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【合作】( ^ω^)ブーンが世界を巡るようです

第5世界  異能者◆tAdHw/rYVY

278 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 19:31:18.38 ID:e5U/hMe20


パラレルワールド―――もしかしたらあったかもしれない未来。
これはとある世界の、一つのパラレルワールドのお話。


特殊な“力”をその身に宿す人間―――異能者達。
奪われた世界を取り戻す為に、DATを探していくつもの世界を巡る者。



これは、その二つの運命が交差した時に発生したパラレルワールドのお話。




287 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 19:33:20.15 ID:e5U/hMe20







     ( ^ω^)ブーンが世界を巡るようです

    
            【 IN ( ^ω^)ブーン達は異能者だったようです 】









293 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 19:36:30.50 ID:e5U/hMe20

街外れの大きな美しい公園。
よく手入れされた植物が多数存在し、その上では鳥達が楽しげに戯れている。

中心には大きな噴水があり、その公園はまるでそれを引き立てるかのように展開している。
公園には誰もいない。鳥の鳴き声と、噴水の音だけがその公園の中の音だった。


一陣の風が吹き抜け、緑が揺れる。


その時。
音もなく、噴水の横に突如“扉”が現れた。

光り輝いて、どこか輪郭がはっきりとしない。
まもなくその“扉”が開いて、中から一人の少年が顔を出した。

(主^ω^)「……ここが、今回の世界かお」

穏やかな顔をした少年が、扉から完全に身体を出す。
それと同時に、“扉”は音もなくふっと消えた。


299 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 19:38:52.94 ID:e5U/hMe20

(主^ω^)「何だか平和そうな世界だおー」

きょろきょろと、その少年は柔らかい表情で周りを見渡す。
だがその表情はすぐに引き締まった物へと変わった。

(主^ω^)「実際の所、この世界はどんな世界だお……?
       ま、どこでもする事は変わらないお」

言いつつ、ごそごそと懐を探る。
まもなくそこから取り出した物は、掌くらいの大きさの石のような物質―――DATの欠片。

(主^ω^)「……お。まったく反応なしかお。
      となると、この世界のDATはかなり遠くにある事になるお。探しに行かないと」

溜め息を一つ吐いて、再度DATを懐にしまう。

(主^ω^)「とりあえずは何か目印になる物の周辺……そうだお、あの建物の周辺を探してみるかお」

彼の視線の先には、かなり遠くに存在している、街の中心に建っている背の高い建物。

ゆっくりと、名前を奪われた“彼”は歩き出す。
己の世界を救う為に。


301 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 19:39:31.82 ID:e5U/hMe20



――――― ここから(主^ω^)を“彼”と表記します ―――――





307 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 19:41:49.31 ID:e5U/hMe20

歩き出してから、数十分後。
やがて“彼”は、とある十字路を越した辺りで足を止めた。

まだ目印としている建物には着いていない。だが、すでに眼と鼻の先の距離だ。

では、何故“彼”はそんな所で足を止めたのか?

   _, ,_
(主^ω^)「……何だお、あれ」

(    )「…………………」

“彼”の視線の先には、道の真ん中で直立している不審な少年。
そこで何かをするでもなく、ただそこに存在しているだけ。しかも妙に良い姿勢で。

“彼”はその少年のあまりの不自然さに、思わず足を止めてしまったのだ。

少年の顔は“彼”には見えない。ちょうど背を向けている形だ。

(主^ω^)「……ま、良いかお。もしかしたらこの世界ではああいうのが普通なのかもしれないお。
       変にトラブルを起こすのも面倒だし、ここは一つ、放置プレイでいくお」

“彼”は止めていた足を再び動かす。
あくまでも不審な少年には関わらないと心に決めて。


310 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 19:44:10.77 ID:e5U/hMe20

だが、“彼”と少年の距離が狭まった時。

(    )「何だか嫌な予感はしてたんだお」

少年が唐突に言葉を発し、

( ^ω^)彡クルッ「予感はまた当たったようだお」

“彼”を振り返った。
    _, ,_
(主;^ω^)「お?いきなり君は何を言ってr」

その時。
“彼”の言葉を遮るように、“彼”の目の前―――少年の足元で、音がした。
『ゴキリ』、骨をへし折っているかのような、不快で異様な連続した音。

(主;^ω^)「お?な、何だお、この音は……」

異様な音の音源、少年の足に眼を落とす。
そして、驚きに眼を見開いた。

(主;゚ω゚)「……お?」

“彼”の視線の先にあるのは、人間の足ではない。
白銀に輝き、かろうじて人間の足の輪郭を残すだけの異形だった。


314 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 19:46:34.46 ID:e5U/hMe20

(主;゚ω゚)「お、お、おぉぉぉっ!?」

叫んで、大きく後ろに飛び下がる。
そして、後ろにあった電柱に後頭部を強打して倒れ込んだ。

(主;゚ω゚)「――――――ッ!!」

ガバッ、とすぐに上半身を起こす。
だが足がすくんでしまったのか、立ち上がれない。

“彼”は腕の力だけで少年から離れようと、ずりずりと後退した。

(主;゚ω゚)「なっ……何だお!?君は人間じゃないのかお!?化け物なのかお!?」

( ^ω^)「あんた何言ってるんだお?僕は異能者……人間だお。化け物じゃないお」

少年はゆっくりと“彼”に歩み寄っていく。

(主;゚ω゚)「うぁっ!来んなおっ!こっち来んなおっ!!」

( ^ω^)「何の真似だお?……まぁ良いお」

少年は“彼”とそれなりの距離を取ったまま会話する。
その眼に油断はなく、体もいつでも攻撃出来る体勢だ。



319 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 19:48:47.75 ID:e5U/hMe20

( ^ω^)「どっかで見たような顔だけど……あんた、誰だお?僕に何の用だお?」

そんな少年の問いに、“彼”は半ば叫ぶように言う。

(主;゚ω゚)「何の用か聞きたいのはこっちだおっ!何のつもりだおっ!?
       君は何なんだお!?人間じゃないのかお!?やっぱり化け物かお!?何だお、その足は!?」

(;^ω^)「おっ?……も、もしかして、君は異能者じゃないのかお?」

(主;゚ω゚)「何だお、その『異能者』って!意味が分からんお!」

(;^ω^)「……何だお、僕の思い違いかお。怯えさせて悪かったお」

それからまもなく、また少年の足から異音が爆ぜる。
その数秒後には、少年の足は元の人間の足に戻っていた。

“彼”はその光景を、信じられないと言った表情で見詰めていた。

(主;^ω^)「…………………」

(;^ω^)「本当に悪かったお。僕が勝手に敵だと思い込んでただけだったお。許して欲しいお」

言いつつ、少年はしりもちを突いたままの“彼”に手を差し伸べる。
一瞬躊躇したが、“彼”はその手を借りて立ち上がった。


322 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 19:51:10.24 ID:e5U/hMe20

(主;^ω^)「……お」

( ^ω^)「落ち着いた所で、君は誰だお?僕に何の用だお?」

(主;´ω`)「……さっき言った通り、そう聞きたいのはこっちだお。
       僕は君の横を通り抜けようとしただけで、君に用はないお……」

(;^ω^)「……えーっと、あのですね」

(主^ω^)「お?」

そこで、少年はいきなり土下座した。

(;´ω`)「本っ当にすいませんでしたお……」

(主;^ω^)「いや、いきなり何してんだお!?ほら、立って!」

(;´ω`)「でも……」

(主;`ω´)「良いから!」

慌てて、無理矢理少年を立ち上がらせる。



325 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 19:53:22.93 ID:e5U/hMe20

(主^ω^)「さっきの事については良いお。思い違いだったんだから、仕方ないお」

( ^ω^)「でもそれじゃ何だか悪いお……。
      ……そうだお!何か僕に出来る事はないかお?」

(主;^ω^)「……はい?」

( ^ω^)「僕はブーンっていうお!贖罪として、僕に出来る事があれば申し付けてくれお!
       何かの手伝いでも、家の掃除でも、僕に出来る事であれば何でもするお!」

(主;^ω^)「い、いや、でも……」

「それは悪いから良い」と言いかけて、“彼”は口を閉じる。

       |
   \  __  /
   _ (m) _ピコーン
      |ミ|
    /  `´  \
     (^ω^主)  良い事思いついたお!
     ノヽ ノヽ
       く く



331 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 19:56:07.28 ID:e5U/hMe20

(主^ω^)(手伝う、というなら手伝ってもらえば良いじゃないかお!
       一人でDATを探すよりも二人で探した方が絶対早いし、この世界のナビとしても役立つお!)


(主^ω^)(それに、さっきの強そうな足に、「敵かと思った」発言!これは戦い慣れてる人間の発言だお!
       よって、フォックス側がDATを持ってても戦ってもらえるお!
       僕とブーンの間に特別な絆があるとでも思わせておけば、きっとそうしてくれるお!)


(主*^ω^)(おっおっお!僕は天才だお!それに運も良いお!)



(;^ω^)「何で笑ってるんだお?」

その言葉に、“彼”は緩んでいた表情を引き締める。
騙して協力させる、という形とは言え、自分の世界の命運がかかっている事だからだ。

(主^ω^)「……君はブーンっていうのかお?
       だったら、君に是非頼みたい事があるお」

( ^ω^)「お?何だお?」

(主^ω^)「……僕の世界を救う手助けをしてほしいんだお」

(;^ω^)「お?」

(主^ω^)「何を言っているのか分からないと思うお。
      でも、真面目な話なんだお……話だけでも聞いてくれないかお?」

338 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 19:58:12.56 ID:e5U/hMe20

ブーンは“彼”が何を言っているのか分からない。
「僕の世界?まるで世界がいくつもあるみたいじゃないか」
そう思ったのだ。

それでも、ブーンは“彼”の話を聞いてみようという気持ちになった。

何故かは本人にも分からない。
“彼”の本気の眼を見た瞬間、彼の中の何かが、「この男の話を聞け」と叫んだのだ。

(主^ω^)「聞いて、くれるかお?」

( ^ω^)「……良いお。聞くお」

(主^ω^)「ありがとうお」

それから、“彼”は己の身に起こっている全てをゆっくりと話し始めた。


自分の世界を構成するDATという物質がフォックスという男に奪われた事。
自分は世界を救う為に、各世界に散らばったDATを各世界を渡りながら集めているという事。
この世界にもDATがあるのだが、この世界について何も分からないから、一緒に探して欲しいという事。

そこにDATの説明を加えて、もしかしたら戦う事になるかもしれないという事も伝えた。


(主^ω^)「―――という事だお」



342 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:00:12.91 ID:e5U/hMe20

(;^ω^)「……信じられないけど、何となく把握したお。でも……」

(主^ω^)「お?」

(;^ω^)「何でそんな大変な話を、僕に?」

その質問を待ってた、と“彼”は内心でガッツポーズを取る。

(主^ω^)「……僕は君で、君は僕だからだお」

(;^ω^)「……な、何ぃ?」

(主^ω^)「さっき、君の名前を聞いて思い出したお。
      僕と君の世界は平行世界。僕達は住む世界が違うだけで、同じ存在なんだお。
      別れ際に、トーチャンが言ってたんだお。お前と同じ存在の『ブーン』って人を頼れと!」

(;^ω^)「なるほど……よく分からないけど、何となく把握したお」

(主^ω^)(良かった、騙せたお)

内心で胸を撫で下ろした。

“彼”は深呼吸をする。

(主^ω^)「お願いだお……。僕の世界を救う為に、手を貸してくれお!」

“彼”はブーンに向けて手を差し出す。
ブーンにはその手が少し震えているのが見えた。

348 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:01:44.24 ID:e5U/hMe20

対するブーンの答えは、決まっていた。

( ^ω^)「……君の話は正直信じられないような内容だったお。
      それに、迷惑をかけたとは言え、何でそんな大変な事を僕が?」

(主;´ω`)「…………………」

( ^ω^)「そう思ったお」

「でも」、とブーンは続ける。

( ^ω^)「君の眼が、本気だったんだお。嘘を吐いている眼じゃなかったんだお。
       君の世界が大変だっていうのが本当なら、それは見過ごせない事だお」

「それに」、と更にブーンは続ける。

( ^ω^)「君は他人とは思えないんだお。そりゃ同じ存在だっていうんだから当たり前なんだけど。
       例えるなら……そう、鏡を見ている気分だお。君を放っておけないお」

そう言って、ブーンは“彼”の手を強く握った。

( ^ω^)「良いお。君のお願い、聞いてあげるお」

その言葉に、“彼”は本当に嬉しそうに顔をぱっと輝かせた。

(主^ω^)「本当かお!?ありがとうお!恩に着るお!」

350 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:03:09.94 ID:e5U/hMe20

(*^ω^)「別に良いおー。人助けってのは、する側も気持ち良い物だおー。
      んで、僕は具体的にどうすれば良いんだお?」

(主^ω^)「お、それよりも先に聞きたい事があるお。この世界では戦いという物はあるかお?
       あるなら、どんな武器で戦ってるお?どんな力を用いて戦ってるお?」

(;^ω^)「物騒な事を聞くお……まぁ、良いお。
      まずこの世界では、銃や刃物、火薬なんかを使っての戦いがあるお。
      銃とか剣とか、そういうのは分かるかお?」

(主^ω^)「お。その辺は分かるお」

( ^ω^)「それは良かったお。
      で、もう一つの戦いの“力”が、さっきの僕の足みたいなやつ―――『異能者』の力だお」

(主^ω^)「さっきの人間離れしたあれかお?」

( ^ω^)「そうだお。この世界には『異能者』っていう、特殊な“力”を持った人がいるんだお。
      僕のような肉体を強化・変化させる“力”を持った人間もいれば、炎とかを出せる異能者もいるお」

(主^ω^)「要するに、この世界には『異能者』っていう人間離れしたすごい力を持つ人達がいるって事だお?」

(;^ω^)「めちゃくちゃ短縮されたけど、まぁそんな感じだお。他に知りたい事はないかお?」

(主^ω^)「お。とりあえず今の所はないお。ありがとうお」


354 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:04:36.21 ID:e5U/hMe20

( ^ω^)「どういたしまして。で、話を戻すけど、僕は何をすれば良いんだお?」

(主^ω^)「まずは僕と一緒にDATを探してほしいお」

( ^ω^)「DATってどんなんだお?」

(主^ω^)「基本の形は石ころみたいなもんだお。でも、もしかしたらその形状を変えてるかもしれないお」

(;^ω^)「そんなん見付かるわけないと思うお?」

(主^ω^)「その辺は心配ないお」

( ^ω^)「お?どうしてだお?」

(主^ω^)「多分、DATを見れば直感的に分かるからだお」

(;^ω^)「……お?」

(主^ω^)「良いからまずは探してみるお。見付かれば分かるお」

( ^ω^)「……お!」

それからブーン達は、街を回る。


色々な所を練り歩くだけで、施設の中には入らない。入る必要がないからだ。
DATの近くに寄れば、“彼”の持つDATが何かしら反応を示すのだという。

358 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:06:04.95 ID:e5U/hMe20

三時間ほど休みもなくブーン達はDATを探し続ける。
日がかなり傾いてきた頃、二人の肉体にはかなりの疲労が溜まり始めていた。


(;^ω^)「……まだDATの存在は感じないかお?」

(主;^ω^)「おー、残念ながら、だお」

(;^ω^)「もうすぐ夕方だおー。どうするんだおー?」

(主;^ω^)「おー、本当に……」

「どうしようか」、“彼”がそう言おうとした時。

“彼”のDATが、光を放ちつつ大きく振動した。
そして、ブーンの足に強い痺れが走る。

二人は顔を見合わせ、そして一斉に自分達の目の前の建造物を見る。

そこにはそれなりの大きさがある、五階建ての廃ビル。
ところどころに落書きがあり、ほとんどの窓ガラスが割られている。明かりがない不気味な場所だった。

360 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:07:31.70 ID:e5U/hMe20

(;^ω^)「……今、何か感じたお?」

(主;^ω^)「めちゃめちゃ感じたお。君は異能者とやらの力かお?」

(;^ω^)「力っていうよりか、特性だお。異能者は異能者同士を感知出来るんだお」

(主;^ω^)「となると、この中には……」

(;^ω^)「DATを持った人間と異能者。または、DATを持った異能者、かお」

(主;^ω^)「おそらく」

二人の背中に、同時に冷たい物が走った。

(;^ω^)「……行くかお?」

(主;^ω^)「行くしかないお。もしかしたら、DATのある場所に偶然異能者がいただけかもしれないお」

(;^ω^)「DATを取りに来たって理由以外に、こんな場所にわざわざ来る理由なんてないと思うお?」

(主;^ω^)「……どちらにせよ、行くしかないんだお。もしもの時は護って欲しいお」

(;^ω^)「おk、把握」



362 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:09:07.93 ID:e5U/hMe20

二人同時に、廃ビルの中に足を踏み入れる。
“彼”が見ると、ブーンの足は既に戦闘体勢―――異能者の足へと変わっていた。

“彼”はもう、その足に怯えない。むしろ心強さを感じていた。

一階を探索。誰もいないし、何も無い。
二階、三階、四階も同じ。ただ乱雑としたホコリっぽい空間が広がっているのみ。

残るは、最後の階―――五階のみ。


五階への階段を上ると、まず目の前にドア。今までの階層と造りが違うようだ。

(;^ω^)「……ここかお?」

(主;^ω^)「間違いないお。僕のDATが今までになく強く反応してるお」

(;^ω^)「じゃあ、行くお?」

(主;^ω^)「把握。心の準備は出来てるお」

その言葉を合図に、ブーンはドアに白銀の足をかける。

そして、そのドアを勢いよく蹴り飛ばした。

ガゴッ、という金具の外れる音。同時にドアは大きく吹っ飛ぶ。
だがそのドアは、地面に落ちる前に何者かに粉砕された。

367 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:10:44.63 ID:e5U/hMe20

(;^ω^)「やっぱ誰かいたかお……」

険しい顔をするブーン。その視線の先には―――

( ゚ ゚)「…………………」

―――ブーン達の方向に紫の異形の腕を向けた男がいた。

ブーン達と同じような体型。ブーン達と似たような顔。
黒いジーパン、前を開けた黒いレザージャケット、黒地のシャツと、見事に黒で固められている服装。
濁った眼をしていて、冷たい殺気をブーン達に放っている。

ブーン達に向いた男の右腕は、毒々しい紫色の異形。間違いなく異能者の腕だった。
そして、開いたその掌には、ビーダマほどの大きさの謎の穴。

(主^ω^)「……君はフォックスの手先かお?」

“彼”は警戒しながら、男に問う。
対する男は低く冷たい声で答えた。

( ゚ ゚)「その通り、だお。お前の事はフォックス様から聞いているお……名無しの子」

(;^ω^)「そのフォックスの手先とやらが、何で異能者なんだお?
      異能者はこの世界にしかいないと聞いたお」

( ゚ ゚)「ここで見付けたDATを、『異能者』とやらを真似た武器にしただけだお。
     フォックス様からこの世界の情報を細部まで聞いておいて正解だったお」


369 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:12:18.76 ID:e5U/hMe20

男はそこで、紫色の異形の右腕を誇るように掲げ上げる。

( ゚ ゚)「中々に使い勝手が良いお。それに攻撃能力もかなりのものだお。
     銃や刀剣などとは比べ物にならない扱いやすさで、この破壊力。気に入ったお」

(;^ω^)「?……どういう事だお?」

(主;^ω^)「DATは己を行使する者の想いによってその形状・能力を変える……って言ったはずだお。
       僕の話をちゃんと話を聞いてたかお?ブーン」

そんな事よりも、と、“彼”は男を睨む。

(主^ω^)「何でお前はDATを手に入れた後、すぐにフォックスに持って行かなかったんだお?
       何を考えているんだお?やっぱり僕のDATも一緒に持って帰ろうって魂胆かお?」

( ゚ ゚)「それもあるけど、本当の理由は違うお」

(主^ω^)「だったら何で残ったんだお?」

( ゚ ゚)「簡単な事だお。僕はお前を殺す為に残ったんだお」

(主;^ω^)「なっ……!?」



373 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:13:45.55 ID:e5U/hMe20

( ゚ ゚)「……殺す前に、お前に僕の事を教えとくお。僕はクリテロ。
     お前を闇に引きずり込む、お前の“影”として、フォックス様に闇から創られた存在だお」

表情も変えずに、「っは」と皮肉に笑う。

( ゚ ゚)「誰かの“影”として存在する事がどれだけ辛いか―――お前に分かるかお?
     誰かを殺す為だけに生み出された強化クローン、そういう存在として生きる事が」

(主;^ω^)「そ、そんな……」

( ゚ ゚)「……お前を殺せば、僕はお前の“影”じゃなくて、“僕”という存在になれるんだお……!
     だから、僕はお前を―――殺させてもらうおっ!!」

声の調子を一変させて、叫ぶ。
そして、男―――クリテロは、その右腕を再度ブーン達に向けた。

(;^ω^)「お?あの人、何やってんだお?」

ただ右腕をこちらに向けるだけで何もしないクリテロに、ブーンは疑問を抱く。
だが、その眼はクリテロのわずかな変化を見逃さなかった。

こちらに向けて伸ばし、開いた掌。
その中央にある穴が、ぐぐっとわずかに広がったのだ。

それが何を意味する変化なのかは分からない。
だが、ブーンの『嫌な予感』が全力で警報を鳴らしていた。


377 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:15:22.93 ID:e5U/hMe20

( ゚ ゚)「おぉっ!!」

クリテロが叫ぶのと同時。
クリテロの右掌の穴から、『何か』が異速で発射された。

その『何か』は、“彼”の頭蓋目掛けて飛び行く。

(主;゚ω゚)「―――っ!?」

“彼”は動けない。予想外過ぎる攻撃だった。
それでも『何か』は待ってくれない。ただ“彼”の頭蓋を破壊せんと異速で進む。

(;゚ω゚)「危ないおっ!!」

動けない“彼”の体を押し倒すように、ブーンが“彼”に飛びかかる。
飛ばされた『何か』はブーンの体をかするように飛び過ぎ、ブーンの後ろの壁に音を立てて突き刺さった。

ブーンはすぐに立ち上がり、今の飛来物の正体を確かめる。
そして驚愕した。

(;゚ω゚)「な……何だお、これは」

壁に突き刺さっているものは、紫色の杭。
二十センチほどの長さで、さほど太くはない。だがその硬度は金属並。


380 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:16:48.56 ID:e5U/hMe20

( ゚ ゚)「僕の“力”だお。右腕の中で杭を形成し、発射する。まぁ、銃みたいなもんだお。
     どういった原理かは分からないが……中々に使い勝手が良いお」

(;゚ω゚)「……何だかすごく厄介な気がするお」

言いつつ、ブーンは横目で“彼”を確認。
“彼”はブーンが押し倒した時に頭を打ってしまったのか、気を失っていた。

(;^ω^)「……あんたが気を失ってどうすんだお」

苦々しくブーンは呟く。

( ゚ ゚)「そいつを殺す邪魔をするなら、お前も殺すお」

冷たく言い放ち、間髪入れず再度杭を撃ち放つ。
ブーンは大きく左に跳び、それを回避。すぐにクリテロに攻撃せんと大きく飛び出した。

だが。

( ゚ ゚)「甘いお」

接近したブーンに合わせるように、クリテロは右足を大きく前に突き出す。
それはブーンの腹を捉え、ブーンは飛び出した分だけ吹っ飛んだ。

(;^ω^)「う……うぇっ……!」

( ゚ ゚)「僕は奴を殺す為に創られた兵隊だお。戦闘の素人のお前とは違うお」

383 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:18:10.64 ID:e5U/hMe20

右腕を構え、倒れたままのブーンに杭を撃ち放つ。
ブーンはそれを転がるように回避し、立ち上がる。

(;゚ω゚)「おぉっ!!」

すぐにまた飛び出す。飛び出す事しか出来ない。
クリテロは遠距離でも攻撃が可能だが、ブーンは足が届く距離まで近寄らないと攻撃出来ないからだ。

( ゚ ゚)「攻撃パターンが少ないお」

高速で走り寄って来たブーンに、至近距離で杭を撃ち放つ。
ブーンはそれをギリギリで回避。すぐにクリテロの脇腹を狙って左足を思いきり振り抜いた。

( ゚ω゚)「おおぉっ!!」

だが、そこで響くは金属音。
振るわれたブーンの足は、クリテロの右腕に止められていた。

( ゚ ゚)「威力はあるけど、攻撃も短調だお。お前つまらないお」

(;゚ω゚)「勝手にそう思ってろおっ!!」

ブーンは叫ぶと、彼の右腕を思いきり蹴り飛ばす。
間髪入れず、反動で跳ねた左足をもう一度叩き込もうと足を振るった。


だが、それでもブーンの足が彼を捉える事はなかった。

385 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:20:19.83 ID:e5U/hMe20

( ゚ ゚)「素人にしては中々に考えたけど、やっぱり甘いお」

その声と同時。クリテロを捉えかけていた左足が大きく弾かれる。
驚いてブーンは己の足を見る。その左足のふとももには、紫色の杭が刺さっていた。


クリテロは右腕が弾かれた瞬間、すぐにブーンの左足に向けて杭を撃ち放ったのだ。


痛みに、ブーンは顔をしかめる。

( ゚ ゚)「銃は短距離でも撃てるお。一度弾いたくらいで安心するなお。それと……」

冷徹に言い放ち、クリテロは右足を軽く引く。


そして―――

( ゚ ゚)「教えてやるお。蹴りってのはこうやるもんだお」

―――ブーンの腹に、ムチのような蹴りを叩き込んだ。

(;゚ω゚)「おぶっ!!」

またもブーンは吹き飛ばされ、地面をごろごろと転がる。
止まった場所は、己と同じ存在だという“彼”の隣だった。


386 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:21:51.95 ID:e5U/hMe20

(;゚ω゚)「ぐっ……おぉ……!」

“彼”を護ろうと、立ち上がろうとする。
だが、立ち上がれない。クリテロの蹴りは良くない所に入ったようだ。

それでも立ち上がろうとする。“彼”を護ろうとする。
ブーンは、何故自分がこんなにも“彼”を護ろうとするのか分からなかった。

ただ『護らなくては』という気持ちだけが力強く燃え盛っていた。

( ゚ ゚)「一人で逃げれば死なずに済むのに……馬鹿じゃないかお?」

クリテロは呆れたように言いながら、ブーンに歩み寄る。
ブーンは倒れたままその足を蹴り飛ばそうとする。しかし、それもクリテロは軽く避けた。

( ゚ ゚)「ふん。まぁ、良いお。そんなに死にたければ殺してやるお」

でも、その前に―――と、クリテロは“彼”を見る。
そして、その口端を邪悪に吊り上げた。

(;゚ω゚)「おい……何するつもりだお?おい!?」

( ゚ ゚)「少し考えれば分かるお?お前の先にこいつを殺すだけだお」


390 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:23:13.21 ID:e5U/hMe20

言って、クリテロは声を荒げる。
自分の中の怒りや憎しみなどを全てぶちまけるように。

( ゚ ゚)「こいつを始末して、僕は“僕”になるんだお。
     こいつの影ではなく、“僕”として生きるんだお!!」

叫んで、右腕を“彼”に向ける。
そして、その掌の中央にある穴が少しだけ広がって―――

(#゚ω゚)「お、お、お、おおぉぉぉ!!」

―――杭が放たれる瞬間、その右腕は気力で立ち上がったブーンに大きく蹴り上げられた。
標準を大きくズラされた杭は、灰色の天井に勢いよく突き刺さるのみ。

(;゚ ゚)「お前っ……!!」

(#゚ω゚)「“僕”を殺させるわけにはいかねぇんだおっ!!」

叫んで、ブーンは思いきり足を振るう。
クリテロはその足を、すんでの所で右腕で防御。

だが、それでもブーンの足は勢いを止めなかった。

(;゚ ゚)「――――――っ!?」

右腕だけで抑えたはずのブーンの足に、ぐ、と更に力がこもる。
クリテロはその力に耐えられず―――その体は大きく吹っ飛んだ。

その勢いは相当の物で、クリテロの体はかなり遠くまで飛ばされ、床を転がった。

392 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:24:49.11 ID:e5U/hMe20

すぐさまクリテロは起き上がる。
その眼に映ったのは、“彼”を担いで出口に駆け込むブーンの姿だった。

( ゚ ゚)「ふざけんなお。ここまで来て逃がすかお。ここまで来て、ここまでして……」

今まで変化の少なかった彼の表情が、鬼のような顔に豹変する。

(#゚ ゚)「 さ せ る か お ぉ ぉ ! ! 」

杭を撃ち放つ。だがそれは壁に突き立っただけで終わった。

(#゚ ゚)「おぉおぉおぉおぉ!!」

クリテロは叫びながら走り出し、ブーンを追う。
対するブーンは全力で逃げる事だけを考えていた。

(;`ω´)「おぉおぉおぉおぉ!!」



396 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:27:01.15 ID:e5U/hMe20

ブーンの足取りは、速くない。
彼の左ももには杭が刺さったままだ。抜く暇もない。


その痛みに耐えながら、ブーンは階段を下る。下る。下る。半ば転げ落ちるように。
クリテロは怒り狂いながら、階段を下る。下る。下る。彼も半ば、転げ落ちるように。


叫び、杭を撃ち放つ。走る。走る。飛び降りる。
歯を食いしばり、杭を避ける。走る。走る。飛び降りる。


杭が頭をかする。恐怖で壊れそうになるが、“彼”を護らねばと足を進める。
出来る限り杭を連射する。当たらない。当たらない。焦りと怒りが内で爆発する。



398 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:28:12.05 ID:e5U/hMe20

先に一階に辿り着いたのはブーン。
間髪入れずクリテロが辿り着くが、その時にはブーンは走り出していた。

階段であればともかく、ただの道となればブーンの方が速い。例え怪我していようとも。
それを悟ったのか、クリテロはその廃ビルの出口で足を止めた。

そして、叫ぶ。
全てを呪うように。全てを憎むように。全てを闇に染めてやろうと言わんばかりに。

(#゚ ゚)「ブーンと言ったな!良いお!お前の命も、僕が刈り取ってやるお!
    殺すお!その男も、お前も!絶対に殺すお!!跡形もなくなるほどに殺してやるお!!
    安心しろお!僕はお前達を殺すまで、フォックス様の所へは帰らないお!殺すお!殺すお!絶対に!!」

紅く染まり始めた空に、クリテロの声は邪悪に響く。
夕焼け空はその殺意に答えるかのように、だんだんと暗くなっていった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


403 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:30:05.21 ID:e5U/hMe20


('A`)「……で、何で俺の所に来たんだ?えぇ?」

(;^ω^)「冷たい事を言わないでほしいお」

黒と白、そして銀色を基調に彩られた、シンプルながらもオシャレな部屋。
相当に便利な物の配置なのに、部屋に汚さや乱雑さは欠片も見られない。

そこはブーンの親友、ドクオの部屋だった。
ベッドには“彼”が眠っており、ブーンの左ももには紅く滲んだ包帯が巻かれている。

('A`)「うるせぇ。受け入れてやっただけでもありがたいと思え」


クリテロとの戦闘の後、ブーンはドクオの家へと向かった。
その理由は、家が近い所にあったからというもの。

ふとももから紫色の杭を生やし、肩に見知らぬ男を担いで突然訪れたブーンを、ドクオは驚きもせずに家に入れた。
何も言わずに、何も問わずに。
ブーンが理由を話そうとした時に、「そんな事よりもまずは中に入れ」とまで言ったほどだ。




408 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:31:57.77 ID:e5U/hMe20

(;^ω^)「礼は何度も言ってるお!肩だって揉んだし、飯だって作ったし、掃除だってしたお!
      お前がコーヒー飲んでる間のBGMとして、ピアノまで弾かされたお!お前は一体何なんだお!」

('A`)「あーん?その程度の奉仕で、俺に感謝の意志が伝わると思ってんのかてめぇ。粉砕するぞ」

(;^ω^)「お前はどんだけ偉いんだお!」

('A`)「俺よか偉い奴なんていねぇよ。俺がナンバーワンだ」

ドクオがそんな冗談を言った時。


ベッドの上の“彼”が、うっ、とうめいた。


そしてまもなく、その上半身を起こす。

(主^ω^)「……おっ……?」

('A`)「おっ……起きたみたいだな」

そう言うドクオを、“彼”は不思議そうな眼で見詰める。

(主;^ω^)「ここは……?そして君は……?」



415 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:33:51.74 ID:e5U/hMe20

(;^ω^)「やっと起きたかお!」

(主;^ω^)「ブーン?どこだおここは?何でここにいるんだお?」

( ^ω^)「あぁ、ここh」
('A`)「ここは俺んちだバーロー」

(主;^ω^)「なっ……?」

(;^ω^)「ドクオ!初対面の人に、いきなり何言ってんだお!」

('A`)「るせぇ。この家では俺が全てのルールだ。俺が王だ。称えやがれ」

(主;^ω^)「えっ……あっ……?」

( ^ω^)「気にしないで良いお。あいつはドクオっていう僕の友達で、ああいう性格なんだお」

('A`)ノシ「よろしく」

(主;^ω^)「……おー」

( ^ω^)「とりあえずは現状把握の為に、ここに来るまでの出来事を話すお」

ブーンはゆっくりと、“彼”が意識を失ってからの事を口にする。



420 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:35:15.83 ID:e5U/hMe20


DATの力によって、擬似異能者となったクリテロの“力”。
クリテロの戦闘能力の高さ。
傷を受けた事。敗けそうになって、逃げた事。
そしてドクオの家に逃げ込んだ事。時間的に、今は夜の十時頃だという事。

それを聞いている間、“彼”はずっと申し訳なさそうな顔をしていた。

勝手に問題に巻き込んでしまったブーンを戦闘させ、当の自分は意識を失っていた事。
それに傷付いたブーンに自分を背負わせてしまった事が心に引っかかっているらしい。


( ^ω^)「……と、いう事だお」

(主;´ω`)「……色々とごめんお」

( ^ω^)b「別に良いおー。君の事は放っておけないんだおー」

そう言うブーンを無理矢理押しのけて、ドクオが“彼”の前に出る。

('A`)「ちょっと良いかい?」

(主;^ω^)「おっ?」

('A`)「いきなりだが、あんたは誰だ?名前は?」



423 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:36:32.49 ID:e5U/hMe20

(主;^ω^)「……名前。えーっと。名前、は……」

('A`)「あーん?何で名前を言えないんだ?何か問題でも?」

(主;´ω`)「名前を教えたいところなんだけど……僕には、名前がないんだお。
        正確に言えば、名前を奪われたんだお」

('A`)「んー?あんたイカレてるのか?つっても、そうは見えないしな……。
   もしかして、あんたアレか。深い事情抱えちゃってるって奴か」

(主;´ω`)「……その通りだお」

('A`)「っしゃ。だったら事情話せ」

(主;^ω^)「……お?」

('A`)「暇だったしな。ブーンが負傷して帰って来るって事は、つまり“そういう事”だろ?
   事情によっては手ぇ貸してやるからよ。さっさと話せ。
   俺ぁまだこいつから何も聞いてないから、何も分かんねぇんだ」

(;^ω^)「ドクオ……?」

('A`)「あぁん?何だよ」

(;^ω^)「いきなりどうしたんだお?お前、そういう事めんどくさがる奴じゃ……」



426 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:37:55.05 ID:e5U/hMe20

('A`)「暇だったっつってんだろ。人の話聞きやがれ。ぶち殺すぞ。
   それに、チキンのお前が手ぇ貸してるって事は、かなり深い理由なんだろ?
   だったらここで手を貸さないのはダチとしても人間としても酷ってもんだろ」

(*^ω^)「ドクオ……」

('A`)「笑顔で見詰めるな気持ち悪い」

ドクオはゆっくりと顔を“彼”に向ける。

('A`)「さ、俺も手ぇ貸してやっから、さっさと話せよ」

(主;^ω^)「で、でもっ……」

('A`)「あぁん?」

(主;^ω^)「この問題は、既に一般人の入れるレベルじゃないお。
       命のかかってる戦いの域に入ってるんだお。だから……」

「君には頼めない」と、“彼”がそう言おうとしたところで。

“彼”の言葉を遮るかのように、『ゴキリ』と音が響く。
それは“彼”がブーンと出会った時に聞いた音。異能者が“力”を解放した時に鳴り響く音。


その音の元は、ドクオ。ドクオの左腕だった。
彼の左腕は闇色の、悪魔のようなグロテスクなものへと変化していた。

432 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:39:37.90 ID:e5U/hMe20

('A`)「誰が一般人だと?えぇ?」

(主;^ω^)「ど、ドクオ君……君も、異能者なのかお?」

('A`)「見れば分かるだろ。どう見ても異能者です本当にありがとうございましたってな。
    俺だって戦える人間だ。文句ねぇだろ? さぁ話せ。さっさと話せ。俺は待つのは嫌いだ」

(主^ω^)「……ありがとうだお。本当に」


それから、“彼”はドクオに全てを話す。
ブーンに話した事と同じ事に事に加え、クリテロの存在も、全て。


全てを話し終えた後、ドクオはにやりと微笑む。

('A`)「ほぅ、何だか楽しそうじゃねぇか。暇潰しには最高だ」

(;^ω^)「話を聞いてもそんな事が言えるお前が信じらんねぇお」

('A`)「うるせぇ黙ってろ。お前のアナル閉鎖してやろうか」

(;^ω^)「流石にそれはごめんだお。想像するだけで辛いお」


438 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:41:11.98 ID:e5U/hMe20

('A`)「だったらギコでも呼びつけて、お前の髪の毛アフロにしてやろうか?」

(;^ω^)「僕の髪の毛の量じゃせいぜいアイパーにしかならねぇお」

('A`)「……そろそろやめようか。話が進まない」

( ^ω^)「賛成だお」

と、そこでドクオはいきなり険しい顔をして、“彼”を見る。

(主;^ω^)「お?何だお?」

('A`)「ここで超重要な問題が一つ」

そう言って、ドクオは指を一本上げる。

('A`)「名前がないって、あんたの事を何て呼べば良いんだ?」

(;^ω^)「超重要でも何でもないけど……そういやそうだお。何て呼べば良いんだお?」

(主;^ω^)「おー、どうするかお……」

そうして悩み始めてから、わずか十分。
ドクオがふいに口を開いた。


442 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:43:36.13 ID:e5U/hMe20

('A`)「ポチとか?」

(主^ω^)「やだお」

('A`)「じゃあ、トロッソ?」

(主^ω^)「どこの世界の方の名前だお?」


('A`)「じゃあ、カレー?」

(主;^ω^)「お?何だか聞いた事ある名前だけど……それもやだお。食い物じゃないかお」

( ^ω^)「それに名前被るお」

(主^ω^)「え?」

( ^ω^)ノシ「いや、何でもないお」


('A`)「じゃあ……パン?」

(主;^ω^)「やだお。パンだって食い物じゃないかお」

('A`)「いや、効果音だ」

( ^ω^)「え?」

('A`)ノシ「いや、何でもない」

446 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:45:08.69 ID:e5U/hMe20

そこまで言って、ドクオは腕を組んで唸る。

('A`)「うーん……じゃあ、どうするかな」

( ^ω^)「どうするかおー」

('A`)「ん?そういや、ブーン。そういや、お前の本名は『内籐ホライゾン』だよな?
   ずーっと『ブーン』で呼んでたから忘れてたが」

(;^ω^)「そうだお。っつーか何で友達の名前忘れてんだお」

('A`)「だってお前の事ブーンとしか呼んでないもん。
   多分、ギコ辺りはお前の本名知らないんじゃね?」

(;^ω^)「……おー。あり得るから怖いお」

('A`)「……っと、話を戻すぞ。ブーン、確かお前、ぃょぅには『ジョン』って呼ばれたよな。
   『ホライゾン』を噛んで『ホライジョン』って呼んじゃったから、もういっそ『ジョン』で良いやってさ」

(;^ω^)「そうだお。ぃょぅ君はよく分からんお。お前と同じ臭いがするお」

('A`)「……まぁ、その辺はどうでも良いがよ」

言って、ドクオは“彼”に向き合う。



450 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:46:38.54 ID:e5U/hMe20

('A`)「じゃあ、そうだな。あんたの話だと、あんたはブーンと同じ存在だそうだから、
     あんたを『ジョン』と呼ぼう。どうだ?呼びやすくて良いと思うんだが」

(主^ω^)「……ジョン?」

('A`)「嫌か?」

(;^ω^)(嫌って言われたら僕はどうすりゃ良いんだお)

(主^ω^)「いや、何だかかっこいい響きだお。気に入ったお」

( ^ω^)('A`)「それは良かった」

ところで、とドクオは続けて口を開く。

('A`)「いつまた行くんだ?その……『クリテロ』?とかいう奴の所」

(;^ω^)「僕のこの足が治るまで待ってほしいお」

('A`)「どれくらいかかる?」

( ^ω^)「かかっても三日くらいかお。つっても、相当深くなければもっと早く治るお」

(主;^ω^)「杭が刺さったっていうのに、何でそんな早いんだお?」

( ^ω^)「言わなかったかお?異能者は傷がすごく早く治るんだお」

(主;^ω^)「……本当に異能者ってすごいお」

453 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:47:55.51 ID:e5U/hMe20

そう言う“彼”―――ジョンの顔を、ドクオがじっと覗き込む。

(主;^ω^)「お?何だお?」

('A`)「……何だか暗いな」

(主^ω^)「お?」

('A`)「お前の表情だよ。何か嫌な事でもあるのか?」

(主;^ω^)「い、いや。別にそんな事……」

('A`)「良いから言えよ。粉砕するぞ」

(主;^ω^)「分かったお。言うお。
       ……クリテロを殺すって事が、どうにも上手く飲み込めないんだお」

( ^ω^)「お?」

(主;´ω`)「クリテロは、僕を闇に引きずり込む為の“影”として創られたんだお?
       要するに、僕を殺す為だけの、そんな存在として。
       そんなの、可哀相過ぎるお。そんな人を、僕は殺さないといけないっていうのが……」

( ^ω^)「ジョン……」



454 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:49:20.36 ID:e5U/hMe20

(主;´ω`)「DATは取り返さなきゃいけないし、僕も死ぬわけにはいかないお。
       みんなを助ける為には。僕の世界を救うには、クリテロを殺すしか方法はないんだお。
       分かってる。分かってるお。……分かってる事なんだけど、それをどうしても飲み込めなくて……」

('A`)「甘ぇな」

(主;^ω^)「……お?」

(;^ω^)「ドクオ?」

('A`)「かわいそうだから殺せませんってか?そんなんでどうする。
   お前は肉を食べる時、毎回毎回涙を流して食べるのか?あぁ?」

(;^ω^)「ドクオッ! お前には人の心ってもんg」
('A`)「黙ってろ、ブーン」

(;^ω^)「お……」

('A`)「仕方のない殺害なんだ。説得は出来ない。殺らなきゃ殺られる。生きるには殺らなきゃならない。諦めろ。
   お前には負けられない理由があるんだろ?だったら惑うな。ただの通過点に眼を取られるな。
   大義名分があるならば、その為にあいつを殺せ。あいつを“クリテロ”としてでなく、“邪魔者”として見ろ」

(主;^ω^)「……お」


457 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:50:47.96 ID:e5U/hMe20

('A`)「お前があいつを殺さなければ、お前の大切にしている全てが失われる。お前自身も殺される。
   殺す事で生かせ。生かす為に殺せ。所詮、人の命なんて命の上に成り立つもんだ。
   人の上に人がいて、人の下に人がいるから世界は成り立ってるんだ。それを考えろ」

(主;^ω^)「…………………」

('A`)「分かったか?」

(主;^ω^)「簡単には割り切れそうもないけど……そう思えるよう、頑張ってみるお」

('A`)「それで良い」

(;^ω^)「ドクオ……お前が良い奴なのか極悪人なのか、僕には分からないお」

('A`)「こんなに良い奴を目の前にして何を言っているんだか」

言って、ドクオは溜め息を一つ。

('A`)「さて、ブーンが全快するまでの間どうしようか」

( ^ω^)「僕はぐだぐだしてるお。傷を早く治すのが再優先だお」

('A`)「ジョンは?」

(主^ω^)「……僕はちょっとやりたい事があるお」

('A`)「何すんだ?」

ごそごそと、ジョンは懐を探る。

459 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:52:12.68 ID:e5U/hMe20

そこから出した物は―――DATの欠片だった。

(主^ω^)「依存はただの停滞だお。僕は君達に頼りっぱなしになるのは嫌なんだお。
       僕も、DATを武器として扱うお。クリテロのように、擬似異能者として。
       だから、ブーンが回復するまでにDATの扱いに慣れておきたいんだお」

(;^ω^)「DATを武器として……?そんな事出来るのかお?
      僕はてっきり、クリテロのDATが特別なのかと……」

(主^ω^)「僕のDATも、一応は武器化出来るお。
      ただ、僕のDATは使い過ぎると一時的に力を失ってしまうんだお。
      だから武器として使うのは避けたかったんだけど……そうもいかないみたいだし」

(:^ω^)「確かに、クリテロは強かったお。不意打ちでもしなければ、僕だけじゃ歯が立たなかったお」

('A`)「ほぉ、そんな強かったのか。楽しみだ」

(;^ω^)「ドクオ、すごく軽く見てないかお?」


463 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:53:25.52 ID:e5U/hMe20

('A`)「まぁな。遊びくらいにしか考えてない」

(;^ω^)「そんなんでどうすんだお!」

('A`)「戦闘の時に本気になれば良いだろ。そうでない時はゆとりを持とうぜ」

(;^ω^)「……僕が回復するまで、ドクオはどうすんだお?」

('A`)「俺は気の向くままに過ごすさ」

それから三人は、どうでも良い事をぐだぐだと話す。
彼等が就寝したのは深夜二時ほどだった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



468 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:55:29.26 ID:e5U/hMe20


翌日。
ブーンとドクオに一言だけ残して、ジョンは家を出た。
向かう先は、己が最初に現れた公園。

十数分後、彼は公園に辿り着く。
彼の期待通り、公園には誰もいなかった。

ジョンはごそごそと懐を探り、DATを取り出す。

(主^ω^)「……さ、どんな“力”にするかお」

DATの欠片を手で弄びながら、彼は一人呟く。

(主^ω^)「クリテロの“力”に対抗出来るように、遠距離武器にするべきなのかお?
       それともブーンやドクオのような、ああいう“力”の方が良いのかお……?」

うなりながら、悩む。
数十分後、彼が出した答えは―――

(主^ω^)「……うん、決めたお」

呟いて、彼はDATの欠片を、左腕で掲げる。



471 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:57:47.78 ID:e5U/hMe20

(主´ω`)「僕のせいで、ブーンはあんな深手を負ったお。
       僕の世界を取り返す為とは言え、嘘を吐いた僕を護る為に。
       しかもこんどはドクオも協力してくれる。……こんな僕の為に」

掲げたDATの欠片に語りかけるように、ジョンは続ける。

(主´ω`)「僕は……もう、ブーンを傷付けたくないお。ドクオだって傷付けたくないお。
       だから……DATよ、僕に力を貸してくれお。
       騙して巻き込んでしまった二人を護れるだけの力を。
       そして、僕の世界を救えるだけの力を―――!」

掲げ上げたDATを力強く握り、叫ぶ。


(主`ω´)「DATよ!僕に力を貸せお!!」


その言葉に呼応するように、DATがまぶしく光り輝いた。

そして、DATが消えていく。
否―――DATが、己を掲げ上げている彼の左腕に、吸い込まれていく。
ゆっくりと、ゆっくりと。

その姿が見えなくなるまで吸い込まれた時―――今度はジョンの左腕に変化が起きる。



473 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 20:59:10.96 ID:e5U/hMe20

『ゴキリ』。音が響く。
左腕が硬質の物へと変化し、肌の色が白銀へと変化し、左腕の肘までが異形へと変わる。
その中でも特別眼を引くのは、その手の甲から飛び出る片刃の長い刃。

(主^ω^)「…………………」

変化が終わって、彼はその腕を振ってみる。
薄い刃が風を斬り、ヒュンという軽い音がした。

(主^ω^)「見た目と違って、全然軽いお。
       普通に腕を振ってるのとそう変わらないお」

今度は続けて二度振るってみる。

(主^ω^)「それに使いやすい。まるで最初から体の一部だったみたいだお」

呟いて、何度も連続で刃を振るう。
目の前に敵がいる事を想定して、縦に、横に、袈裟懸けに。

(主^ω^)「さて……こんなもんかお」

素振りを十数分ほど続けて、ようやくジョンは動きを止めた。
その額からは汗が流れ出ており、口元にはわずかに笑みが浮かんでいた。

(主;^ω^)「いけるお……これなら、僕も戦えるお。“力”が湧いて来るお。
        身体がいつもより軽い気がするお」

顎から垂れ落ちた汗の雫が、彼の刃で二つに分かれた。


475 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:00:30.35 ID:e5U/hMe20

その時。


「へぇーっ、何だか面白そうな奴がいるじゃん」


後ろからのそんな声が、彼の耳に届いた。

(主;^ω^)「誰だおっ!?」

勢いよく彼は振り返る。
そこにはオレンジ。

オレンジ色の髪をした女性が楽しそうに笑いながら、ジョンに歩み寄ってきていた。

从 ゚∀从「誰、だと?そりゃあ私はハインだよ。ハインリッヒ高岡。そういうあんたは?」

ジョンは警戒しながら、ハインと名乗る女性に答える。

(主;^ω^)「……僕はジョンだお。何の用だお?」

从 ゚∀从「いやー、あたしはいっつも暇を持て余している天才で最高の暇人なんだ。
      それは今日も例外じゃあなく、暇潰しになりそうな楽しい物を探して歩いてたんだけどさ」

(主;^ω^)「……?」

从 ゚∀从「何だか暇潰しには丁度良さそうな異能者を見付けちゃってよ」

477 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:01:56.64 ID:e5U/hMe20

(主;^ω^)「な、何を言ってるんだお?」

从 ゚∀从「分かんないかなー」

『ゴキリ』。ハインの両腕を元として、音が爆ぜる。
ジョンはそれが何の音かをすぐに認識。大慌てでハインから大きく距離を取った。

从 ゚∀从「あんた、異能者だろ?あたしも異能者なんだよ」

ジョンの眼に映るのは、オレンジ。
オレンジの髪を持つ女性の、オレンジ色の異形の両腕。

ハインはその腕を持ち上げ、ジョンを指差して言う。

从 ゚∀从「戦り合おうよ。あたしの暇潰しの相手になってよ」

たんっ、とハインはジョンの答えを待たずに走り出す。

(主;^ω^)「お!?あんた何言ってんだお!?」

戸惑いながらも、ジョンは刃を構える。

从 ゚∀从「問答無用っ!!」

金属音。
ジョンの刃とハインの右腕がぶつかり合った。

从 ゚∀从「よっし、一撃で終わるザコ敵レベルじゃなさそうだな!加速するぜ!」

479 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:03:50.58 ID:e5U/hMe20

刃と腕が離れ、また打ち合う。ニ回、三回、四回五回。
六回打ち合った時、ジョンはまたもハインから大きく距離を取った。

(主;^ω^)「ちょっ!待てお!あんた何なんだお!」

从 ゚∀从「あたしはハイン様だっつってんだろうが!」

(主;^ω^)「聞きたい事はそんな事じゃなくて!」


从 ゚∀从「問答無用っ!!」


叫んで、ハインは腰からナイフを抜き出す。同時に投擲。

(主;^ω^)「おぉっ!?」

ジョンはそれを刃でガード。
それから息もつかぬ間にハインが走り寄って来た。

从 ゚∀从「はっはー!つーからナイフ一本パクっといて良かった!」

(主;`ω´)「くっ……!!」

ジョンは苦し紛れに刃を前に突き出す。
だがハインはそれを軽く横に回避。ジョンの胸をえぐるように殴りつけた。



482 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:05:18.10 ID:e5U/hMe20

(主;^ω^)「うぇっ……!」

ジョンはうめいて、後ろに下がる。ハインは追って来なかった。
彼はハインが追って来ない事を不審に思い、ハインを見やる。そして驚きに眼を見開いた。

(主;^ω^)「!? な、何で……」

そのジョンの言葉を遮るように、ハインがジョンを指差す。
その手はオレンジの異形ではなく、幾筋か傷の走る普通の人間の腕だった。

ハインはいつのまにか“力”の解放を辞めていたのだ。

从 ゚∀从「次にお前は『何で“力”を封印したんだ?』と聞くっ!」

(主;^ω^)「何で“力”を封印したんだお?……はっ!?」

从 ゚∀从「はっはー!」

(主;^ω^)「……いや、本当に何でだお?」

从 ゚∀从「だってあんた弱いんだもん」

言って、ハインはふざけるようなファイティングポーズを取る。

从 ゚∀从「あたしの素手とあんたの左腕で戦って、ようやく勝負になるくらいだろ。
      あたしは一発食らえばすぐ致命傷。対するあんたはあたしの攻撃を何度も受けても痛いだけ。
      公平だろ?ははっ!」



484 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:06:53.87 ID:e5U/hMe20

(主;^ω^)「公平……なのかお?」

从 ゚∀从「おっと、あんたの中の物差しであたしを計るんじゃねぇぞ。
     あたしは天才だ。あんたの考える以上のな」

(主;^ω^)「自分の事をここまで堂々と天才と言える人を初めて見たお……」

从 ゚∀从「だってあたしは誰もが認める天才だしな」

そこでハインは、幾筋か傷の走る己の両手を見やる。

从 ゚∀从「それにしてもあんたの“力”……面白いな」

(主^ω^)「お?何がだお?」

从 ゚∀从「鋭すぎる。さっきまで“力”を解放していたにも関わらず、あたしの両腕がずたずただ。
      普通、異能者の刃は人は容易く斬れても、異能者の変化した部位は傷付けられないもんなんだがな」

(主^ω^)「おー。思った以上に僕の“力”は強いのかお」

从 ゚∀从「おおよ。あんたの“力”は強い」

くくくっ、と、まるで悪戯っ子のように笑うハイン。

从 ゚∀从「強い相手は遊びがいがあるんだよなっ!」

心底楽しそうに笑って飛び出す。
ジョンは戸惑いながらも、その左腕を構える。

487 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:08:41.02 ID:e5U/hMe20

(主;`ω´)「おぉぉっ!!」

先手必勝!
思考して、ジョンは一歩踏み込んで刃を突き出す。

从 ゚∀从「よいしょーっ!」

(主;^ω^)「おぶっ!」

突き出されたジョンの左腕をいなし、ハインは彼の腹に肘をねじ込む。
ジョンは苦し紛れに左腕を振るう。だがそんな攻撃を、ハインは舞うように避け続けた。

从 ゚∀从「ほらほら!捕まえてごらんなさーいってか?はっはー!」

(主;`ω´)「うるさいお!」

从 ゚∀从「そんなんじゃ私は倒せないぞー?おらっ!」

(主;^ω^)「おぶうぇっ!」

ジョンの体が地面と水平に吹き飛ぶ。ハインの掌底が、彼の胸にヒットしていた。

从 ゚∀从「さぁ、立ち上がれジョン少年!あたしを楽しませるのだ!」


490 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:10:21.49 ID:e5U/hMe20

(主#^ω^)「…………………」

のそりと、ジョンは立ち上がる。
その額には青筋がピキピキと走っていた。

そして―――

(主#゚ω゚)「調子に乗んなおっ!!」

ジョンは大きく一歩踏み出す。
そして、左腕を大きく円を描くように振るった。

从;゚∀从「おおっと!危ない危ない!」

ジョンの豹変に驚きつつも、ハインは後ろに下がってそれを回避。

だが休む暇も与えずに、ジョンはそれを追う。
そして、明らかに慌てるハインに思いきり左腕を突き出した。

(主#゚ω゚)「おぉおぉぉぉ!!」

从;゚∀从「おぉおぉぉぉ!!」

腹を捉えようとしたジョンの刃。
だがその刃をハインは握り込む。その手からは血が噴き出た。


492 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:11:19.24 ID:e5U/hMe20


それからは一瞬の出来事。


ジョンの突きの勢いを利用して、ハインは彼を投げ飛ばす。
彼の体は少しの間宙を飛び、かなり離れた所で地面に叩き付けられた。

(主;^ω^)「うぇっ!」

妙な呻き声を出して、ジョンはそこに大の字で寝そべる。

从;゚∀从「危なかった。今のは正直危なかった。油断ってのは怖いもんだなー」

相変わらず口元に笑みを浮かべたまま、ハインはジョンに歩み寄る。
彼は流石に立ち上がる気力もなく、そこに大の字で寝そべったままだった。

从;゚∀从「あんためちゃめちゃ戦えるじゃんよ。最初からその気迫で来いってんだ」

(主;^ω^)「……おー」

从 ゚∀从「まぁ、それなりに楽しめたから良かったけどさ」

言って、彼女はくるりと向きを変える。
そしてジョンの方を見ないままにひらひらと手を振って見せた。
その手はやはり傷だらけで、血が滴り落ちている。



495 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:12:42.99 ID:e5U/hMe20

从   从ノシ「じゃあまた会おうぜ、ジョン少年。今度は最初から本気で戦り合おうぜ!」

(主;^ω^)「もうこんなのはごめんだお……」

彼がそう言い終えない内に、彼女はもう足を進めていた。

だが、すぐにピタリと動きを止めた。

从   从「あぁ、そうだ」

(主^ω^)「おー?」

从 ゚∀从彡クルッ「そんだけ“力”を上手く使って戦えるなら、もう十分戦えるだろ。
          あたしのトレーニングは中々のもんだろー?ひゃははっ!」

(主;^ω^)「なっ……!?」

「何で戦うって事を?」そう訪ねる前に、既にハインはジョンに背を向けていた。

从   从ノシ「はははー。じゃあなー」

ジョンはそれからしばらく寝そべっていた。


496 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:13:42.74 ID:e5U/hMe20


(主^ω^)「あれが本当にトレーニングの為に戦ってくれたのだとしたら……。
       なるほど。本当にあの人は、紛れもなく天才だお」


(主^ω^)「…………………」

   _, ,_
(主^ω^)「いや、やっぱりトレーニングってのはおかしいお。やりすぎだお。
       やっぱり暇潰しじゃないかお?っつーか何で僕が戦うって事知ってんだお」


そんな事を呟いたりしながら。


太陽の柔らかい光の中、その表情は太陽の光のように柔らかな笑顔。

彼の心の中には「僕も戦える。あの二人を護れる」という、確かな自信が育っていた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


501 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:15:42.94 ID:e5U/hMe20


( ^ω^)「完治したお」

言って、左足の包帯を外して見せるブーン。
そこには大きめのかさぶたのような物がある程度で、傷はもうほとんど見えない。

('A`)「何だかんだ言っても、二日余りで完治したな」

( ^ω^)「お」

(主^ω^)「じゃあ……行くかお」

('A`)「そういや聞いてないが、ジョン。お前、“力”扱えるようになったのか?」

(主^ω^)「任せて欲しいお。ちょっと良い練習相手がいて、その人のおかげで自信持てたお」

('A`)「良い練習相手?」

(主^ω^)「公園で練習してたらいきなり喧嘩売って来たんだお。ハインさんって人で……」

(;^ω^)「……お?ドクオ。もしかして……」

(;'A`)「あー、あいつだ。間違いねぇ」


503 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:17:10.61 ID:e5U/hMe20

(主;^ω^)「?……お?」

( ^ω^)「いや、何でもないお。気にしないで良いお」

('A`)「さて……じゃあ、案内してもらおうか。その廃ビルってとこに」

(主^ω^)「おっ!」

それから家を出て、二十分弱。
彼らは件の廃ビルの前に立った。

周りに人は誰もいない。不自然なほどに。
だがそれは都合の良い事だった。


三人はそれぞれ“力”を解放する。

まもなく、ブーンの足は白銀の異形へ。

ドクオの左腕は闇色の異形へ。

ジョンの左腕は白銀の異形へ、姿を変える。



506 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:19:19.55 ID:e5U/hMe20

(主^ω^)「クリテロと、再戦だお」

ジョンが、左腕の刃でひゅっと風を切る。

('A`)「っは……どの程度のもんなのかね。楽しみだ」

ドクオが、悪魔のようなその腕をぎゅっと握り込む。

そして―――

( ^ω^)「行くおっ!!」

ブーンが、その白銀の足でたんっと地面を蹴った。
続いて、ドクオ、ジョンも走り出す。

階段を駆け上がる。五階以外は眼中にない。

すぐに三人は五階に辿り着く。
どこかのDQNがやったのであろう、どこかの曲がったドアが無理に嵌め込まれていた。

( ^ω^)「邪魔だおっ!」

ブーンはそれを思いきり飛び蹴り。
ドアは勢いよく吹っ飛び、そのドアはやはり地面に落ちる前に粉砕される。


507 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:21:13.84 ID:e5U/hMe20

そこには―――

( ゚ ゚)「やっと来たかお」

―――紫の右腕をブーン達に向けるクリテロがいた。

( ^ω^)「来てやったお」

( ゚ ゚)「わざわざ殺されに来るとは。よほど死にたいのかお、ブーン。
     それに……新たな死にたがりもいるみたいだお」

('A`)「あぁん?俺の事か?」

( ゚ ゚)「その通りだお」

('A`)「死にたがりなんて名前じゃねぇ。俺はドクオだ。
    暇を潰しに来た。よろしく……あー、何だっけ。クリトリスだっけ?」

( ゚ ゚)「クリテロだお。なめるなお。殺すお?」

('A`)「っは。殺れるものなら?」

( ゚ ゚)「……良い度胸だお」

眼に邪悪な光を灯らせながら、クリテロは首を鳴らす。


510 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:22:40.32 ID:e5U/hMe20

(主^ω^)「……クリテロ」

( ゚ ゚)「気安く呼ぶなお」

(主^ω^)「もうすぐ呼べなくなる名前だお。ちょっとくらい呼ばせろお」

( ゚ ゚)「死ぬって事を分かってるのかお」

(主^ω^)「いや」

( ゚ ゚)「?」

(主^ω^)「死ぬのは君だお。死人の名前はそうそう呼べるものじゃなくなるお?」

( ゚ ゚)「……ふざけた事を。まぁ、どちらが死ぬかは……これからの戦いが決めるお」

その言葉を合図としたかのように。


ブーン。ドクオ。ジョン。そしてクリテロ。
四人が同時に動き出した。


513 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:24:00.00 ID:e5U/hMe20

( ^ω^)「先発、ブーン!行くおっ!!」

ブーンが地面を蹴り、クリテロとの距離を一瞬でゼロにする。

( ゚ ゚)「先発?特攻の間違いだお?」

クリテロはあくまでも冷静に右腕を繰り出す。だが、その右腕は空を殴るのみ。

ブーンはクリテロの拳が繰り出される前に、既に後ろに大きく下がっていた。

( ^ω^)「接近はフェイクだおっ!」

( ゚ ゚)「ふん、小賢しいお」

離れたブーンに杭を放とうと、右腕を向ける。

一瞬。ブーンに集中していたクリテロの右足に、衝撃が走る。
クリテロが驚いてそちらを見ると、そこには足を突き出しているドクオがいた。

('A`)「あの馬鹿に気ぃ取られてる暇はないんじゃねぇのー?」

(;゚ ゚)「くっ!?」

ドクオは左腕だけで驚くほどの早さのラッシュをかける。
クリテロはそれを何とか避け、受け、いなす。



517 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:25:22.81 ID:e5U/hMe20

('A`)「お、流石は戦闘のプロ。やるねぇ。いつまで攻撃に耐えられるかな?」

( ゚ ゚)「不意を突いたってだけで調子に乗るなお!」

そして、反撃。
クリテロの杭が、ドクオの頭蓋目掛けて超至近距離で発射された。

だが。

('A`)「はい予想通りー。撃つ軌道が丸見えだってんだ」

ドクオはそれを頭を横にずらすだけで避ける。
同時に、クリテロの脇腹に肘を撃ち込んだ。

(;゚ ゚)「っぐ!!」

だがクリテロは苦痛に耐え、隙だらけのドクオを蹴り飛ばす。

(;'A`)「おぉっ!?」

ドクオは吹き飛ぶ。
しかし、その体を受け止める者がいた。

(主^ω^)「よいしょーっ!」

ジョンだ。



522 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:26:51.18 ID:e5U/hMe20

('A`)「お、ナイスキャッチ」

すとん、と地面に降り立ってドクオは首を鳴らす。

('A`)「あの攻撃に耐えるとは、お宅、中々に我慢強いじゃねぇか」

だがな、とドクオは続ける。

('A`)「俺一人をどうにかしたからって、油断はいけねぇな。
   俺とジョンだけじゃなく、ここには三人いるんだぞ」

(;゚ ゚)「……もしやっ!?」

後ろから殺気を感じて、クリテロは明らかに焦って頭を防御する。
次の瞬間、大きく鳴り響く金属音。

いつのまにか彼の後ろに回ったブーンのハイキックを、彼はギリギリの所でガードしていた。

( ^ω^)「おっ!ガード出来たかお!運が良いお!」

(;゚ ゚)「ぐっ!」

ブーンの足を弾き、無理矢理隙を作る。
隙が出来た所で、クリテロはブーンを殴り飛ばした。



526 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:28:25.39 ID:e5U/hMe20

(;^ω^)「おぶうぇっ!」

妙な呻き声を出して、ブーンは転げ回る。

その方向はドクオとジョンのいる方向で、またも三人は固まる事になった。

('A`)「お疲れさん」

(;^ω^)「っつつ……さっすがに強いおー」

('A`)「つっても、全然行けるぞこれは」

(主^ω^)「……終わらせるお!」

三人の視線の先には、肩で息をするクリテロ。

(;゚ ゚)「はぁっ……はぁ……。何だお、あいつら……。意味が分からんお」



531 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:30:31.61 ID:e5U/hMe20

クリテロは焦っていた。

己の攻撃が思った通りに当たらない。
敵の攻撃も防いでいるとはいえ、かなり際どい物だ。

その焦りが身体を思うように動けなくし、更に焦らせる。
彼の中で最悪の悪循環が起こっていた。


だが彼の眼には、未だ邪悪に輝く光。
右手にだって“力”がこもっている。

彼は諦めていなかった。


(;゚ ゚)「さすがに三人相手てのはキツイお……」

ぎゅっ、と、クリテロは強く右腕を握り込む。

( ゚ ゚)「だけど、負ける訳にはいかないお。僕は“影”じゃないって事を証明するんだお!
     僕は僕だお!誰かの影じゃない!僕はクリテロという一つの存在なんだお!それを―――証明するんだお!!」


533 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:32:08.07 ID:e5U/hMe20

叫んで、彼は右腕を掲げる。
その右腕は強く紫色に輝いて―――

( ゚ ゚)「DATの欠片よ!僕に更なる“力”を与えろお!奴らを葬り去れる“力”を!
     僕の存在をこの世界に誇れるだけの“力”を、僕に与えろお!!」


―――『ゴキリ』
はっきりとした音が、灰ビル内に不気味に響き渡る。

DATは己を行使する者の想いの力を糧に、その者の想いに答える。
クリテロは“力”を非望し、切望し、渇望した。DATがそれに答えるほどに。

クリテロの右腕が、更なる異形へと変貌する。
“力”が更に“力”を呼び、その形を更に邪悪に、更に醜悪に、更に凶悪に。


ブーン達三人はそれを見ているしかなかった。
止めなければならないと分かっていても動けない。体が恐怖に似た何かで動いてくれない。

そして―――

(;゚ω゚)「な……何だお、あれ」

―――わずか二十秒後。
クリテロの右腕は異形の極みに姿を変えていた。

540 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:34:00.31 ID:e5U/hMe20

変化する部位は肩まで伸び、その肩からは二対の巨大な突起物。
右腕全体が異様なほどに筋肉質になり、身体に不相応なほど巨大になる。
腕全体に針のような突起物が無数に生え揃い、肘からは肩と同じようなサイズの突起物。
爪は更に太く鋭く。手は巨大になり、掌の穴も巨大になっていた。


その見た目は―――化け物、そのものであった。


('A`)「“力”の解放……ねぇ。っは。ろくなもんじゃねぇな。モンスターめ」

(主;゚ω゚)「クリテロ……お前……」

三人は、戦慄する。
その眼はクリテロの右腕のみに集中しきっていた。

クリテロはぶぅん、と、異形の腕を軽々しく振るう。
そして満足気に頷いた。

( ゚ ゚)「……これが“力”、かお」



541 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:35:09.04 ID:e5U/hMe20

( ゚ ゚)「……これが“力”、かお」

そこで彼は突然、三人に掌を向ける。

(;゚ω゚)「っ!?」

くくくっ、と掌の中央の穴が少しだけ広がり―――

( ゚ ゚)「お、お、お、おぉぉっ!!」

―――巨大な杭が、音速を超えて発射された。


(;'A`)「!? お前等、伏せろぉぉっ!!」

聴覚、視覚が強化されているドクオが杭を感知。必死の形相で叫ぶ。
二人はそれに応じる。


一瞬。
耳が痛くなるほどの轟音が三人の近くで鳴り響き、杭が壁に刺さった。
三人はすぐに立ち上がり―――そして、驚愕。

彼らの背後にあった壁には、紫色の巨大な杭。

人の頭ほどの太さで、肩から指先ほどまでありそうな長さ。
当たればただでは済まない、という事が一瞬で分かる代物だった。


546 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:36:19.55 ID:e5U/hMe20

(;゚ω゚)「お……お、お?」

(主;゚ω゚)「こ、こんな……」

呆然とする二人。

(;'A`)「気ぃ抜くな!来るぞ!!」

ドクオの叫び。それからすぐに響く、重く鈍い金属音。

二人の目の前で、ドクオの左腕とクリテロの右腕が対峙していた。

( ゚ ゚)「ふん……この腕にぶつかって来れるとは。やっぱりお前、良い度胸してるお」

力任せに右腕を横薙ぎに振るう。
ドクオはそれをすれすれの所でしゃがんで回避。

(;'A`)「っち。攻撃の速度まで上がってんのか」

言いつつ、再び襲い来る攻撃をいなす。
だがクリテロの攻撃は、いなしてもかわしても絶える事はなかった。



550 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:38:29.07 ID:e5U/hMe20

(;'A`)「これはヤバイかも分からんね。……おい、お前等。さっさと俺の後ろから退きやがれ」

(主;^ω^)「お?」

(;^ω^)「な、何を……」

(;'A`)「てめぇらが後ろにいると、攻撃を避け辛いんだよ!良いからさっさと退きやがれ!!」

そこで、二人は気付く。
ドクオが、さっきから二人を護るようにして戦っていた事を。

(主;^ω^)「ど、ドクオ君……」

呟くジョンの腕を、ブーンが無理矢理に引っ張る。

(;^ω^)「ドクオの言う通り、僕達は退くお!じゃないとドクオが……!」

(主;^ω^)「おっ!」

二人はドクオとクリテロから離れる。
ブーンもジョンも加勢したかったが、あの戦いに自分達は入れないであろうという事を二人は自覚していた。

ドクオという人間があの“力”を持っているからこそ、怪物と化したクリテロと対等に戦えるのだ。
二人はそれを分かっていた。



554 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:40:07.75 ID:e5U/hMe20

( ゚ ゚)「逃がした所で、何も変わらないお」

言いつつ、再度腕を横薙ぎに振るう。
腕は異速で風を切るが、ドクオはそれに対して慌てなかった。

('A`)「そうでもねぇぜ?」

クリテロの腕を、左腕で軽くいなす。
そしてすぐさま接近。空いている右腕で、クリテロの顎を殴り上げた。

(;゚ ゚)「ごっ……!」

上半身を半ばのけぞらせて、そのまま倒れる。
ドクオはそれを見て、「はん」と笑ってみせた。

('A`)「精神的に余裕が出来ると、自然と穴ってのは見付かるもんだ」

( ゚ ゚)「は、ははは……」

笑いながら、クリテロは立ち上がる。
ドクオはすぐにクリテロから距離を取って戦闘の態勢を取った。

( ゚ ゚)「だったら、その余裕とやら……なくしてやるお!!」

叫んで、走り出す。
その右腕を乱雑に振り回しながら。まるで狂った魔神のように。


555 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:40:58.84 ID:e5U/hMe20

(;'A`)「おっ!?」

襲い来る重圧に、ドクオは一瞬たじろぐ。
クリテロにとってはその一瞬だけで十分だった。

( ゚ ゚)「おおぉ!!」

叩きつけるように、右腕をドクオに振るう。
ドクオはたじろいでしまったが為に、それを避ける事もいなす事も出来ない。
仕方なく防御した。

ずしり、と左腕に重圧がかかる。

(;'A`)「ぐっ……重ぇ!!」

( ゚ ゚)「そういえばお前、さっき僕に言ったお。殺せるものなら殺してみろって、お?」

クリテロが右腕を大きく振るう。まるで目の前の虫をはたき落とすかのように。
それだけの動作で、ドクオの腕はいとも簡単に弾かれた。

(;'A`)「―――ッ!?」

( ゚ ゚)「だったらお望み通り……殺ってやるお!!」

クリテロの腕が、再度振るわれる。
それは残像が残るほどの速度で、ドクオの首を跳ね飛ばさんとして。



557 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:42:16.43 ID:e5U/hMe20

だが―――

(#゚ω゚)「そんな簡単に友達を殺らせるかお!!」

―――その腕を越える速度で、ブーンがドクオを救い出した。
ブーンは背中の皮が少し切り裂かれたのを感じた。ギリギリだったのだ。

( ゚ ゚)「っち。厄介な速さだお」

溜め息と共に言う。
その彼の背後にはジョンが迫っていた。

(主;゚ω゚)「おおぉぉおぉっ!!」

左腕の刃を振り上げる。
対するクリテロは後ろを見もせずに、その刃を右腕で防いだ。

( ゚ ゚)「遅いお」

(主;゚ω゚)「ぐ、おっ!?」

隙の出来たジョンの腹に、肘が入る。

クリテロは連続して攻撃を加えようとするが、その前にジョンは後ろに退く。
そこにブーンとドクオが駆け寄った。


558 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:43:41.82 ID:e5U/hMe20

(主;゚ω゚)「はぁー……はぁー……!!」

彼は腹を抑えて、肩で呼吸をする。

(;゚ω゚)「ジョン!大丈夫かお!?」

(主;゚ω゚)「僕は大丈夫だお!それよりも気を抜くなお!」

叫ぶジョンの視線の先にはクリテロ。
クリテロは右腕を見せ付けるように軽く開きながら言う。

( ゚ ゚)「もう終わりだお。諦めろお」

右掌を、三人に向ける。中央の穴があらわになった。

(主;゚ω゚)「……どうするかお」

戦慄するジョン。


563 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:45:01.97 ID:e5U/hMe20

(;゚ω゚)「僕が行くお!僕が走り寄って、あいつの脳天吹き飛ばs」
('A`)「いや……俺が行く」

呟いて、ドクオが一歩前に出る。

(;゚ω゚)「ど、ドクオ?」

(主;゚ω゚)「な、何を?」

('A`)「俺に任せろ。ここをどうにか出来るのは……この中じゃ俺だけだ」

( ゚ ゚)「……ふん。相変わらず良い度胸だお。気に入らないお」

('A`)「結構だ」

ドクオは走り出す。その悪魔のような左腕を振り上げて。


ただ、それだけ。何の小細工も、何のおかしな動作もない。
ただ、腕を振り上げて走り寄っているだけ。


('A`)「うるぁぁっ!!」



565 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:45:44.71 ID:e5U/hMe20

対するクリテロは呆れたように口を開いて―――

( ゚ ゚)「ふん、何をするかと思えば。……つまらない。死ねお」

―――杭を、撃ち放った。

走り寄るドクオの額を確実にぶちまけるコース。


ドクオは、高速で飛び来る杭を見詰めて―――

('A`)「見えたっ!」

―――杭を回避し、なおかつ慣性で飛び行こうとする杭を左腕で掴んだ。


(;゚ ゚)「なっ!?」

('A`)「お前には言ってなかったがな、俺は眼と耳にも“力”があるんだよ。
   全力出せば、その杭だって見えない事はない」

ドクオは足を止めない。むしろ加速する。
クリテロは困惑から動けない。右掌を突き出した格好のまま。


そう。右掌の穴を晒け出した格好のまま。


567 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:47:04.24 ID:e5U/hMe20

('A`)「お返しするぜ」

呟いて、ドクオはその手に握った杭を掌の穴に捻じ込んだ。
途中で引っかかる所があったが、無視。無理矢理にでも深く深く、出来る限り深い所まで。

(;゚ ゚)「が、あぁぁっ!!」

右腕を抑えて、苦痛に叫ぶクリテロ。

彼は怒り狂い、右掌の状態も考えずに、ドクオに右掌を向ける。

('A`)「撃ったら、多分暴発するぜ。威力が強ければ強い銃ほど、暴発も悲惨な物になる」

その言葉にクリテロは歯軋りする。
そしておもむろに、その異形な右腕を振り回し始めた。

(#゚ ゚)「小癪な!死ねお!死ねおっ!!」

('A`)「そんな攻撃くらい、余裕で避けられちゃうんだなぁ。
   お前の“力”で本当に怖いのは、あの杭だけだ」

袈裟懸けに振るわれる右腕を、後ろに一歩下がって避ける。
今度は横薙ぎに振るわれるが、それもしゃがんで軽く回避。
突き出すように放たれた攻撃も最小限の動きだけで避け続ける。

まるで、舞うように。


569 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:48:51.10 ID:e5U/hMe20

(#゚ ゚)「当たれおっ!当たれおっ!!うぉぉぉおぉおぉ!!」

一際大きく振るわれた腕をバックステップで避ける。
そして、そこでドクオは叫んだ。

('A`)「ブーン!!」

その声を待っていたかのようにブーンが走り出した。

( ^ω^)「おk、把握だおっ!!」

ドクオとすれ違うように交代。

クリテロは力任せに腕を振るう。
ブーンはそれを、己の機動力の高さを活かして回避し続ける。

腕を縦に振るえば、地面を蹴ってかなりの距離を離れてまた接近。
腕を横薙ぎに振るえば天井まで飛び上がり、更には天井を蹴って反撃まで加える。

( ^ω^)「こっちだおっ!ほらほら、当たらないおーっ!?」

ドクオの対極とも言える、無駄が多すぎる動き。
だがそれは相当にトリッキーなもので、クリテロの焦りに拍車をかけた。



570 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:49:54.02 ID:e5U/hMe20

(#゚ ゚)「ぬぁぁあぁぁっ!!」

袈裟懸けに振るわれる腕を、真正面から足で止める。

(;゚ ゚)「防御っ―――!?」

( ^ω^)「かかったおっ!!」

重い紫の腕を、蹴り弾く。
そしてすぐさま逆側の足を、クリテロの左半身に叩きつけた。

(;゚ ゚)「お……」

一瞬、時が止まり―――

(;゚ ゚)「ぶっ!!」

―――動き出す。
骨の砕ける音。

クリテロは吹き飛び、壁にぶつかって動きを止めた。

(主;^ω^)「……起き上がらないでくれお」

……十秒。
…二十秒。
三十秒。

一分が経過しても、その身体は動かなかった。

572 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:52:19.16 ID:e5U/hMe20

(;^ω^)「……終わった、かお?」

その言葉に、クリテロの身体がピクリと動く。

そして―――


(#゚ ゚)「まだだお……!!」


―――彼は立ち上がった。

うめきながら。左半身を歪に軋ませながら。
折れた骨で内臓に傷が入ったのだろう、吐血までしながら、彼は立ち上がった。

眼には、歪んだ憎悪と意地のみ。
自分の存在を否定しかねない存在を憎悪し、自分の存在を確立させようという意地。
それだけが、彼を動かしていた。

(#゚ ゚)「終わらせないお……僕は、僕を……証明するんだお」

身体が、揺らぐ。
咳と共に、吐血。

(#゚ ゚)「殺すお……殺してやるお!」


575 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:53:52.14 ID:e5U/hMe20

重そうに右腕を持ち上げる。
未だ紫色に輝くそれは、“力”に満ちていた。

想いの力は、薄れていない。

('A`)「させねぇよ」

( ^ω^)「ジョンは僕達が護るお」

言って、二人はジョンを護るように陣取る。


だが。

(主^ω^)「……僕にやらせてくれお」

ジョンはその二人を押しのけて、前に一歩出た。



579 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:56:06.41 ID:e5U/hMe20

(;^ω^)「な、何を?」

(主^ω^)「……僕は、クリテロを殺す事をやっぱりどこかためらっていたお。
      それは戦闘が始まってからもそうで、今までずっとそれについて考えていたお。
      存在を認めてもらいたいっていうクリテロの気持ちも分かるし、僕も譲れない物があるから」

( ^ω^)「ジョン……」

(主^ω^)「どうにか分かり合えないかとも思ったけど、考えてみれば分かり合おうにもそれは無理なんだお。
       どうすれば良いのか分からなかったんだお。
       どうすれば一番良い結果が出せるか、ずっと考えていたんだお」

('A`)「…………………」


「―――でも今、ようやく答えが出たお」


ジョンが、左腕を掲げる。
まもなく、その左腕から眩い光が漏れ出した。

『ゴキリ』。光が収まらないままに、音が響く。
ジョンの左腕が、更なる解放を始めた。


581 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:57:17.50 ID:e5U/hMe20

変化する部位は肩まで伸び、左腕全体を白銀の鋭利な鱗が覆う。
筋肉によって腕は異常なまでに膨らみ、爪は太く鋭くなる。
そして、手の甲から伸びる刃はその長さと鋭さを増し、それ自体が白銀に輝いた。

(主^ω^)「クリテロ、僕は君を全力で殺しにかかるお。だから、君も僕を全力で殺しに来いお。
      大切な人達や世界の為に僕は戦うお。君は自分の存在を主張する為に戦えば良いお」

ヒュン、と、刃で風を斬る。

(主^ω^)「お互いに譲れない物があるお。どうしても譲れないから、互いに全力で殺し合うお。
      仕方のない殺し合いなんだお。譲り合えないんだから、分かり合えるわけもないんだから。
      これからの戦いが全てを決めてくれるお。勝者が望む物を手に入れられて、敗者は全てを失うお」

そこで、ジョンは刃をクリテロに向ける。

(主^ω^)「もう一度言うお。僕は君を全力で殺しにかかるお。君も僕を全力で殺しに来いお。
      何も遠慮はいらないお。譲れない物と己の命を賭けて、存分に殺し合おうお」

にやりと、クリテロの口元が釣り上がる。
笑える状況じゃないはずなのに、心底楽しそうに。

( ゚ ゚)「……面白いお」

言って、クリテロは右掌の穴に刺さったままの杭を抜き去る。
杭を撃てる状態にしたのだ。

584 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 21:59:05.06 ID:e5U/hMe20

( ゚ ゚)「良いだろう。僕もお前を全力で殺しにかかるお。僕の存在を賭けて、お前と殺し合うお」

ジョンとクリテロは、同時に頷く。
互いが互い、同じ物なように。まるで、互いが互い、影の様に。

(主^ω^)「ドクオ。戦いを開始する合図を頼むお」

('A`)「……よく分かんねぇが……」

ふふっと、ドクオは鼻で笑う。

('∀`)「あんた、やっぱりおひとよしだな」

(主;^ω^)「……そうなのかお?」

('∀`)「あぁ、ブーンにそっくりだ。ジョンって名付けたのは間違いじゃなかったようだな」

(主^ω^)「……誉め言葉として受け取っておくお」

ジョンの肩に、ぽんと手が乗せられる。

( ^ω^)「頑張れお、ジョン。……死ぬなお?」

(主^ω^)「任せてくれお、ブーン」

('A`)「……じゃあ、俺達は下がるぞ、ブーン」

言って、ブーンを連れてドクオは後ろに下がる。

587 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 22:00:23.12 ID:e5U/hMe20

クリテロとジョンが、対峙する。
口元には笑みを浮かべて。互いに互い、己の“力”を向け合って。


('A`)「じゃあ、ジョン。クリテロ。 Are you ready?」


「――――――Go!!」


ドクオのそんな声に合わせて、二人は同時に走り出した。

(主゚ω゚)「おぉぉぉっ!!」

刃をきらめかし、切り上げるように振るう。
クリテロは上半身を反らしてそれを回避。すぐにジョンにカウンターの蹴りをお見舞いした。

(主;゚ω゚)「うぇっ!―――おぉっ!!」

痛みに耐え、刃を思いきり横薙ぎに振るう。

( ゚ ゚)「――――――っ!!」

クリテロはそれを右腕でガード。そして間髪入れずに、左腕でジョンの胸に正拳を撃ち込んだ。

ジョンは吹っ飛ぶ。
だがすぐに立ち上がり、にやりと笑って見せた。



590 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 22:02:08.76 ID:e5U/hMe20

(主゚ω゚)「落ち着いてるじゃないかお」

( ゚ ゚)「……会話など不用だお。来いお」

言って、手招き。


ジョンの言う通り、クリテロは落ち付いていた。
焦りがなくなった。左半身の痛みで無駄な事を考える余裕がなくなった。
アドレナリンの分泌で痛みを感じづらくなり、頭が戦闘に対して冷静になった。

色々な理由があるのだろうが、最もの理由はジョンの言葉で『ふっきれた』からだろう。

彼は既に、ジョンを倒す事しか頭にない。
憎しみや怒りなどが薄くなっていた。


(主゚ω゚)「おおおおぉぉおぉぉ!!」

( ゚ ゚)「―――っ!」

左腕と右腕が打ち合い、鋭い金属音が響く。



591 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 22:03:03.98 ID:e5U/hMe20

(主゚ω゚)「隙ありっ!」

(;゚ ゚)「おぶっ!」

ジョンの蹴りがクリテロを捕らえる。特有の鈍い音。
クリテロもすぐにやり返す。

金属音と鈍い音が連続で、不規則に響き渡る。
不思議と、それは心地良い旋律だった。

互いに致命傷は入らない。
“力”のある箇所が―――ジョンなら左腕が、クリテロなら右腕が、それぞれ完全に防ぎきられている。

だがしかし、彼らの攻撃は確実に互いの体力を削ぎ落としていった。


( ゚ ゚)「お、おぉ!!」

(主;゚ω゚)「う、ぇっ!!」

クリテロの攻撃がジョンの腹を捕らえる。
彼は倒れそうになるが―――

(主#゚ω゚)「―――おぉぉ!!」

―――無理矢理に踏ん張って、再度攻撃を繰り出す。
こんな事が繰り返されていた。


594 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 22:04:47.79 ID:e5U/hMe20

いつしか彼らは防御や回避を考えなくなっていた。防御も回避も、戦略もクソもない。
ただただ目の前の人間を倒そうとするだけ。
その見た目は、ただの喧嘩。

だが、彼らはそれで良かった。

互いに絶対に譲れない物がある。それだから、話し合いですんなりと済むわけはない。
このようにして殴り合うしか。殺し合うしか方法はなかったのだ。


( ゚ ゚)「っし!!」

(主;゚ω゚)「―――っ!?」

クリテロのムチのような蹴りが、ジョンを捕らえる。
ジョンは踏ん張ろうにも足が地面から離れてしまい、ただ吹き飛ぶ。
その身体は壁にぶつかって、ようやく動きを止めた。

(#゚ ゚)「おぉぉぉぉっ!!」

クリテロは雄叫びをあげて、追撃するように杭を撃ち放つ。

(主#゚ω゚)「おぉぉぉぉっ!!」

クリテロに呼応するように雄叫びをあげて、ジョンは刃を振るう。
その刃は飛び来る杭を両断。杭は二つに分かれて、ジョンの後ろの壁に突き刺さった。


595 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 22:06:15.90 ID:e5U/hMe20

(主゚ω゚)「お前の杭はガードしても突き刺さる。ガードしても意味がない。だから、両断しかないお。
      DATをこの“力”にしておいて、間違いじゃあなかったようだお」

( ゚ ゚)「だったら両断出来ない状態で撃てば良いだけだお。
     そんな事は良いから―――さっさと来いお」

頷いて、ジョンは走り出す。その刃を振り上げて。
クリテロも走り出す。その右掌をジョンに向けて。

(#゚ ゚)「死ね、おっ!!」

足を止めずに杭を撃ち放つ。

(主#゚ω゚)「お前が死ねおっ!!」

同じく、足を止めずに刃を振るう。
杭は同じように分断される。

だが―――

( ゚ ゚)「杭はあくまでも眼くらましだおっ!!」

(主;゚ω゚)「っ!?」

―――刃、つまり左腕を振り抜いてしまった状態のジョンに、クリテロの右腕が迫る。



596 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 22:07:41.06 ID:e5U/hMe20

(主;゚ω゚)「くっ!!」

左腕は防御に間に合わない。咄嗟に右腕を突き出す。

素手の右腕でクリテロの右腕を防いだ瞬間。
ジョンは右腕の肘近くまでが砕ける音を聞いた。

(主゚ω゚)「――――――っ」

激痛に意識が飛びそうになり、更なる激痛によって無理矢理に意識を戻される。

だが右腕を犠牲にしたおかげで、クリテロの攻撃の軌道は逸れ、何とか直撃はまぬがれた。

ジョンは慌てて少し距離を取ろうとバックステップ。
すぐ目の前をクリテロの腕が通過していった。

( ゚ ゚)「っち!運の良い奴だお!!」

クリテロは杭を撃ち放つ。ジョンはまたもそれを両断。

(主;゚ω゚)「っはぁー、っはぁー……」

右腕を抑えて、ジョンはクリテロを睨む。
その眼から光は消えていなかった。


599 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 22:09:08.34 ID:e5U/hMe20

( ゚ ゚)「本当にしぶといお……きっとお前の前世はゴキブリだお」

(主;゚ω゚)「前世なんて何でも構わないお。前世は前世の僕。今は今の僕。僕は『今』を生きるお」

( ゚ ゚)「『今』を生きる?刹那主義、かお?気楽なもんだお」

(主゚ω゚)「過去を見ても、何も得られないお。未来は今が創るお。
     今の僕達がすべき事は、“今”に得た物を忘れずに持っていく事だお
     今を生きる。それは、未来になっても後悔しない生き方をする事だお。だから―――」


「―――僕は今、全力でお前を倒すおっ!!」


叫んで、走り出す。
もはや使い物にならない右腕をぶらつかせて。左腕だけを力強く振り上げて。

( ゚ ゚)「……面白いお」

呟いて、クリテロは杭を撃ち放つ。

(主#゚ω゚)「おおぉっ!!」

叫んで、足を止めずに杭を両断。


601 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 22:09:55.91 ID:e5U/hMe20

( ゚ ゚)「学習しない奴だお」

刃を振り抜いたジョンに、クリテロがとびかかる。

(主゚ω゚)「来ると思ったおっ!!」

ジョンは左肩を突き出す。
クリテロの右腕は、金属製の鱗で覆われたジョンの左肩で止められた。

( ゚ ゚)「よく考えたお。だけども、これも―――予想通りだお」

クリテロはジョンの肩を押すようにして、その反動で少しだけ距離を取る。
そして―――

( ゚ ゚)「終わりだおっ!!」

―――至近距離で、杭を撃ち放った。

しかし。
ジョンはそれでもなお、クリテロに向かって足を踏み出した。

杭が、ジョンに刺さる。ジョンの左腕―――前腕部分に。
ジョンは杭を左腕で受け止めたのだ。



603 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 22:11:03.32 ID:e5U/hMe20

(;゚ ゚)「防御―――!?」

(主゚ω゚)「お前は勘違いをしているお」

更にジョンが一歩踏み出す。
クリテロは動けない。

(主゚ω゚)「防御してもダメージを受けるから、あまり意味がないって事しか僕は言ってないお。
      防御出来ないってわけじゃない―――痛みを我慢すれば、防御くらい出来るお」

左腕を構える。

そして―――

(主゚ω゚)「終わりだお。クリテロ」

―――クリテロの右肩。生身と紫の間の部分を狙って、刃を振り抜いた。

まるで紙を切ったかのように。
まるで画像を途中から切り抜いたかのように、クリテロの右腕が宙を舞う。

右腕は高く弧を描き―――地面に、重々しい音を立てて落下する。
その時には、ジョンはクリテロの首に刃を突きつけていた。



606 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 22:12:25.08 ID:e5U/hMe20

(主;゚ω゚)「はぁ、は、っは……」

( ゚ ゚)「……終わり、かお」

クリテロは右肩からおびただしい量の黒い血液を流しながらも、表情を変えずに言う。

( ゚ ゚)「……でも何だか、悔しくないお。むしろ、清々しい気分だお。
     自分を取り巻いていた鎖が、外れたような」

(主゚ω゚)「……クリテロ」

( ゚ ゚)「さぁ、殺せお。僕は負けた。ここでお前に殺されなくても―――僕には、死ぬしか道はないんだお。
    どうせ殺されるなら、フォックス様じゃなくお前が良いお。僕を負かしたお前。“影”として創られた僕のモデル」

ジョンは、一瞬だけ辛そうな顔をする。
だがそれはあくまでも一瞬のもの。

ジョンは力強くクリテロを見詰める。



608 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 22:14:05.90 ID:e5U/hMe20

(主゚ω゚)「……分かったお。ただ、クリテロ」

( ゚ ゚)「?」

(主゚ω゚)「僕はお前を認めるお。“影”じゃなく、“クリテロ”として。お前は“影”なんかじゃなくて、立派な一つの存在だと。
     例えフォックスが認めなかったとしても―――僕は、お前を認めるお。クリテロ」

クリテロは少し驚いたような顔をする。
だがそれはあくまでも一瞬のもの。

( ゚ ゚)「……くだらないお。さぁ。さっさと殺せお」

(主゚ω゚)「…………………」

ただ頷いて、ジョンは刃を持ち上げる。


そして、袈裟懸けに振り抜いた。


クリテロの身体は腰の辺りで上下二つに分かれて、地面に落ちる。



609 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 22:15:15.69 ID:e5U/hMe20

( ゚ ゚)「……ありがとうだお」

上半身が地面に落ちてすぐに、クリテロは口を開いた。

( ゚ ゚)「嬉しかったお。認めてくれて、ありがとうだお」

咳をする。そこで吐き出されたのは痰じゃなく、おびただしい量の黒い血液。

クリテロは、それでも言葉を続ける。
死を目の前にして。それでも、ジョンに何かを伝えようとする。

( ゚ ゚)「救いのない……僕の、短い人生の中にもっ……こんなにも、嬉しい事が……あるとは。
     来世があるの、ならば……ゴキブリ、でも良いから……次は、お前の友達として……」

(主;゚ω゚)「クリテロ……」

そこで、クリテロは―――

( ^ ^)「……色々と迷惑かけてごめんお。そして、本当にありがとうだお」

―――初めて、笑って見せた。



613 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 22:16:16.47 ID:e5U/hMe20

(主゚ω゚)「……クリテロ」

ジョンの呼びかけに、二つに分かれたクリテロは反応しない。
それでも。

(主゚ω゚)「僕も、来世があるのならば、お前と友達として生きたいお。
     こんな風に言うのもおかしいけど……お疲れさま、だお」

ジョンは言葉を紡ぐ。

(主゚ω゚)「……また会おうお。また会える日まで、さようならだお」

つぅっと……ジョンの頬を涙が走る。


それは己の分身を殺してしまったという罪悪感か。
それとも、己の分身への追悼の気持ちか。

その涙の本意は、本人にも、誰にも分からない。
ただ涙が流れた。




615 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 22:17:27.40 ID:e5U/hMe20

ジョンは、想う。
クリテロが、どのような想いで生きてきたのか。
そして、どのような想いで死んでいったのか。

そして、想う。
クリテロは、満足したのだろう、と。

それは勝手な妄想かもしれない。
想い過ごしかもしれないし、ただの自己満足の為の無理矢理な思考かもしれない。
死者は何も語らない。だからそんな事を考えていても無駄だし、答えは出るわけもない。

だがそれでも、ジョンは心のどこかで確信していた。
クリテロは、笑って逝った。満足して死んでいったのだと。




616 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 22:18:16.04 ID:e5U/hMe20

('A`)「よーぅ、お疲れ」

(主^ω^)「……ドクオ」

( ^ω^)「ご苦労様だお」

(主^ω^)「……ブーン」


「ありがとうだお」


ジョンは笑顔で、そう言った。
その笑顔は、クリテロが最期に見せた笑顔とそっくりだった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


620 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 22:21:07.78 ID:e5U/hMe20


(主^ω^)「……こんな感じで良いかお」

('A`)「良いんじゃねぇの?」

( ^ω^)「上出来だお!」

町外れの、町が見渡せる小高い丘。
そこに、ブーンとドクオ、そしてジョンはいた。


あの戦闘の後、三人はまたもドクオ宅に行き、傷を癒した。
ジョンもDATを異能者の“力”を真似て武器としたからか回復が早く、たった四日で三人は全快した。

傷が治り次第、三人は廃ビルへと向かった。
その目的は、埋葬の為、クリテロの死体の回収。

クリテロの死体は白骨化も腐敗もしていなかった。
ただ、死体がふたまわりほど小さくなっていたのみ。
あのおびただしい量の黒い血液も蒸発している。

ジョンが言うには、「クリテロはフォックスが闇から生んだ存在だから、闇になって消えていってるんだ」との事。



622 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 22:22:41.82 ID:e5U/hMe20

それから三人は死体を丘まで運ぶと、その頂上近くに埋葬した。

何故、丘なのかと言うと

( ^ω^)「この丘は、この街で一番空に近いんだお!
      だからここに埋めれば、きっとクリテロの魂も空に昇って、天国に行けるお!」

ブーンのこんな発言が影響したのだった。


(主^ω^)「……さて、仕上げだお」

言って、ジョンはごそごそと懐を探る。
そこから取り出した物は、クリテロが扱っていたDATの欠片と紫の杭。

DATの欠片は、己を行使していたクリテロが死んだ瞬間に、彼の右腕から出て来た。
その瞬間に壁に刺さっていた杭などは全て闇となって消えたのだが、今ジョンが持っている杭だけはそこに残った。

それが何故かは分からない。DATには分からない事も多いのだ。

(主^ω^)「よ……いしょっと」

仕上げとして、紫色の杭をクリテロが眠る真上の地面に突き刺す。


626 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 22:24:41.65 ID:e5U/hMe20

そして、ジョンはクリテロが扱っていたDATを掲げ上げる。

(主^ω^)「DATの欠片よ。クリテロの魂を天に届けてくれお!」

……何の変化もない。分かっていた。
分かっていても、そうする事で、少しでもクリテロを天に届かせたかった。

(主^ω^)「……さてと」

ジョンはそのDATを、再度懐に仕舞う。
そして、今度は左腕を掲げた。


『ゴキリ』
左腕の“力”が解放され、白銀の異形の腕になる。

『ゴキリ』
異形だった箇所が、肩の方から手の方へと少しずつ狭まっていく。

『ゴキリ』
まもなく異形の箇所は完全に消え、ジョンの手の上にDATの欠片が現れた。


('A`)「へぇ、DATってのは面白いもんだな」

( ^ω^)「そんな石みたいなのがさっきの腕になるのかお……すごいお」

(主^ω^)「とは言っても、使う者の想いの力にもよるお」

631 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 22:26:05.29 ID:e5U/hMe20

「さて」と、ジョンはDATを掲げ上げる。
まもなくそのDATは眼がくらむほど強く輝きだした。

( ^ω^)「……行っちゃうのかお?」

(主^ω^)「お。僕は僕の世界を救う為に、まだまだ色んな世界を渡らなくちゃいけないお。
       身体の回復に結構な時間を使っちゃったから、少し急ぎたいんだお」

('A`)「そうか。じゃあ、気を付けてな」

(主^ω^)「お。そうするお」

( ^ω^)「……ジョン。僕は、君の事を忘れないお。ずっと」

('A`)「俺も忘れないでいてやるよ。こんな経験は中々ないからな」

一瞬、目頭が熱くなる。
だが、別れを涙で迎えたくはなかったので、無理矢理にこらえた。

(主^ω^)「僕も二人の事は忘れないお。絶対に!」

そこで、DATの光が一際強くなる。

(主^ω^)「……お。そろそろみたいだお。もっと話していたかったお。
      ……短い間だったけど、本当に色々とありがとうだお。二人とも」

その言葉と同時に、ジョンは柔らかな光に包まれた。



638 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 22:28:19.57 ID:e5U/hMe20

(主^ω^)「……もし出来るならば、また会いたいお」

('A`)「だったらまた会いに来れば良いだろ」

( ^ω^)「そうだお!また来いお!」

(主^ω^)「……お!そうするお!絶対、また会いに来るお!
       じゃあ、また会えるその日まで―――」


「―――さようなら(だお)」


三人の声が揃う。

瞬間。ジョンの全身が光に包まれ―――そして、消えた。

後に残ったのはブーンとドクオ。そして、心地の良い風だけだった。


641 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 22:29:00.88 ID:e5U/hMe20

( ´ω`)「……行っちゃったお」

('A`)「行っちゃったな」

( ´ω`)「正直な所、行ってほしくなかったお。
      もっといっぱい話したかったお」

('A`)「仕方のない事だ。諦めろ。それに、もしかしたら本当にいつか会いに来るかもしれないだろ?
   その日を願えよ。願えば、もしかすれば本当になるかもしれないぜ?」

( ^ω^)「……お。そうするお」

溜め息を吐いて、ブーンは空を見上げる。
抜けるような青空の中、Vの字状に鳥達が飛び行っていた。

( ^ω^)「こうしていると―――何だか、さっきまでの事が嘘みたいだお」

('A`)「異世界の住人、不可解な石、ねぇ……まぁ、お前がそう思うのも仕方ないわな。
   俺だってにわかには信じられない事だが……この身をもって体験した事だからなぁ」

今度はドクオが溜め息を吐く。

('A`)「それにしても―――何だか、な」

( ´ω`)「やっぱり寂しいお」

('A`)「……あぁ。本当に」



643 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 22:30:11.43 ID:e5U/hMe20

( ^ω^)「これからどうするお?」

('A`)「とりあえずはジョルジュとギコに会いに行こうか。どうせあいつら暇してるだろ。
   さっきの出来事を色々と改変して教えてやろうぜ」

( ^ω^)「おっ!そうするお!」

柔らかな太陽の光の中、二人は丘を降りていく。


彼らは見なかった。
彼らの背後。丘の頂上―――クリテロの眠る地面に刺さった、紫色の杭。
それが一瞬だけ輝いて、その輝きを残して消えた事を。


そして、その輝きは―――空へと、昇っていった事を。





( ^ω^)ブーンが世界を巡るようです

    【 IN ( ^ω^)ブーン達は異能者だったようです 】

        
                   END



659 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 22:32:30.36 ID:e5U/hMe20







        从 ゚∀从ノシ「次回予告!」









665 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 22:33:23.02 ID:e5U/hMe20


(,,゚Д゚)「お疲れさま!んじゃ、恒例の次回予告行くぞゴルァ!
      司会はこの俺、ギコと!」

( ゚∀゚)ノ「俺っちジョルジュが勤めさせて頂きますよー!」

(,,゚Д゚)「俺達出番なかったな」

( ゚∀゚)「うん。これでも一応メインキャラなんだけどねー」

(,,゚Д゚)「…………………」

( ゚∀゚)「…………………」





667 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 22:34:03.26 ID:e5U/hMe20

(;゚Д゚)「……ま、まぁ、今はそれよりも次回予告だ!」

( ゚∀゚)「おーけー!じゃあ予告行くよー!
     明日は誰もが知ってる大人気能力バトル、
     ◆BYUt189CYAさん作『( ^ω^)ブーンが戦い、川 ゚ -゚)クーが護るようです』が投下されるよん!」

(,,゚Д゚)「『ウェポン』という特別な武器に姿を変える14個の指輪。
     そしてその指輪に選ばれ、護る為に戦う事を余儀なくされた11人の熱い話だ!」

( ゚∀゚)「今回は『戦い護る』とその続編、『抗い護る』の間の出来事!
     外伝では様々な世界が出てくるから、あの英雄達や異世界の住人達ももしかしたら出るかもね!
     DATの力をどう絡めるか!どんな熱い展開を見せてくれるのか!本当に楽しみだねー!」

(,,゚Д゚)「あの話の中で、俺はブーンとギコさんが好きだ。
     あの、誰かを護る為に戦うって姿勢が格好良すぎる!」

( ゚∀゚)「ほぉー、ギコちゃんらしいチョイスだね。俺っちはやっぱりモララーさんや兄者さんかな。
     モララーさんのあの意味不明のカリスマ性や、兄者さんの珍妙ぶりは眼を見張るw」

(,,゚Д゚)「他にも個性満載の人物がたくさんいるぞ!誰が出て来ても面白い!」

( ゚∀゚)「あの熱くて爽快、そして感動のストーリー!」

(,,゚Д゚)「それが明日投下されるぞ!見逃したら後悔するぜ!」



669 相場師(東京都) 2007/03/14(水) 22:35:06.19 ID:e5U/hMe20




( ゚∀゚)「( ^ω^)ブーンが世界を巡るようです
      【 IN ( ^ω^)ブーンが戦い、川 ゚ -゚)クーが護るようです 】!」




(,,゚Д゚)ノシ「好御期待!」









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