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【合作】( ^ω^)ブーンが世界を巡るようです

第18世界  心を開く◆ILuHYVG0rg

2 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:00:29.31 ID:7G1tpTq+0




( ^ω^)ブーンが世界を巡るようです


In( ^ω^)ブーンが心を開くようです





5 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:01:41.85 ID:7G1tpTq+0

どこを見回しても白い世界が広がる中、『彼』は飛び続けていた。
『DAT』の力によって、世界から世界へと移動する『彼』。

(主^ω^)「お……? 出口かお?」

あるひとつの場所が、他よりもいっそう光を放っている場所があった。
あそこだ、と思った『彼』は、急いでそちらへと向かっていく。

その世界に何があるのか分からない。
けど、フォックスの野望を止めるためには何がなんでもやらなくてはならないだろう。

果たして『DAT』はどこにあるのだろうか?

新しい世界への不安を押し隠しつつ、『彼』は光の中へと入っていった。




6 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:02:48.18 ID:7G1tpTq+0



('A`)「ブーン、大富豪しようぜ」

( ^ω^)「すまないお。今日は訓練と仕事で忙しいんだお」

(´・ω・`)「なんだ、残念だね」

( ^ω^)「しぃさんは暇だって言ってたお。ツンも誘って、4人でやったらどうかお?」

('A`)「じゃあ、そうするわ」

(´・ω・`)「またね」

12月の前半。
ブーンは『VIP』のビルにて、訓練と仕事の毎日を送っていた。

突如世界のあちこちで出現し、人間を殺し続けている『影』という存在。
それに対抗するために設立された『VIP』という政府組織。

色々と事件やらバトルやらに巻き込まれ、自分の特殊な能力を活かすために少年――ブーンは『VIP』に協力していた。
現在、昼間は戦闘訓練、夜は『影』の討伐という仕事を繰り返す日々が続いている。

そんなある晴れた日の午後、ブーンは日課の訓練を行うために、地下の剣道場に向かっていた。


8 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:04:46.83 ID:7G1tpTq+0

( ^ω^)「おいすー。クーさん、今日もよろしく頼みますだお」

川 ゚ -゚) 「ああ、やっと来たのか。思ったよりも遅かったな」

( ^ω^)「ちょっとドクオ達と喋ってたんだお。すまないお」

川 ゚ -゚) 「まあいい。では、さっそく素振りからだ。竹刀を持て」

クー、と呼ばれた女性は、この『VIP』に勤めるスタッフの1人だ。

普通の武器はまったく効かない『影』に対して、唯一有効な能力――『気』を操ることのできる、黒髪の綺麗な女性。
自分の戦闘技術の師匠でもあり、一緒に戦ってくれている仲間でもある。

( ^ω^)「ふっ! はっ!」

川 ゚ -゚) 「戻しが遅い! もっとすばやくだ!」

( ^ω^)「はいだお!」

クーの指導を受けて、ブーンは竹刀を何度も振り続ける。

『全ての道は素振りから』が彼女の信条らしく、訓練の最初は必ずこれがある。
時には1000回以上やらなくてはいけない時もあり、地味ながらもけっこうきつい。

ただ、今日は時間がないのか、はたまた気まぐれなのか、
100回程度で「よし、やめ」という指示が出て、ブーンはほっと息をついた。


9 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:06:10.93 ID:7G1tpTq+0

( ^ω^)「今日はいつもより早いお。何かあるのかお?」

川 ゚ -゚) 「まあ、色々とな。さて、次にあの光の剣でも出してもらおうか」

( ^ω^)「『剣状光』かお?」

川 ゚ -゚) 「厨二病っぽい名前はどうでもいい。早くだせ」

( ^ω^)「わかったお」

ブーンは手の平に意識を集中させ、白い光を発生させ始める。

その白い光が、ブーンの持つ『特殊能力』だ。
『影』に襲われた時に、突如現れたその能力。

時には『光の弾』となったり、時には光の剣になったりする、すごく便利なもの。

『影』を倒すことも、人間を傷つけることもできるその白い光。

今、ブーンは手の平に『剣』を作り、力強くそれを握った。

( ^ω^)「ふぅ……できたお」

川 ゚ -゚) 「よし、それで素振りをやれ。2000回程度でいいだろう」

( ^ω^)「ちょwwww 多い多いwwww」


11 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:07:12.96 ID:7G1tpTq+0

それから、腕立てや腹筋などの筋力トレーニングを30分。
剣術の達人であるクーと、模擬試合を1時間。

そしてその後は自主トレが30分入り、その日の訓練は終了。

終わった頃には日は傾きかけており、1日の終わりも近くなっていた。

だが、ブーン達にとってはそこからが本番だった。
夜こそが、彼らの仕事場だからだ。




14 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:08:55.68 ID:7G1tpTq+0



夜。虫も眠るような静けさの中。

『VIP』のビルの地下駐車場にて、ひとつのバイクが排気音を奏でていた。

狐『さて……今日も元気かな? 元気な人は大きな声でお返事だ』

( ^ω^)「おー!」
川 ゚ -゚) 「……おー」

バイクにまたがっているのはクー。後ろで彼女の腰に手を回して座っているのがブーン。

通信機から聞こえる明るい声に対して、対照的な返事をした2人は、今から仕事に向かう所だった。

狐『今日はそれほど多くはない。せいぜい1、2体程度の【影】しか出てこないと予測されているからね』

(*゚ー゚)『場所は都内のビル街です。出現予定時刻は午前4時。時間はありますので、ゆっくり向かってください』

狐『というわけで【クール】と【ピザ】、出勤だ!』

( ^ω^)「アイアムマム!」
川 ゚ -゚) 「……はぁ」

『VIP』の所長である狐の、ハイテンションで軽いおしゃべりはいつものことで、
クーはため息混じりにバイクを発進させた。


16 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:10:38.56 ID:7G1tpTq+0

12月の風は冷たいけれども、仕事の緊張感があるからか、それほど寒く感じない。
ぶるりと腕を震わせ、唇をかむブーン。

川 ゚ -゚) 「安心しておけ。今日は軽めだ」

( ^ω^)「はいだお」

バイクはどんどんとスピードを上げ、仕事先である都内のビル街へと向かっていった。



『影』は夜に活動する、というのは『VIP』内でもかなり知られていることだ。
どういう理由があるのかは不明だが、『影』は朝や昼には姿を見せず、夜になって人間を襲い始める。

全身真っ黒のモンスターのような姿をしているため、夜の暗闇の中では彼らは風景に溶け込んでしまう。

今もそうだった。

都内のビル街。
キャバクラやらバーやらが立ち並ぶ繁華街の裏道にて、『影』はひっそりとその姿を現し始めた。

ゴミ箱やダンボールの散らばる汚い裏通りは、自然と人通りも少ない。
『影』はその暗闇の中でひっそりと息をひそめていたのだ。
まるで獲物がかかるのを待つかのように。


17 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:12:06.41 ID:7G1tpTq+0

男「ひっひひ……さて、今日はこれでも打つかね」

1人の中年男が、静かに裏通りへと入ってきた。
その手には怪しげな薬のようなもの。
一目見ただけでも麻薬中毒者と分かる、暗く、クマがかかった目をしていた。

そんな男の後ろを、黒い物体がぴたりと張り付く。

男「ん……? なんだ?」

男は何かの気配に気がつき、後ろを振り返る。
だが、そこには何もない。黒い空間が広がっているだけだった。

男「……まあ、いいか。スピード、スピード〜」

男はたいして気にもかけずに、薬の入った袋へと意識を集中させる。

だが、確かに男の後ろに存在しているものがあった。

『影』。

ゆっくりとその長い腕を振りかぶり、男の頭めがけて振り下ろそうとしていた。
男は薬に夢中で、何も気がつかない。

そのまま脳天を勝ち割ろうと『影』が腕を振り下ろした……


20 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:13:30.28 ID:7G1tpTq+0

その時だった。

男「うおっ!」

『影』のそのまた後ろで、白い光が突如として発せられたのだ。

男「うお! まぶしっ! って、なんだこりゃあ!」

男がそれに気付いて後ろを振り返ると、ようやく『影』がそこにいることに気付き、驚きの声をあげる。
一方、『影』は唐突に発生した光に驚いてでもいるのか、その場で動きを止めたまま立ち尽くしていた。

男「……ば、化け物ー!!」

ようやく身の危険を察知した男は、叫び声をあげて逃げていった。
だが『影』はそれを追おうともせず、光が発せられている場所を見ては、静止していた。

何かを感じているのかのごとく。

「いたお!」

「私に任せろ!」

そんな中を、今度は2人の人間が乱入してくる。

1人は手に光の剣を持ち、もう1人は綺麗な刃紋を浮かべる日本刀を持っていた。


23 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:16:08.02 ID:7G1tpTq+0

「はぁ!」

まず、日本刀を持っていた女性が『影』に切り込む。

一閃した刃が、簡単に『影』の腕を両断してしまう。
『影』はその時になって敵が現れたことに気付き、反対側の腕で反撃を試みた。

「やらせないお!」

だが、もう1人の光の剣を持っていた少年が、その攻撃を受け止めた。
ギシリ、という音が少年の足から発せられるが、光の刃は確実に『影』の腕を止めている。

「終わりだ!」

その間に、女性が一足飛びに『影』へと飛びかかった。

綺麗な剣閃が描かれ、『影』の身体は真中で横に両断。

影「グ・・・・ギャガアアア!」

激しい断末魔と共に、『影』は砂のように分解していき、最後には完全に消滅した。

全ては裏通りでの出来事であったためか、表通りのにぎやかな人たちにはその声は届いていない。
再び裏道に静けさが戻り、2人の男女はそれぞれ武器をしまった。


24 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:17:53.47 ID:7G1tpTq+0

「ふぅ……終わったお」

「まったく……所長が渋滞のことを計算に入れてなかったから、えらく時間がかかってしまった。
 あとで文句を言わなければ」

「けど、間に合って何よりだお。被害者もいないみたいだお」

「ああ……ん? そこに誰か倒れているぞ?」

女性が指差したのは、先ほど光が発せられた場所だった。
そこには、1人の少年らしき人が倒れていた。

まさか『影』の犠牲者か? と思った男女は、急いで少年に近寄っていく。

「お? この人……」

「ああ……これは不思議な」

少年の顔を見た男女は、驚きの色を隠させなかった。

なぜなら、

( ^ω^)「……僕と似てるお」

(主―ω―)「うーん……お腹はいっぱいだけどデザートはほしいお……ムニャムニャ」



26 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:20:02.56 ID:7G1tpTq+0



狐「話は分かった」

(主^ω^)「本当ですかお!」

川 ゚ -゚) 「信じられない話ではあるがな……」

所変わって、『VIP』のビル。

仕事が終わったら、狐に報告して風呂に入って寝るだけだったはずだが、
今日は事情が違っていた。

仕事の最中に見つけた少年――ブーンにとてもよく似た少年を保護し、連れ帰ったのだ。
バイクの3人乗りがかなり厳しかったことは置いておき、この少年は『VIP』のビルに戻った途端に目を覚まし、
色々と意味不明なことを喋りだしたのだ。

あまりにもうるさく色々と言ってくるので、会議室で彼の話を聞くことにした。

今、この部屋にいるのは狐、クー、ブーン、しぃ、そして『VIP』の一員であるぃょぅ、モナーだ。


29 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:21:56.71 ID:7G1tpTq+0

(主^ω^)「僕は別世界から来たんだお! 『dat』というものを探しに!」

最初は信じてなどいなかった。

それはそうだろう。「別世界」だとか「dat」だとかいう話を信じろという方が無理がある。
だが、この少年の目と、彼から感じる不可解な気配が、信じさせるに値する何かを生じさせたのだ。

彼が言うには、それが『dat』の気配なのだという。
彼自身ひとつの『dat』を身につけており、この世界の人にはなんとなくそれがわかるのだとか。

川 ゚ -゚) 「にわかには信じられない話だ。別の世界があるだとか、『dat』だとか……」

( ^ω^)「けど、確かに変な感じはするお。信じてもいいって感じが……」

狐「それは私も同意見だ」

狐が立ち上がり、少年の話をまとめたホワイトボードの前に立つ。

狐「つまり、この世界のどこかにある『dat』を見つければいいわけだね」

狐は『dat』という単語を棒で指し、「ふむ」と言葉を切る。

狐「そうしなければ、この世界にも悪影響が及ぶかもしれない、と」

(主^ω^)「そうだお! だから、手伝って欲しいんだお!」

川 ゚ -゚) 「ふむ……」


30 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:23:50.07 ID:7G1tpTq+0

会議室にいた全員が腕を組み、黙考し始めた。

『dat』という物質を探すために、協力して欲しいという少年。
これをどう受けとめていいのか、みんな迷っているような表情を浮かべていた。

そんな中、

( ´∀`)「都合のいい言葉、だモナ」

ずっと黙っていたモナーが、口を尖らせて少年に辛い言葉を向ける。

( ´∀`)「この世界にいる人に、その話をすれば絶対に手伝ってもらえるとでも思っていたのかモナ? それはさすがに楽天的すぎるモナ」

(*゚ー゚)「モナーさん、それは言いすぎ……」

(主^ω^)「そりゃあ……自分でもおかしいと思うお」

少年は顔をうつむけ、一瞬自分の行いを恥じたように顔を赤めるが、
しかし次には決意を秘めた真剣な顔に変わり、みんなの顔を眺めるように顔を上げた。

(主^ω^)「直感でしかないけど……この人達なら、きっと大丈夫と思ったんだお。
      この人達なら……僕を助けてくれるって」

( ´∀`)「……」


32 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:25:48.49 ID:7G1tpTq+0

(=゚ω゚)ノ「まあ、こいつの言うことは気にしないでいいょぅ。ただのツンデレだから」

( ´∀`)「ぃょぅ!」

モナーがぃょぅを殴るように腕をあげるが、ぃょぅは早々に席を立ち、少年の横に立つ。

(=゚ω゚)ノ「みんな、キミを助ける気満々だょぅ。大船に乗った気分でいてくれていいょぅ!」

(主^ω^)「ほ、本当かお?」

狐「まあね」

(*゚ー゚)「信じられない話ではありますが……あなたの目は嘘をついていませんしね」

川 ゚ -゚) 「私も信じていい」

( ^ω^)「僕は最初から信じてたおwwww だって僕と同じ顔してるしwwww」

( ´∀`)「……まあ、そういうことだモナ」

(主;ω;)「ありがとうだお……」

結局、迷ってはいても、みんな少年の話を信じていたのだ。

彼の純真な心と、まっすぐな目。
それだけでも信ずるに値する。

そう彼らは思っていた。


34 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:27:37.42 ID:7G1tpTq+0

対策やこれからのことについては、翌日以降に話すことにして、今回はそれでお開きとなった。
もう外は朝が訪れつつあり、まったく寝ていないブーンやクーにとってはなかなか辛くなってきたからだ。
少年もまた疲れているようで、ビルの一室を借りて休憩を取ることになった。

みんながそれぞれの部屋に帰ろうとしていた時、

狐「そういえば、キミの名前はなんと言うんだい?」

(主^ω^)「あー……あれ? 忘れてるお」

川 ゚ -゚) 「世界を行き交っている時の影響か? 何にしろ、名前がないと不便だぞ」

(主^ω^)「じゃあ、好きに呼んでくれていいお」

少年の名前を決めることになり、会議室の中でもう一度各員の話し合いが行われた。

ブーンと似ているから、「2号」だとか「セバスチャン」だとかいう意見が出てきたのだが、

狐「ここは私のネーミングセンスが冴え渡る時だね」

狐がいきなり立ち上がり、ホワイトボードの前で黒ペンを握った。


39 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:31:25.60 ID:7G1tpTq+0

彼は『影』だとか、『ピザ』『クール』といったスタッフの呼称まで決めており、こういうことが得意なのだ。

ただ、センスがいいわけではない。決して。

狐「キミの名前は……」

(主^ω^)「ゴクリ……」






狐「B´(びーだっしゅ)だ!」





後から聞いた話によると、この名前は某格闘ゲームから取られた名前だとか。




41 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:33:03.86 ID:7G1tpTq+0



翌日。

全国的に昼が訪れていた頃。

( ⊃ω`)「んー……眠いお、眠いお」

ブーンはようやく目を覚まし、ベッドから起き上がってた。

そして、その横には……

(主⊃ω`)「ほんとに眠い……」

B´も一緒に寝ていた。

( ´ω`)(主´ω`)「あと5分は寝ていたいおー」

('A`)「……ハァ」

(´・ω・`)「同じような人間が2人いるってのは、なかなか面倒なことだね」

('A`)「ああ」

ブーンの友達であり、普通の高校生であり、そして彼と同じ部屋で生活しているドクオとショボン。
2人は面倒くさそうに、大きなため息をついていた。


45 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:34:37.00 ID:7G1tpTq+0

これまで、彼らはブーンの面倒を多く見てきた。
気を抜けば夕方まで寝ているブーンを起こすために色々と苦労していたのだが、今その労力が二倍になっているのだ。

ため息がつきたくなるのも当然だろう。

('A`)「ほら、さっさと起きろ。クーさん達が待ってるぞ」

(´・ω・`)「まだ寝るというなら……」

('A`)(´・ω・`)「ぶ ち こ ろ す ぞ」

( ^ω^)「んー……仕方ないお。B´も起きるお」

(主^ω^)「分かったお」

ようやく起きたブーンとB´。
ドクオ達とは早々に別れ、彼らは会議室へと向かっていった。

なんでも『dat』に関しての対策を話し合うための会議するだとか。


46 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:36:24.66 ID:7G1tpTq+0

( ^ω^)「やめとーけと、言うべーきかー♪」

(主^ω^)「どうせ徒労だろー♪」

( ^ω^)「お? 覚えたのかお?」

(主^ω^)「一晩中聞いてたら、さすがに覚えるお。悪いインターネットに毒されてしまったお。
       にちじょーを壊すなよー♪ 俺はふつーに怠けるー♪」

( ^ω^)「そうだ!♪ って、すごいお! じゃあ、次は……
       ふーりむーくなー♪」

(主^ω^)「涙をみーせるなー♪」

( ^ω^)(主^ω^)「うぉうぉうおー! 明日を取り戻すーんだー!♪」

ブーンとB´は、昨日一晩中部屋の中に流れていた音楽を口ずさみながら、会議室の前に立つ。

( ^ω^)「入りますお」

狐「やあ、やっと来てくれたか」

川 ゚ -゚) 「遅いぞ」

( ^ω^)「ご、ごめんなさいだお」


49 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:38:17.71 ID:7G1tpTq+0

狐「さて、事はそれほど難しくはない」

狐が示したのは、プロジェクターで移されたどこかの地図だった。

狐「『dat』という謎の物体を、どのようにして探せばいいのか私達も頭を悩ませていたのだが、
  つい先日届いた『彼女』からのFAXに、有力な情報があった」

(主^ω^)「『彼女』?」

川 ゚ -゚) 「簡単に言えば、情報をくれる協力者のようなものだ。まあ……特殊な能力は持っているがな」

(*゚ー゚)「『影』に関する情報も彼女から仕入れています」

『影』については、昨日寝る前にB´にだいたい話してしまった。
彼にとってはこの世界の出来事なんてどうでもいいかもしれないのに、かなり熱心に聴いてくれたものだ。

(主^ω^)「世界にはまだまだ不思議な人がいるものだお……」

狐「キミが言うとかなり具体的というか、意味深というか……まあいい。
  とにかくそこに書かれていたのは、『満月の夜、仮の遊びの場所にて異質なるものが同質化する』というイメージだ」

(=゚ω゚)ノ「……異質なるもの、は『dat』かょぅ?」

( ´∀`)「けど、仮の遊びの場所? 同質化? よく分からんモナ」


52 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:40:14.06 ID:7G1tpTq+0

川 ゚ –゚) 「遊びの場所は、これまでの予言でもよく使われている言葉だな……確か『遊園地』だったか?
     けれども、仮という言葉が頭についているということは……遊園地の建設途中か、もしくは中止になった場所、といったところか」

狐「ご明察。そして、それに該当する場所はかなりあるんだよね。けど、もうひとつ予言がある。
  それは、ある建設が中止になった遊園地に、大量の『影』が現れる、という奇妙なものだ」

川 ゚ –゚) 「大量の『影』か……」

(;^ω^)「め、めんどくさそうだお」

狐「これらをどう退治するかは後回しにして……問題は、このふたつの予言が、同時に現れるなんてあまりにできすぎている。
  そして、『同質化』という『彼女』の言葉……私はひとつの仮説を立てた。B´君」

(主^ω^)「な、なんですかお?」

狐「『dat』というのは、この世界に何らかの影響を及ぼすかもしれない……そう言っていたよね?」

(主^ω^)「可能性として、だお。絶対に影響があるわけじゃないけど……ありえるお」

狐「私は思うんだ。もしかすると、『dat』は『影』の中にあるのではないか? とね。『同質化』とはつまり……」

川 ゚ -゚) 「『影』と同化してしまった……ということか」

狐「そういうこと」


54 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:42:37.38 ID:7G1tpTq+0

狐の仮説によると、『dat』は『影』と同質化してしまい、
その影響で建設中止の遊園地に大量の『影』が集まることになってしまったのでは? というものだ。
確かに『影』は1度にそんな何十体も出るようなものではない。せいぜいひとつの場所に2、3体だ。
その不自然さから考えて、その仮説は十分ありえるような話の気がする。

『dat』というものの力が、あまりよく分からないこともあるし。

川 ゚ -゚) 「『dat』があるにしろないにしろ、そこに『影』が発生するのならば、私達が退治しに行かなくてはならないと思う」

( ´∀`)「同感だモナ」

狐「もちろん、『影』退治も行う。今回はそれと並行して、『dat』探しもやってもらうことにするよ。
  今回出動するのは……」

ごくり、と全員が息を呑む。

狐「ブーン君とクー君……の2人かな」

( ´∀`)「えー」

(=゚ω゚)ノ「僕とモナーは仲間はずれかょぅ?」

狐「勘違いしないでくれよ。今日は他にも『影』が現れる場所はたくさんあるんだ。
  ブーン君とクー君がひとつの場所にしか行けない分、2人にはかなり頑張ってもらわないと」

( ´∀`)「了解……だモナ」
(=゚ω゚)ノ「今日はこれで出番終了かょう……」


58 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:45:14.32 ID:7G1tpTq+0

モナーとぃょぅが不服そうな顔をしている間に、狐がB´に近寄ってきて、その肩に手を置いた。

狐「B´君、キミも一緒に行ってもらうよ。『dat』を探し当てるには、キミの持っている『dat』も必要になるかもしれないし」

(主^ω^)「元からそのつもりだお! むしろ、協力してくれることに感謝してるお!」

狐「そうか……この2人がついていけば、きっと大丈夫だ」

川 ゚ -゚) 「安心しろ」

( ^ω^)「大船は沈まないんだおwww」

(主^ω^)「ありがとうだお!」

ペコリ、とB´は頭を下げた。

廃墟となった遊園地に向かうのは、今夜。
真夜中、『影』が出現する時刻に合わせて、その場所へと向かうこととなった。




59 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:46:40.83 ID:7G1tpTq+0



夜に『dat』探しを決行することとなり、今日も今日とてトレーニングの時間がやってきた。

ブーンはいつもどおりに、地下の剣道場に向かうが、今日はドクオとショボン、ついでにB´も一緒だった。

なぜ彼らが一緒なのか?
ドクオとショボンはまだ分かる。彼らは最近、モナーに色々と稽古をつけてもらっているらしい。
それが役に立つかは分からないが、身体を動かしたい年頃なのだと、2人は言う。

ではB´は何故か?
なんでも、『影』を倒すための能力『気』に興味があるのだとか。

(主^ω^)「今夜一緒に行くのなら、仲間のことをよく知っておかないといけないお!」

川 ゚ –゚) 「それは何かの教訓か?」

(主^ω^)「まあ……色々とあったんだお!」

B´はそう言うだけだが、とにもかくにも別れたブーンとクーの訓練は始まった。
ショボンとドクオは別室で訓練。B´はブーンの訓練を見学することになった。

いつもどおり、竹刀の素振りから始まる。

川 ゚ –゚) 「今日は大仕事が待っているからな。軽めに行くぞ」

( ^ω^)「はいですお!」


60 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:48:21.07 ID:7G1tpTq+0

軽め、という言葉は嘘ではなく、いつもは何百回もする素振りが、今日は50回で終わった。
光の剣やらを使った実践練習もそれほど長くはなかった。
やはり何が起こるか分からない場所に飛び込むとなると、体力は温存すべきなのだろう。

(主^ω^)「ひゃー、ブーン君はそんな光の剣を出せるのかお。うらやましいお」

( ^ω^)「僕と同じ顔してるんだから、きっとキミも出せるお! やってみるお!」

川;゚ -゚) 「同じ顔、というのは理由になっていない気がするが」

(主^ω^)「よーし、やってみるお!」

B´はおもむろに立ち上がり、やる気満々の顔でブーンの横に立つ。

(主^ω^)「今までにも『dat』が武器になってくれたりとかしてくれたんだお!
      今回もいけるかもしれないお」

川 ゚ -゚) 「ほう」
( ^ω^)「こう、ズバー! ドバー!って感じで出すんだお!」

ブーンのよく分からない長嶋風アドバイスを聞き入れながら、
B´は精神を集中させ、ブーンと同じように掌を前に突き出した。


64 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:50:24.63 ID:7G1tpTq+0
(主−ω−)「……」

(主 ゚ω゚)「ビーーーーム! サーーーーーーベルッ!」

B´の気合満点の叫び声。
それと同時に光の剣がその掌に……

(主^ω^)「あ、あれ?」

現れない。

川 ゚ -゚) 「……」
( ^ω^)「……」

シーン、と静まり返る部屋の中。
B´の叫び声が、むなしくこだましているだけで、その掌から不思議なピンク色のサーベルが出てくるわけもなかった。

B´は身もだえするように自分を抱きしめた。

(主´ω`)「なんという恥ずかしさ。これは明らかに赤面してしまう……」

( ^ω^)「ど、どうしてビームサーベルなんだお?」

(主´ω`)「世界を巡ってる間に教えてもらったロボットの武器だお。けど……
      ペロ……これは練炭自殺フラグ!」

川;゚ -゚) 「まあ、気を取り直して訓練再開だ。B´はそこで見学しておけ」

(主´ω`)「はいですお……」


67 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:52:53.90 ID:7G1tpTq+0

それから訓練は続く。
ブーンは組み手やらコンボの練習やらを一通りこなし、B´は横で見学するという時間が過ぎ去っていく。

ξ゚听)ξ「やってるわね」

そうしてひとまずの休憩をとっていると、同じくこの『VIP』で保護を受けているツンが現れた。
彼女は、ブーンやドクオ達と同じ高校の出身であり、たびたびこの剣道場に現れては、色々とマネージャーらしき仕事をやってくれている。

( ^ω^)「おー、ツン、差し入れかお?」

ξ゚听)ξ「まあね。はい、水とチョコ」

( ^ω^)「39ー」
川 ゚ -゚) 「すまないな」

(主゚ω゚)「……」

B´が呆然としていた。ツンの顔を見たまま、動きを止めている。
まるで綺麗な絵画を見て、衝撃を受けているような……

( ^ω^)「B´? どうかしたのかお?」

(主゚ω゚)「か……」

川 ゚ -゚) 「か?」

まさか、ツンが『dat』を持っている、なんていう衝撃的な展開になるのか?
それとも、彼女が敵に操られて、今も心の中で彼女と敵の心が戦っているとか?


71 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:55:03.69 ID:7G1tpTq+0

(主^ω^)「かわいいお!」

B´がそう叫んだ瞬間、全員がずっこけた。

ξ////)ξ「な、何を!?」

(主^ω^)「マイスゥイートエンジェール! こっち向いてほしいお!」

B´はツンの前にひざまずき、騎士がお姫様に中世を誓うような手の甲へのキスをしようとしてくる。
ブーンは慌てて2人の間に入り、それを阻止した。

(;^ω^)「だ、ダメだお! ツンは僕のだお!」

ξ#////)ξ「誰があんたのものなのよ!」

(主^ω^)「ちょっとぐらい味見を……!」

ξ/////)ξ「ちょ、やめ……!」

(  ゚ω゚)「アッー!!」

川;゚ -゚) 「休憩の時ぐらいはちゃんと休め」

剣道場の中はカオスになってきた。




73 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:56:41.02 ID:7G1tpTq+0


訓練もほどほどに終わり、夕方。
夕食を早めにすませ、ブーン達は夜に備えて仮眠を取ることにした。

夜中の4時、5時まで仕事が続く事だってある毎日。仮眠は重要な時間だった。

ブーンとB´は、自分達の部屋のベッドで、電気を消して眠っていた。

( ^ω^)「……んん、あれ……」

だが、ブーンはなぜかその日、途中で起きてしまった。
時計を確認すると、まだ夜の8時。
遊園地に行くのは11時ぐらいになってからなので、まだまだ時間はある。

( ^ω^)「……寝なおすかお」

ブーンは布団をかぶりなおし、目を瞑る。
羊の数を数える、なんて古典的なことはやらないが、なるべき頭を真っ白にして眠りに落ちようと努力していた。

が、突然聞こえてきた声に、ブーンは耳を傾けざるを得なかった。

「……父さん……僕は……しますお」

( ^ω^)「……B´?」

(主―ω―)「僕は……世界を救うお……守るお……父さん」

( ^ω^)「……」


77 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 21:58:51.22 ID:7G1tpTq+0

( ^ω^)「守る……かお」

ブーンは手を頭に置いて、考え始めた。

守る。その言葉は戦うための理由となる。

自分も、友達を、知り合いを、みんなを守るために戦おうと決意した。それはB´と同じだ。

だが……迷いがある。
守るために、他人の守りたいものを踏みにじることは、果たしていいことなのだろうか?
それは結局、悲しいことに過ぎないのではないだろうか?

戦っている間、ずっと心の中に渦巻いているその迷い。

どれだけ考えても答えが出ることはない。

(主―ω⊂)「んん……」

( ^ω^)「B´? 起きたのかお?」

(主^ω^)「あれ……もう時間かお? ブーン君も起きてるということは……」

( ^ω^)「いや……なんか今日は眠れないんだお」

(主^ω^)「そうかお……」

B´が起き上がり、近くの冷蔵庫から水を取り出す。
一口飲んで、「あー、眠いお」と呟いた彼は、再び寝ようとベッドに入っていった。


79 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 22:00:41.93 ID:7G1tpTq+0

(主^ω^)「ブーン君も早く寝ないとダメだお」

( ^ω^)「……分かってるお」

(主^ω^)「なら、おやすみだお」

B´はそのまま目をつむり、静かになった。

ブーンもまた布団に入り、眠ろうと努力してみる。
だが、頭が真っ白になるには程遠く、色々と考えてしまう。これは典型的に眠れないフラグが立ってしまったようだ。

( ^ω^)「B´……」

(主―ω―)「んー? むにゃむにゃ……」

( ^ω^)「キミは……守ることに迷うことは、ないかお……?」

(主―ω―)「むにゃむにゃ……」

( ^ω^)「他人を傷つけることが……嫌にならないかお? 仕方ないとしても、それを否定する気にならないかお?」

(主―ω―)「……」

B´からの返事がない。

どうやら本当に寝てしまったようだ。


83 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 22:02:02.95 ID:7G1tpTq+0

ブーンはため息をつき、もう一度目を瞑った。
悩んでも仕方ない。今は彼の手助けをすることだけを考えるべきなのだ。

頭が真っ白になっていき、そろそろ眠れそうだな、と思った矢先のことだった。

「……それでも守りたい世界があるんだお」

その言葉は、確かに聞こえた。

けれども、返事はしなかった。
それに対する言葉を、自分はまだ見つけていなかったから。




85 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 22:04:17.11 ID:7G1tpTq+0



昼はすぐに過ぎ去り、夜が訪れる。
ブーン達は夕方に十分仮眠を取り、起床した後は作戦の準備に余念がなかった。

今回の仕事はいつもとは違う。『影』を退治しつつも、『dat』を探すという異質なもの。
しかも『影』を倒すことのできる『気』の使い手は少なく、
他の場所への派遣も行わないといけないため、必然的に戦いは厳しいものとなるだろう。

だが、自分たちにはやらなくてはいけないことがあるのだ。

『VIP』には、『影』を退治するということ。
B´には、『dat』を探すということ。

どちらも重要であり、必ずやりとげなくてはならない。

( ^ω^)「B´、そろそろ時間だお」

(主^ω^)「分かったお」

真夜中の部屋の中、ブーンとB´は重い荷物を抱えて仕事に向かおうとする。

('A`)「行くのか?」
(´・ω・`)「気をつけてね」

( ^ω^)「今日も無事で帰ってくるお。大丈夫だお」

(主^ω^)「短い間だったけど、お世話になりましたお!」


87 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 22:05:51.94 ID:7G1tpTq+0

('A`)「まあ……お世話したよな、うん」
(´・ω・`)「朝は起きないし、食事は食べ散らかすし、ポーカーは異様に強いし……久々にぶち殺したくなったよ」
('A`)「ポーカーはお前が弱いだけだろ」

(主^ω^)「ありがとうだお……本当に」

('A`)「頑張れ、元の世界に帰れるといいな」
(´・ω・`)「次は負けないからね」

( ^ω^)「そろそろ行くお、B´」

(主;ω;)「ぐすっ……分かったお」

短いながらも親密になった友達との別れをおしむB´を引きつれ、ブーンは地下の駐車場へと向かう。
今日は3人なので、バイクではなく車で向かう予定だ。

ビルの廊下を歩くブーンとB´。
まだ泣き顔になっているB´がそろそろうざくなってきたブーンだったが、
仕方ないとこらえつつ歩き続けていると、前に人影が見えた。

(*゚∀゚)「……」

( ^ω^)「つーさん……かお?」

つー、とはしぃの姉で、この『VIP』の療養施設にて治療中の女性だ。
なんでも精神に関する病を持っているらしく、その言動は時々意味不明で、理解しがたい。

だが、ブーンは彼女になんらかの親近感を持っており、『VIP』に来て以来、何かと彼女と話す機会が多かった。


91 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 22:07:49.16 ID:7G1tpTq+0

今は自分の部屋にいるはずのつーが、何故ここにいるのか?

首を傾け、「何してるんだお?」と尋ねると、つーはにっこりと笑って答えた。

(*゚∀゚)「その人ぉ〜? 違う光持ってるのってぇ〜?」

(主^ω^)「? この人はいったい……」

( ^ω^)「違う光かお? そうだお。この人は別の世界から来たんだお」

(*゚∀゚)「へぇ〜、よろしくねぇ〜。みんなにもよろしくねぇ〜。彼にもよろしくねぇ〜」

(主^ω^)「は、はぁ……」

( ^ω^)「すみせんだお、つーさん。今は急いでるので、これで失礼しますお」

(*゚∀゚)「うん、頑張ってぇ〜」

笑顔で見送るつーに背を向け、ブーンとB´はエレベータに入り、地下のボタンを押す。
扉が閉まる瞬間、やはりつーの笑顔が見えたが、ブーンは彼女に手を振って応えるにとどまった。

(主^ω^)「あの人はなんなんだお?」

( ^ω^)「つーさんだお。まあ……気にしないでいいと思うお。今は『dat』が大事だお」

(主^ω^)「そうかお……」


94 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 22:09:26.35 ID:7G1tpTq+0

エレベータが地下に着き、駐車場が見えた。
すでにクーが車に乗り込んでいる。

赤いスポーツカー。相変わらずかっこいいものに乗る人だ。

川 ゚ -゚) 「よし、いくぞ。作戦に関しては所長が行き道で話してくれるはずだ。
      と言っても……『影』を倒しつつ、『dat』を探すぐらいしかないだろうが」

ブーンとB´が乗り込むと、車は発進する。

向かう先は遊園地。




95 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 22:11:22.46 ID:7G1tpTq+0


その場所は、元々は外国と日本の企業が手を組み、地域の活性化を促すための一大プロジェクトの元で建てられた遊園地があった。
だが、つい最近の不景気と業績不振があいまって、結局は元締めの会社が撤退し、プロジェクトは中途半端に座礁してしまった。

そうして廃墟となった遊園地だけが残ってしまったわけだ。
遊園地の中は、大体の設備が整っている、メリーゴーランドやジェットコースターといった基本的なものから、
3Dお化け屋敷や、新世代の映画館まで。中身は完全ではないが、建物はほとんど完成していると言っていい。

ただ、その建物の大半はぼろぼろだったが。

遊園地の入り口の前、大きなゲートの横に、赤いスポーツカーは停まった。

川 ゚ -゚) 「よし……ついたぞ」
( ^ω^)「ここかお……」

ブーン達は車から降りて、ゲート前に立つ。
大きなゲートだ。おそらくチケットを持ったお客さんが、ここを通って夢の遊園地へと入っていく設定だったのだろう。
まるで某ネズミーランドのようだった。

(主^ω^)「……」

( ^ω^)「B´? どうかしたのかお?」

(主^ω^)「ここにあると思うお……なんとなく、だけど」

川 ゚ -゚) 「『dat』か?」

(主^ω^)「確証はないけど……多分」


98 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 22:13:22.63 ID:7G1tpTq+0

狐『こちら狐。どうだい、状況は?』

無線機から狐の声が聞こえる。
クーがそれに応えた。

川 ゚ -゚) 「ここにある可能性が高いようです。これから捜索に出ます」

狐『そうか……ここからはあまり助言ができなさそうだ。思ったより他の場所での【影】が多い。
  ぃょぅ君とモナー君のサポートに回らざるを得なさそうだ』

川 ゚ -゚) 「わかりました。こちらのことは任せてください」

狐『頼むよ』

通信が切れた。
どうやら『VIP』本隊の援護は期待できなさそうだ。
まあ、『気』を使いこなすことの出来る人間が少ないから、仕方ない。

ぃょぅとモナーの身を案じつつ、ブーン達は遊園地の中へと入っていく。

『影』の気配はあまりしなかった。数が多いとなると、気配がそこかしこでしてもおかしくはないはずなのに、どうにも様子が変だ。

メリーゴーランドの横を歩きつつ、周りを見渡す。

人っ子一人いない遊園地は、少し不気味だ。

クーは刀に手をかけ、ブーンはいつでも『剣状光』を出せるように用意しておく。
B´は2人の後ろをおろおろと着いて来ていた。


104 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 22:15:56.53 ID:7G1tpTq+0

「はーはっはっはは!」

(;^ω^)「……今、変な笑い声が聞こえたんですけど」

川;゚ -゚) 「……心配するな、私もだ」

(主^ω^)「この感じ……まさか!」

戸惑いつつ周りに目を凝らすと、1人の男がメリーゴーランドに乗っているのが見えた。
回らない、電気も通ってないメリーゴーランドに乗ってどうするのか不思議だったが、男はたいそう楽しそうに笑っている。

(゜3゜)「はーっはっはは! やはりここに居たか! 『dat』を集める者よ!」

(主^ω^)「お前! フォックスの手下かお!」

(゜3゜)「そういうことにしておこう! 私の名はポセイドン! 『dat』は渡さんよ、お前にはな!」

青年らしい、パーカーとGパンを履いてはいるものの、年相応に老け込み、少々テンションが高い金髪のおっさんがそこにはいた。
ブーンとクーは呆然と彼を見ていたが、B´は敵意むき出しで彼に罵声を浴びせていた。


105 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 22:17:38.87 ID:7G1tpTq+0

(主゚ω゚)「お前になんか絶対に渡さないお!」

(゜3゜)「ふん、『dat』が『影』に埋め込まれているとも知らず、よくそんな強気なことを言えるものだな」

川 ゚ –゚) 「何! やはり『dat』は『影』と同化していたのか!」

(゜3゜)「な、なぜそのことを知っている!?」

( ^ω^)「いや、あんた今、自分で言ったし……」

フォックスの部下というのは、少しばかり間抜けらしい。

(゜3゜)「く、くそぅ! だが、どの『影』が持っているかは、お前達には分かるまい! やはり私が先に『dat』を見つけるのだ! はーっはっ!」

ポセイドンという男は、メリーゴーランドから飛び降り、ものすごいスピードで走り去っていった。
おそらく『dat』を持つ『影』を探しに行ったのだろう。あの口ぶりからして、早々に見つける方法を知っているのかもしれない。

(主^ω^)「くっ! させないお!」

川 ゚ -゚) 「待て! B´! 1人で行くな!」

何をあせっているのか、B´はいきなり走り出すと、ポセイドンが消えた方向へと向っていく。
いくらなんでも1人で行くのは危険すぎる。
ブーンとクーは彼の後を追おうとする。


109 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 22:19:42.79 ID:7G1tpTq+0

が、

川 ゚ -゚) 「っ! この気配は!」

( ^ω^)「か、『影』かお!」

突如、周りに『影』の気配がしたと思った瞬間、暗闇に紛れていた『影』が立ちふさがるように現れた。
かなりの数だ。見ただけでも数十体はいる……これだけの数、前例がない。

川 ゚ -゚) 「まずい……! B´の前にも現れたら……!」

( ^ω^)「くそぅ! 5秒で倒してやるお!」

どこからか「5秒は無理です」という戦闘補助コンピュータの声が聞こえてきそうだったが、
それはともかくとして、クーは刀を抜き、ブーンは『剣状光』を手に持って『影』に相対した。




114 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 22:22:01.70 ID:7G1tpTq+0


一方、B´はポセイドンを追って走り続けていた。

(主^ω^)「はぁ、はぁ……どこに行ったんだお。あいつを追いかけてれば、きっと『dat』も……!」

ポセイドンが『dat』を見つけるなんらかの方法を持っているとすれば、闇雲に探すよりも彼の後を付けた方がいい。
そう思って走り出したのだが、ポセイドンの姿を見失った今となっては、それはもしかしたら間違いだったかもしれないと思い始めていた。

(主^ω^)「ブーンとクーさんとも離れ離れになるし……これはもしかして、大ちょんぼかもしれないお」

走り続けていると、目の前に観覧車が見えてきた。
自分の世界ではこんなものはなかったが、ここではこういう遊戯のための大掛かりな機械が人気らしい。
確かにカゴの中に入ってあんな空高くまで行けたら、けっこう楽しいのかもしれない。

だが、今は楽しむ時間なんてない。ポセイドンを探さないと……!

(主^ω^)「って、あれ……?」

観覧車を見ていると、不思議なことに気がついた。
建築中止になった遊園地のはずなのに、観覧車が動いている。

しかも、見知った金髪頭が、ひとつのカゴの中にいるような、いないような……

(主^ω^)「まさか……」

カゴはゆっくりと地上に降りてくる。
そこから出てきたのは、やはりあのポセイドンだった。

116 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 22:24:09.82 ID:7G1tpTq+0

(主^ω^)「ぽ、ポセイドン!」

(゜3゜)「む、お前か! どうしてここにいる!」

(主;^ω^)「いや、『dat』を見つける方法を知ってるお前を探してたんだお」

(゜3゜)「『dat』を見つける方法?」

ポセイドンは、口をへの字に曲げて首を傾げる。

(゜3゜)「なんだそれは。そんなものがあるのか?」

(主^ω^)「……さっき
      『だが、どの『影』が持っているかは、お前達には分かるまい! やはり私が先に『dat』を見つけるのだ!』
      って言ってたのはお前だお」

(゜3゜)「ああ。だが、私が知っているとは言っていない。
      私は知らない+お前達も知らない=対等だ、と言いたかったのだが」

(主;^ω^)「……」

(゜3゜)「だいたい『影』と同化している『dat』を手に入れるためには、『影』を1度倒さなければならない。
     それはやれるのは……!」

(主゚ω゚)「まさか、クーさん達……!」


118 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 22:26:26.99 ID:7G1tpTq+0

(゜3゜)「あのでかい風車に乗って、今あいつらが『影』と戦っていることは分かった。ならば『dat』はあの中にあるかもな……」

(主゚ω゚)「な、なんだってー!! なら、早く戻らないと!」

(゜3゜)「させんよ」

(主゚ω゚)「ぐっ!」

目にも留まらぬ速さで繰り出された、ポセイドンのボディーブロー。
それをまともにみぞおちに喰らったB´は、蛙がつぶれたような声をあげ、膝をついた。

(主゚ω゚)「く、くそっ……『dat』、僕に力を!」

B´は自分の中にある『dat』に意識を集中させ、これまでの世界で得たような戦う力を求めた。

だが……

(主;^ω^)「な、何も反応しない……!」

(゜3゜)「これは好都合! 第2撃だ!」

アッパーカットが、B´の顎に直撃する。
いくら鍛えていようとも、顎にまとま一撃が入れば脳が揺さぶられ、立っていることができなくなるものだ。
B´もまた同じで、全身の力が徐々に抜けていき、ゆっくりと地面に倒れこんだ。

(主´ω`)「く、くそぅ……」

(゜3゜)「無様だな。戦うこともできず、逃げることもできないというのは」


121 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 22:28:54.79 ID:7G1tpTq+0

(主´ω`)「……」

(゜3゜)「私の目的は、お前を奴らから引き離すこと。きっと私を追ってくると思っていたよ……『datを集める者』よ」

(主゚ω゚)「馬鹿な言動は……演技だったのかお!」

(゜3゜)「馬鹿な言動? 私はいつでも大真面目さ……ふん。お前の持っている『dat』はもらっておこうか」

動けないこちらの腹に、ポセイドンが手を当てる。
すると、徐々にその辺りが光を帯び始め、自分の身体から大切なものが抜けていくような感覚を、B´は覚えた。

最初に持っていたのと、これまで集めた全ての『dat』。

ポセイドンがそれらを手に入れると、ニヤリと笑みを浮かべた。


122 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 22:29:49.74 ID:7G1tpTq+0

(゜3゜)「くくく……結構結構。えらく集めているじゃないか」

(主メ^ω^)「くそ……返せお!」

(゜3゜)「まだそんな口が……ほら!」

(主゚ω゚)「ぐほっ!」

腹に強烈な足蹴りを喰らい、B´の意識は一瞬にして飛んだ。

(゜3゜)「さて……この世界の『dat』とのご対面だな」

その言葉を最後に、ポセイドンは去っていく。

意識を失ったB´は動くことができず、ただその場で倒れていることしかできなかった。




124 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 22:31:32.49 ID:7G1tpTq+0


( `ω´)「はぁ!」

ブーンの『剣状光』が横にきらめくように一閃し、目の前の『影』を切り裂く。

川 ゚ -゚) 「ふっ!」

一息に日本刀を抜いたクーが、左右にいた『影』を居合いで真っ二つにする。

( ^ω^)「数は多いけど、そんなに強くないお!」
川 ゚ -゚) 「ああ。これならすぐに終わる」

とてつもないスピードで『影』を撃退していくブーン達。
ここの『影』はそれほどすばやくもなく、楽に倒せた。

こうなれば、早くこいつらを倒してしまい、B´を探そう。

( ^ω^)「上!」

上に飛んだ『影』に対し、ブーンは掌を掲げて『光弾』を放出する。
『影』に直撃。動きが鈍くなったそれに対し、ブーンは勢いよくジャンプした。

( `ω´)「これで、ラストォォォォ!」

『剣状光』で切り裂かれた『影』は、動きを止めて地面へと落下する。
これで終わった、と思ったブーン。

だが、その『影』は動きを止めることはなかった。


129 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 22:33:27.29 ID:7G1tpTq+0

影「ぐぐぅ……がぁああああ!」

( ^ω^)「な!」

川 ゚ -゚) 「こいつ……今までの奴と違うな」

その『影』は、これまでの奴らとは気配がまるで違っていた。
今までのものが米粒だとすれば、これは月並みに大きい力を持っている。

これほどの『影』には、出会ったことがなかった。

影「ぐぉおぉぉ!」

( ^ω^)「くっ!」

すばやさも段違いだった。
一足飛びで接近してきた黒い影に対し、ブーンは光の壁――『光障壁』を発生させることで防ぐ。

だが、目に見えない所から迫ってくる黒い腕に対しては、対処ができていなかった。

( ^ω^)「あっ……!」

川 ゚ -゚) 「ブーン!」

間一髪、横から割り込んできたクーがその腕を刀で受け止めた。
だが、あまりにも『影』の力が強いのか、クーの刀が徐々に押し込められていく。


133 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 22:35:02.87 ID:7G1tpTq+0

川 ゚ -゚) 「くぅ……!」

このままでは刀かクーの腕が折れる。
ブーンは彼女の身体を陰にしつつ、急いで『影』の死角へと回りこむ。

そして、後ろについた所でクーに合図を送った。

( ^ω^)「クーさん!」

川 ゚ -゚) 「よし!」

クーは突如刀を斜めに向けて、『影』の腕の力を逸らした。
腕は地面へと激突し、自由になったクーの刀は、彼女を中心に一回転した。

川 ゚ -゚) 「はぁ!」

『気』をまとった刀をみね打ちで放つ。
『影』はその衝撃で後ろへと身体をのけぞせた。

ブーンはその隙を逃さず、両手で『剣状光』を下から上へと切り上げた。

( `ω´)「おぉりゃ!」

だが、その『影』の身体は切れない。
衝撃しか与えられなかったのか、空中に吹き飛ぶだけにとどまった。


134 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 22:37:00.98 ID:7G1tpTq+0

しかし、彼らにはそれで十分だった。

クーが刀を鞘に納め、腰を低く構える。
ブーンは『剣状光』を腰の下で構え、目を見開く。

川 ゚ -゚) 「これで!」
(  ゚ω゚)「終わりだお!」

落ちてくるタイミングに合わせ、2人は同時に剣と刀を振るった。
滑るようにして閃く、2つの剣。
縦と横に切り裂かれた『影』は、ついにその原型をとどめることができなくなる。

影「ぐxそおそそおおおおお!」

そのまま霧に変わっていく『影』。

だが、その身体の中に何やら妙な気配があるのを、ブーンとクーは逃さなかった。

(;^ω^)「な、なんだお!」

川 ゚ -゚) 「これは……!」

黒い身体の中から、逃げるようにして飛び出していく光る『何か』。
これが『dat』か! と思った瞬間、突如横から飛び込んできたが、その光るものを奪い去ってしまった。


136 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 22:39:27.98 ID:7G1tpTq+0

(゜3゜)「ふははは!」

( ^ω^)「お前は!」
川 ゚ -゚) 「ポセイドン!」

右手に光る何かを持っているポセイドン。
不適な笑みを浮かべ、仰々しくそれを掲げる。

(゜3゜)「ついに手に入れたぞ……この世界の『dat』をなぁ!」

川 ゚ -゚) 「しまった……油断していた」

( ^ω^)「B´は……B´はどうしたんだお!」

(゜3゜)「知らんな。今となってはどうでもいいことだ。このままこの世界から出てしまってもいいが……
     そこの少年」

(;^ω^)「な、なんだお。やる気かお!」

(゜3゜)「私はお前に興味がある……世界を導くというその力、手に入れてみたい」

(;^ω^)「何を……!」

(゜3゜)「さて……私の心に応じろ! 『dat』よ!」

その声に呼応するように、『dat』が強烈な光を発し始めた。
ブーンとクーは目を手で覆いつつも、ポセイドンに対して武器を構える。

だが、光に紛れているのかポセイドンはまったく姿が見えない。

138 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 22:41:33.36 ID:7G1tpTq+0

( ^ω^)「くそ! どこに行ったんだお!」

(゜3゜)「ここだ!」

後ろ、と反応した時には遅かった。

とてつもない衝撃が身体に襲い掛かり、ブーンの身体は近くの壁へと吹き飛ばされる。
背骨が折れそうな痛み。意識が持っていかれそうになるも、なんとか耐える。

(メ^ω^)「ぐっ……」

川 ゚ -゚) 「ブーン! こ、これは……」

クーの横に立つポセイドンの姿は、すでに彼のものではなかった。
黒い身体に覆われ、全長3メートルはあろうかという、異形の化け物……

圧倒的なプレッシャーと、ブーンを一撃で吹き飛ばす強大な力。

それは、自分達の敵である『影』と、まったく同じ姿をしていた。

川;゚ -゚) 「『影』と……同化したというのか」

(゜3゜)「すばらしい! すばらしいぞ! この力をフォックス様の所へと持っていけば、喜ばれることだろう!」

(メ^ω^)「そんなこと……させないお!」

倒れていたブーンが立ち上がっていた。
『剣状光』を手に持ち、頑固とした意志を秘めた眼を、ポセイドンに向けている。


142 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 22:43:14.08 ID:7G1tpTq+0

(メ^ω^)「たった1人の私利私欲のために、ひとつの世界が滅びるなんて……そんなこと、絶対にあってはいけないんだお!」

(゜3゜)「ふん! 戯言は死んでから言え!」

(メ゚ω゚)「B´の世界、僕が守ってみせるお!」

『剣状光』が光を増す。

川 ゚ -゚) 「私も……同じ意見だ!」

クーの日本刀がキラリと光る。

(゜3゜)「この世界の人間ごときに、『dat』を手に入れた私を倒せると思うな!!」

ポセイドンが空へと飛ぶ。
戦いが始まった。




143 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 22:44:25.46 ID:7G1tpTq+0



(主´ω`)「くっ……んん」

頭が重い。
意識だけははっきりしているのが、目の前は真っ暗で何も見えず、体はぴくりとも動かない。

ポセイドンは? ブーンは? クーは?

あせる気持ちだけが頭にちらつき、思考が定まらなかった。

「怪我は大したことないんだな?」

「そのはずだ。打撲は塗り薬でなんとかなる。後はこいつが目覚めるのを待つだけだ」

声が聞こえた。

耳に響く低い男の声は、自分の横から発せられているのだろうか?


146 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 22:48:27.23 ID:7G1tpTq+0

「そうか。なら、後はルートの確保だな。高岡、『影』の様子は?」
「大丈夫……彼がひきつけてくれてる」
「よし、ギコさん様々だな」

(主´ω`)「誰……だお?」

ようやく目が開いた。
そこに見えたのは……
  _
( ゚∀゚)「ん? ようやく起きたんだな」

从 ゚―从「……」

(´<_` )「異世界の人間のくせに、身体の構造が同じというのもおかしなものだ。
      そのおかげで治療はやりやすかったが」

( ´_ゝ`)「流石だな、弟者」

(主;^ω^)「誰なんだお……あなた達は……」

立っていたのは4人。

笑顔を浮かべ、はつらつとした気を当たりにふりまく青年。
表情がなく、肩に大きな銃を担いでいる女性。
そして、同じ顔をした兄弟らしき男が2人。

知らない人達だった。


148 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 22:50:52.86 ID:7G1tpTq+0
  _
( ゚∀゚)「よし、起きたなら急げ。兄者、弟者、後ろから来る『影』を抑えていてくれ」

( ´_ゝ`)(´<_` )「了解」

(主^ω^)「え? え?」

从 ゚―从「起きて。急いで」

女性に無理やり立たされつつも、B´は戸惑った表情を隠せないでいた。

彼らはいったい誰なのか?
それに、どうして自分が異世界から来たことも知っているのか?
  _
( ゚∀゚)「名前だけでも教えておこうか。俺はジョルジュ。
     あれこれ説明してる暇はないぞ。早く来い。俺と高岡が案内してやる」

(主^ω^)「は、はぁ……どうしてあなた達は僕を助けてくれるんだお?『VIP』の人かお?」
  _
( ゚∀゚)「あいつらとは少し違うな。だが、『dat』とかいうものが『影』に影響を与えられると少し困るんだ。
     って、早く走れ。行くぞ!」

男に引っ張られて、B´は渋々走り出した。

と、後ろから嫌な気配がして振り向くと、そこには黒い化け物が次々と現れてきていた。

あれが『影』か?


150 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 22:52:47.97 ID:7G1tpTq+0

( ´_ゝ`)「ほわっちゃぁ!!!」

(´<_` )「はっ! ほっ!」

それを、兄弟がロープと手裏剣で次々とやっつけていった。

『影』を倒せるのは『気』を扱うことのできる、一部の人間だけだと聞いた。
しかも、その数は少ないと。

いったい、この人達は何者だ?

走りながらそんなことを考えていると、ジョルジュという男がぽつりぽつりと状況を説明し始めた。
  _
( ゚∀゚)「今はけっこうやばい状況だ」

从 ゚―从「もう1人の異世界の人間が『影』と同化。『VIP』の2人は苦戦してる」

(主^ω^)「か、『影』と同化? どうしてそんな……」

走りながら喋るのはなかなか疲れるが、彼らの話は驚くべきことばかりだった。

ポセイドンがこの世界の『dat』を手に入れてしまったということ。
『影』と同化して、ブーンとクーを追い詰めているということ。


151 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 22:55:05.82 ID:7G1tpTq+0
  _
( ゚∀゚)「お前も『dat』を持ってるんだろ? なら、なんとかなるはずだ」

(主^ω^)「け、けどなんだか今回はあまり力が出ないみたいで……しかも奪われちゃったし」

从 ゚―从「大丈夫。自分を信じて」

(主^ω^)「じ、自分を?」
  _
( ゚∀゚)「『影』は『気』の使い手しか倒せないし、『気』を扱える人間はなかなかいない。
     その通りだ。
     だが、お前はその固定観念に惑わされてるんだろう。
     だから、力が出せない。戦おうとしても、戦えないと心の底では思ってしまう」

(主^ω^)「……」
  _
( ゚∀゚)「だが、信じれば『dat』はそれすらも乗り越えてくれるはずだ。奪われたものは奪い返せばいい」

(主^ω^)「信じる……」
  _
( ゚∀゚)「まあ、あの変な男が『dat』を使っているのを見た上での、推測でしかないがな」

「っと、ストップ」と男は手を上げて、急に立ち止まった。

目の前の暗闇を見据え、眉間に皺をよせるジョルジュ。


155 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 22:57:05.82 ID:7G1tpTq+0
  _
( ゚∀゚)「高岡、スタンだ」

从 ゚―从「了解」

ジョルジュの合図が出ると、高岡という女性が腰につけていた丸い物体を手に取り、ピンのような細長いものを抜いた。
そして、勢いよくそれを放り投げると同時に「目と耳、塞いで」と言ってくる。

B´は慌てて耳を手で覆い、目を瞑った。

次の瞬間、ドン! という大きな衝撃音と、強烈な光がまぶたの間から突き刺さってきた。

(主;^ω^)「な、なんだお!?」
  _
( ゚∀゚)「2体、すぐに終わるな」

白く染まった視界の端で、ジョルジュが大きな銃を構えるのが見えた。
それは、クーや『VIP』で見たようなものよりも数段大きく、彼が引き金をしぼると同時にドン!と地響きのような銃声が響き渡る。

その銃口の先には、さっきと同じ『影』の姿が。

影「グゥウゥゥゥワアアア!」
  _
( ゚∀゚)「しつこいってんだよ!」

2発の銃声と共に、正面の闇に紛れていた2体の『影』が消滅していった。

強い、とB´は素直に思った。
この人がいたら、『dat』探しも楽になるのではないだろうか……?


157 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 22:59:17.81 ID:7G1tpTq+0
  _
( ゚∀゚)「さてと、俺達はここまでだ」

だが、ジョルジュは立ち止まり、進行方向を指差した。
  _
( ゚∀゚)「ここをまっすぐに行けば、あいつらの所にたどりつく。あとは……お前次第だろう」

(主^ω^)「一緒に来てはくれないんですかお?」

从 ゚―从「今はまだ……彼らと会うのは早い」
  _
( ゚∀゚)「心配すんな。ちゃんと援護はしてやるから」

(主^ω^)「……わかりましたお。ありがとうございますだお」
  _
( ゚∀゚)「ああ、頑張れよ」

B´は走り出した。
自分の中にはもう、『dat』はない。

けれども、まだ自分がいる。この拳がある。

大切なのは、自分を信じることができるかどうか。
できる、絶対に。

父が命をかけて守った『dat』。ブーン達が信じてくれた『dat』。

きっと……大丈夫だ!



160 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 23:01:42.25 ID:7G1tpTq+0


集中力を高めつつ、冷静な攻撃をしかける。
言葉で言うのはたやすくとも、それを行動に移すのは至難の業。

だが、それをやらなければ、一瞬にしてやられてしまう状況に立てば、誰だってできる。

(゜3゜)「ふんっ!」

( ^ω^)「盾で!」

ポセイドンの巨大な腕によるパンチを、『光障壁』でなんとか防ぐブーン。
衝撃がすごいが、防げないものではない。

川 ゚ -゚) 「くらえ!」

ブーンの後ろで待機していたクーが、軽快なステップで前に躍り出て、刀を引き抜く。
一陣のきらめきがポセイドンの身体を捉えたかと思ったが、しかし敵の動きはすばやかった。

瞬時にジャンプしたポセイドンは、空高く5メートルの高さまでいったかと思うと、落下スピードを利用した蹴りに転じてくる。

(゜3゜)「ポセイドンキーック!!!」

( ^ω^)「くっ!」
川 ゚ -゚) 「むっ!」

横に飛びのいて避けるブーンとクー。
さっきまで立っていたコンクリートの地面に、ポセイドンの足型がくっきりと付いているのを見て、驚愕の表情を隠せないでいた。


161 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 23:03:33.15 ID:7G1tpTq+0
あれほどの力を得ることができるというのか? 『dat』というのは?

(゜3゜)「回避が遅い!」

川 ゚ -゚) 「しまっ……!」

息つく間もなく繰り出されるポセイドンの攻撃。

(゜3゜)「ポセイドンパーンチ!!」

川 ゚ -゚) 「ぐぅ!」

名前は単純でも、その威力は絶大だった。

クーのボディに直撃し、彼女の身体を一撃のもとで無力化させる。

( ^ω^)「クーさん!」

川メ゚ -゚) 「ごふっ……」

クーはその場で倒れたまま、立ち上がろうとしない。
ブーンは彼女の傍に向かおうとするが、ポセイドンがその前に立ちはだかり、相手せざるを得なかった。

( `ω´)「邪魔をするなお!」

(゜3゜)「遅いといっている!」

右手の『剣状光』で攻撃をしかけるが、ポセイドンの動きは予想以上に速い。
綺麗にかわされ、逆に膝蹴りを腹に喰らってしまう。


165 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 23:05:43.24 ID:7G1tpTq+0

(メ゚ω゚)「ぐぅ!」

(゜3゜)「はははー! 『人の子』がなんだ! 『dat』の力を使えば、全てを凌駕できるのだ!
     そして、お前の力をも手に入れれば、私は無敵となる!」

(メ´ω`)「ひ、人の子……どうしてそのことを知ってるんだお……」

(゜3゜)「全ては『dat』が教えてくれるのさ! お前の正体も! この世界の行く末もな!
     この世界はやがてお前によって――」

ポセイドンが何かを言いかけたとき、一筋の光がブーンと彼の間を横切った。

それはブーンの白い光と似ていた。
真っ白で、鋭い矢のような光。
その光がポセイドンの前を横切り、そして空中で霧散したのだ。

(゜3゜)「な、なんだ!?」

「ポセイドンー!!」

その声は、ブーンにとって確かに聞き覚えのあるものだった。

敵と同じく異世界からやってきた、『dat』を探す『旅人』。

B´が、そこには立っていた。


167 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 23:07:54.41 ID:7G1tpTq+0

(゜3゜)「くっ! どうしてここに……!」

(主 ゚ω゚)「うおおおおお!」

B´は猛然とこちらに走り出し、その右の拳を大きく振りかざした。

その手には、何の光も『気』も帯びてない。

B´の右拳はポセイドンの腹へと襲いかかるものの、そんなものが通用するはずもない。

(゜3゜)「ふん」

(主;^ω^)「あ、あれ?」

案の定、B´の拳はポセイドンの身体をすり抜けてしまう。
しかもカウンターで、ポセイドンから強烈なキックが放たれた。

(主゚ω゚)「ひでぶっ!」

( ^ω^)「B´!」

(゜3゜)「ふん……カトンボめ、うるさいだけで何の役にも立たない奴は、そこでおとなしく見ていろ」

B´は近くの草むらまで吹き飛ばされ、腹を抑えてのたうちまわり始めた。

ブーンは彼を助けようと近くに寄ろうとしたのだが、ポセイドンがそれをさせてはくれず、
『剣状光』で応戦しつつ「大丈夫かお!」と彼に声をかけた。


170 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 23:11:22.28 ID:7G1tpTq+0

( ^ω^)「後ろに下がるんだお! キミじゃあ、こいつには……!」

(主´ω`)「そ、それはできないお」

B´は草むらの中で、ゆっくりと立ち上がった。
明らかにひどいダメージを受けているはずなのに、彼は果敢にもポセイドンをにらみつけ、再び握りこぶしを作る。

(主`ω´)「僕は……僕は戦うんだお! 力がなくても心がある! 心を強く持てば……どんな敵だって怖くないんだお!」

( ^ω^)「B´……」

(゜3゜)「ご高説ご苦労なことだ。だが、お前にはもう、この舞台に役はない!」

ポセイドンがブーンの『剣状光』をはじき、B´へと猛然と近付いていく。

(゜3゜)「死ねぃ!」

(主 ゚ω゚)「僕は……逃げない!」

B´は勇敢にも、ポセイドンの右拳を交わしながら懐に入り、右手を強く握ってパンチを放った。
それは、普通なら腹部への直撃打となるはずだが、『影』の身体を得たポセイドンには通用せず、やはりすり抜けてしまう。

(゜3゜)「ははははは!」

ポセイドンが高らかに笑い、左手でB´を押しつぶそうとする。

(主 ゚ω゚)「ああああ!!!」


175 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 23:13:29.97 ID:7G1tpTq+0

だが、B´は逃げなかった。
効果のない右拳をさらに押し込め、何度も何度もポセイドンに攻撃する。

1、2、3発。しかしそれでも何も起こらない。

(゜3゜)「やはり死ね!」

ポセイドンはニヤリと笑い、左手を掲げた、

その時。

(゜3゜)「なんだ……? 身体が……熱い!」

ポセイドンの身体の内から、光が現れた。
白くも黒くもない。黄色みがかったその光は、徐々に光量を増す。

そして起こった爆発。光が黒いからだから溢れる。

ポセイドンの身体の一部から、飛ぶように光の球が現れた。

(゜3゜)「ぐっ……『dat』だと!」

(主^ω^)「あれは父さんの……よし!」

手を伸ばすと、その光はすんなりとその掌に収まり、B´の中へと消えていく。

そして、動きが止まるB´。


176 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 23:15:47.21 ID:7G1tpTq+0

(主^ω^)「ポセイドン……」

静かに、ゆっくりとポセイドンの方を向く。

拳を掲げ、今にも襲い掛かろうとする鋭い目を向けていて、

その手は、黄色い光に覆われていた。

(主 ゚ω゚)「『dat』を返してもらうお!」

B´が飛んだ。
いや、飛ぶように走り出した。

一気に距離を詰めると、黄色い光を帯びた拳をポセイドンに向って放つ。

(゜3゜)「ちっ! 返せだと!? お前のものではなかろうに!」

だが、ポセイドンはそれを悠々と腕で受け止めた。
さらに、大振りの攻撃で体勢の崩れたB´に対し、ローキックで足を止めさせ、その間に距離をとる。


179 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 23:17:52.19 ID:7G1tpTq+0

あの光は『dat』の力だというのだろうか?
『影』に触れることができている。

どうやら、ポセイドンもそれを多少なりとも驚いているようで、だからこそ距離をとったのだろう。
だが、動揺は表情には出さず、「欲しければ奪ってみろ!」とB´を挑発する。

(主 ゚ω゚)「ならそうさせてもらうお!」

川メ゚ -゚) 「ぐっ……B´!」

(主 ゚ω゚)「!」

いつの間にか意識を取り戻していたらしいクーが「使え!」と言って放り投げたのは、抜き身の日本刀だった。
B´は慌ててそれを受け止める。

川メ゚ -゚) 「刀身に意識を集中させろ! 今のお前なら……できるはずだ!」

(主 ゚ω゚)「よし……行くお!」

B´はポセイドンに対して青眼の構えを取る。
剣術を扱えるのか、はたまたそれも『dat』の力なのか

B´は猛然とポセイドンに斬りかかった。


180 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 23:20:15.89 ID:7G1tpTq+0

(主 ゚ω゚)「やああああ!」

(゜3゜)「ちぃ! だがっ!」

斜めに振りかかる黄色い刀を、ポセイドンは戸惑いながらも確実に避けていた。
尋常な身体能力ではなく、逆にB´に対してカウンターをしかけようとまでしている。

(゜3゜)「くら……な、なに!」

だが、横に入ってきた白い刃が、それを防いだ。

ブーンの『剣状光』だ。

( ^ω^)「僕もいるんだお!」

(゜3゜)「ちっ! 雑魚が! 雑魚がぁ!」

ポセイドンが怒りに任せて両腕を振り下ろす。

それをそれぞれ片腕ずつ受け止めたブーンとB´は、目配せして互いの意思疎通を図る。

大丈夫か?

大丈夫。

ただそれだけで互いの意志を確認しあい、2人はポセイドンの腕を弾き返す。


184 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 23:22:09.29 ID:7G1tpTq+0

そして、

( ^ω^)「だーっ!!!」
(主^ω^)「おりゃああ!」

同時に胴へと切り込んでいった。

(゜3゜)「ちょこざいな!」

だがポセイドンはしぶとい。
剣と刀、両方とも後ろにステップすることで避け、逆に攻撃をしかけようとしてくる。

速い攻撃だったものの、ブーンがなんなく『光障壁』で防ぎ、その後ろからB´が飛び出してきてポセイドンの膝に刃を突き立てた。

(主^ω^)「どうだお!」

(゜3゜)「くっ……死ねええ!」

敵はひるまない。
とっさに距離をとったB´を追いかけるように身体を傾け、超スピードと共にパンチを繰り出そうとするポセイドン。

これは危険だった。
ブーンの援護は間に合いそうになく、B´もまだ体勢を整えて切れていない。

( ^ω^)「B´!」

(主;^ω^)「あっ!?」

(゜3゜)「終わりだあああ!」

186 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 23:23:59.67 ID:7G1tpTq+0

あのままでは顔面がつぶされてしまう。

ブーンは『光弾』を出そうとするも、それすらも間に合わない。

ポセイドンの拳が、B´の顔面を捕らえようとした……その時だ。

一筋の光が、再び両者の間にきらめいた。

(゜3゜)「ぎゃあああ!」

一瞬の出来事だ。

黒い画用紙に白い絵の具を一直線に塗りつけたかのように、光がどこからか飛んできてポセイドンの腕を貫き、地面にぶつかって消えていったのだ。

弾丸のようだが、少し違う。『光弾』のさらに強力な感じ。
2回目のそれにが何なのかまったく分からず、ブーンは呆然と苦痛の叫びをあげているポセイドンを見るしかなかった。

一方、

(主^ω^)「そうか……ありがとうだお!」

B´は光が飛んできた方向にいきなりお礼を言いだし、笑顔を浮かべている。
そして、刀を握りなおし、「ブーン君!」と大声で呼びかけてきた。


187 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 23:26:03.64 ID:7G1tpTq+0

(主^ω^)「一緒に行くお!」

( ^ω^)「……わかったお!」

光が何なのかは保留にしておき、ブーンは立ち上がって『剣状光』を手に出現させる。

そして、B´に目配せをして、いまだに苦しがっているポセイドンの方へと視線を向けた。

(゜3゜)「く、くそぅ……」

( ^ω^)「よし!」
(主^ω^)「行くお!」

2人は同時に駆け出した。

左右から近付く二人は、力任せに振るわれる腕を避け、刃を突き立てる。

( ^ω^)(主^ω^)「せーの!」

その刃で身体は切れなかったものの、ポセイドンを吹き飛ばし、体勢を崩させた。

( ^ω^)「行け!」

(゜3゜)「ぐおおおお!」

間髪入れず、ブーンが『光弾』を発射する。
掌から放たれた何発もの『光弾』が、次々と命中していく。
ガードするものの、それに耐えるのが精一杯なポセイドン。


189 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 23:28:47.45 ID:7G1tpTq+0

だが、それは目くらましに過ぎなかった。
『光弾』が途切れた瞬間、ポセイドンの目の前に現れたのは日本刀を持ったB´だ。

B´はポセイドンの懐に入ると、まず柄でポセイドンの目をつぶす。

(゜3゜)「ぐっ!」

視界がなくなった敵に対し、B´はキックとパンチを連続で浴びせていった。

(主゚ω゚)「もっと強く! もっと速く!」

最後、日本刀を下に構え、上へと切り上げた。
やはりポセイドンの身体を斬ることはできなかったが、衝撃で空中に浮かすことはできる。

そこに、ブーンが飛び込んだ。

( ^ω^)「はぁ!」

B´が切り上げると同時にジャンプしていたブーンは、そのままの勢いで『剣状光』を振り下ろす。

(  ゚ω゚)「お前なんかにB´の世界を壊す権利はないんだお!」

やはり斬ることはできなかったものの、ポセイドンは地面に激突して、動きを止めた。


194 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 23:30:48.22 ID:7G1tpTq+0

ブーンとB´はその隙を見逃さなかった。

( ^ω^)「僕の光が『剣』を作り!」
(主^ω^)「僕の『dat』が『剣』を強く、大きくする!」

2人はクーの刀を一緒に持ち、自分の操る力を全て注ぎ込んでいった。

ブーンの手から現れた白い光が、刀身に白い光を帯びさせる。
B´の『dat』がその光を大きくし、強靭な刀身を作り上げる。

そうして出来上がったのが、空高くまでそびえたつ巨大な白い剣だった。

(  ゚ω゚)(主゚ω゚)「これが!」

ブーンとB´は、それを一気に振り下ろす。

(  ゚ω゚)(主゚ω゚)「僕達の心だー!!!」

(゜3゜)「ぎゃあああああ!!」

光の剣が振り下ろされると共に、辺りが強烈な光で包まれていく。

ポセイドンを包み込み、周りの者の目を奪っていくその光は、この世界での戦いの終わりを告げるかのようだった。




196 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 23:33:00.70 ID:7G1tpTq+0



ある建物の屋根の上、その光を見ていた4人の男女がいた。

ひとりは床に寝転がり、あとの3人は立ったままその光を見つめている。

( ´_ゝ`)「……終わったか」

立っている方の男の1人が、静かに呟いた。

(´<_` )「ああ」

もう1人、似たような顔をした男がそれに応える。

从 ゚―从「……」

無表情な顔をした女は何も言わず、寝転がっている男の背中を見つめていた。

( ゚∀゚)「援護終了……ってな」

そして、今までずっと長物の銃のスコープを除いていた男――ジョルジュがそう言うと、4人の口から安堵のため息が出た。
男がその言葉を吐けば、今回の任務は終わり。
異例とも言える『VIP』の仕事の援護、という任務内容。

まさかここまで入れ込んで援護するとは思わなかった3人を尻目に、ジョルジュは「おし、帰るか」と銃をしまいながら立ち上がった。


198 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 23:35:25.64 ID:7G1tpTq+0
  _
( ゚∀゚)「ギコさんは?」

从 ゚―从「……そこ」

ハインリッヒが指差した先、地面の自動販売機の前に、ちょうど缶コーヒーを買っているギコの姿があった。
背中には大きな弓を抱え、今一戦を交えてきたばかりと言った疲れた顔をしているギコに向って、
ジョルジュは「お疲れ様です、ギコさん」と声をかけた。
  _
( ゚∀゚)「反対側の『影』を抑えててくれて、本当に助かりました」

笑顔でそう言うジョルジュに対し、地面にいた中年の男――ギコが、忌々しそうな顔をして上を見上げる。

( ,,゚Д゚) 「ったく……疲れることさせるんじゃねえ、ゴラァ。俺は年なんだからな」
  _
( ゚∀゚)「ギコさんなら、寄る年波にも勝てますよ」

( ,,゚Д゚) 「ふん……で、あいつらはどうなんだ?」
  _
( ゚∀゚)「大丈夫です。なんとかなりました」

( ,,゚Д゚) 「それはよかった」

ギコがぐいっと缶コーヒーを傾ける。
一気に飲み干したそれを、近くにあったゴミ箱に投げ捨てる。

見事ゴール。


199 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 23:37:06.21 ID:7G1tpTq+0

( ´_ゝ`)「ストライッキュ」

( ,,゚Д゚) 「で……今回の仕事、本当に必要なことだったんだろうな?」

兄者をカレーにスルーしたギコが、不審顔をジョルジュに向けた。
今回の仕事のことを、1番反対していたのはギコだ。

『VIP』の援護、という、およそ自分達の目的からはかけ離れていると思える仕事。

一番の年長者であるギコは、その分頭も固く、リーダーに文句を言うことも憚らない。それが良いところでもあるが。
  _
( ゚∀゚)「もちろんですよ」

そんな不審オーラを軽々と受け流し、ジョルジュは笑顔を浮かべて応えた。
  _
( ゚∀゚)「『影』を操られると困るのは明白でしょう。
     それに……『dat』の力がこの世界に無駄な干渉を及ぼすのを、なんとしても防ぎたかった」

( ,,゚Д゚) 「ふんっ……そうか」
  _
( ゚∀゚)「信じてくださいよ、ギコさん」

( ,,゚Д゚) 「信じるも信じないも……俺達はお前についていくだけさ。なぁ?」

ギコの言葉は、ジョルジュの後ろに立つ3人に向けられたものだった。


201 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 23:38:15.99 ID:7G1tpTq+0

( ´_ゝ`)「ああ」
(´<_` )「こういう仕事も、悪くはない」
从 ゚―从「……」

三者三様の応えが返ってきて(ハインリッヒは頷くだけだったが)、ギコも「そういうことだ」と言うにとどめた。

ジョルジュは4人の顔を見渡し、最後にひとつ息をついて、小さく呟いた。
  _
( ゚∀゚)「必要なことだ……この世界を、守るために……」

その呟きは誰にも聞かれることはなかった。
だが、その誓いは、確かにジョルジュの胸に大きく刻まれていた。




203 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 23:39:51.83 ID:7G1tpTq+0



(主^ω^)「終わった……のかお」

遊園地の中は静寂に包まれていた。
真夜中の、光のない遊具が立ち並ぶ中、B´達は一箇所に集まり、敵だったポセイドンの様子をうかがう。

B´とブーンの渾身の一撃を喰らった彼は、『影』の身体を失くし、地面に倒れたまま動かなくなっている。

( ^ω^)「……そうみたいだお」

川 ゚ -゚) 「よかった……ぐっ」

( ^ω^)「クーさん、怪我、大丈夫かお? 肩を貸すお」

川 ゚ -゚) 「これくらいは平気だ。後でしぃにでも直してもらうさ」

ブーンに肩を支えられ、痛々しい傷口を押さえているクー。
B´は彼女に「ありがとうだお」と言いつつ、日本刀を返した。

(主^ω^)「これのおかげで戦えたお……」

川 ゚ー゚) 「ふ……なかなかの刀さばきだったぞ」

クーが微笑みを浮かべ、B´もそれに応えて笑みを浮かべた。


204 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 23:42:13.33 ID:7G1tpTq+0

(主^ω^)「そうだお。『dat』を回収しないと……」

B´はようやく自分の目的を思い出し、倒れているポセイドンへと近付いていった。

そして、彼の体をごそごそとあさっていくと、触り慣れた存在が手に当たり、ほっとした表情を顔に浮かべた。

(主^ω^)「よし、これでいいお」

『dat』をちゃんと確認し、自分の中へとしまっていった。

これでこの世界での目的は果たした。

( ^ω^)「ということは……」
川 ゚ -゚) 「もうこの世界から出て行かなくてはならないんだな」

(主^ω^)「そうだお……まだ『dat』は残ってるお。早く集めないと……取り返しのつかないことに」

( ^ω^)「寂しくなるお」
川 ゚ –゚) 「ああ」

(主´ω`)「……」

ブーンとクーが悲しそうな目をするのを、B´は拳を握ってこらえるしかなかった。

これまでだって、色々な人と出会い、別れてきた。

どんな出会いも、どんな別れも、みんな悲しいものだ。
もちろん、今だって。


208 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 23:44:23.62 ID:7G1tpTq+0

B´は彼らに感謝していた。
正体不明の自分に力を貸してくれた『VIP』の人々に。

(主^ω^)「『VIP』の人達にはよろしく言っておいてほしいお。狐さんがフォックスと名前が似てて、ちょっと戸惑ったこととか」

( ^ω^)「おk」
川 ゚ -゚) 「気をつけてな」

そしてB´は、戦闘中に援護射撃をしてくれたのであろう「彼ら」がいる方向へと顔を向けた。
彼らにも感謝しなくてはならない。
どのような目的があったにしろ、彼らが手伝ってくれたから、「彼」が自分に励ましの言葉をかけてくれたから、戦うことができた。
それは紛れもない事実。

B´は、この世界の、自分に関わった全ての人にありがとうを言いたい気持ちになっていた。

(主^ω^)「じゃあ、そろそろ……」

そう言って、『dat』の力でこの世界から飛び出そうとした、その時だった。

不可解な物音が、横から聞こえた。

B´達は急いでその音がした方向を見ると、そこにはいつの間にか立ち上がり、笑みを浮かべているポセイドンいたのだ。

しかも、彼は手に光る『何か』を持っており、身体が宙に浮き始めている。


211 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 23:46:21.17 ID:7G1tpTq+0

(主^ω^)「ポセイドン!」

(゜3゜)「ははは! しくじったな! 『dat』はまだ私の手の中だ! これだけでもフォックス様に……!」

(主 ゚ω゚)「ま、待て!」

ポセイドンがこの世界から抜け出そうとしているのを感じ取ったB´は、
急いで自分も飛び上がり、彼の後を追いかける。

( ^ω^)「B´!」

地上からブーンの呼ぶ声がしたものの、B´はそれに構うことなくポセイドンを追いかけ続けた。

(゜3゜)「もう間に合わん! 私はこの世界からおさらばするのだ!」

(主^ω^)「く、くそぅ!」

B´は思いっきり手を伸ばし、ポセイドンの足を掴んだ。
だが、世界から抜け出そうとしていた彼を止めるには至らない。

ならば自分も世界から抜け出して追いかけようと、『dat』に力を込めた。

そこで予想外なことが起こった。

不可思議な光が、ポセイドンと自分の『dat』から発せられたのだ。


215 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 23:49:32.43 ID:7G1tpTq+0

(゜3゜)「な、なんだ!」

(主^ω^)「これは……『dat』が共鳴してるお……!」

同時に世界から抜け出そうとしたからなのか、はたまた何か不思議な力が働いたからなのか、
『dat』は共鳴し、いつもとは違う光を発している。

B´が地面を見ると、ブーンとクーが心配そうな顔をしてこちらを見ている姿があった。

彼らに何か言うべきことがあるはずだったが、それを言うには時間があまりにも足りなかった。

共鳴した『dat』は、ポセイドンとB´の2人を光で包み込んでいく。


そして、強烈な光が辺りを照らした瞬間。


2人は跡形もなく消え去っていた。




216 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 23:51:21.16 ID:7G1tpTq+0



( ^ω^)「……」

川 ゚ -゚) 「行ってしまったのか……」

何も残らない空。
B´とポセイドンは跡形もなく消え去り、空は暗い闇だけを携えていた。

ブーンとクーは呆然と上を見つめ、たったの2日ながらも仲間だった彼に思いを馳せていた。

( ^ω^)「大丈夫かお……」

川 ゚ -゚) 「大丈夫だろう。彼は強い。きっと自分の世界を救えるはずだ」

( ^ω^)「……そうかお」

ブーンは自分の掌を見る。
さっきまで、彼と一緒に刀を握っていた手。

一緒にあの光の剣を作り上げたからだろうか。一瞬だけだが、彼の心が感じられた。

自分の世界を救いたいという、強い心。
そして、守りたいという意志。

あそこまでの思いを、自分は持っていない。


218 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 23:52:46.68 ID:7G1tpTq+0

だいたい、守りたいものを守るために戦うことが、本当に正しいことなのか、
心の底ではいまだに迷っているのだ。

だから、あそこまでの強烈な心を感じると、戸惑うことしか出来なかった。

ブーンは思う。

ああやって戦うことが正しいのか。
それとも……

疑問に答えてくれるものは誰もおらず、ブーンはただ空を見上げる。

とにもかくにも、B´が無事であることを望むしかない。

( ^ω^)(……大丈夫だお、きっと)

狐に連絡をつけるために、無線機を取り上げたブーンは、
胸の内にひそむ暗いものを隠し、最初の報告の言葉を探していた。




224 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 23:56:00.90 ID:7G1tpTq+0



目覚めた時、そこは空中だった。

(主;^ω^)「お、おわああ!」

B´は慌てて両手を振ると、それに応えてくれたのか『dat』が光り出し、空中でとどまることを許してくれた。

不安定ながらも宙に浮かぶB´は、
ここがどこなのか、ポセイドンはどこに行ったのかを確かめるために、周りを確認し始める。

(主^ω^)「山……かお」

どうやらここは、山の上空のようだ。眼下には森林が広がっており、けっこう大きな山だということが分かる。

一方、空は暗い。おそらく夜なのだろう。星も雲も見えない完全な闇が広がっている空は、おそらく真夜中だということを示して……

(主^ω^)「……あれ? 夜にしては変だお。暗すぎるお」

それは自然の空ではなかった。
まるで黒い光が空を覆っているかのような……

ここはさっきと同じ世界のなのだろうか?


227 殲10(大阪府) 2007/03/28(水) 23:58:11.10 ID:7G1tpTq+0

と、地面を見ると、ひとつの人影があるのが見えた。
村だろうか。森林の中に一箇所だけ平坦な土地があり、その真ん中に人が立っているのが見えた。

見たことがある。それは……

(主^ω^)「ポセイドン!」

(゜3゜)「くくく……はははは! 見ろ! これがこの世界の、人の心の終末だ!」

B´の叫び声と同時に空中に跳んだポセイドンは、そのまま上空にとどまり、黒く染まる空を見て大きな笑い声をあげていた。

(゜3゜)「『dat』を持つお前にも分かるだろう!? この世界がどうなっているのか、この黒い光が何なのか!
      これが人の業というものだ! 人は『守りたい』という気持ちによって、世界を作り変える! 世界を滅ぼす!」

(主^ω^)「何を……!」

ポセイドンが『dat』の力を再び発揮する。
だが、それはすでにか弱いものだった。

(゜3゜)「うおおおお!」

『影』の力がまだ残っているのか、手に黒いもやのようなものを帯びさせ、がむしゃらに向ってくるポセイドン。

B´はそれを軽くいなす。反撃はしない。
今の状況を把握するので精一杯だった。


229 CGクリエイター(大阪府) 2007/03/29(木) 00:00:46.21 ID:2TIlhHp80
(゜3゜)「私も同じさ! 私は私を守る! フォックス様に仕え、主人のために戦うことで自分のアイデンティティを保つ!
     そうさ! 全ては『守るために』戦っているのさ!」

(主^ω^)「けど、それは……」

(゜3゜)「違うというのか! 何も違わない! 私はこの力を手に入れる!
      守るために世界を作り変える、この力を! 私のために! 私の守りたいもののために!」

明らかにさきほどまでのポセイドンと違っている。
余裕顔で自分達を攻撃してきた先ほどまでの彼は、もういない。

今は、必死に何かを求める子供のような、純粋に走っているだけの人間になっている。

なぜ? もしかしたら、この黒い光のせいかのか?
それとも、これが彼の本心だとでも言うのか?

(゜3゜)「うおおおお! 私のために死ねえええ!」

(主^ω^)「そんなの……そんなの!」

B´は彼の攻撃をかわしながら、言葉を探した。

自分は自分の世界を守るために戦ってきた。
ポセイドンも『守るために』戦っている。
そして、ブーンも……

だが、何かが違う。自分達とポセイドンの間には、何かが違っている。

それは何か? ブーン達と一緒に闘い、彼の思いを聞きながら固めた自分の心が示す「何か」。
それは……

232 CGクリエイター(大阪府) 2007/03/29(木) 00:03:07.25 ID:2TIlhHp80

(゜3゜)「がああああ!」

(主^ω^)「そんなの!」

B´は『dat』の力を発揮し、両手に黄色の光を帯びさせた。
向ってくるポセイドンに対し、冷静な目でその攻撃を見極め、タイミングを合わせて腕を動かす。

(主 ゚ω゚)「自分勝手な妄信に、過ぎないんだお!」

ポセイドンが繰り出した右拳は、確かにB´の頬を捉えていた。
普通なら直撃。誰でもそう思うだろう。

だが、B´は下がらなかった。それどころか、腕を確かに振りぬいていた。

彼の右拳もまた、ポセイドンの顔を捉えていたのだ。


クロスカウンター。

猛烈なスピードで跳んできたポセイドンの方が、もちろん重大なダメージを負う。

(゜3゜)「ぐ……この世界が……私を肯定してくれてい、る……」

膝からゆっくりと崩れ落ちるポセイドン。
飛ぶ力もなくし、地面に向って落ちていく彼を、B´は息継ぎをしながら見送っていた。




235 CGクリエイター(大阪府) 2007/03/29(木) 00:04:49.49 ID:2TIlhHp80



(主^ω^)「ポセイドン……」

ポセイドンは地面に倒れたまま動かない。
空中から落ちてきた衝撃は尋常なものではないはず。
身体を触ってみると、冷たい。どうやら……死んでしまっているようだ。

(主^ω^)「……」

B´はその顔が直視できず、ただ彼の手に握られている『dat』を取るにとどめた。

死ねば、人なんて儚いもの。敵であっても、知っている人間が死ぬのは忍びない。

自分が殺したのに、こういうことを思うのはおかしいかもしれない。けれども、胸の内にある寂しさは確かなものだった。

『dat』を取ってしまうと、それがきっかけとなったのかポセイドンの身体が徐々に薄くなっていった。
おそらくもとの世界に戻っていくのだろう。

ポセイドンはそのまま消え去っていった。


237 CGクリエイター(大阪府) 2007/03/29(木) 00:07:28.25 ID:2TIlhHp80

そうして、辺りには再び静寂が宿った。

人っ子ひとりいない村。いったいここはどこなのだろうか?
村人も、動物もいない。畑と民家だけが広がる土地。

丘らしき場所に、大きな洋館が見えるが、そこもぼろくてとても人が住んでそうに見えない。

と、その瞬間、見たこともないような光が空にきらめいていた。

(主^ω^)「な、なんだお!」

黒く染まった空に現れたのは、これまた黒く光る『何か』と、星のように光る白い『何か』だった。
それらは混じりあい、離れ、また混じり、まるで戦っているかのように見えた。

(主^ω^)「黒い光と白い光……」

「あなたは、これ以上ここにいるべきではありません」

(主 ゚ω゚)「おわっ!」

後ろから声をかけられ、B´は慌てて振り返った、

するとそこには、見たこともないような人が立っていた。

おそらく女性なのだろう。女らしいコートを着て、控えめに両手を組んで立っているその女性。
だが、顔は見えなかった。いや、見ることができなかった。

その女性の顔は、鉄の仮面で覆われていたからだ。


239 CGクリエイター(大阪府) 2007/03/29(木) 00:09:52.62 ID:2TIlhHp80

J(  ̄─ ̄)し「……早く行きなさい。『旅人』さん」

(主;^ω^)「あ、あなたは誰だお。それにここは……」

J(  ̄─ ̄)し「私は『VIP』の関係者だと思ってもらって結構です。
       そしてここは、あなたが先ほどまでいた世界と同じ。けれども時間軸が違う」

(主^ω^)「時間軸……」

J(  ̄─ ̄)し「私の最後の予言で、あなたがここに再び現れることは分かっていた。
       そして、あなたが早くここから出なければいけないことも」

(主^ω^)「……けど、この世界は何かおかしいお。あの黒い光と白い光は何なんだお?」

B´は空に浮かぶ白と黒の光を指差す。

混じりあい、不可思議な光を発しているそれらは、自分の知っているようで知らないもの。
『dat』も教えてくれない。存在というものを超越した存在。

女性は、表情の読めない鉄の仮面を空に向け、ゆっくりと話を続けた。

J(  ̄─ ̄)し「彼が……戦っているのです」

(主^ω^)「彼……もしかして、ブーン君かお?」

J(  ̄─ ̄)し「はい。彼は敵と、自分と、世界の真実と戦っています。
       そしてどうにかして勝とうしている……命を賭けて」

(主^ω^)「……」

244 CGクリエイター(大阪府) 2007/03/29(木) 00:12:24.72 ID:2TIlhHp80

J(  ̄─ ̄)し「けれども、それはこの世界の出来事です。
       あなたは、もうこれ以上この世界に干渉すべきではない。帰れなくなってしまいます」

(主^ω^)「けど、ブーン君が危ないのを放っておくわけには……

J(  ̄─ ̄)し「あなたは優しいのですね」

鉄仮面で見えないが、きっと女性は笑っているのだろう。
こちらの手を握ってくる。暖かい。

J(  ̄─ ̄)し「けれども、行きなさい。彼は戦っているのです。だからあなたも戦いなさい。自分の敵と……自分自身と」

(主^ω^)「……」

B´は空を見上げる。

そこにはまだ、白い光と黒い光が戦いを繰り広げていた。

おそらく白い光がブーンなのだろう。
見た感じ、ブーンが押されているようにも見える。


助けに行きたい。

自分を手伝ってくれた人を、今度は助けてあげたい。

だが……それが果たして彼のためになるのか?
彼は助けを求めているのだろうか?


245 CGクリエイター(大阪府) 2007/03/29(木) 00:13:44.77 ID:2TIlhHp80

(主^ω^)「……行くお」

しばらく考えた後、B´は決めた。

この世界から、出て行くということを。

『dat』を手にし、精神を集中させる。
光が自分の身体を包んでいった。

J(  ̄─ ̄)し「気をつけて。あなたならきっと、世界を救えるはず」

(主^ω^)「ブーン君もきっと……世界を救えるお」

J(  ̄─ ̄)し「……それは彼次第。彼が世界を滅ぼすか、救うか……それは彼が決める」

(主^ω^)「え?」

そう聞き返した瞬間、黒い空が急激に白くなっていくのを、B´は見た。
黒が白に染め上げられていく。キャンパスの上を、白い筆が走っていく。

夜のようだった世界を、昼に変えてしまった白い光。

そして、遥か彼方に見えるのは、白い塊。

あれはブーン?


247 CGクリエイター(大阪府) 2007/03/29(木) 00:14:55.47 ID:2TIlhHp80

J(  ̄─ ̄)し「さようなら、『旅人』さん……あなたは『人の子』にいい影響を与えてくれました」

それはどういうことか?

そう尋ねる前に、B´の身体は空へと駆け上っていった。

世界の外へと向っていく自分の身体。



最後、空に浮かぶ8枚の白い翼が見えた。

やはりあれはブーンの心だったのだ。

B´はブーンの無事をただ祈るだけだった。そうすることしか、彼にはできなかった。


248 CGクリエイター(大阪府) 2007/03/29(木) 00:16:07.25 ID:2TIlhHp80

ポセイドンが求めた、『守るための』力は消え去り、今は純粋な白い光だけが広がっていく。

これが正しいことなのか、それとも間違った方向に進んでいるのか、それはわからない。

けれども、B´は確かに見た。




世界が白い光に包まれるのを。




それは、全ての疑問に対する、ひとつの答えなのかもしれない。




〜fin〜


252 CGクリエイター(大阪府) 2007/03/29(木) 00:17:07.05 ID:2TIlhHp80



次回予告

ξ゚听)ξ「さてと、次回予告だけど、本編で出てきた女キャラ全員でやってみることにするわ!」

(*゚ー゚)「出番が少なかった私には、すごく嬉しいですね。会議で少し出ただけ……」

ξ/////)ξ「わ、私なんてあの馬鹿にきききき」

川 ゚ –゚) 「きききき?」

ξ/////)ξ「な、なんでもないわ!」

J(  ̄─ ̄)し「若いわねえ」


253 CGクリエイター(大阪府) 2007/03/29(木) 00:18:31.95 ID:2TIlhHp80

(*゚∀゚)「で、次回はぁ〜」

从 ゚―从「……『閉鎖から一年』…………です」

ξ゚听)ξ「あんた、もうちょっとしゃべりなさいよ!」

从 ゚―从「……」

ξ♯゚听)ξ「ええい! あんたは某読書好きの無口キャラか!?」

(*゚∀゚)「長○依存症♪ 長○依存症♪」

川 ゚ -゚) 「次回は2ちゃんねるが閉鎖した後のお話だ。
     某コテの秘密や、あの伝説の閉鎖騒動の真実について知ることができる……かもしれない」

(*゚ー゚)「私は……塩沢さんがけっこう苦手です」

从 ゚―从「……」

ξ♯゚听)ξ「しゃべれー!!」

(*゚∀゚)「あるーはれーたひーのことー♪」

川;゚ -゚) 「……カオスになってきたので、そろそろこの辺で。ブーンが世界を巡るようです、『閉鎖から一年編』、お楽しみに」


258 CGクリエイター(大阪府) 2007/03/29(木) 00:19:06.69 ID:2TIlhHp80






从 ゚∀从「もうすぐ終わりだよ♪ キャハ♪」
(*゚―゚)「全ての世界が……ひとつに」





ξ゚听)ξ川 ゚ –゚) (*゚ー゚)J(  ̄─ ̄)し「!!!」


261 CGクリエイター(大阪府) 2007/03/29(木) 00:20:08.87 ID:2TIlhHp80

長すぎだろ、俺……ってのは、みんなの素直な感想でしょうから、ちゃんと受け止めます。
文章が無駄に長くなるのは俺の悪い癖だ……

今回は、まあ、なるべく本編と矛盾のないように書いた結果、こんな感じになっちゃいました。
なんだか、あれだ。安直な展開ですまないと思ってる。今の俺にはこれが限界のようだ。

ブーンとB´の合体攻撃は、スパロボ風な感じだと思ってくれwwww

最終話直前のマザーの行動も書きたかったから、緊急出演してしまったが……どうもなあ。

何にしろ、合作としてふさわしい作品か、疑問を感じます。すまない、本当に。

では、次の閉鎖さんにつなげて……俺は(゜3゜)「おさらばするのだ!」



第19世界へ


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