかいなぁとか考えていた。
昔、どっかのおっぱいバカが

    ( ゚∀゚)『高速道路を走ってる時、窓から手ぇ出すわけよ。
         そん時に感じる風圧はおっぱいの感触と一緒なんだぜ』

とか、自慢げに語っていたっけ。

いつまでも流れ続けていると思っていた涙は
泣きじゃくる子供をあやす様なクーさんの優しさのおかげで少しづつ止まっていった。
ドッ君はとっくに泣き止んでいたみたいで、
わたしに背を向けるようにしてタバコを吸っている。
きっと、その顔は酷い様になっている事だろう。

川 ゚ -゚)『ようやく泣き止んでくれたか。
     このままわたしの時間が終わったらどうしようかと思ったぞ』

(*;∀;)『へへ…申し訳ないっさ…』

川 ゚ ー゚)『うん。やっぱりツーは笑顔が一番だ。
     怒り顔や泣き顔にも魅力はあるが、わたしが一番見たかったのはその笑顔だからな。
     見れてよかったよ』

その他愛もない一言に、わたしの涙腺はこれでもかと緩む。
でも、わたしはクーさんに自分の笑顔を出来るだけ見てほしくて必死にそれを堪えた。
クーさんは、いつも見せていた静かな微笑みでわたしを見ていてくれていたけど、
急に真顔になると申し訳なさそうに口を開いた。

川 ゚ -゚)『…すまない。お前達とこのまま話していたいが…わたしの時間もそろそろ残り少ないようだ』

410 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:35:18.53 ID:E2RE4V3X0
 (*゚∀゚)('A`)『え!?』

その言葉を聞いたドッ君は手から煙草を落とし、振り返った。
やっぱりその目は限界異常に涙を搾り出したせいか、真っ赤になっている。

(*゚∀゚)『いや!! このまま一緒にいてくれなきゃ嫌さっ!!』

クーさんがどこかに行ってしまう。
ここじゃない何処か。わたし達じゃない誰かのところに行くのか?
それとも、【欠片】の力が消滅しようとしているのか?
分からないけど、とにかくわたしは駄々っ子のようにクーさんの言葉を否定した。

(*゚∀゚)『…ずるいさっ!! ショボンさんの時はあんなに長い時間一緒にいたのに、
     わたし達の時はこんなに早く打ち切りなんてあんまりさっ!!
     一緒に遊ぼう!! 帰りの鐘が鳴るまで一緒に遊ぼうよっ!!』

('A`)『…ツー。駄目だ…駄目なんだ…』

ドッ君がすっとクーさんの翼を指差す。

(*゚∀゚)『何が駄目なんだいっ!! ドッ君はクーさんと一緒にいたk…』

そこでわたしの言葉は止まった。

クーさんの真っ白な翼。それは今では色を失いつつある。
ぼんやりとそれに隠れて見えないはずのブランコを見る事が出来た。

川 ゚ -゚)『すまない…わたしの時間もそろそろ残り少ないようなんだ…』

クーさんはもう一度そう言った。

413 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:37:35.89 ID:E2RE4V3X0
 (*゚∀゚)『でも…でもっ!!』

わたしだってここは簡単に引き下がる事は出来ないよ。
この機会を逃したら、クーさんとはもう二度と…もう二度と…。

(*゚∀゚)『わたしはもっと…もっとクーさんと一緒にいたいんだよっ!!
     一緒にお話したいんだよっ!! それ位…それ位いいじゃないかっ!!』

('A`)『…ツー。クーさん自身の事はクーさんが一番よく分かってる筈だろ?
    俺ももっとクーさんと一緒にいたい…でも駄目なんだ…』

(#*゚∀゚)『駄目なんかじゃないさっ!!
     そんならショボンさんにあげた時間を少しわたし達にくれればよかったじゃないかっ!!
     そんじゃ何かいっ!? クーさんはわたし達よりショボンさんが大事だったとでも…』

川 ゚ -゚)『それは違う!!!!!』

一喝。
それまで聖母の様に優しかったクーさんのいきなりの大声にわたしの頭は一瞬で覚める。

川 ゚ -゚)『お前達2人との関係は…死んでからも何一つ悔いの残るものではなかった。
     上司と部下。年齢も離れているにも関わらずこのような関係を築けた事をわたしは誇りに思っている。
     だが、世の中には死んでからも心配で目が離せないお子様がいるんだ。
     そこにいるショボクレ眉毛や…』

クーさんはちらとベンチに座って一人空を見上げているショボンさんを見てから言葉を続けた。

川 ゚ -゚)『…今もわたしを探してこの街のどこかを走り回っている男のような、な』


418 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:39:53.44 ID:E2RE4V3X0
 (*゚∀゚)『……!!』

悔しい。
ただひたすらに悔しい。
こんな事なら、クーさんが生きている間にもっと困らせてやればよかった。

('A`)『…』

川 ; -;)『すまない…本当にすまない…。
     わたしだってお前達と一緒にいたい。
     この稀有な力を使って、お前達が考えている【世界中の男が全員ドクオになる計画】や
     【透明人間になって女湯突撃】なんて遊びが出来たら楽しかったと思う…。
     でも…わたしは行かなくてはいけないんだ。
     この限りある命を…一度きりの奇跡を失うわけにはいかないんだ…』

悔しい。
ただひたすらに悔しい。
でも。

(*;∀;)『…分かったよ、クーさん』

川 ; -;)『……!! ツー…』

( ;A;)『…行って下さい、クーさん。こいつには俺がいます。
    でも、クーさんを必要としている奴がいるんです』

クーさんは頷き、今や半透明になるつつある翼を大きく広げると
ふわりと空に羽ばたいた。

421 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:41:19.18 ID:E2RE4V3X0
 川 ゚ -゚)『ツー!! 1つ言い忘れていた事がある!!』

この公園で一番高い木と同じくらいまで上昇したクーさんが叫んだ。

川 ゚ -゚)『この機会を失ったら、わたしとは2度と会うことは出来ない。
     お前はそう思ったようだが、それは違う!!
     わたし達はこれから何時でも会う事が出来るんだ!!
     ショボンに聞け!! ショボンが全て知っている!!』

そう言うとクーさんは再び上昇を開始する。
その姿が点のように小さくなっても、ついに後ろを振り返る事はなかった。

(´・ω・`)『…行っちゃったね』

いつの間にかわたしの後ろに立ったショボンさんが言う。

(´・ω・`)『…僕らも行こう。
      クーは必ず最後にはあそこに来てくれる筈だ』

わたしは青空を見上げながら頷く。
そして、愛しいダーリンに振り返り言った。







(*゚∀゚)『心配かけてごめんさっ!! …ところで【透明人間になって女湯でウハウハ計画】って何?』


423 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:43:10.13 ID:E2RE4V3X0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーξ゚听)ξsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ξ#゚听)ξ『全く!! あのバカ本当にどこ行ったのかしら!!』

あたしは腹立たしさを紛らわせるように手にしたコーヒーのスチール缶を握りつぶす。
それをそばにあったゴミ箱に叩き込んだ。

(主^ω^)『…そんな事僕に言われても知りませんお』

ξ゚听)ξ『……』

ムカつく。本っっっっっ当にムカつく。
何度も頭を冷やそうと思ったけど、目の前をこれから殴りに行こうとしている男と
瓜二つな顔をしたのにウロウロされて、冷静になんてなれるわけがない。

(主゚ω゚)『ギアス!!』

気がつくとあたしはそいつの尻を蹴り上げていた。
その、あのバカと全く同じリアクションが一層怒りに火を注ぐ。
それにしても、コイツ何なのかしら!!
この世界の事は全く知らないと言いながら、フィギアや同人誌には異常な興味を示すし…。

ξ゚听)ξ『あら? 蹴りやすそうなお尻があるから、つい蹴っちゃったわ。
     とにかくあのバカはここにはいないみたいね。
     それにしても頭くるわ!! こんなに頭くるのは2ch閉鎖騒動以来ねっ!!』

あたしはそう一人ごちて内藤の散らかりまくった部屋を出る。

(主;^ω^)『(…僕の肛門も閉鎖されそうですお)』 


426 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:44:19.28 ID:E2RE4V3X0
 ξ゚听)ξ『さて、次はどこに行こうかしらね』

あたしはアパートの階段を下りながら、すぐ後ろの役立たずに聞いた。

(主^ω^)『そ、そんな事僕に聞かれても分かりませんお!!
       何度も言うように僕はこの世界は全く無知なんですお!!』

ξ゚听)ξ『じゃあ、なんであんなにオタク関係に詳しいのよ!!』

(主^ω^)『それもさっき行った筈だお!!
       僕は前に秋葉原っていうパラダイスで【欠片】を探した事があって…』

秋葉原なんかあたしだって知ってるわよ!!
あのバカにデートと称して何度も連れ回されたんだから!!
こいつ、本当に異世界の住人なのかしら…!?
もう一度蹴り飛ばそうとして、そいつが真剣な表情で空を見上げているのに気付いた。

(主゚ω゚)『来た…来たお!!』


430 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:45:44.23 ID:E2RE4V3X0
ξ゚听)ξ『はぁ? 何が来たって言うのよ!?
      言っておくけど、情報統合思念体からのメッセージとか言ったら半殺しじゃ済まさないわよ!!』

そいつはあたしを無視して続けた。

(主゚ω゚)『【欠片】…【欠片】がすぐそばに来てるお!!』

【欠片】=クーさん=すぐそばにあのバカがいる可能性大。
そんな方程式が瞬時に脳裏に浮かび、あたしも空を見上げた。
そこには真っ白いメイド服を身に包んだ女性の姿。
彼女はあたし達の姿を確認すると、ゆっくりと地上に降りてきた。

川 ゚ -゚)『ツンか。探したぞ。どうにも力が落ちてきているようで困る』

ξ#゚听)ξ『探したのはあたしの方よ!! あのバカはどこにいるの!?』

あたしは八つ当たりと分かりつつも、怒りを隠さず言う。

川 ゚ -゚)『あのバカ? 内藤なら君の後ろに…いや、似ているようだが…』

クーさんは何かを考え込むように唇に人差し指をあてていたが、すぐに納得がいった様にポンと手を叩いた。

川 ゚ -゚)『そうか。君がこの【欠片】を探しているというブタ君か』

(主^ω^)『ブ、ブタとは失礼な!!』

黙りなさい、あんたなんかブタでも勿体無いくらいよ。
あたしはそう言って問答無用でそいつの後頭部を張りとばす。

(主;ω;)『(…なんか僕の扱いあんまりだお)』

433 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:47:24.15 ID:E2RE4V3X0
 川 ゚ -゚)『漫才はそのへんにしてくれないか。あまり時間がないんだ』

そう言えば、あたしを探してたみたいな事言ってたわね。
あたしは大きく深呼吸して思考をジェノサイドモードから通常モードに切り替える。
うん、大丈夫。
あたしは冷静よ。

ξ ^ー^)ξ『あ、ごめんなさい。話ってなにかしら?』

川 ゚ -゚)『うむ。他でもない、内藤の事なのだが…』

ξ#^ー^)ξ        プチン

あたしの中で何か決定的なモノが切れた音がする。

ξ#゚听)ξ『ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

気付いた時にはあたしは出来る限りの大声をあげていた。

川;゚ -゚)『な、なんだ?』

ξ#゚听)ξ『言っておきますけどっ!! あのバカの彼女はあたしなんですよっ!!
      それなのに、あのバカは事ある毎にクーさんクーさんって…!!
      挙句の果てには【ハルヒとスキヤキどっちが好きみたいな事考えるな】とか
      ふざけた事言い出す始末!!
      いいかげんにしてほしいわっ!!』

川;゚ -゚)『そ、そのようだな…』

436 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:49:03.44 ID:E2RE4V3X0
 物知り顔で否定しないクーさんを見て、あたしの怒りは更に高まる。

ξ#゚听)ξ『そのようだな…って!! 知ってるような言い方しないでもらえませんか!!』

川;゚ -゚)『え…あの…その…』

困惑した表情を浮かべるクーさんに代わってそいつが口を開いた。

(主;^ω^)『…口を挟むようで申し訳ありませんが、あの人は【欠片】の力で全部知ってるんだと思いますお』

ξ゚听)ξ『……』

(主^ω^)『……』

川 ゚ -゚)『……』

ξ゚听)ξ『…mjd?』

(主^ω^)川 ゚ -゚)『mjd』

ξ゚听)ξ『……』

(主゚ω゚)『ギアス!!(2回目)』

そいつは鳩尾を押さえてその場にへたり込む。
あたしはそいつに渾身のボディブローを喰らわせる事でこの場の空気を変える事に成功した。

川 ゚ -゚)『…それは痛いだろう…常識的に考えて…』


438 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:50:32.77 ID:E2RE4V3X0
 ξ゚听)ξ『と・に・か・く!! 正直あまりいい気分はしないわよねっ!!
      内藤は…あたしよりもクーさんの影を追っているみたいなんだもん!!
      ううん!! 付き合いだしてから…クーさんが死んじゃってからは一層それが顕著になったわ!!』

それは醜い嫉妬心。
絶対に言ってはいけない言葉。
でも、あたしがこの先ずっと内藤を好きでいる為には避けて通れない決着。

川 ゚ -゚)『……ツン』

ξ;;)ξ『お願い…あいつの心を連れて行かないで…。
     あいつにとってクーさんが道標【みちしるべ】であるように…光であるように…
     あたしにとってはあいつが道標【みちしるべ】なの…!!
     あいつがいてくれないと…あたしがダメになっちゃうのよ…!!』

川 ゚ -゚)『そうか…』

あたしは決して器用な人間じゃない。
ツーやしぃのように可愛く振舞うなんてマネは絶対に出来ない。
甘えたいと思うことは何度もあった。
でも、それが出来ない。
気持ちを押し潰すように、くだらない事で声を荒げる。

今、一番のライバルであるクーさんから内藤の心を取り戻せば
ようやく素直な自分を内藤に見せられる。
あたしはそう感じていた。

川 ゚ -゚)『だが断る』

441 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:52:00.66 ID:E2RE4V3X0
 ξ;;)ξ『!!』

あたしは一瞬自分の耳を疑った。
やっぱり今でも。死んでからもクーさんは内藤の事を…。
そう考えると、絶対に勝ち目がない勝負に目の前が暗転する。

川;゚ -゚)『あ…いや、勘違いするなよ』

クーさんは呆然とするあたしの前で慌てて否定するように両手を振った。

川*゚ -゚)『こ、こんな事を言うのはなんだ…このわたしでも照れくさいと思うのだが…』

躊躇う様に一呼吸置いて続ける。

川*゚ -゚)『た、確かにわたしは今でも内藤を愛しているというか…
     愛していないのかと言われれば、それは嘘をつく事になるのだが…』

ξ;;)ξ『…はい』

川;゚ -゚)『だが…残念な事に内藤の心はわたしには向いていないのは確実らしいし…』

ξ;;)ξ『嘘です!! あいつは何時だってクーさんを見ています!!』

川;゚ -゚)『あう…まぁ…確かに内藤に嫌われていないという事も事実であって、
     むしろ好かれているというか…その事に対してはわたしとしてもやぶさかではないのだが…』

クーさんの声はだんだんとトーンを落とし、
最後の方になるとなんとか聞き取れるか聞き取れないかというレベルまで下がっていた。


447 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:53:03.09 ID:E2RE4V3X0
 川 ゚ -゚)『そ、そんな事はどうでもいいんだ!!
      とにかく、あいつを支えてやれるのはツンじゃなきゃダメなんだ!!』

ξ;;)ξ『信じられませんっ!!』

頑固に意志を曲げないあたしを見てクーさんは軽く眉をしかめた。

川 ゚ -゚)『…内藤はそんなにわたしを追い求めていてくれているのか?』

ξ;;)ξ『…うん』

川 ゚ -゚)『まぁ…確かにそうかもしれんな』

ξ;;)ξ『え?』

突然あっけなく持論を180度転換させたクーさんにあたしはつい戸惑った。
クーさんはそれを見て『作戦成功』とばかりにニヤリと笑う。

川 ゚ ー゚)『人生が夜道を進む旅だとすれば、旅人は光を追い求めるものだ。
     そうだろう?』

そう言って今度は急に真剣な顔になった。

川 ゚ -゚)『旅人は光を追い求め、光は照らすべき旅人を求める。
     だが、それだけだ。どんなに強く求め合っても両者の間には決して埋まらない距離がある。
     実際に旅人を支えてやれるのは、その旅人のそばにいる者…
     つまりツン。お前だけなんだよ』

その真剣な表情はどことなく寂しげだった。


448 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:54:00.57 ID:E2RE4V3X0
 川 ゚ -゚)『ここで1つ、面白い謎かけをしようか。
      母親と内藤が同時に崖から落ちようとしている。どちらか一人しか助けられない。君ならどちらを助ける?』

またしてもコロッと話を変えられる。

ξ゚听)ξ『…心理テストですか?』

川 ゚ -゚)『単なるお遊びだ』

その回答に安心してあたしは状況を頭に思い浮かべる。
あたしなら…まず、どちらがより危険な状況にあるかを判断した上で…。

川 ゚ -゚)『残念。時間切れだ。母親も内藤も崖下にまっ逆さまのゲームオーバーだな』

ξ゚听)ξ『ちょ…早すぎ!!』

あたしはクーさんに軽いブーイングをあげる。

川 ゚ -゚)『いいんだ。この場合【悩んだ】と言うのが君の答えだからな
     では、もし内藤だったらどうしていただろう?』

その言葉であたしはクーさんの真意を理解した。

ξ゚听)ξ『何も考えずに崖に突撃して、勝手に足滑らせて一人でまっ逆さま…ってとこかしら?』

川 ゚ -゚)『わたしも同意見だ。どちらかを選ぶなんて出来ないだろうとわたしも思う。
     夜空の月を見上げるだけで、足元の落とし穴には気付かない。
     そんなドジだけど愛しい旅人君を頼むぞ、ツン』

あたしたちはその光景を想像して顔を見合わせて笑った。醜い嫉妬心はいつの間にか氷解してしまっていた。

449 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:55:39.63 ID:E2RE4V3X0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(主^ω^)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(主^ω^)『…お話の途中ですいませんですがお…』

僕は楽しそうに笑いあう2人に遠慮しがちに声をかける。

ξ゚听)ξ『何よ?』

(主^ω^)『…いえ…あのですね…』

僕はどうもこの子が苦手だ。
寄らば噛む。むしろ、噛み殺される気がしてならない。
それでも僕は【欠片】を回収しなくてはいけない。
FOXを倒し、僕の世界を取り戻さなくては今までの旅が全て無駄になってしまうからだ。

ξ゚听)ξ『玉ついてんならはっきり言いなさいよっ!!』

(主;^ω^)『あう…』

どうしよう。
【欠片】を回収しても殺されては意味がない。
力づくで奪い取る…いや、無理だ。
衰えたとは言えこの超強力な【欠片】所有者に勝てる見込みはない。
そもそも今までの旅だって僕はその世界の住人に助けてもらう事の方が多かったんだ。

川 ゚ -゚)『まぁ待て、ツン』

間誤付く僕とキレかけの暴力女の間に、黒髪の【欠片】所有者…確か、クーさんって人が入り込んできた。

川 ゚ -゚)『君の話は分かる。この【欠片】の事だろう?』

452 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:57:21.49 ID:E2RE4V3X0
 (主^ω^)『そ、そうなんですお!! それがないと僕困るんですお!!』

所有者が話が分かる人で一安心の僕を、暴力女が睨みつける!!

ξ゚听)ξ『ちょっとアンタ!! それが無くなったらクーさんは消えちゃうのよ!!
     それが分かって言ってるんでしょうね!!』

怖い。
それでもここだけは譲れない。

(主^ω^)『で、でもそれがないと僕の世界の消えた人は戻ってこないんですお!!』

ξ゚听)ξ『そんなの知らないわよ!! いい!?
     クーさんは一回死んでるのよ!! それをあんたらの世界とやらの問題で勝手に生き返らせて、
     今度は「僕困るからまた死んでください」ですって!? ふざけないで!!
     せめて、力を使い切るまではこのままでいてもらうのが筋じゃないの!!』

彼女の言う事は正論だ。 

(主^ω^)『でででででも、これだけ力の大きな【欠片】が力を使い切って
       もし休眠状態になったら、今度はいつ目覚めるか分かりませんですお!!
       その間にFOXが更に力をつけたら…本当に倒せなくなってしまいますお!!』

ξ゚听)ξ『まだ言うかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

(主゚ω゚)『ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!』

どう見ても本気モードで殴りかかってくる暴力女。
僕は死を覚悟した。

453 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:58:29.82 ID:E2RE4V3X0
 僕は死を覚悟した。
…と、そこへ。

『いいんだ、ツン』

声がかけられ、僕らはその方向を振り向く。
そこでは【欠片】所有者が諦めたような表情で立っていた。

川 ゚ -゚)『もう…いいんだ』

ξ゚听)ξ『もういいって…何がいいんですか!!』

暴力女が今度はクーさんに掴みかかる。
…誰にでも掴みかかる女だ。

川 ゚ -゚)『全て知った時から決めていたんだ。この力を使いきる前に本来の持ち主に【欠片】を返そうとな』

(主^ω^)『……』

川 ゚ -゚)『心残りが無いわけではないが…鬼に捕まったからには鬼ごっこは終わりだろう。
     元々死んでいる身なのだし、すでに残りの力もほんのわずかだ。
     ここまで願いが叶ったのなら良しとしなくてはいかんだろう
     ただ…最後にもう一度だけあの場所で…』

俯き、細々と声を漏らすクーさん。
前髪に隠れてその表情は見えなかった。


456 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:59:33.88 ID:E2RE4V3X0
 ξ゚听)ξ『わたしは納得いかないわっ!!
      誰がなんと言おうと、このわたしが許さない!!』

なおも反論している。

ξ゚听)ξ『なんでそんなに物わかりがいいんですか!!
     2回も殺されるんですよっ!! なんでもっと我儘にならないんですかっ!!』

(主^ω^)『……』

僕は自分の世界を取り戻したい。
その決意に偽りはない。
でも、なんの罪も無い女性の人生を狂わせて…僕にそんな資格はあるのだろうか?

自分の理想…理想といえば聞こえはいいけど、野望・欲望の為に誰かを傷つけて。
そんな事をしたら、僕とFOXにどんな違いがあるって言うんだ?

彼女の周りの人達だって、彼女の死を悲しいながらも諦め、受け入れていた筈なんだ。
それを僕の世界の揉め事が原因で滅茶苦茶にしてしまった。
それなのに、僕だけが自分の主張だけを押し通そうとして…。

それで世界を取り戻しても…僕は笑って生きていけるのだろうか?

ξ゚听)ξ『クーさん!! 早く行って!! 時間がないのよ!!』

川 ゚ -゚)『分かっている。だが、ブタ君は空間移動の【欠片】を持っている。
     面識の無かった先程までならまだしも、
     今となってはどんなに逃げても瞬間移動されて?まるのがオチだ』


459 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:00:54.06 ID:VAWkGF9I0
 僕は決意する。
左手を押さえ、膝まづいた。

ξ;゚听)ξ川;゚ -゚)『?』 

(主゚ω゚)『こんな時に…邪気眼が…暴れ出しやがったお…おさまれ。おさまれぇっ(棒読み)』

言いながら金髪の方にアイコンタクトを送る。
金髪は瞬時にそれを理解したらしく、クーさんに向き直った。

ξ゚听)ξ『クーさん!! 今のうちよ!! 奴は邪気眼が暴走してる!!』

川;゚ -゚)『じゃ、邪気眼? なんだそれは?』

(主゚ω゚)『く…くそぉ。これじゃどこに逃げても捕まえられないお(棒読み)』

ξ゚听)ξ『何だっていいのよ!! 早く!! 急いで!! 聞いての通りなんだから!! 後の事は任せて!!』

川;゚ -゚)『わ、分かった!! 恩に着るぞ!!』

言うやいなや所有者は翼を広げ、地を蹴る。
しばらくして…。

ξ゚听)ξ『もう下手な芝居はやめていいわよ』

声がかけられ僕は立ち上がった。

ξ゚听)ξ『…やってる事は中二病だけど…かっこよかったわよ。やるじゃん』

中二病の意味は分からなかったけど、僕は何となく嬉しかった。

468 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:03:38.18 ID:VAWkGF9I0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー川 ゚ -゚)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【本日定休日】のプレートがかかった扉の鍵を【欠片】の力を借りて開錠する。
真っ暗な室内でも、一発でわたしは明かりのスイッチを探し当てる事に成功した。
これも何年も続けてきた習慣のおかげだろう。

川 ゚ -゚)『まさか…もう一度ココに戻ってくる事が出来るとはな』

重厚なカウンターテーブルの奥に
ずらりと酒瓶が並ぶバックバーを薄暗いブルーライトが照らしていた。

なかでもバーボンはもちろんの事、シングルモルトや2年熟成という超短年熟成のものまで。
ウィスキー系の品揃えにはちょっと自信がある。

この店がオープンした当初からわたしはここの主として何百万・何千万もの酒を注いできた。
仕事を終えたスタッフは必ずと言っていいほど、ここで仕事の疲れを癒して帰宅していった。

こう言っては何だが、私に会うために足を運んでくれた常連だって少なくないのだ。

今もカウンターにはわたしが来るのを待っていたお客様が一人。

川 ゚ -゚)『お待たせいたしました』




彼はその言葉を聞き終えると、ゆっくりとこちらを振り向いた。

( ^ω^)『…遅いお。待ちくたびれましたお』


471 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:04:57.56 ID:VAWkGF9I0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー( ,,゚Д゚)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(´・ω・`)『ただいま〜。あれ? もしかして僕達最後だった?』

俺がスタッフルームで名誉の負傷の手当を受けていると、
ツンとブタ面。それから少し遅れてショボンやドクオ達が帰ってきた。

(*゚∀゚)『やぁやぁ。やっぱりみんな戻ってきたんだねぇ』

まぁ、そりゃそうだろうよ。
あいつが最後に来るのはココしか考えられねぇからな。

('A`)『内藤は…?』

一人でバースペースにいる。
ツンの話じゃ、クーもこっちに向かったって言うし今頃2人で積もる話でもあるんだろうぜ。

(*゚ー゚)『…最後までお話できるといいね』

全くだ。
それより、お前ら全員目が真っ赤じゃねーか。
どいつもこいつも女子供みてぇにピーピー泣きやがって…だらしねぇ。

(´・ω・`)『あれ? ギコ、目が真っ赤だよ? もしかして泣きあと?』

うるせぇ!! 殺すぞ!!

それから各自が最後の思い出をかみ締めるように思いにふける。
そのまま静かに『その時』が訪れるのを待った。

475 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:06:03.14 ID:VAWkGF9I0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー( ^ω^)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

( ^ω^)『昨日は僕がクーさんにご馳走しましたお。
       だから今度はクーさんが僕にご馳走してほしいですお』

僕がそう言うとクーさんは涼やかに笑い、バックバーの前に立った。
慣れた手つきで氷をアイスピックで丸く削り、ロック・グラスにそれとスコッチ。アマレットを注ぐ。
その両手は透き通って今にも存在を失おうとしていて、
僕は溢れそうになる涙を必死に堪えた。

川 ゚ -゚)『ゴッドファーザーと言うカクテルだ。今の君に最も相応しいカクテルだと思う』

僕の前のコースターにそっと置く。

( ^ω^)『クーさんも一緒に飲むお。乾杯するお』

そう言うとクーさんは悪戯っぽくニヤリと笑った。

川 ゚ ー゚)『それではお言葉に甘えようかな。我が人生最後の1杯だ。
     君が選んでくれ。わたしの後継者を彼女に持つ男のセンスを見せてもらおうか』

( ;^ω^)『責任重大だおwwwオーガズムとか、セックスオンザビーチってカクテルなら知ってるけど…。
       そうだ!! カルーア・ミルクみたいな…チェリーが飾ってあるカクテルがあった筈だお!!』

それを聞いたクーさんはグラスにカカオ・リキュールを注ぎ、生クリームをフロートしてからチェリーを飾った。

川 ゚ ー゚)『おそらくお前が言っているカクテルはこれの事だろう。
     それにしても、このカクテルをチョイスしてくるとは驚いたな。
     なるほど、わたしの最後に相応しいカクテルかもしれん』


476 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:07:40.57 ID:VAWkGF9I0
 カクテルを作り終えたクーさんはバーカウンターから出ると、僕の隣に腰を下ろした。

( ^ω^)『…なんか不思議な気分ですお』

川 ゚ -゚)『そうだな。でも、一度こうしてみたかったんだ』

本当に不思議な気分だ。
話したい事はたくさんあるはずなのに、その水のように透き通った手を見ていると何も言葉が出てこない。
ただ悪戯に何よりも貴重な時間が過ぎていく。

( ^ω^)『…あと何時間残っていますかお?』

川 ゚ -゚)『…2時間といった所か。力を残した状態でブタ君に返さなくてはいけないから、
     そう考えると1時間がせいぜいだろうな』

あと1時間。
たったそれだけの時間でクーさんはまた消えてしまう。
僕はそれが悲しくて、できる限りの抵抗を試みた。

( ^ω^)『…僕は…少しでも長い時間一緒にいたいですお』

川 ゚ -゚)『…それは出来ない』

( ^ω^)『…安価で決めませんかお? @1時間 A2時間 で』

川 ゚ -゚)『絶対 Bおっぱいうp になるから断る』

( ;^ω^)『ですよねー』


478 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:08:49.21 ID:VAWkGF9I0
 クーさんは目の前のカクテルグラスを見つめている。
その瞳にグラスの中のチェリーが写っていて、とても綺麗だった。

         川 ゚ -゚)『わたしはあと一時間で死ぬ』

クーさんは妙にさっぱりした顔で言う。
なんで…なんでこの人はこんなに強いんだろう。
なんで目前に迫った死を怖れないんだろう。

川 ゚ -゚)『そんな事は無いぞ。わたしだって死ぬのは怖い』

突然答えられてびっくりしたけど、すぐに気がついた。

( ^ω^)『【欠片】かお…びっくりさせないでほしいお』

川 ゚ -゚)『あぁ。ショボンにも同じ事をしたよ。これが中々面白いんだ』

( ;^ω^)『極悪非道だお』

僕は頬杖をついて非難の言葉を口にしながらロック・グラスを口元に運ぶ。

( ;^ω^)『お?』

川 ゚ -゚)『む? どうした?』

( ^ω^)『これ…美味しいですお。杏仁豆腐の味がしますですお』

川 ゚ -゚)『当然だろう。わたしが作ったんだぞ。このゴッドファーザーこそ、わたしから君に送る最後のメッセージだ』

クーさんは曇りひとつ無い目で僕を見据えて言った。

479 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:10:00.05 ID:VAWkGF9I0
 ( ^ω^)『最後の…メッセージ…』

そう言われると、この金色の液体が同量の純金よりも貴重なものに思えてくる。

( ^ω^)『ゴッドファーザーってあれですおね? ぽぺぺぽぺぺぺぽぺぺぺぺ〜…って』

僕はDQNがバイクのクラクションで鳴らしているお馴染みの音楽を口にする。

川 ゚ -゚)『そうだ。だが本来、ゴッドファーザーとは【祖父】【名付け親】の意味だ。
     そしてもう1つ。マフィアの【ボス】に対する敬称でもある』

そう言ってクーさんはカウンターテーブル越しに缶ビールを探し当て、引っ張り出す。
『ビールは太る』って人がいるけど、それは絶対に嘘だ。
少なくとも、僕の目の前のこの人はあんなに浴びる様に毎晩毎晩ビールを飲んでも
一切太っていなかったのだから。

( ^ω^)『僕に…【ボス】と言われるような存在になれって事ですかお?』

川 ゚ -゚)『一言で言ってしまうとそうなる。
     これはわたしの解釈なのだが、はみ出し者であるマフィアにとって【ボス】とは
     己の全て。護るべき光だ。
     その言葉どおり、名前すら持たない浮浪少年に名前を与えた者だっていただろう。
     誰もが持つ【名前】すら持たない彼にとって、
     その与えられた【名前】は本当に神聖な物だったとわたしは思う。
     わたしはな…内藤に全ての人に希望の光を与え、その暗闇の人生を照らす。
     そんな人間になってもらいたいんだ』




481 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:11:02.54 ID:VAWkGF9I0
 ( ^ω^)『……』

あまりにも過ぎた要求であるように思えた。
全ての人に希望の光を与え、その暗闇の人生を照らす存在。
それは僕にとっての道標【みちしるべ】。
クーさんの存在そのものだったからだ。

( ^ω^)『僕に…出来ますかお…』

川 ゚ -゚)『出来るさ』

クーさんはそう言ってビールの缶を口元で傾ける。
それを30秒ほどで空にすると、またカウンターテーブルの奥に手を伸ばした。

川 ゚ -゚)『わたしが君に伝えた全てを。君が引き継いでくれればいいだけだよ』

それが難しいんだけどなぁ。僕は苦笑する。

川 ゚ -゚)『そんな事は無いさ』

クーさんはさらりと言ってのけた。

川 ゚ -゚)『お前もバカショボンと同じで難しく考えすぎなんだ。
     どれ。目を瞑ってみろ。そして、君がこの店で経験した全てを思い出すんだ』



483 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:12:35.17 ID:VAWkGF9I0
僕は言われたとおり目を閉じ、今までの事を思い出す。

ドクオの包丁をダメにしかけてしまった事。
   …あの時は本当に悪い事をしたなぁ。

ギコさんに包丁の使い方を教わった事。
   …厳しかったけど…今では本当に感謝している。

ツーさんと麺場で毎日のようにランチタイムを乗り切った事。
   …ツーさん。本当は自分が麺場を担当したかった筈なのに…
   僕に自分が知る全てのテクニックを教え込んでくれた。

ショボンさんと炒飯を作った事。
   …あの頃は毎日食事が炒飯だったっけ。

そして、勿論。仕事後にこのバースペースで過ごした無駄話だらけだったけど何より貴重な時間。

それだけじゃない。
ツン。しぃ。ジョルジュさん。アルバイトのイヨゥ。味にうるさい常連のお客さん。青果業者のおじさんまで。

ここで僕の回りにいてくれたみんなの顔が瞳の奥に現れる。

( -ω-)『…本当に色々な人に会って…色々な人に助けられて…色々な事がありましたお…。
      こんなに短い時間だったのに…こんなにたくさんの事があったなんて嘘みたいですお』

川 ゚ -゚)『そうだろう。しかし、それは何も特別な事じゃないんだ』

( ^ω^)『え?』

裏返った声を上げて僕は目を開いた。

488 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:14:13.39 ID:VAWkGF9I0
 川 ゚ -゚)『誰かが誰かの光になる。それは何も特別な事ではない。
      真剣に誰かを思いやり、時には本音をぶつけあって衝突する。
      それだけでいい。そうする事で人は誰かの道を少しだけ照らす事が出来る。
      それが集まればやがて大きな光になる。
      なにも難しくないんだ』

( ^ω^)『僕に…出来ますかお…』

僕は2度目の疑問を口にする。

川 ゚ -゚)『出来るさ』

クーさんは2度目の即答を返す。

川 ゚ -゚)『なぜならば…』

言いながらクーさんはその透き通る両手で僕の頬を包み込んだ。
その掌からはすでに存在感を感じなくなっていた。
頬に触れる感触もまるで無い。

川 ゚ -゚)『お前は…みんなからの光を全身に浴びて…こんなにも輝いているではないか。
     わたしには内藤。お前が全ての人を優しく照らす太陽のように感じられる。
     今だってお前はわたしを照らしてくれているんだ』

…でも、僕は忘れないだろう。
この悲しいまでに優しい掌の温もりを。




492 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:16:48.39 ID:VAWkGF9I0
 ( ^ω^)『僕が…クーさんの光…?』

考えた事もなかった。
だって、クーさんは僕にとっての道標【みちしるべ】で…永遠に手が届かない筈の存在だったから。

川 ゚ -゚)『内藤。わたしは思うんだ』

クーさんは僕の瞳をじっと覗き込みながら言う。

川 ゚ -゚)『光とは…一方通行では決して無い。
     誰かが誰かを照らす時。その彼もまた誰かの光を浴びている。
     そうやって誰かと誰かが導きあって、その輝きを増していくんだ』 

クーさんは真剣な表情でそう言った。

正直、僕には荷が重いと思う。
今まで僕は助けられてばっかりの存在だったし、誰かの為になんて考えた事もなかった。

でも…。
それでも、僕はやってみようと思う。
全ての人に希望の光を与え、その暗闇の人生を照らす。
そんな道標【みちしるべ】になってやろうと思う。

この人が僕を光だと言ってくれたから。
消えゆくその身を顧みず、僕に伝えてくれた最後のメッセージだから。

( ^ω^)『クーさん…分かりましたお。僕は…誰かの光として…これから生きていきますお』



498 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:18:09.41 ID:VAWkGF9I0
 川 ゚ -゚)『分かってくれたか』

そう言ってクーさんは満足したように笑った。
まるで、全てをなし終えた…一日の仕事を終えた皆が見せるあの笑顔だった。

川 ゚ -゚)『これでようやく…全て終わったな』

それは奇跡の時間が終わる事を告げる一言。
再び、永久の別れが始まる事を告げる一言。

( ;ω;)『…行ってしまうんですかお…?』

僕の問いかけにクーさんは小さくコクリと頷く。

川 ゚ -゚)『もう…力が…残っていないんだ。これから少しの時間だけ…一人にしてくれないか?』

その言葉に僕は首をこれでもかと横に振った。

( ;ω;)『僕は…僕は最後の瞬間までクーさんと一緒にいたいですお』

そんな僕を見てクーさんはいつも見せてくれていた微笑みを浮かべ、それでも僕と同じ様に首を振った。

川 ゚ -゚)『ダメだ…もうダメなんだよ』

そう言ってクーさんは立ち上がると、スカートの裾をそっと持ち上げる。

( ;ω;)『…え?…』

504 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:19:40.37 ID:VAWkGF9I0
 川 ゚ -゚)『見ろ内藤。
     わたしの終わりはもうここまで進行してしまっている。
     私自身全く想像していなかったのだが、
     消滅の進行を制御するにはとんでもない痛みが…
     そうだな。傷跡に焼けた鉄を押し当てられるような痛みを伴ってな。
     正直、今こうして話しているだけでも痛みで気を失いそうなんだ』

たくし上げられたスカートの奥。
そこには、本来あるべき細い足がすでに存在していなかった。
ちょうど膝から下が完全に消滅していて、
その切断部分(?)も流れ落ちる砂時計のようにゆっくりと消え去っていく。

( ;ω;)『…これは…ひどい…あんまりだお…』

薄い灯りのせいでよく分からなかったけど、
よく見ればその顔は心なしか青ざめ、額には玉の様な汗が浮かんでいる。

川 ゚ -゚)『内藤。
     死んでいる身とは言え、わたしだって女だ。
     惚れた男の前で痴態は晒したくない。
     どうか…わかってくれないか?』

それでもクーさんは顔をピクリとも歪めず、そこに立っていた。



506 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:20:44.06 ID:VAWkGF9I0
( ;ω;)『…分かりましたですお』

その確固たる決意と嘆願を織り交ぜた表情を見て、僕は席を立つ。

あぁ。
こんな時でも。
いや、こんな時だからこそなのか?
やっぱり、クーさんはクーさんだ。
どこまでも真っ直ぐで。
どこまでも凛々しくて。
どこまでも格好いい。

クーさんは向かい合って立つ僕の頬をすでに存在しない掌でそっと撫でると、
ゆっくりと顔を近づけてきた。

川 ゚ -゚)『これはカクテルの礼だ。
     ツンには言ってくれるなよ』

僕の唇にクーさんの柔らかいそれが押しあてられ、
1・2・3・4・5とちょうど数え終わったところで静かに…名残を惜しむように離れた。

川 ゚ -゚)『さよならは言わないぞ、内藤ホライゾン!!
     さぁ、行け!! わたしが照らした君の道をどこまでも駆けて行け!!』

その言葉を背に受けながら、僕は一人バースペースを後にした。
扉を閉じると、そこに背を預けて膝を抱えて座り込む。


そして、静かにその時が訪れるのを待った。


509 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:21:58.77 ID:VAWkGF9I0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー川 ゚ -゚)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

わたしは内藤が扉を出るのを確認すると、倒れこむように椅子に座り込んだ。
全身が酷く痛む。
時間はもう残っていなかった。
消滅は波が岩を削り取るようにゆっくりと。
だが、確実に体を侵食していく。

川 ゚ -゚)『っ!!』

わたしが命じると【欠片】はその姿を変え、元の結晶に姿を変えた。
宝石に例えるならばアメジスト。
それが【欠片】の正体。
だが、それはすでに色を失いただの白い石のように見えた。

余談だが、背中の翼は崩れ消え去ろうとしているがまだそこにある。
ひよこがプリントされた下着。
それこそが【欠片】だった。

川 ゚ -゚)『…なんだかスースーするな…高校時代、水溜りに尻餅をついたとき以来の感覚だ』

もし、あの時わたしの持つ【欠片】が下着だと教えてやったらギコはどんな顔をしただろう。
そう考えてわたしは一人吹きだしてしまった。

川 ゚ -゚)『…色々な事がありすぎた一日だったな』

わたしは想う。
わたしの人生とは一体なんだったのだろうか。


514 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:24:15.98 ID:VAWkGF9I0
 死にたくないのに殺され、気付いたら死の記憶を全て持って生き返った。

愛する人と再会しいきなり顔射され、幼女になり、空を駆けた。

親友と拳を交え、戻れない過去を語り、別れを告げた。

ライバルと雌雄を決し、愛する人と唇を交わし、そしてまたこの世を去ろうとしている。

それでもわたしは断言できる。
奇妙な…それでも最高の人生だったと。

川 ゚ -゚)『もし、生まれ変われるならばもう一度彼らとともに…』

そう言いかけて苦笑する。未練だな。

わたしは全く口をつけていなかったカクテル【エンジェル・キッス 〜天使の口づけ〜】を高く掲げた。

川 ゚ ー゚)『素晴らしい人生と…その仲間達に乾杯』

一息に飲み干した瞬間。
その時が訪れた。

慣れ親しんだバースペース内を白光が静かに弾ける。



その光が消え去った時。
わたしは完全にこの世界から消滅していた。

         飲み終えたグラスと、主を失った白い小石がカウンターテーブルに寂しく転がっていた。

522 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:27:00.30 ID:VAWkGF9I0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(主^ω^)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

( ^ω^)『みんな…終わりましたお』

扉が静かに開けられ、彼が姿を現した。
その右手には小さな白い小石が乗せられている。
僕はそれを受け取ろうとして手を止めた。

間接的とは言え、僕はこの世界の人達をひどく傷つけたのだろう。
愛する人を失う痛みを2度も味あわせてしまった僕に、これを受け取る資格はあるのか?
そう考えると、これ以上手が動かなかった。

( ^ω^)『バカな事考えてるんじゃないお。
       クーさんも僕らも…感謝こそしてるけど恨んでなんかいないお』

(主^ω^)『おっ?』

僕は彼の顔を見る。
彼もまた、僕の顔を見てニヤニヤと笑っていた。

(´・ω・`)『…!! そうか!! 【欠片】の…!!』

( ^ω^)『はい。そのとおりですお』

彼はしょぼくれさんから僕のほうに振り返ると、彼なりに真剣であろう表情で言った。


527 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:28:48.84 ID:VAWkGF9I0
 ( ^ω^)『…この一日。僕らはとても幸せだったお』

(*゚ー゚)『クーさんが死んじゃった時…とても悲しかった』

('A`)『あまりに突然すぎて…ここにいる全員がずっと心の奥底でそれを受け入れられずにいたんだ』

(*゚∀゚)『でも、クーさんは今日…わたしらにたくさんの贈り物をくれた…
     また消えちゃったのは悲しいけど…なんだか今はとても暖かい気分さっ!!』

( ^ω^)『ホントはお前なんかに渡したくないけど…受け取ってほしいお。
       クーさんもそれを望んでいたんだお』

彼はそう言って僕の手に無理矢理【欠片】を握らせる。

(主^ω^)『……!! なんだお…これ…』

【欠片】の世界の住人である僕には分かる。
力の大半を失ったはずのそれからは、溢れるほどの…何か別の力を感じる。
とても熱くて…重い。

( ^ω^)『…当然だお。この【欠片】にはクーさんの…僕らの想いが詰まっているんだお』

彼はそう言って【欠片】から手を離した。


533 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:30:39.07 ID:VAWkGF9I0
 ( ,,゚Д゚)『過ぎ去った時は戻らねぇ。
      絶対に後悔する道を選ぶんじゃねぇぞゴルァ』

(´・ω・`)『…想う心は力になる。
      不可能を可能にし、可能を不可能にするほどの力だ。
      それを忘れないでくれよ』

ξ゚听)ξ『悩む前に走りなさいっ!! 
     そんなあんたを支えてくれる人が必ずいるはずよっ!!』

(主^ω^)『……っ!!』

僕は顔を上げる。
もう僕は迷わない。
どんなに苦しくても、辛くても。
必ずFOXを倒し、僕の世界を取り戻してみせる。

僕は自分の欠片を握り締め、意識を集中した。
体が光に包まれる。

主^ω^『僕は行くお…FOXを倒したら必ずまたここに来る…
     そして、あの人のお墓にお礼を言いに行くお』

さようなら。この悲しくも美しい世界。そういい残して僕の体は別世界に飛翔した。
最後に僕にそっくりな声が叫ぶ声が聞こえた。



         さよならは言わないお!!
         僕達の想いを手にして君の道をどこまでも駆けて行けお!!

538 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:32:31.15 ID:VAWkGF9I0


    エピローグ TRAIN-TRAIN


( *^ω^)『…赤ちゃんって可愛いお〜』

あれから数年後。
僕とツンは結婚した。
恋愛結婚といえば聞こえはいいけど、ようするに出来ちゃった結婚だ。
数日前ツンは無事出産を終え、今は病院のベッドで退院を待っている。

('A`)『…可愛いかぁ? 人間つーかサルそっくりじゃねーか』

( ,,゚Д゚)『内藤には全然似てねぇなぁ…本当に内藤の種か?』

そんな事を言う2人をヒッキーがたしなめる。

(-_-) 『し、失礼なこと言っちゃダメですよ!!
    太ってて美味しそうなトコなんか内藤さんそっくりじゃないですか!!』

それでも、幸せ全開の僕には全く気にならない。






( ^ω^)『…お前後で体育館裏に来いお』


540 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:33:45.64 ID:VAWkGF9I0
 ( ゚∀゚)『まぁ…とにかくこれでお前も俺様と同じく、一人で勝手に死ねない体になったってワケだな。
     とにかくめでてぇや』

ジョルジュさんが本当に嬉しそうに言う。

( ゚∀゚)『ところで、お前母乳飲ませてもらったか?
     母乳って血の味がするんだぜ』

( ;^ω^)『…あんた何言ってるんだお』

横ではしぃとツンが楽しそうに談笑している。

(*゚ー゚)『お姉ちゃん、ほんとうにおめでとう』

ξ゚听)ξ『ありがと。でもようやくコイツのクーさん病が治ったと思ったら、
     今度はコイツこの子にベッタリなのよ。
     なんか、娘とコイツを取り合う未来が想像できて…今から頭痛いわ』

そう言うツンの表情には昔のような険しさは微塵も感じない。
母親になって変わったのだろうか?

(´・ω・`)『2号店の弟者君が子育てには相当自信があるらしいからね。
      今度色々聞いてみるといいよ。
      ところでもう名前は決めたのかい?』

(*゚∀゚)『ハイハイ!! わたし名付け親になったげるさっ!! 【たけし】なんてどうかなっ!!』

( ;^ω^)『…この子は女の子だお』

548 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:36:30.23 ID:VAWkGF9I0
 僕は騒がしい周囲に目を覚ました愛しい娘をそっと抱き上げる。
頼りないくらいに小さくて柔らかくて…。
それでも必死に全身から命を溢れ出させている。

子供が出来たと聞いた時。
僕は嬉しくて、近所の書店から名付け辞典を買いあさった。
姓名判断や流行。姓とのバランスまで全て重視して名前を決めようとした。

でも、それも始めてこの子の瞳を見た時。
全て吹き飛んでしまった。

この子が大きくなったら聞かせてあげよう。
君と同じ名前を持つ女性がいた事を。
どこまでも真っ直ぐで。
どこまでも凛々しくて。
どこまでも格好いい。
そんな女性がいた事を。

僕にもツンにも似つかない。
紫水晶色の瞳で不思議そうに僕を見つめる愛娘を見つめながら僕は言った。








( ^ω^)『名前ならとっくに決まってるお。
            この子の名前はーーーーー』

549 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:36:51.45 ID:VAWkGF9I0






         ( ^ω^)が世界を巡るようです






         【IN ( ^ω^)が料理人になるようです】





         川 ゚ -゚)が大空を駆けるようです     
                                  fin



588 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:43:29.26 ID:VAWkGF9I0




               【次回予告】





    推奨BGM  http://www.youtube.com/watch?v=_rGM-wPotW0









592 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:46:21.78 ID:VAWkGF9I0
    ーーーーー19××年。地球は核の炎に包まれたーーーーー

     ついに合作初登場!! 

                    ( ^ω^)『お前はもう死んでいる』

     安価で未来が決まる!! 

                    ('A`)『たわばっ』

     全く新しい形のブーン小説!!      

                    ( ,,゚Д゚)『我が名は南斗5車星…炎のヒューイ!!』

    ( ^ω^)が世界を巡るようです 第11弾!!!

                    ξ゚听)ξ『お師さーーーーん!!』

     by ◆sHNGWXTAUA

                    (*゚ー゚)『俺の名前を言ってみろ…』

    ( ^ω^)('A`)( ,,゚Д゚)ξ゚听)ξ(*゚ー゚)川 ゚ -゚)

                    川 ゚ -゚)『我が人生に一点の悔い無し!!!!』


     君 の 安 価 が 合 作 を 作 り あ げ る ・・・・・・ 。

※本編と一部異なる台詞がございます。ご了承ください。

456 美容師見習い(埼玉県) 2007/03/19(月) 23:59:33.88 ID:E2RE4V3X0
 ξ゚听)ξ『わたしは納得いかないわっ!!
      誰がなんと言おうと、このわたしが許さない!!』

なおも反論している。

ξ゚听)ξ『なんでそんなに物わかりがいいんですか!!
     2回も殺されるんですよっ!! なんでもっと我儘にならないんですかっ!!』

(主^ω^)『……』

僕は自分の世界を取り戻したい。
その決意に偽りはない。
でも、なんの罪も無い女性の人生を狂わせて…僕にそんな資格はあるのだろうか?

自分の理想…理想といえば聞こえはいいけど、野望・欲望の為に誰かを傷つけて。
そんな事をしたら、僕とFOXにどんな違いがあるって言うんだ?

彼女の周りの人達だって、彼女の死を悲しいながらも諦め、受け入れていた筈なんだ。
それを僕の世界の揉め事が原因で滅茶苦茶にしてしまった。
それなのに、僕だけが自分の主張だけを押し通そうとして…。

それで世界を取り戻しても…僕は笑って生きていけるのだろうか?

ξ゚听)ξ『クーさん!! 早く行って!! 時間がないのよ!!』

川 ゚ -゚)『分かっている。だが、ブタ君は空間移動の【欠片】を持っている。
     面識の無かった先程までならまだしも、
     今となってはどんなに逃げても瞬間移動されて?まるのがオチだ』


459 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:00:54.06 ID:VAWkGF9I0
 僕は決意する。
左手を押さえ、膝まづいた。

ξ;゚听)ξ川;゚ -゚)『?』 

(主゚ω゚)『こんな時に…邪気眼が…暴れ出しやがったお…おさまれ。おさまれぇっ(棒読み)』

言いながら金髪の方にアイコンタクトを送る。
金髪は瞬時にそれを理解したらしく、クーさんに向き直った。

ξ゚听)ξ『クーさん!! 今のうちよ!! 奴は邪気眼が暴走してる!!』

川;゚ -゚)『じゃ、邪気眼? なんだそれは?』

(主゚ω゚)『く…くそぉ。これじゃどこに逃げても捕まえられないお(棒読み)』

ξ゚听)ξ『何だっていいのよ!! 早く!! 急いで!! 聞いての通りなんだから!! 後の事は任せて!!』

川;゚ -゚)『わ、分かった!! 恩に着るぞ!!』

言うやいなや所有者は翼を広げ、地を蹴る。
しばらくして…。

ξ゚听)ξ『もう下手な芝居はやめていいわよ』

声がかけられ僕は立ち上がった。

ξ゚听)ξ『…やってる事は中二病だけど…かっこよかったわよ。やるじゃん』

中二病の意味は分からなかったけど、僕は何となく嬉しかった。

468 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:03:38.18 ID:VAWkGF9I0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー川 ゚ -゚)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【本日定休日】のプレートがかかった扉の鍵を【欠片】の力を借りて開錠する。
真っ暗な室内でも、一発でわたしは明かりのスイッチを探し当てる事に成功した。
これも何年も続けてきた習慣のおかげだろう。

川 ゚ -゚)『まさか…もう一度ココに戻ってくる事が出来るとはな』

重厚なカウンターテーブルの奥に
ずらりと酒瓶が並ぶバックバーを薄暗いブルーライトが照らしていた。

なかでもバーボンはもちろんの事、シングルモルトや2年熟成という超短年熟成のものまで。
ウィスキー系の品揃えにはちょっと自信がある。

この店がオープンした当初からわたしはここの主として何百万・何千万もの酒を注いできた。
仕事を終えたスタッフは必ずと言っていいほど、ここで仕事の疲れを癒して帰宅していった。

こう言っては何だが、私に会うために足を運んでくれた常連だって少なくないのだ。

今もカウンターにはわたしが来るのを待っていたお客様が一人。

川 ゚ -゚)『お待たせいたしました』




彼はその言葉を聞き終えると、ゆっくりとこちらを振り向いた。

( ^ω^)『…遅いお。待ちくたびれましたお』


471 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:04:57.56 ID:VAWkGF9I0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー( ,,゚Д゚)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(´・ω・`)『ただいま〜。あれ? もしかして僕達最後だった?』

俺がスタッフルームで名誉の負傷の手当を受けていると、
ツンとブタ面。それから少し遅れてショボンやドクオ達が帰ってきた。

(*゚∀゚)『やぁやぁ。やっぱりみんな戻ってきたんだねぇ』

まぁ、そりゃそうだろうよ。
あいつが最後に来るのはココしか考えられねぇからな。

('A`)『内藤は…?』

一人でバースペースにいる。
ツンの話じゃ、クーもこっちに向かったって言うし今頃2人で積もる話でもあるんだろうぜ。

(*゚ー゚)『…最後までお話できるといいね』

全くだ。
それより、お前ら全員目が真っ赤じゃねーか。
どいつもこいつも女子供みてぇにピーピー泣きやがって…だらしねぇ。

(´・ω・`)『あれ? ギコ、目が真っ赤だよ? もしかして泣きあと?』

うるせぇ!! 殺すぞ!!

それから各自が最後の思い出をかみ締めるように思いにふける。
そのまま静かに『その時』が訪れるのを待った。

475 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:06:03.14 ID:VAWkGF9I0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー( ^ω^)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

( ^ω^)『昨日は僕がクーさんにご馳走しましたお。
       だから今度はクーさんが僕にご馳走してほしいですお』

僕がそう言うとクーさんは涼やかに笑い、バックバーの前に立った。
慣れた手つきで氷をアイスピックで丸く削り、ロック・グラスにそれとスコッチ。アマレットを注ぐ。
その両手は透き通って今にも存在を失おうとしていて、
僕は溢れそうになる涙を必死に堪えた。

川 ゚ -゚)『ゴッドファーザーと言うカクテルだ。今の君に最も相応しいカクテルだと思う』

僕の前のコースターにそっと置く。

( ^ω^)『クーさんも一緒に飲むお。乾杯するお』

そう言うとクーさんは悪戯っぽくニヤリと笑った。

川 ゚ ー゚)『それではお言葉に甘えようかな。我が人生最後の1杯だ。
     君が選んでくれ。わたしの後継者を彼女に持つ男のセンスを見せてもらおうか』

( ;^ω^)『責任重大だおwwwオーガズムとか、セックスオンザビーチってカクテルなら知ってるけど…。
       そうだ!! カルーア・ミルクみたいな…チェリーが飾ってあるカクテルがあった筈だお!!』

それを聞いたクーさんはグラスにカカオ・リキュールを注ぎ、生クリームをフロートしてからチェリーを飾った。

川 ゚ ー゚)『おそらくお前が言っているカクテルはこれの事だろう。
     それにしても、このカクテルをチョイスしてくるとは驚いたな。
     なるほど、わたしの最後に相応しいカクテルかもしれん』


476 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:07:40.57 ID:VAWkGF9I0
 カクテルを作り終えたクーさんはバーカウンターから出ると、僕の隣に腰を下ろした。

( ^ω^)『…なんか不思議な気分ですお』

川 ゚ -゚)『そうだな。でも、一度こうしてみたかったんだ』

本当に不思議な気分だ。
話したい事はたくさんあるはずなのに、その水のように透き通った手を見ていると何も言葉が出てこない。
ただ悪戯に何よりも貴重な時間が過ぎていく。

( ^ω^)『…あと何時間残っていますかお?』

川 ゚ -゚)『…2時間といった所か。力を残した状態でブタ君に返さなくてはいけないから、
     そう考えると1時間がせいぜいだろうな』

あと1時間。
たったそれだけの時間でクーさんはまた消えてしまう。
僕はそれが悲しくて、できる限りの抵抗を試みた。

( ^ω^)『…僕は…少しでも長い時間一緒にいたいですお』

川 ゚ -゚)『…それは出来ない』

( ^ω^)『…安価で決めませんかお? @1時間 A2時間 で』

川 ゚ -゚)『絶対 Bおっぱいうp になるから断る』

( ;^ω^)『ですよねー』


478 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:08:49.21 ID:VAWkGF9I0
 クーさんは目の前のカクテルグラスを見つめている。
その瞳にグラスの中のチェリーが写っていて、とても綺麗だった。

         川 ゚ -゚)『わたしはあと一時間で死ぬ』

クーさんは妙にさっぱりした顔で言う。
なんで…なんでこの人はこんなに強いんだろう。
なんで目前に迫った死を怖れないんだろう。

川 ゚ -゚)『そんな事は無いぞ。わたしだって死ぬのは怖い』

突然答えられてびっくりしたけど、すぐに気がついた。

( ^ω^)『【欠片】かお…びっくりさせないでほしいお』

川 ゚ -゚)『あぁ。ショボンにも同じ事をしたよ。これが中々面白いんだ』

( ;^ω^)『極悪非道だお』

僕は頬杖をついて非難の言葉を口にしながらロック・グラスを口元に運ぶ。

( ;^ω^)『お?』

川 ゚ -゚)『む? どうした?』

( ^ω^)『これ…美味しいですお。杏仁豆腐の味がしますですお』

川 ゚ -゚)『当然だろう。わたしが作ったんだぞ。このゴッドファーザーこそ、わたしから君に送る最後のメッセージだ』

クーさんは曇りひとつ無い目で僕を見据えて言った。

479 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:10:00.05 ID:VAWkGF9I0
 ( ^ω^)『最後の…メッセージ…』

そう言われると、この金色の液体が同量の純金よりも貴重なものに思えてくる。

( ^ω^)『ゴッドファーザーってあれですおね? ぽぺぺぽぺぺぺぽぺぺぺぺ〜…って』

僕はDQNがバイクのクラクションで鳴らしているお馴染みの音楽を口にする。

川 ゚ -゚)『そうだ。だが本来、ゴッドファーザーとは【祖父】【名付け親】の意味だ。
     そしてもう1つ。マフィアの【ボス】に対する敬称でもある』

そう言ってクーさんはカウンターテーブル越しに缶ビールを探し当て、引っ張り出す。
『ビールは太る』って人がいるけど、それは絶対に嘘だ。
少なくとも、僕の目の前のこの人はあんなに浴びる様に毎晩毎晩ビールを飲んでも
一切太っていなかったのだから。

( ^ω^)『僕に…【ボス】と言われるような存在になれって事ですかお?』

川 ゚ -゚)『一言で言ってしまうとそうなる。
     これはわたしの解釈なのだが、はみ出し者であるマフィアにとって【ボス】とは
     己の全て。護るべき光だ。
     その言葉どおり、名前すら持たない浮浪少年に名前を与えた者だっていただろう。
     誰もが持つ【名前】すら持たない彼にとって、
     その与えられた【名前】は本当に神聖な物だったとわたしは思う。
     わたしはな…内藤に全ての人に希望の光を与え、その暗闇の人生を照らす。
     そんな人間になってもらいたいんだ』




481 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:11:02.54 ID:VAWkGF9I0
 ( ^ω^)『……』

あまりにも過ぎた要求であるように思えた。
全ての人に希望の光を与え、その暗闇の人生を照らす存在。
それは僕にとっての道標【みちしるべ】。
クーさんの存在そのものだったからだ。

( ^ω^)『僕に…出来ますかお…』

川 ゚ -゚)『出来るさ』

クーさんはそう言ってビールの缶を口元で傾ける。
それを30秒ほどで空にすると、またカウンターテーブルの奥に手を伸ばした。

川 ゚ -゚)『わたしが君に伝えた全てを。君が引き継いでくれればいいだけだよ』

それが難しいんだけどなぁ。僕は苦笑する。

川 ゚ -゚)『そんな事は無いさ』

クーさんはさらりと言ってのけた。

川 ゚ -゚)『お前もバカショボンと同じで難しく考えすぎなんだ。
     どれ。目を瞑ってみろ。そして、君がこの店で経験した全てを思い出すんだ』



483 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:12:35.17 ID:VAWkGF9I0
僕は言われたとおり目を閉じ、今までの事を思い出す。

ドクオの包丁をダメにしかけてしまった事。
   …あの時は本当に悪い事をしたなぁ。

ギコさんに包丁の使い方を教わった事。
   …厳しかったけど…今では本当に感謝している。

ツーさんと麺場で毎日のようにランチタイムを乗り切った事。
   …ツーさん。本当は自分が麺場を担当したかった筈なのに…
   僕に自分が知る全てのテクニックを教え込んでくれた。

ショボンさんと炒飯を作った事。
   …あの頃は毎日食事が炒飯だったっけ。

そして、勿論。仕事後にこのバースペースで過ごした無駄話だらけだったけど何より貴重な時間。

それだけじゃない。
ツン。しぃ。ジョルジュさん。アルバイトのイヨゥ。味にうるさい常連のお客さん。青果業者のおじさんまで。

ここで僕の回りにいてくれたみんなの顔が瞳の奥に現れる。

( -ω-)『…本当に色々な人に会って…色々な人に助けられて…色々な事がありましたお…。
      こんなに短い時間だったのに…こんなにたくさんの事があったなんて嘘みたいですお』

川 ゚ -゚)『そうだろう。しかし、それは何も特別な事じゃないんだ』

( ^ω^)『え?』

裏返った声を上げて僕は目を開いた。

488 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:14:13.39 ID:VAWkGF9I0
 川 ゚ -゚)『誰かが誰かの光になる。それは何も特別な事ではない。
      真剣に誰かを思いやり、時には本音をぶつけあって衝突する。
      それだけでいい。そうする事で人は誰かの道を少しだけ照らす事が出来る。
      それが集まればやがて大きな光になる。
      なにも難しくないんだ』

( ^ω^)『僕に…出来ますかお…』

僕は2度目の疑問を口にする。

川 ゚ -゚)『出来るさ』

クーさんは2度目の即答を返す。

川 ゚ -゚)『なぜならば…』

言いながらクーさんはその透き通る両手で僕の頬を包み込んだ。
その掌からはすでに存在感を感じなくなっていた。
頬に触れる感触もまるで無い。

川 ゚ -゚)『お前は…みんなからの光を全身に浴びて…こんなにも輝いているではないか。
     わたしには内藤。お前が全ての人を優しく照らす太陽のように感じられる。
     今だってお前はわたしを照らしてくれているんだ』

…でも、僕は忘れないだろう。
この悲しいまでに優しい掌の温もりを。




492 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:16:48.39 ID:VAWkGF9I0
 ( ^ω^)『僕が…クーさんの光…?』

考えた事もなかった。
だって、クーさんは僕にとっての道標【みちしるべ】で…永遠に手が届かない筈の存在だったから。

川 ゚ -゚)『内藤。わたしは思うんだ』

クーさんは僕の瞳をじっと覗き込みながら言う。

川 ゚ -゚)『光とは…一方通行では決して無い。
     誰かが誰かを照らす時。その彼もまた誰かの光を浴びている。
     そうやって誰かと誰かが導きあって、その輝きを増していくんだ』 

クーさんは真剣な表情でそう言った。

正直、僕には荷が重いと思う。
今まで僕は助けられてばっかりの存在だったし、誰かの為になんて考えた事もなかった。

でも…。
それでも、僕はやってみようと思う。
全ての人に希望の光を与え、その暗闇の人生を照らす。
そんな道標【みちしるべ】になってやろうと思う。

この人が僕を光だと言ってくれたから。
消えゆくその身を顧みず、僕に伝えてくれた最後のメッセージだから。

( ^ω^)『クーさん…分かりましたお。僕は…誰かの光として…これから生きていきますお』



498 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:18:09.41 ID:VAWkGF9I0
 川 ゚ -゚)『分かってくれたか』

そう言ってクーさんは満足したように笑った。
まるで、全てをなし終えた…一日の仕事を終えた皆が見せるあの笑顔だった。

川 ゚ -゚)『これでようやく…全て終わったな』

それは奇跡の時間が終わる事を告げる一言。
再び、永久の別れが始まる事を告げる一言。

( ;ω;)『…行ってしまうんですかお…?』

僕の問いかけにクーさんは小さくコクリと頷く。

川 ゚ -゚)『もう…力が…残っていないんだ。これから少しの時間だけ…一人にしてくれないか?』

その言葉に僕は首をこれでもかと横に振った。

( ;ω;)『僕は…僕は最後の瞬間までクーさんと一緒にいたいですお』

そんな僕を見てクーさんはいつも見せてくれていた微笑みを浮かべ、それでも僕と同じ様に首を振った。

川 ゚ -゚)『ダメだ…もうダメなんだよ』

そう言ってクーさんは立ち上がると、スカートの裾をそっと持ち上げる。

( ;ω;)『…え?…』

504 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:19:40.37 ID:VAWkGF9I0
 川 ゚ -゚)『見ろ内藤。
     わたしの終わりはもうここまで進行してしまっている。
     私自身全く想像していなかったのだが、
     消滅の進行を制御するにはとんでもない痛みが…
     そうだな。傷跡に焼けた鉄を押し当てられるような痛みを伴ってな。
     正直、今こうして話しているだけでも痛みで気を失いそうなんだ』

たくし上げられたスカートの奥。
そこには、本来あるべき細い足がすでに存在していなかった。
ちょうど膝から下が完全に消滅していて、
その切断部分(?)も流れ落ちる砂時計のようにゆっくりと消え去っていく。

( ;ω;)『…これは…ひどい…あんまりだお…』

薄い灯りのせいでよく分からなかったけど、
よく見ればその顔は心なしか青ざめ、額には玉の様な汗が浮かんでいる。

川 ゚ -゚)『内藤。
     死んでいる身とは言え、わたしだって女だ。
     惚れた男の前で痴態は晒したくない。
     どうか…わかってくれないか?』

それでもクーさんは顔をピクリとも歪めず、そこに立っていた。



506 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:20:44.06 ID:VAWkGF9I0
( ;ω;)『…分かりましたですお』

その確固たる決意と嘆願を織り交ぜた表情を見て、僕は席を立つ。

あぁ。
こんな時でも。
いや、こんな時だからこそなのか?
やっぱり、クーさんはクーさんだ。
どこまでも真っ直ぐで。
どこまでも凛々しくて。
どこまでも格好いい。

クーさんは向かい合って立つ僕の頬をすでに存在しない掌でそっと撫でると、
ゆっくりと顔を近づけてきた。

川 ゚ -゚)『これはカクテルの礼だ。
     ツンには言ってくれるなよ』

僕の唇にクーさんの柔らかいそれが押しあてられ、
1・2・3・4・5とちょうど数え終わったところで静かに…名残を惜しむように離れた。

川 ゚ -゚)『さよならは言わないぞ、内藤ホライゾン!!
     さぁ、行け!! わたしが照らした君の道をどこまでも駆けて行け!!』

その言葉を背に受けながら、僕は一人バースペースを後にした。
扉を閉じると、そこに背を預けて膝を抱えて座り込む。


そして、静かにその時が訪れるのを待った。


509 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:21:58.77 ID:VAWkGF9I0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー川 ゚ -゚)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

わたしは内藤が扉を出るのを確認すると、倒れこむように椅子に座り込んだ。
全身が酷く痛む。
時間はもう残っていなかった。
消滅は波が岩を削り取るようにゆっくりと。
だが、確実に体を侵食していく。

川 ゚ -゚)『っ!!』

わたしが命じると【欠片】はその姿を変え、元の結晶に姿を変えた。
宝石に例えるならばアメジスト。
それが【欠片】の正体。
だが、それはすでに色を失いただの白い石のように見えた。

余談だが、背中の翼は崩れ消え去ろうとしているがまだそこにある。
ひよこがプリントされた下着。
それこそが【欠片】だった。

川 ゚ -゚)『…なんだかスースーするな…高校時代、水溜りに尻餅をついたとき以来の感覚だ』

もし、あの時わたしの持つ【欠片】が下着だと教えてやったらギコはどんな顔をしただろう。
そう考えてわたしは一人吹きだしてしまった。

川 ゚ -゚)『…色々な事がありすぎた一日だったな』

わたしは想う。
わたしの人生とは一体なんだったのだろうか。


514 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:24:15.98 ID:VAWkGF9I0
 死にたくないのに殺され、気付いたら死の記憶を全て持って生き返った。

愛する人と再会しいきなり顔射され、幼女になり、空を駆けた。

親友と拳を交え、戻れない過去を語り、別れを告げた。

ライバルと雌雄を決し、愛する人と唇を交わし、そしてまたこの世を去ろうとしている。

それでもわたしは断言できる。
奇妙な…それでも最高の人生だったと。

川 ゚ -゚)『もし、生まれ変われるならばもう一度彼らとともに…』

そう言いかけて苦笑する。未練だな。

わたしは全く口をつけていなかったカクテル【エンジェル・キッス 〜天使の口づけ〜】を高く掲げた。

川 ゚ ー゚)『素晴らしい人生と…その仲間達に乾杯』

一息に飲み干した瞬間。
その時が訪れた。

慣れ親しんだバースペース内を白光が静かに弾ける。



その光が消え去った時。
わたしは完全にこの世界から消滅していた。

         飲み終えたグラスと、主を失った白い小石がカウンターテーブルに寂しく転がっていた。

522 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:27:00.30 ID:VAWkGF9I0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(主^ω^)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

( ^ω^)『みんな…終わりましたお』

扉が静かに開けられ、彼が姿を現した。
その右手には小さな白い小石が乗せられている。
僕はそれを受け取ろうとして手を止めた。

間接的とは言え、僕はこの世界の人達をひどく傷つけたのだろう。
愛する人を失う痛みを2度も味あわせてしまった僕に、これを受け取る資格はあるのか?
そう考えると、これ以上手が動かなかった。

( ^ω^)『バカな事考えてるんじゃないお。
       クーさんも僕らも…感謝こそしてるけど恨んでなんかいないお』

(主^ω^)『おっ?』

僕は彼の顔を見る。
彼もまた、僕の顔を見てニヤニヤと笑っていた。

(´・ω・`)『…!! そうか!! 【欠片】の…!!』

( ^ω^)『はい。そのとおりですお』

彼はしょぼくれさんから僕のほうに振り返ると、彼なりに真剣であろう表情で言った。


527 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:28:48.84 ID:VAWkGF9I0
 ( ^ω^)『…この一日。僕らはとても幸せだったお』

(*゚ー゚)『クーさんが死んじゃった時…とても悲しかった』

('A`)『あまりに突然すぎて…ここにいる全員がずっと心の奥底でそれを受け入れられずにいたんだ』

(*゚∀゚)『でも、クーさんは今日…わたしらにたくさんの贈り物をくれた…
     また消えちゃったのは悲しいけど…なんだか今はとても暖かい気分さっ!!』

( ^ω^)『ホントはお前なんかに渡したくないけど…受け取ってほしいお。
       クーさんもそれを望んでいたんだお』

彼はそう言って僕の手に無理矢理【欠片】を握らせる。

(主^ω^)『……!! なんだお…これ…』

【欠片】の世界の住人である僕には分かる。
力の大半を失ったはずのそれからは、溢れるほどの…何か別の力を感じる。
とても熱くて…重い。

( ^ω^)『…当然だお。この【欠片】にはクーさんの…僕らの想いが詰まっているんだお』

彼はそう言って【欠片】から手を離した。


533 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:30:39.07 ID:VAWkGF9I0
 ( ,,゚Д゚)『過ぎ去った時は戻らねぇ。
      絶対に後悔する道を選ぶんじゃねぇぞゴルァ』

(´・ω・`)『…想う心は力になる。
      不可能を可能にし、可能を不可能にするほどの力だ。
      それを忘れないでくれよ』

ξ゚听)ξ『悩む前に走りなさいっ!! 
     そんなあんたを支えてくれる人が必ずいるはずよっ!!』

(主^ω^)『……っ!!』

僕は顔を上げる。
もう僕は迷わない。
どんなに苦しくても、辛くても。
必ずFOXを倒し、僕の世界を取り戻してみせる。

僕は自分の欠片を握り締め、意識を集中した。
体が光に包まれる。

主^ω^『僕は行くお…FOXを倒したら必ずまたここに来る…
     そして、あの人のお墓にお礼を言いに行くお』

さようなら。この悲しくも美しい世界。そういい残して僕の体は別世界に飛翔した。
最後に僕にそっくりな声が叫ぶ声が聞こえた。



         さよならは言わないお!!
         僕達の想いを手にして君の道をどこまでも駆けて行けお!!

538 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:32:31.15 ID:VAWkGF9I0


    エピローグ TRAIN-TRAIN


( *^ω^)『…赤ちゃんって可愛いお〜』

あれから数年後。
僕とツンは結婚した。
恋愛結婚といえば聞こえはいいけど、ようするに出来ちゃった結婚だ。
数日前ツンは無事出産を終え、今は病院のベッドで退院を待っている。

('A`)『…可愛いかぁ? 人間つーかサルそっくりじゃねーか』

( ,,゚Д゚)『内藤には全然似てねぇなぁ…本当に内藤の種か?』

そんな事を言う2人をヒッキーがたしなめる。

(-_-) 『し、失礼なこと言っちゃダメですよ!!
    太ってて美味しそうなトコなんか内藤さんそっくりじゃないですか!!』

それでも、幸せ全開の僕には全く気にならない。






( ^ω^)『…お前後で体育館裏に来いお』


540 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:33:45.64 ID:VAWkGF9I0
 ( ゚∀゚)『まぁ…とにかくこれでお前も俺様と同じく、一人で勝手に死ねない体になったってワケだな。
     とにかくめでてぇや』

ジョルジュさんが本当に嬉しそうに言う。

( ゚∀゚)『ところで、お前母乳飲ませてもらったか?
     母乳って血の味がするんだぜ』

( ;^ω^)『…あんた何言ってるんだお』

横ではしぃとツンが楽しそうに談笑している。

(*゚ー゚)『お姉ちゃん、ほんとうにおめでとう』

ξ゚听)ξ『ありがと。でもようやくコイツのクーさん病が治ったと思ったら、
     今度はコイツこの子にベッタリなのよ。
     なんか、娘とコイツを取り合う未来が想像できて…今から頭痛いわ』

そう言うツンの表情には昔のような険しさは微塵も感じない。
母親になって変わったのだろうか?

(´・ω・`)『2号店の弟者君が子育てには相当自信があるらしいからね。
      今度色々聞いてみるといいよ。
      ところでもう名前は決めたのかい?』

(*゚∀゚)『ハイハイ!! わたし名付け親になったげるさっ!! 【たけし】なんてどうかなっ!!』

( ;^ω^)『…この子は女の子だお』

548 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:36:30.23 ID:VAWkGF9I0
 僕は騒がしい周囲に目を覚ました愛しい娘をそっと抱き上げる。
頼りないくらいに小さくて柔らかくて…。
それでも必死に全身から命を溢れ出させている。

子供が出来たと聞いた時。
僕は嬉しくて、近所の書店から名付け辞典を買いあさった。
姓名判断や流行。姓とのバランスまで全て重視して名前を決めようとした。

でも、それも始めてこの子の瞳を見た時。
全て吹き飛んでしまった。

この子が大きくなったら聞かせてあげよう。
君と同じ名前を持つ女性がいた事を。
どこまでも真っ直ぐで。
どこまでも凛々しくて。
どこまでも格好いい。
そんな女性がいた事を。

僕にもツンにも似つかない。
紫水晶色の瞳で不思議そうに僕を見つめる愛娘を見つめながら僕は言った。








( ^ω^)『名前ならとっくに決まってるお。
            この子の名前はーーーーー』

549 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:36:51.45 ID:VAWkGF9I0






         ( ^ω^)が世界を巡るようです






         【IN ( ^ω^)が料理人になるようです】





         川 ゚ -゚)が大空を駆けるようです     
                                  fin



588 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:43:29.26 ID:VAWkGF9I0




               【次回予告】





    推奨BGM  http://www.youtube.com/watch?v=_rGM-wPotW0









592 DJ(埼玉県) 2007/03/20(火) 00:46:21.78 ID:VAWkGF9I0
    ーーーーー19××年。地球は核の炎に包まれたーーーーー

     ついに合作初登場!! 

                    ( ^ω^)『お前はもう死んでいる』

     安価で未来が決まる!! 

                    ('A`)『たわばっ』

     全く新しい形のブーン小説!!      

                    ( ,,゚Д゚)『我が名は南斗5車星…炎のヒューイ!!』

    ( ^ω^)が世界を巡るようです 第11弾!!!

                    ξ゚听)ξ『お師さーーーーん!!』

     by ◆sHNGWXTAUA

                    (*゚ー゚)『俺の名前を言ってみろ…』

    ( ^ω^)('A`)( ,,゚Д゚)ξ゚听)ξ(*゚ー゚)川 ゚ -゚)

                    川 ゚ -゚)『我が人生に一点の悔い無し!!!!』


     君 の 安 価 が 合 作 を 作 り あ げ る ・・・・・・ 。

※本編と一部異なる台詞がございます。ご了承ください。


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