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【合作】( ^ω^)ブーンが世界を巡るようです

第6世界  戦護◆BYUt189CYA

752 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 19:58:07.58 ID:eAqpFNCs0
十五の指輪と、狂人が生み出した人造人間を巡る戦いから、幾許かの月日が経った。

あの多くの謎を残した戦いを生き抜いた者達は、意外にも平和に日常を過ごしていた。


二〇五七年十二月二十九日。


あれから一年。
四世界が交わる三ヶ月前。


一筋の大きな流れ星が小さなニュースとして取り上げられた翌日。

事件は、前回と同じ舞台である『都市ニューソク』で起きる。




               ( ^ω^)ブーンは世界を巡るようです


         『 IN ( ^ω^)ブーンが戦い、川 ゚ -゚)クーが護るようです』






757 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:00:09.36 ID:eAqpFNCs0
風が切り裂かれる。

上から下へ、天から地へ。

一直線に降下するそれは、この世界の誰にも見られることなく地面に降り立った。
強風の中から出現したのは

(主^ω^)「ふぅ……到着したお」

一人の少年だ。
彼はキョロキョロと、確認するように周囲を見渡す。

目の前には小さな広場のような空間があり、それ以外は木々が視界を遮っている。
どうやら何処かの森の中のようだ。
風が冷たいことを考えると、どうやら季節は冬らしい。

(主^ω^)「おっおっ、ここは何処だお?」

手に持ったDATの欠片が光る。
情報が流れ込むように頭に入力されていった。

(主^ω^)「『都市ニューソクから少し離れた山中』かお。
       なんかすごい説明臭いのは、この際無視するお」

その時、音が響いた。

(主;^ω^)「!」

草を掻き分け走る音、そして被さる人の怒号。
それは突如として出現する。

767 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:02:08.71 ID:eAqpFNCs0
(;主^ω^)「おっ!?」

爪゚ -゚)「――――」

驚愕に見開かれた視線の先。
木々の狭間から飛び込んできた、女性用のスーツを着込んだ人間。
長い金髪が美しく揺れている。

しかし違和感があった。

まず、その表情。
顔の形や配置は整っているのだが、眉一つ動かさないそれは人形を髣髴とさせる。

更に背中。
その華奢な背には、白く巨大なリュックサックが背負われていた。
動かす度に金属同士がぶつかるような硬質音が響く。

772 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:04:00.84 ID:eAqpFNCs0
そして何よりも、その気配。

(主;^ω^)「これは――!」

覚えがあった。 ありすぎた。
彼女の胸部から発せられる気配こそ、DATの欠片。
今まさに探し求めているモノだ。

二人は目線を合わせて固まる。
その直後。

「いたぞ! こっちだ!」

広場の周囲から、銃器を構えた兵士と思われる五名ほどの人間が現われた。
全員が同じ格好をしており、その胸には『FC』と小さく表記されている。

(;主^ω^)「一体何事だお……ってか、これは早速終わったかも解らんね」

突然の出来事に動くことが出来ない。
幸いにもまだ見付かっていないが
下手に動けば敵と認識され、最悪の場合は射殺も考えられる。

「こちらG班……ターゲットを囲んだ」

通信機で報告をする、リーダーらしき男。
すぐに棒立ちしている少年に気付く。

775 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:05:41.96 ID:eAqpFNCs0
「何だ、君は……?」

(;主^ω^)「え、えと、僕は……」

どう説明しようか迷った瞬間、金髪の女性が動いた。
全員が緊張を浮かばせ、銃器を本格的に構えるが――

「ぐぁあ!!」

周囲を囲んでいた一人の兵士が倒れる。
何事かと視線を動かすが、追いつけない。

「うぉ!?」
「ぐぅ!」

次々と倒れていく。
見れば、広場の中央にて金髪女性が忙しなく腕を動かしていた。
その手には黒い物体が握られている。

(主;^ω^)「銃……かお?」

銃声がほとんど聞こえないことから判断するに、どうやら減音器を装着しているらしい。
あまりの事態に呆けていると、いきなり頭を押さえられて地面へと叩きつけられた。

778 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:07:13.03 ID:eAqpFNCs0
( ・∀・)「頭を上げないように……死にたくなければね」

(;主^ω^)「お……」

動きと音の気配が消える。
視線を向ければ、黒いハンドガンを両手に持った女性が動きを止めていた。
どうやら弾切れのようだ。

突如、彼の頭を押さえつけていた男が飛び出した。
低い姿勢で地を這うように女性の下へ駆ける。

爪゚ -゚)「!」

気付かれた。
人間とは思えない速さでハンドガンをナイフと取り替える。
腕を振ると同時に投擲。

対して、男は恐れるどころか前へと身を飛ばした。
見事に回避し、そのまま更に接近。

781 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:09:02.08 ID:eAqpFNCs0
乾いた音が響いた。
それは男の拳が阻まれた音。

( ・∀・)「世話の掛かる秘書だね、君は……」

爪゚ -゚)「申し訳御座いません」

そのまま相手の男を一睨みし、バックステップ。
その距離は、もはや人間が出せるレベルではない。
一気に数十メートルの距離を跳び、そのまま森の中へと消えていった。

( ・∀・)「やれやれ……追いたいところだが、まずは態勢を整えねば」

周囲を見渡す。
撃たれた男達が、足を引き摺りながらも木々の陰から出てきた。

「すんません、社長……」

( ・∀・)「別に構わんよ。 アレは君達の手に負える相手ではない」

それに、と続ける。

( ・∀・)「君達のお陰で一つの情報を得られた。
     彼女は君達を殺さずに、足だけを狙って発砲している。
     つまりまだ彼女に意識が少なからず残っているのだよ……ところで――」

(主^ω^)「お?」

( ・∀・)「内藤君は、こんな場所で何をしているのかね?」

785 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:10:59.37 ID:eAqpFNCs0
それほど大きくはないが、高級感溢れる作りをした車の中。
モララーは突如として現われた彼の話に耳を傾けていた。

( ・∀・)「つまりこういうことだね?
     DATの欠片……想いを力にし、君の住んでいた世界を構成する大切な物質。
     散らばってしまったそれを、君は世界を越えてまで掻き集めたいわけだ。
     成程、興味深い話だね」

(主^ω^)「信じてくれるんですかお?」

( ・∀・)「まぁ、とりあえずは。
     ジェイル君のこともあるし……何より信じた方が面白そうだ」

(主;^ω^)「お、面白い?」

( ・∀・)「君はそうは思わないのかな?
     究極的に言えば、想いさえあれば何でも願いが叶うようなモノだ。
     おそらく、聞けば誰もが望むだろう」

(主;^ω^)「だから僕は、悪用される前に回収したいんだお」

( ・∀・)「あぁ、解っているし、その心配はあまりなさそうだよ。
     何せそのDATはジェイル君が持っているようなものだからね」

窓の外の景色は、高速で背後へと吹き飛ばされていた。
ビルがあり、店があり、人々が歩き、他の車も走っている。

ここは、都市ニューソクの『戦跡荒野』を隔てた隣に位置する街。
今現在、彼らはモララーが経営する会社『FC(フィーデルト・コーポレーション)』へと移動している。
事情を軽く話したら、付いてくるように言われたからだ。

787 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:13:01.85 ID:eAqpFNCs0
聞いた話によれば、あの金髪の女性は『ジェイル』という名前らしい。
人間ではなく人型の機械人形。
人形と言っても、精密機械で構成されている自己意識を持った高度なものだ。
ある事情でモララーの専属秘書兼護衛として働いていたのだが

( ・∀・)「昨夜、空から一筋の光が降下してきてね。
     それがジェイル君に直撃した後、何故だか暴走してしまった」

というわけで、あの森の中で捕縛しようとしていたのだ。

( ・∀・)「しかし原因が、君の探しているDATの欠片だったとはね……運命的なものを感じるよ」

(主;^ω^)「そ、そうですかお」

( ・∀・)「とりあえず社に戻って、DATの欠片を回収する作戦を改めて立てよう。
     ついでに、君の面白い話を聞かせたいメンバーも呼びたい」

(主^ω^)「メンバー?」

彼、モララーは口の端を吊り上げながら

( ・∀・)「なぁに、ただの頼り甲斐のある仲間達だよ」

791 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:14:43.03 ID:eAqpFNCs0
それから一時間後の、FCの十二階に位置する会議室。
未だ暖まりきっていないこの部屋に幾つかの人影があった。

( ・∀・)「さて、これだけしか集まらなかったのか」

ホワイトボードの前に立つ彼の視線の先。
並べられた椅子に座っているのは

( ^ω^)「きっと皆忙しいんだお」

('A`)「俺達は半ニートだけどな」

从 ゚∀从「ニートって何ですか? 美味しいんですか?」

川 ゚ -゚)「ハイン、念のため言っておくが食べられないぞ」

( ´_ゝ`)「だがちょっと待って欲しい……実は食べたら美味しいのではないか?」

(´<_` )「待つのは兄者だ」

( ・∀・)(半ニート三人組、融通の利かない女、変態、真面目君……見事に頼り甲斐の無いメンバーが揃ったものだね)

それに加え、ブーンそっくりさんが椅子に座って居心地悪そうにしている。

川 ゚ -゚)「しかし、なかなかに似ているな」

(主;^ω^)「おっおっ」

( ^ω^)「おっおっ」

794 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:16:38.75 ID:eAqpFNCs0
('A`)「何つか、呼び難いからニックネーム付けようぜ」

从 ゚∀从「はいはいはい! 『内藤さんそっくりさん』が良いと思います!」

('A`)「尚更呼び難いから却下」

(´<_` )「内藤Bでいいんじゃないか?」

('A`)「捻りがなくて面白くないから却下ッス」

( ・∀・)「では、それらの意見を交えて……『あっち剥いてほいっ』はどうかな?
     一番重要かつ難しい発音は『っ』だよ、『っ』。
     それと君は何様なのかね?」

(;'A`)「何処からその名前が出てきたんスか……それとごめんなさい」

从*゚∀从「まーほーうーしょうーじょマジカル・ユンっ♪」

( ´_ゝ`)「!!」

川 ゚ -゚)「ふむ……ならば、単純に『内藤二号』で良いんじゃないか?」
     (何だ今のは……ノイズか……?)

('A`)「おー、それ良いね!」

(´<_` )「俺のと大差ないと思うのだが、これはイジメかそうですか」

797 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:18:13.24 ID:eAqpFNCs0
(;^ω^)(本人の意思、完全に無視してるお……)

(主^ω^)「僕が二号ってことは君は一号かお! わーい」

(;^ω^)(ちょwwww喜んでるwwww)

何やかんやでニックネームが決定し、モララーは話を進め始める。

( ・∀・)「さて、とりあえず我々はさっさとジェイル君を捕縛したいわけだ。
     で、彼女の移動先なのだが……」

ホワイトボードに張られている地図を軽く叩く。

( ・∀・)「内藤二号君と出会い、ジェイル君を逃がしたのがここ。
     暴走した地点がここ……こうやって線で結ぶと――」

直線が出来上がった。
つまりジェイルが向かっている大体の方角が解る。
そしてその直線の先には

(;^ω^)「都市ニューソク……?」

(´<_` )「なら、俺達が来た意味がないんじゃないか?」

( ・∀・)「落ち着きたまえ……まだ私の推論を言っていない。
     先ほど得た情報によって解ったのは、未だ彼女の意識は身体に残っているということ。
     つまり根本となるデータは削除されずに生きていることになる」

800 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:19:56.64 ID:eAqpFNCs0
川 ゚ -゚)「つまり?」

( ・∀・)「都市ニューソクを目指しているところから
     暴走状態にある彼女は、自身のデータベースを読み出して行動していると判断出来る。
     で、重要人物データには我々の個人情報が入力されていることから考えるに――」

( ´_ゝ`)「ジェイルたんは、都市ニューソクにいる奴らを狙っているというわけか」

( ・∀・)「だから君達をこちらに呼んだわけだ。
     彼女はニューソクにいる仲間達と接触した後に、こちらに帰ってくる可能性が非常に高い。
     さてさて、今この場にいない仲間は誰かね?」

(;'A`)「あ……」

( ・∀・)「私の招集命令に対して『忙しい』などと言って拒否った連中がいる。
     ははは、これはある意味天罰だと思わないかね?」

804 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:21:29.55 ID:eAqpFNCs0
所変わって都市ニューソク、中心街から少し離れた場所。
裏道とも言える位置に『バーボンハウス』がひっそりと建っていた。

内部に人影は少ない。
昼時を過ぎたここは、いつもと同じく閑散としている。

( ゚∀゚)「ありがとーございやしたー」

従業員用の服を着込んだジョルジュが、食事を終えた客を見送る。

ミ,,"Д゚彡「久々に来てみましたが、まだちゃんと働いてるんですね」

(´・ω・`)「未だに買い出しさせると間違ったの買ってきたりするけどね」

と、店の奥からカウンター席から声。

( ,,゚Д゚)「意欲的に働き始めただけでも大進歩だろう」

(*゚ー゚)「昔に比べれば、全然マシだと思うよ」

(´・ω・`)「そうだと思い込むようにする。 はい、ホットケーキお待たせ」

(*゚ー゚)「そういえばフサギコさん、珍しくツンさんと一緒じゃないみたいね」

ミ,,"Д゚彡「この近くに個人的な用事がありまして。
      そのついでに、ちょっと寄ってみたんですよ」

809 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:23:09.51 ID:eAqpFNCs0
その時だ。
カランカラン、と店の扉が開かれる音。

(´・ω・`)「ん、いらっしゃ……って、あれ?」

爪゚ -゚)「――――」

ジェイルだ。
いつもの女性用スーツを着ており、更に白いリュックサックを背負っている。
何故かその服は所々が裂け、更には焦げ跡さえも見受けられた。

(*゚ー゚)「ジェイルさん? ということは、モララーさんも来てるのかしら……・?」

(;゚∀゚)「うぇ!? マジかよ!?」

その場にいた全員が警戒の動きをとった。
ジェイルの周囲、カウンターの裏、テーブルの下、店の奥、レジの中。
いや、もしかしたら天井に張り付いている可能性も――

爪゚ -゚)「――申し訳御座いませんが」

(;´・ω・`)「え?」

周囲を忙しなく見渡していた五人が、ジェイルの方を向く。
彼女は当初とは別の格好で立っていた。

812 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:24:44.61 ID:eAqpFNCs0
(;,,゚Д゚)「……それは、何だ?」

その両手に大型ガトリングガンを二挺。
華奢な両肩には、バズーカのような大型砲。

ミ;,,"Д゚彡「……凄い武装です、ね」

思わず後ずさる。
その様子を視界に収めながら、ジェイルは言った。

爪゚ -゚)「私、現在身体の自由が利かない状況に陥っております。
    なので、この攻撃は私の意思とは掛け離れた行為だと判断して下さい」

ガシャン、と音を立てながら両足を軽く広げて構える。

(;´・ω・`)「……やっぱり、撃つ?」

爪゚ -゚)「上手く避けて下さることを願っております」

全ての銃口が、直後に火を噴いた。
弾という弾が高速発射され、店内の全てを破壊しにかかる。

(;゚∀゚)「うぉああぁぁぁぁ!?」

音と音が重なり、音として認識出来ない状況。
しぃとショボンはカウンターの陰に隠れ、フサギコも一瞬遅れて飛び込む。

逃げ遅れたジョルジュの首根っこを掴んで引き寄せたのはギコだ。
青い巨剣である1st−W『グラニード』を床に突き刺し、ジェイルから発せられる銃弾を防いでいる。

816 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:26:20.95 ID:eAqpFNCs0
火薬の、そして粉砕された木材や鉄の独特な臭いが充満。
しかしそれでも音は鳴り止まない。
備品や壁を吹き飛ばしながら、銃弾が店内を蹂躙した。

それが十秒ほど。
突然、カチンという硬質な音と共に轟音がなりを潜める。
頭が揺さぶられるような錯覚に頭をしかめつつ、フサギコが静かに顔を出した。

ミ;,,"Д゚彡「……いない?」

店の出口を見るが、そこにジェイルの姿は無い。
後に残るは巨剣を構えたギコと、両手で耳を覆いながら半泣きしているジョルジュ。

(;゚∀゚)「な、何だってんだよぉ……」

(;*゚ー゚)「死ぬかと思ったわ……でもよくこの建物、倒壊しなかったわね」

ミ;,,"Д゚彡「確か、以前からモララーさんが色々と改造していたはずです。
      何やら約束が云々とか言っていましたが……まぁ、とりあえずそのお陰で助かったようですね」

そこで、店の主の声が聞こえないことに気付く。

( ,,゚Д゚)「ショボンは無事か?」

カウンターへ視線を向けると、そこには

(´゚ω゚`)

鬼がいた。

820 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:27:57.10 ID:eAqpFNCs0
おそらくはショボンだ。 多分。
しかし、その表情は鬼と見間違うほど強烈に歪んでいる。

(´゚ω゚`)「僕の店が……僕の店が……」

(;,,゚Д゚)「お、おい……大丈夫か?」

(´゚ω゚`)「僕の店が……おぉ、僕の店が……おぉぉァァァァァ」

肩を震わせ、ガクガクと身体を揺らし始める。
応じるように5th−W『ミストラン』を解放し、ジェイルを追うために飛び出そうとする。

(´゚ω゚`)「アハハハハハハハ!!」

(;,,゚Д゚)「おい止めろッ! 警察に捕まるぞ!?」

ミ;,,"Д゚彡「うわ、うわ、うわ!?」

(;*゚ー゚)「きゃぁぁぁ! いやぁぁぁ!!」

(;゚∀゚)「うわぁぁぁこっち来んじゃねぇぇぇぇ!!」

824 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:29:31.15 ID:eAqpFNCs0
FC十二階の会議室。
軽快な着信音が響いた。
スーツの内ポケットから黒い携帯電話を取り出し、耳に当てる。

( ・∀・)「私だ」

それはジェイルの行方を追っている部下からの連絡だった。
FCの情報管理課と都市観察課が協同して、彼女の行動を追っていたのだが

( ・∀・)「ふむふむ……成程成程」

何度か頷き、通話を切る。

(´<_` )「何か進展があったのか?」

( ・∀・)「バーボンハウスが襲撃された」

(;'A`)「うぉ、やっぱりか……こっち来てて良かった」

( ・∀・)「幸いにも死人は出なかったらしい。
     そのままジェイル君は都市ニューソクを離脱し……」

川 ゚ -゚)「こちらに向かっている、か。
     当然だな、ターゲットはFCに集まっているのだから」

( ・∀・)「最終的な目標は私だろうね……ふふ、愛されるというのも難儀なものだ」

その言葉を、全員が無視する。

828 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:31:05.71 ID:eAqpFNCs0
川 ゚ -゚)「で、私達はどうする?
     迎え撃つのか? それともこちらから行くつもりか?」

( ・∀・)「街中で銃をぶっ放してみたまえ。
     それこそ我々が暴走したと判断されても仕方ない。
     というわけで、FC内で迎え撃つことにする」

( ^ω^)「お? この中だったら暴れても良いのかお?」

( ・∀・)「まぁ、日常茶飯事だからね。
     今更爆発しようが何しようが、悪くて注意くらいで済むだろう」

(;'A`)「すげぇ……常識を自分で作って、その上で浸透させてる……」

( ・∀・)「お嬢の嗜み――ではなく、社長の嗜みだよ」

(;^ω^)(反応したら負けかなと思う)

831 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:32:38.58 ID:eAqpFNCs0
ジェイルは走っていた。
その細めの足は動かさず、脚底部に装着された空圧型高密度噴出機構によって
アスファルトの地面を削るように高速で移動する。
その姿は、まるでスケートボードを乗りこなしているようだ。

正面に展開されるのは大通り。
数々の車やトラックが我が物顔で走っている。
その隙間を、高速で縫うように滑走。
彼女の姿を見た者達は、例外なく目を見開いて驚いた。

当然だ。
金髪女が、本来は車が走るべき道路を単身で高速移動しているのだから。
もはや人間業とは思えない速度とテクニックで、確実に目標と距離を縮める。

目標とはモララーで、彼がいる場所はFCの最上階。

爪゚ -゚)(意識領域だけは確保出来ましたが、相変わらず制御系は使い物になりません……)

当初から身体の自由は利かない。
しかし更に、意識という領域さえも侵食されていくのが解った。

爪゚ -゚)(この『私』という概念が消え去った時……私は私で無くなるのでしょうか)

身体が残っていることを考えれば、己はジェイルのままなのだろうか。
それともジェイル以外のモノと認識されてしまうのだろうか。

爪゚ -゚)(……解りません)

結果を出すのが怖かった。
主人に、自分だと認識されないことが何よりも怖かった。

833 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:34:14.76 ID:eAqpFNCs0
「おい、来たぞ!!」

FCの北口。
一番外部に近い位置にいたFC兵が興奮した声を上げる。
それに倣うように、周囲にいた兵達も各々の武器を構えた。

一瞬の沈黙。
嵐の前の静けさ。
それは直後に砕かれる。

「ッ!!」

ガラスで構成された自動ドアを、難なく突き破ってきた人影。
破片という雨の中、空中で身を回転させて着地をする。

爪゚ -゚)(これは――)

「よし! 作戦通り!」

隊長らしき男が叫ぶ。
ジェイルが飛び込んだ場所であるエントランスホールは、まさに敵陣のど真ん中。
未だ姿勢が崩れている彼女を、FC兵達が扇状に並んで待ち構えていた。

837 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:35:56.43 ID:eAqpFNCs0
「撃て撃て撃て! 社長からの許可は出てんだ! 多少傷つけてでも止めろ!」

言葉と共に一斉に銃器から鉛弾が発射される。
それぞれが音速超過で、威力も高い。

だが

爪゚ -゚)(当たらねば、どうということはない……)

その場での跳躍。
真上へ身を飛ばし、弾けるように地面が抉れる様子を視界に入れる。

暴走状態の身体は、しかし機能自体を正常に動かしていた。

戦闘という行為に特化した思考、人間を超える身体・動体システム、高速処理される判断力。
更には自らの背に負っている圧倒的な力を持った兵装。

それら全てが、唖然とこちらを見上げている者達に襲い掛かった。

841 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:37:43.14 ID:eAqpFNCs0
『戦時報告――ホールに集結させていた戦力が全て無力化されました』

( ・∀・)「おや」

『現在、目標「金髪でスゲー美人だけど悪魔」は
 階段を用いて上を目指し、順次各階の制圧に掛かっている状況』

モララーは、最上階の社長室にて報告を聞いていた。
部屋内には彼以外の人間はいない。
社長護衛を主任務としている護衛隊でさえ、廊下付近での待機を命じられていた。

足を組み替え、ギシリと椅子を鳴らす。

( ・∀・)「まぁ、常識的に考えて当然の結果か……。
     あの一年前に敵対していたジェイル君レベルの戦闘力。
     そして地下の老人共が、仕事そっちのけで勝手に作った特殊兵装が加われば――」

少しだけ天井を見上げ

( ・∀・)「うん、ぶっちゃけ想像したくないね」

溜息と共に、遠くから轟音が聞こえる。
微かに床が揺れる感覚を身に受け、彼は目を瞑った。

『目標「金髪でスゲー美人だけど悪魔」、四階への到達を確認。
 最上階まで残り十四階層、全戦力中十七%が無力化。
 怪我人多数、死者零名』

( ・∀・)「流石だよ、死人を出さないとは。
      さて……彼らはしっかりと働いてくれるかな?」

845 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:39:17.31 ID:eAqpFNCs0
FC七階。
比較的広い空間を持っているここは
戦場の中間ということで、最も戦力を集められていた。

とはいえ、人数は三人だ。

(´<_` )「……そろそろ、来るな」

金に光る盾――12th−W『ジゴミル』を手に持ち、弟者が呟く。

冷えた空間、冷えた床、冷えた大気。
それらが、おそらく来るであろう戦闘の緊張感を醸し出していた。

川 ゚ -゚)「気を抜くなよ。 床を突き破って突入してくるかもしれん」

透明色の刀――14th−W『ハンレ』を右手に持ち、周囲を警戒しているのはクーだ。
彼女は『戦闘用』という点において、最もジェイルに近しい存在。
その危険度を一番認識していると言っても過言ではない。

( ^ω^)「ドキドキしてきたお」

白色のグローブである8th−W『クレティウス』を装着したブーンが、緊張感の欠片も無く言った。

元々は訓練室だった空間、その備品全てが取り払われている。
その中で、それぞれの武器を構えた三人は、ジェイルが来るはずの階段を睨んでいた。

850 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:42:25.10 ID:eAqpFNCs0
川 ゚ -゚)「そんな彼女に対して、私達三人が相手をする。
     言葉だけ聞けばこれほど無謀なこともない」

今から相手をする敵を想像したのか、クーが冷笑を浮かべる。

(´<_` )「それはどうかな?
      戦いから一年離れていた俺はともかく、お前達は以前よりも強くなっているはずだ」

( ^ω^)「確かにあれからも少林寺拳法は続けてるけど……」

(´<_` )「人間は嘘を吐くが、人間の鍛錬は絶対に嘘を吐かない。
      それさえ信じておけば大丈夫だろう」

川 ゚ -゚)「ふむ……」

(;^ω^)(弟者さん頼りになるお……兄者さんとは大違いだお)

激音が響いた。
それは音の波として七階まで伝わってきており、新たに悲鳴や喜声も連鎖していることから

(´<_` )「六階か」

川 ゚ -゚)「ちなみに聞き忘れていたが、作戦などあるのか?」

( ^ω^)「最初から限界突破するお! ボッコボコにしてやんお!」

(´<_` )「あのな……攻撃で使えるのはお前だけだし、使えば相手を破壊してしまうだろう?
      今回は彼女の捕縛が仕事だということを忘れるな」

(;^ω^)「お……」

852 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:43:58.47 ID:eAqpFNCs0
川 ゚ -゚)「さて、御喋りはここまでか」

クーが鋭く前方を睨んだ。
ブーンと弟者もそれに倣って視線を向ければ

爪゚ -゚)「……弟者様と内藤様、クー様ですか」

ジェイルが階段から上がってきたところだった。

(;^ω^)「お……!?」

ブーンが戸惑いの声を上げる。
彼女の服装が通常のものと全く異なっているのだ。

スーツの上に、赤黒く光る不気味な甲冑。
その両腕には赤を基調とした大剣を二本持ち、腰にも更に形状の異なる剣が数本差さっている。

(´<_` )「それが、モララーさんの言っていた特殊兵装というやつか」

爪゚ -゚)「FC製機械人形専用対多敵特殊兵装『CF(クリティカルフォース)−フレア』。
    これが兵装の正式名称です」

(;^ω^)「クリティカルフォースフレア?
      ってことは……エターナルフォースブリザードとかあるのかお?」

爪゚ -゚)「秘密開発実験中の兵装を知っているとは……何処でその情報を?
     ちなみに相手は死にます」

(;^ω^)「何てこったい」

858 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:45:29.71 ID:eAqpFNCs0
爪゚ -゚)「さて、今の間に戦闘データの読み込みが終了したようです。
    そろそろ開始となるでしょうが、準備は宜しいでしょうか?」

川;゚ -゚)「……ところで、本当に暴走しているのか?」

爪゚ -゚)「はい、この通り」

突撃姿勢を見せながら大剣を構えた。
まるで獲物を前にした猛獣のような雰囲気を匂わせる。

川;゚ -゚)(言動が噛み合っている気がするのは、私の勘違いだろうか……)

(´<_` )「よし、来るぞ」

(;^ω^)「は、把握!」

爪゚ -゚)「出来れば私の前で死ぬようなことはお止め下さい。
     何故ならば――」

体重を前へ移しながら

爪゚ -゚)「寝覚めが悪いですから」

言葉と共に赤い猛獣が突進を開始した。

862 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:46:55.58 ID:eAqpFNCs0
FC一階東口。
ジェイルが突入したのが北口だったため、ほとんど人影は残っていなかった。

いるのは、待機命令を出された少数の兵のみ。
眠そうに欠伸をしている者もいれば、座り込んで煙草を吸っている者もいる。
上で響く轟音を耳に入れながら

「うぉー、スゲェ音がすんなぁ。
 ここ待機で良かったー。 死んだら元も子もねぇもんな」

「死人は出てないらしいよ、今のところは。
 ただジェイルさんの意識が無くなった時が一番怖いけど……まぁ、彼女に殺されるなら本望かもねフヒヒ」

「んだんだ……って、おっと」

三人の人間が、こちらに向かって歩いてきているのが見える。
玄関口でたむろしている彼らを一瞥さえせずに、FC内へ入ろうとした。

「おいおいおい、ちょっとちょっと。
 残念だけど今は立ち入り禁止になってt――ぐぉ!?」

ノ(!i† ゝ゚ノ「脆いよのぉ」

「な、何だテメェは!?」

殴られ吹き飛んだ兵士を視界に収め、その場にいた十人ほどの兵達が慌てて銃を構えた。

865 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:48:26.66 ID:eAqpFNCs0
ノ(!i† ゝ゚ノ「ふぅむ……やはり穏便に行かんか」

ノwリ ゚∀゚ノル「だから言ったじゃんよ! 最初からフルパワーでやろうってさ!」

l リ ゚ -゚ノリ「……二人とも、隠密行動って言葉知らない?」

銃口を向けられても平然としている三人。

「う、撃っていいのか?」

「何で俺に聞くn――」

言葉は続かない。
警戒のど真ん中にいた三人が同時に動いたのだ。
FC内でも弱虫で有名な一人の兵が、驚いて銃を乱射し始める。

異音が、その場に大きく響いた。

ノ(!i† ゝ゚ノ「いかんなぁ、こんな物騒なモノを人に向けては……」

「ひっ……!?」

驚愕の視線の先。
サブマシンガンが、まるで粘土を材料としているかのように身を歪ませている。
驚くべきは、それを行ったのが素手だということだ。

868 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:49:55.72 ID:eAqpFNCs0
「な、何だよコイツ!?」

l リ ゚ -゚ノリ「……私のお父さん、形式上は」

ヒュ、と風を切る音に続いて、金属が擦れる音が大量に響く。
それが鎖鎌だと気付いた時には、彼の持っていたアサルトライフルが微塵切りにされていた。
黒い部品や細かい物体がぶちまけられる。

ノwリ ゚∀゚ノル「ふーははー!」

軽快な声と共に、一気に四人の人間が吹き飛ばされた。
どれも、腹部に太い鉄鋼棒が直撃している。
それは彼女を中心に、放射線状に突き出ていた。

「人間じゃない……!?」

未だ意識が残っている兵が叫んだ通り、彼女は人間の形をしていなかった。
それを例えるならば『足長蜘蛛』。
鋼鉄で構成された金属足を四本とも地に突き刺し
彼女自身の身は高さ三メートルほどの位置に固定されている。

ノ(!i† ゝ゚ノ「さぁ、フォックス様の御命令通り……DATの欠片を頂く。
      我が娘達よ、存分に暴れろ!」

l リ ゚ -゚ノリ「ん」

ノwリ ゚∀゚ノル「破壊! 破砕! 大暴れで大事件! バーロー呼べー!」

FC一階東口。
本物の悪魔達が活動を開始した。

873 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:51:30.53 ID:eAqpFNCs0
FC七階。
訓練室として使われているここに、あるはずの備品など何もかもが排除されていた。
あるのは、ただ広い空間。

その中で音が響いていた。

走る音。
床と靴が擦れる甲高いブレーキ音。
息を詰めるような力強い声。

そして、鼓膜を激震させる金属音。

( ^ω^)「うりゃ!!」

大きく振りかぶり、全てを穿たんという勢いで拳を突き出す。
狙いは、クーの剣撃を迎撃しているジェイルだ。

しかし当たらない。

バックステップで跳んだ彼女は、身を横にロールさせながら距離を図る。
追撃に走ろうとしたクーの目前に、タイミングを計ったかのように拳が突き出された。

(;^ω^)「ご、ごめんお」

川 ゚ -゚)「いや……しかし、流石に考えているな」

二人が同時に走り出そうとした瞬間、ジェイルが両の大剣の切っ先を向ける。

877 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:52:56.95 ID:eAqpFNCs0
(;^ω^)「やばっ――」

慌てるブーンの前に、盾を構えた弟者が飛び出す。
隣のクーも、ハンレを形状変化させて透明の盾を形作った。

直後、衝撃と共に銃声が連響。
目の前に突き出したジゴミルが震動する。
銃声は、大剣の切っ先から出現した銃口から発せられていた。

あれは近接攻撃と遠距離攻撃の要素を同時に併せ持っている武器。
いや、もはや兵器と呼べるそれが二本。

やはり三人で相手をするには、少々攻め難い。

( ^ω^)「おっ――!」

銃声が途絶えたのを確認したブーンが身を飛ばした。
身体強化を受けた彼の運動性は、クー達に比べて高い。
リロードを終了させたジェイルが銃口を向けようとした瞬間には、懐に潜り込んでいた。

( ^ω^)「うぉりゃ!」

渾身の一撃が彼女の腹部に

爪゚ -゚)「当たりません」

突き出した右腕に衝撃。
ジェイルが左足を上げて、拳の軌道を強制的に変更したのだ。

883 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:54:23.86 ID:eAqpFNCs0
(;^ω^)「お――っぐぇ!?」

驚きに目を見開く暇さえ与えられない。
彼女の右足が、更に追撃として叩き上げられ、ブーンの顎に直撃する。

視界が強制的に天井へと向けられ、そのまま背後へ。
対してジェイルも同じく、そのままバク転の要領で身を飛ばす。

着地が早かったのはジェイルだ。
そのまま、倒れたブーン目掛けて大剣を突き出――

川 ゚ -゚)「やらせはせん!」

神速接近。
両足に透明色のブーツを履いたクーが、突き出しかけていた大剣を叩き落とす。
そのまま2nd−W『ロステック』を出現させ、落ちた剣を粉砕。

爪゚ -゚)「っ!」

川;゚ -゚)「くっ!!」

もう一方の巨剣が迫るが、サイドステップで回避。
そのまま距離をとって内藤を助け起こす。

887 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:55:51.02 ID:eAqpFNCs0
川 ゚ -゚)「内藤、大丈夫か?」

(;^ω^)「めちゃくちゃ痛いお……」

頭を撫でながら起き上がるブーンに、どうやら怪我は無いらしい。

爪゚ -゚)「流石、と言いたいのですが……私の武装はまだまだあるようでして」

空いた右腕を腰へ伸ばす。
新たに出てきたのは、ごく普通の刀剣だった。

(´<_` )「普通の剣に見えるが」

爪゚ -゚)「いえ、私は戦闘相手を喜ばせることにおいては誰にも引けをとりません。
    まだ見ぬ隠された機能が、きっと貴方達を楽しませることでしょう」

川;゚ -゚)「もう一度聞くが、お前は本当に暴走しているのか……?」

爪゚ -゚)「何度言ったら解るのですか、クー様。
    私の意識領域以外が暴走しており、喋ることは出来ても身体を動かすことは出来ません。
    疑い深い女性は嫌われると、この前テレビでやっておりましたがどうでしょうか」

その言葉を聞き、クーが血相を変えてブーンの方を振り向く。

川;゚ -゚)「……!!?」

(;^ω^)「無い無い無いですおー」

(´<_`;)「……せめて真面目に戦わないか?」

890 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:57:30.86 ID:eAqpFNCs0
「ぬぉぁ!?」

悲鳴が連鎖するここは、FC三階部分だ。
ジェイルによって蹂躙された地ではあるが、未だに戦力が残っているはず。
しかし、その残存戦力も呆気なく刈り取られていった。

l リ ゚ -゚ノリ「……弱い」

狩人の名を『リリオル』と言った。

彼女は複数の鎖を振り回している。
合計すると三本で、末端にはそれぞれの武器。

壁や天井を削りながら飛ぶ鎌。
鉄だろうが何だろうが、全てを砕く斧。
そして身を守るための巨大なフライパン。

その三本鎖の根元は、左手に握られたリングへと集まっていた。
鉄で構成された輪を巧みに操りながら、遠心力を用いて攻撃していく。
まるで蛇のように、空中を這うように。

そこに制限など皆無。
距離的な限界はあれど、その自由な攻撃手法は何処にいる敵でも狙うことが可能だった。

「くそっ! 何なんだよコイツは!?」

l リ ゚ -゚ノリ「……何だろう?」

もはやFC三階は、鎖が荒れ狂う暴風域と化していた。

895 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 20:58:57.08 ID:eAqpFNCs0
(;'A`)「……何か騒がしいな」

リリオルが同じ階で暴れているなど露知らず。
避難所として確保された休憩室にて、ドクオ達が不安げに周囲を見渡す。

( ´_ゝ`)「ジェイルたんはもう七階へ行ってるんだろう?
      じゃあ、今さっきから鳴ってるこの音は……?」

从;゚∀从「ま、また戻ってきたんでしょうか」

(主^ω^)「それはないと思うお。 DATの気配は上から感じるお」

('A`)「ってことは……?」

解らないが、音は現実に鳴り響いている。
そしてたまに混じる悲鳴が、緊急事態を臭わせた。

(;'A`)「見てくるしかねぇか」

内側から掛かっている鍵を外し、甲高い音を軋ませながら扉を開く。
開けた視界に見えた景色は白い廊下。

そこで気付く。
先ほどまで聞こえていた音が完全に消え去っていることに。
異常ともいえる沈黙。
その独特な静寂に、ドクオは覚えがあった。

897 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 21:00:18.01 ID:eAqpFNCs0
(;'A`)(あれ? これって……)

思い出すは一年前の戦い。
確かあの中で、この独特な静寂を体験したことがあったはず。
そうだ、これは――

(;'A`)(攻撃前の、力を溜める時に発生する沈黙――!?)

思うや否や、扉を思い切り引っ張って閉めようとする。
圧倒的な悪寒が彼の背筋を這い登ったからだ。
この時、彼の臆病な性格が幸いした。

(;'A`)「うわぁ!?」

完全に扉が閉まる直前。
腕に震動が走ったと思った途端に、目の前にあった鉄扉が縦に両断された。
あまりの驚きに、そのまま背後へ転がるように逃げ込む。

从;゚∀从「ど、どうしたんですか!?」

(;'A`)「やべぇ! やべぇぞおい!」

室内を見るが、出られそうな窓や扉はない。
つまり、あの出入り口こそが唯一の出口であるということだ。

(;'A`)「に、逃げ――」

とにかく行動しようとした瞬間、その出口に人影が現れたのに気付く。

902 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 21:01:54.34 ID:eAqpFNCs0
l リ ゚ -゚ノリ「……まだいた」

鎖を両手に持っている女だ。
棒立ちでこちらを見つめる視線は、情を感じさせない。

l リ ゚ -゚ノリ「……あれ?」

(主;^ω^)「!?」

バッ、と内藤二号が胸を押さえた。
それを見て、リリオルは首を傾げる。

l リ ゚ -゚ノリ「……そこ?」

(主;^ω^)「いや、その、あの……いやんエッチ☆」

l リ ゚ -゚ノリ「……はっきりしないの、嫌い」

動きは同時。
右手を蛇のようにしならせ、内藤二号目掛けて鎖を振るう。

从;゚∀从「あ、危ないです!」

飛び出したハインリッヒが、鋭く走る鎖を掴んで引き止めた。

l リ ゚ -゚ノリ「……何で?」

リリオルは無表情で驚愕する。
あの高速を肉眼で捉え、それに反応し、更には両手だけで押さえたことに。

904 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 21:03:21.40 ID:eAqpFNCs0
もちろん理由が存在した。
確かにハインリッヒに内在する15th−W細胞は、日々死滅している。
しかし忘れてならないのが、彼女自体が戦闘に特化して作られているという点だ。

身体の頑丈さは失われているものの、咄嗟の思考や高速神経伝達などの内部機構は健在。
彼女自身、無自覚ではあるが、その身体は確実に戦闘用としての機能を発揮していた。

理由も事情も知らぬが、何となく特殊だと理解したリリオルは特に慌てた様子も無く構える。
それを見たドクオは指輪を取り出しながら

('A`)「やべぇな……でも、こっちには指輪使いが二人もいるんだ。
    きっと何とかなるはずd――」

背後を見る。

                                 ワイワイ                  キャッキャッ
l リ ゚ -゚ノリ          (;'A`)「…………」         ( ´_ゝ`)从 ゚∀从(^ω^主)
                                         ゲンジツトウヒ

l リ ゚ -゚ノリ「準備、いい……?」

(;'A`)「ヤベェってレベルじゃねぇぞ!?」

908 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 21:04:50.68 ID:eAqpFNCs0
広い空間では、未だに激闘が繰り広げられていた。
戦闘開始から既に数十分は経過しているというのだが、疲労は三人の方にしか見られない。

爪゚ -゚)「日頃の運動不足が祟ったのだと思われますが、どうでしょうか」

(;^ω^)「そ、そっちが体力無尽蔵なだけだお」

(´<_` )「機械人形一人で指輪所持者三人分以上か……これはオワタな」

川 ゚ -゚)「……まだだ」

三者三様、疲労を表現している。
クー以外の二人は汗を流し、その彼女も汗は無いが荒い息を吐いていた。

対してジェイルは無表情。
装甲は所々が割れ砕け、剣も最後の一本となっているが、その表情に歪みは見られない。

(;^ω^)「そろそろ終わらせたいお」

爪゚ -゚)「私も同意見です」

川;゚ -゚)「……またもや聞くが、本当に暴走s爪゚ -゚)「今ので内藤様に嫌われましたね」

川;゚ -゚)「え、えぇ……?」

911 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 21:06:21.83 ID:eAqpFNCs0
爪゚ -゚)「しかし疑われるのも仕方ないとは思っております。
    ですから互いの気を晴らすためにも、早めに止めてくれることを――」

ジェイルの首下から、パキン、という音が鳴り響いた。

爪゚ -゚)「――ね、ねねね、ががって……おり、まsssす」

(´<_` )「これは……」

爪゚ -゚)「失礼致しました……私の意識領域が消滅に近付いているようです」

ふと目を伏せながら

爪゚ -゚)「御願いします。 私を破壊して下さい」

(;^ω^)「え……」

爪゚ -゚)「自分で解っております。 自分が自分でなくなっていく感覚が。
    私という存在意義はよく解りませんが、せめて意識が消える前の破壊を求めます」

何故なら

爪゚ -゚)「私は最後まで私で在りたいから、です」

(´<_` )「大袈裟な話だな……修理すれば良いんじゃないか?」

爪゚ -゚)「残念ながら、修理後の私が私である保障はありません」

本人が、あのジェイルが言っているのだ。
一切の嘘は無いのだろう。

914 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 21:07:52.03 ID:eAqpFNCs0
轟、と室内の空気が暴れる。
中心はジェイルだ。
地を蹴り込み、赤き獣は獲物を食い漁るため、前屈姿勢のまま突進。

(´<_` )「考える暇さえ与えてくれないか!」

弟者が盾になるかのように前方へ走る。

金属音が響き、しかし止まない。
手の中で振り回されながら縦横無尽に走る赤い刃。
更には右へ左へとジェイルの身体が飛び、弟者の視線を狂わせる。

川 ゚ -゚)「そこだ!」

走りこむのはクー。
その手には巨大な斧、13th−W『ラクハーツ』が握られている。

川 ゚ -゚)「いくら頑丈だろうが、衝撃自体を打ち消すことなど不可能!
     精密機械で構成された身体を恨むんだな!」

振るう。
横薙ぎ気味に迫る刃は、ジェイルの脇腹に直撃した。

爆発。

炎、光、煙の順に発生し、クーと弟者の視界を一時的に奪う。
しかし手応えはあったことは確認出来た。

917 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 21:09:19.05 ID:eAqpFNCs0
二人は同時に地を蹴り後退。
煙の中の惨状を目にするために、視界を鋭く細める。
が、それはすぐに見開かれた。

(;^ω^)「クー! 危ないお!!」

爆炎を逆方向から見ていたブーンが叫ぶ。
その直後、濛々と発生している煙を低姿勢で突き破る影。

金の髪を揺らすジェイルだ。
それに気付いたクーが、刀状態に戻したハンレで咄嗟に防御体勢をとる。

金属音が空間を激震させた。
ギリギリのタイミングで、刃はクーの身を切り裂くことなく止まっている。

川;゚ -゚)「くっ……貴様、どうやって――」

そこで視線を下ろして気付く。
先ほどまでジェイルの身体を覆っていた装甲が、無くなっているのだ。

爪゚ -゚)「爆撃の直前にパージして盾としたようです。
    天下無敵の私といえど、流石に多大な衝撃は受けたくないようでして」

冷静に、そして他人事のように言うジェイル。
その態度に一番苛立ちを覚えていたクーは

川#゚ -゚)「――このっ!」

裂帛の気合と共に弾き飛ばす。
そのままの勢いで一回転し、遠心力を用いて斬撃。

922 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 21:10:56.08 ID:eAqpFNCs0
クリアカラーとレッドカラーの線が幾重にも走った。

甲高い音が連響する。
布が擦れる音、息を吐いて吸う音、靴が床を叩く音、風切音に被さる金属音。

それらの音が連鎖し、一つの音楽を形取る。
『剣舞』という名の音楽が二人の女性によって奏でられた。

(;^ω^)(ってか、ぶっちゃけ入る隙間NEEEE!!)

(´<_` )「お前はまだいいよ。
      俺なんか防御しか出来ないんだぞ?」

( ^ω^)「でも、僕なんかよりも役立ってますお」

(´<_` )「そりゃあ一点集中の能力だしなぁ。
      それでも攻撃に混ざりたいことだってあるさ」

( ^ω^)「おっ? 混ざれるじゃないですかお」

(´<_` )「いくら指向性の斥力操作とか言っても、結局は範囲型だ。
      巻き込まれれば人だろうが武器だろうが弾き飛ばされる。
      ジェイルとクーさんの間に、そんなモノ持って入ったら迷惑だろう」

( ^ω^)「おぉ」

925 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 21:12:30.77 ID:eAqpFNCs0
言葉と金属音が重なった。

川 ゚ -゚)「ッ……!」

クーが押されている。
全ウェポン能力を所有しているとはいえ、その力にも制限があるからだ。

一つは、複数を同時に使えないこと。
一つは、オリジナルに比べて力が劣ること。

つまりは器用貧乏なのである。
攻めという一点に特化したジェイルと相対するには、やはり辛いものがあるらしい。

( ^ω^)「おっしゃ、休憩完了いざ救援だお!!」

(´<_` )「サポートに回るついでに言っておく。
      お前は回避という点においては完璧だが、防御がかなり疎かになっているぞ」

(;^ω^)「お……」

(´<_` )「俺が言いたいのは、存分に俺を盾代わりにしろということだ」

( ^ω^)「把握ですお!」

927 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 21:14:08.57 ID:eAqpFNCs0
川 ゚ -゚)「休憩は済んだか」

( ^ω^)「ありがとうだお、クー。
      あとは僕に任せて休んでおくんだお」

川 ゚ -゚)「いや、私はまだまだいけるぞ。
     この機会に一気にケリをつけよう」

二人が駆け出し、弟者が後を追う。
疲れを感じないジェイルが迎撃するが、流石に二人同時に相手をするのは無謀だ。

そう、通常の彼女では。

爪゚ -゚)「――お気をつけ下さい」

声と共に変化が起きる。
ジェイルの両肩、その後ろから新たな腕が飛び出したのだ。
それは両腰に刺さっていた予備の刀剣を手に取る。

川;゚ -゚)「隠し腕か!」

爪゚ -゚)「モード:ダンシングマウス」

静かな声とは逆に、まさに轟風を巻き起こす動作。
軽いステップで飛び跳ねるように接近し、独楽のような回転運動を主に据えた連撃が牙を剥いた。

931 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 21:15:45.30 ID:eAqpFNCs0
(;^ω^)「うぉ!? ぬわっ!? とわ!?」

川;゚ -゚)「後退しろ! 手数と速度が違い過ぎる!」

二人が下がり、一人が飛び出る。

(´<_` )「こういう時くらいは俺に任せてくれ」

(;^ω^)「弟者さん!」

川;゚ -゚)「出来るのか……!?」

向かい来る刃の回転を前に、弟者は少しだけこちらを振り向き笑った。

(´<_` )「ま、やれるだけやってみよう」

盾前面に斥力を展開。
これで防げるかは微妙だが、やらないよりはマシだ。

直後、刃が盾を掠める。

934 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 21:17:17.92 ID:eAqpFNCs0
(´<_` )「おっと、やっぱり勢いが強いな……。
      内藤、今の内に何か策でも練っておけよ」

爪゚ -゚)「余裕ですね」

(´<_` )「慌てたって仕方ない――さッ!!」

突如、緩めていた斥力をMAXまで叩き上げる。
純粋な力が、殴りつけるようにジェイルの身体を飛ばした。

しかし

(´<_`;)「ッ!?」

弟者の右膝が折れる。
見れば、その太腿が少しだけ切り裂かれていた。
原因は傍らに刺さっている刀剣だろう。

(´<_`;)「馬鹿な、斥力を無視しただと……!?」

爪゚ -゚)「お忘れですか。
    FCにも指輪の使い手はいるのですよ」

(´<_`;)「まさか、内容を調べてウェポン能力を無視……いや、軽減する何かを……?」

936 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 21:19:10.79 ID:eAqpFNCs0
爪゚ -゚)「1st−W、2nd−Wの研究の結果
    指輪能力の根本となるエネルギーは同一のものだと判明しました。
    抽出した微かなそれを元に、影響を軽減する素材を作ることに成功しております」

(´<_`;)「それ、最初に言ってほしかった」

爪゚ -゚)「申し訳ございません、忘れておりました」

(´<_`;)「ほほう、機械がモノを忘れるなんて……面白いな」

爪゚ -゚)「喜んで頂けたなら幸いです」

川 ゚ -゚)「隙ありだ!!」

鋭い声が走る。
視線を向ければ、クーが回り込んでいるのが見えた。

視認と同時に身体が動く。
サイドステップで身を飛ばし、向かってきている彼女に攻撃を仕掛けた。

しかし空振りに終わる。

クーが左足で地を蹴り込み、身の向かう方向を無理矢理に修正したのだ。
ジェイルから見て左側へ回り込むような動作。

軽い遠心力を利用しながら、透明色の鎖を振る。
身をうねらせながら宙を這うそれは、見事ジェイルの身体を絡めとった。

938 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 21:20:51.16 ID:eAqpFNCs0
川 ゚ -゚)「今だ、内藤! 望み通り破壊してやれ!」

抵抗しようとするジェイルを、全力で抑えながら声を上げた。
同時にブーンが弾かれたように走り出す。

(#^ω^)「限界! 突破ッ!!」

両腕を軽く広げて叫ぶ。
白いグローブが強烈な光を発し、次の瞬間には形を変えていた。
それは巨大な手甲。

(#^ω^)「強化符『腕部』――展開!!」

白い符が、展開された手甲から舞い散る。
それは一瞬だけ自由浮遊した後、すぐさま彼の望んだ位置へと集った。
右拳。
限界の限界を超えるための準備が整う。

(#^ω^)「うぅぅりゃぁぁぁあ!!」

全身を投げ出すように右腕を突き出した。
水蒸気爆発による白の尾を引きながら、符の力を受けた拳はジェイルの胸部へ――

川;゚ -゚)「え?」

クン、と彼女の身体を引っ張られる。
見ればジェイルの足元から白い煙が発生し、その位置を強制的に動かしていた。
FCへの接近に使用していた、あの機構を利用して。

強大な力で引っ張られたクーの身体は、元々ジェイルがいた位置まで引き摺られる。

942 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 21:22:17.82 ID:eAqpFNCs0
(;^ω^)「うぇ!?」

突如としてブーンの目の前に現れたクー。
このままでは直撃必至。

激音が響く。

突き出した拳はクーに当たる直前に軌道変更されていた。
膝の力を抜いて姿勢を崩し、倒れこむ勢いを利用して拳を床に叩きつけるような格好。

多大な力は床を打ち抜き、ブーンの身体は前のめりに吹き飛ぶ。
そのまま上下逆さまになり

(;^ω^)「うわぁぁぁ!?」

川;゚ -゚)「うぁ!?」

お互いにバランスを崩しながら激突。
揉みくちゃになりながら床を転がった。

(´<_`;)「お、おい、大丈夫か?」

足を軽く引き摺る弟者が、寄って来る。

944 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 21:23:53.42 ID:eAqpFNCs0
(;´ω`)「あうあう……痛いお」

川;゚ -゚)「な、内藤……そこはあまり触られ慣れていない……その、反応に困る」

(;^ω^)「うぇいぁ!? ご、ごめんだお!」

(´<_` )「……無事なら良いんだ、無事なら……うん」

川;゚ -゚)「ジェイルは……」

(´<_` )「もう逃げた後だな。
      言葉と動作が異なることを忘れていた。
      口上では破壊を求めてはいたが、システムが保身を求めたらしい」

弟者の視線の先には、上階へ上がるための階段。

948 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 21:25:22.03 ID:eAqpFNCs0
川 ゚ -゚)「まずいな、急いで追おう。
     私達が止めないと、モララーが彼女を壊すことになる……それだけは避けたい」

( ^ω^)「……把握!」

言葉が終わる前に激音が響いた。
壁が砕かれ、窓ガラスが粉砕される。

(;^ω^)「な、何事だお!?」

川 ゚ -゚)「ジェイル? いや、違う……」

(´<_`;)「お、おい……ありゃ何だ……!?」

濛々と揺らめく白煙。
内部から、ガシャンという機械音が響いた。
出てきたのは

ノwリ ゚∀゚ノル「おいーっす! 消防署の方から来たぜー!!」

身体・頭部は人間、手足は蜘蛛型の機械足。
誰がどう見ても奇妙な女だった。

951 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 21:26:54.63 ID:eAqpFNCs0
その空間の大半を支配しているのは、たった三本の鎖。

l リ ゚ -゚ノリ「ん」

小さな声と共に、放物線を描きながら走る灰色の鉄蛇。
各々の先端には武器だ。
鋭利な刃を持つ鎌、暴力的な形を持つ斧、そして

('A`)「うぉぉッ!」

弾幕として撒き散らされた光弾を防いでいるのは、大型のフライパンだ。

FC三階に位置するここは、決して広いとはいえない場所。
広いことには広いのだが、並べられたデスクが移動の邪魔をする。

しかしリリオルの操る鎖は、それを無視するかのような軌道で這い回った。

从;゚∀从「うわっ、うわっ、うわっ!?」

四人の中で最も体力を持つハインリッヒが囮として走り回る。
デスクを飛び越え、床を転がりながら、それでも全力疾走で。

兄者の姿が見えない。
あの男のことだろう、どうせ何処かに隠れているに違いない。

(;'A`)「!」

そこで気付く。
攻撃に集中しているリリオルの背後に、内藤二号が忍び寄っていた。
その手に、光るブレードを持っている。

954 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 21:28:28.32 ID:eAqpFNCs0
リリオルは気付いていない。
ここで背後から攻撃すれば――

从 ゚∀从「あ」

l リ ゚ -゚ノリ「?」

煤i主;^ω^)「!?」

ハインリッヒの発見の声→リリオル振り向く→すぐ後ろに内藤二号。

三つの連続した動作が綺麗に流れる。
直後の動きは、それぞれ謝罪、攻撃、逃亡だった。

l リ ゚ -゚ノリ「……ストーカーは嫌い」

静かな言葉に対して、攻撃は暴風そのもの。
双頭の鉄蛇が内藤二号向けて迫る。

(主;^ω^)「えいっ!」

内藤二号は、光を発するブレードを盾のように突き出した。
直後、向かっていた二つの武器が弾かれる。

l リ ゚ -゚ノリ「……反発力を持つ剣?」

(主^ω^)「大体そんな感じでおkだお」

DATの欠片の力を、その辺に落ちていたブレードに付加させているのだ。
反発力を持つそれは、向かってくる敵意を弾く盾ともなる。

958 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 21:30:04.04 ID:eAqpFNCs0
(;'A`)(戦えるのは三人……対して、あの女の武器も三つ。
    出来ればもう一つくらい何か要素が欲しいが……)

ドクオはハインリッヒへ視線を向ける。
汗を浮かべている彼女に、『武器を持って戦え』などと酷なことは言えない。
かつては最強の戦闘人間であったが、今はただの純粋な女の子だ(身体は無性別だが)。
囮として走ってもらうだけでも充分。

('A`)(俺が何とかするしか……!)

激音が響く。
鎖を周囲に走らせるリリオルと、光るブレードを持った内藤二号が激突しているのだ。

(主^ω^)「うりゃりゃりゃりゃりゃ!!」

連撃は鎖によって阻まれる。
しかし付加された反発力が、確実にリリオルを押していた。

l リ ゚ -゚ノリ「……ん」

突如、身体を横に回転。
追従するように三本の鎖が舞う。
まるで竜巻のように、リリオルの周囲で風が吹き荒れた。

(主;^ω^)「こ、これじゃあ、近付けないお!」

('A`)「俺に任せろ!」

銃身を震わせて光弾を多段発射。
しかし、十の群れを為していたそれは鋭く回転する鎖によって砕かれた。

960 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 21:31:37.62 ID:eAqpFNCs0
\('A`)/オワタ

(主;^ω^)「ど、どうするお!」

目の前で吹き荒れる竜巻に対して、二人が後退しようとした時。

从#゚∀从「ふぁいとー!! いっぱぁぁぁつ!」

無謀にもハインリッヒが飛び出した。

それは本当に無謀な行為だった。
あの鎖に絡め取られれば、おそらく五体満足では帰って来れない。
解っていながら飛び込んだのかは不明だが。

从#゚∀从「座右の銘は『当たって砕く』!!」

ヘッドスライディングの格好で突っ込む。
それはある意味、ラグビーのタックルに似ていた。
鋭く回転する鎌が彼女の頬を浅く切り裂く。
しかしハインリッヒは構いもせずに、リリオルの両足に組み付いた。

l リ;゚ -゚ノリ「……おぉ」

支えであった足を掴まれ、彼女のバランスが崩れた。
そのまま地面に身を倒す。

964 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 21:33:11.66 ID:eAqpFNCs0
从;゚∀从「い、今です内藤二号さん!」

(主;^ω^)「把握!」

駆け出した内藤二号。
光るブレードを、起き上がろうとしているリリオルへ押し付けた。

l リ;゚ -゚ノリ「……うわ」

弾かれるように彼女の身が軽く飛ぶ。
その先は壁だった。
身を打ちつけ、衝撃に顔をしかめるが

l リ ゚ -゚ノリ「……痛いけど、まだ余y――」

言葉が途切れる。
その視線は右方向へと向けられていた。

ドクオ達からは、壁のせいで彼女が何を見ているのか解らない。
しかし、内藤二号が叫んだ。

(主;^ω^)「兄者さん、お願いしますお! 約束通り追いやったですお!」

( ´_ゝ`)「御苦労、内藤二号! そしてやっときたぜ俺の出番!」

そこには、変態がいた。

970 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 21:34:44.53 ID:eAqpFNCs0
l リ;゚ -゚ノリ「何で……全裸なの?」

( ´_ゝ`)「それが俺の美少女に対する流儀だからだッ!!」

从;ぅ∀从「うわぁぁぁ! 何か股間で揺れてます揺れてます揺れてますヒャホーイ!!」

( ´_ゝ`)「あぁ、ごめんごめん、俺の息子が迷惑をかけた」

キュ、と股に挟む。

( ´_ゝ`)「何処かの誰かが言っていたな……チ○コを股で挟めば人類みな女、と」

(;'A`)(まさか、それが言いたかっただけ……?)

兄者は桃色の本を開きつつ

( ´_ゝ`)「実を言うと、この格好はコスプレなんだよね。
      最近ハマッてる魔法少女シリーズ最新作『全裸少女 ねいきっど☆すねーく』の」

(;'A`)「もはや魔法少女じゃなくて、ただの痴女じゃねぇか?」

(#´_ゝ`)「お前ふざけんな『全裸痴女』だろうが!! ただの痴女と同じにすんな馬鹿!」

(;'A`)「そこに噛み付くのかよ!」

976 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 21:36:17.89 ID:eAqpFNCs0
発光。
兄者の周囲に風が巻き起こり、緑色の魔法陣が展開される。

(#´_ゝ`)「ひぃぃぃっさつ!! 俺の欲望いざオォォップン!!」

欲望具現化。
何故かそんな単語が、ハインリッヒの脳裏に浮かぶ。

そして悪夢は現実となる。

魔法陣に描かれた円から、樹木が蛇のように生えだしたのだ。
それは一瞬だけうねりながらも、リリオル目掛けて身を伸ばす。

l リ;゚ -゚ノリ「う、うわ」

慌てて逃げようとするが、その足に樹木が絡みついた。

(*´_ゝ`)「うははははは! 俺の百八の妄想の一つ、触手攻めだ!!」

言葉通り、次々と巻きつく。
たった数秒でリリオルの下半身を支配。

979 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 21:37:50.90 ID:eAqpFNCs0
(*´_ゝ`)「カモォォン!!」

声は動きを具現する。
強力な力でリリオルの身体が、変態の下へと引き寄せられ始めた。

l リ;゚ -゚ノリ「や、やだ……やだ……」

ジタバタともがくが、腕の力だけでは止められない。
そのまま変態へと運ばれていく。

从;゚∀从「…………」←どちらの味方をすれば良いのか解らない

リリオルが苦肉の策として鎖を投げた。
鎖鎌のそれは壁に食い込み、彼女の身を助ける頼みの綱となる。

(*´_ゝ`)「ハ〜ハ〜ン? やっぱり抵抗があったほうが燃えるy」




    ´゙ `ゝ `;`'  パチュン                             __O)二)))  ('A`)
    ノ(  )ヽ                              0二━━ )____)┐ノヽ
.      ><                                      A   ||ミ|\ くく




987 : 銭湯経営(大分県):2007/03/15(木) 21:39:36.91 ID:eAqpFNCs0
狙撃したのはドクオだった。
頭部に光弾の直撃を受けた兄者は、その場に崩れるように倒れる。

从;゚∀从「ド、ドクオさん……」

('A`)「いいんだ、これで」

从 ゚∀从「はい、ぶっちゃけ正しい判断だったと思いますよ」

(;'A`)「そんなあっさり……うん、別に良いけど」

(主;^ω^)「正直スマンカッタ……あの人、メチャクチャ自信があるように言ってたから……」

('A`)「次から気をつけろよ。
    あの男が言うことは全てが虚構だ……存在もそうであってほしいくらいに」

l リ ゚ -゚ノリ「……何で助けたの?」

疑問の声は女性。
絡みつき、しかし力を失った樹木を外しながらこちらを見る。

('A`)「だって……なぁ?」

从 ゚∀从「変態に襲われてる女の子がいたら、助けるのが当然ですよ!」

(主^ω^)「悪は倒したお!」

63 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 21:56:16.29 ID:eAqpFNCs0
モララーがいる社長室。
護衛隊の隊員が気絶している横で、ジェイルは扉のノブに手を掛けた。

開く。

落ちかけている夕日が室内を照らしているが、それでも内部は薄暗かった。
不意打ちを警戒しながら足を進める。

そして気付く。

爪゚ -゚)「……いない?」

社長用のデスク。
そこに本来いるべき人物はいなかった。
安堵の気持ちが湧き上がるも、しかしそこで疑問が浮かぶ。

一体、何処へ?

暴走したシステムと、ジェイルの思考は同一の内容を思う。
最重要ターゲットを探し出すため、身体が社長室の外へと向いた。

67 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 21:57:44.53 ID:eAqpFNCs0
屋上。
本来、空戦隊以外はあまり使わない場所だ。
ヘリの発着場も兼ねているので、障害物にあたる物はほとんどない。
夕日が落ち、夜が闇を引っ張ってくる時間が近付く。

中央部に、一人の人間が立っていた。

( ・∀・)「……やれやれ」

モララーだ。
正面から来る風をものともせず、彼は自身の中で思考を続ける。

今回の件の原因は明確だ。
DATの欠片という妙な力を持つ物質が、ジェイルを中途半端に暴走させている。
それは部下も仲間も知って、更には納得しているはずだ。

しかし。

怪我人が出た。
建物が壊された。
階下で暴れている襲撃者は、DATを求めているらしい。
だから、これから死人が出る可能性もある。

それらの要素が出ているというのに、ジェイルを止めて終わり、などと出来るのだろうか?

( ・∀・)「……出来ないだろう、ね」

暴走状態だったとはいえ、ジェイルという個体が被害を生み出したのは事実。
今回の原因はDATだったが、また違う理由で暴走しないという保証は何処にもない。

71 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 21:59:10.59 ID:eAqpFNCs0
廃棄処分、という言葉が頭に浮かぶ。

( ・∀・)「……せっかく『御主人様』を憶えてもらったというのに、勿体ない」

背後へ振り向く。

( ・∀・)「そうは思わないかね?」

屋上の東側出入り口。
そのドアの傍らに、一人の大男が立っていた。

ノ(!i† ゝ゚ノ「……はて、何の話か解らんなぁ」

( ・∀・)「あぁ、マジレスの必要は無い。
     どうせ解るまいと思っていたからね」

両者、静かに睨み合う。

ノ(!i† ゝ゚ノ「DATの欠片を持つ女……お前を狙っていると聞いたが」

( ・∀・)「間違いない」

ノ(!i† ゝ゚ノ「ふぅむ……では、漁夫の利を狙おうか」

その視線はモララーを見ていなかった。
彼がいる空間を通り過ぎ

爪゚ -゚)「……ここにいましたか」

77 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 22:01:12.74 ID:eAqpFNCs0
ジェイルだ。
屋上の西側出入り口から現れた彼女は、そのまま立ち尽くすようにこちらを見ている。

( ・∀・)「遅かったね」

東側には巨躯の男、西側にはジェイル。
出入り口は東西二つしか存在しない。

どうするか。

思った瞬間、モララー以外の二人が同時に足を踏み出した。

ノ(!i† ゝ゚ノ「漁夫の利も良い……が、我は待つことを好まぬ」

爪゚ -゚)「御主人様ピンチ」

( ・∀・)「言動が噛み合っていないということが、どれだけ怖面白いか解ったよ」

言いながら考える。
男はジェイルを、ジェイルはモララーを狙っているはずだ。
ならば、自分はどうするべきか。

( ・∀・)「流れ的にあの男、か……だが男を狙うのは性的に面白くない……うぅむ」

直後、風が動いた。
巨躯の男が地を蹴り飛ばし、こちらに接近を仕掛けてきたのだ。

ノ(!i† ゝ゚ノ「遅延も好かんなぁ! さっさと殺させてもらうぞ!」

80 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 22:02:49.78 ID:eAqpFNCs0
狙いはジェイルではなくモララーだった。
彼を殺した後で、悠々とDATを回収するつもりらしい。
それに気付いたモララーが、指輪を取り出しながら構える。

目の前に、金の色が広がった。

爪゚ -゚)「危険と判断します」

色の正体はジェイルの後姿。
まるでモララーを護ろうとしているかの如く、大男の前に立ちはだかった。

ノ(!i† ゝ゚ノ「ぬぅぅん!!」

強烈かつ豪胆な気合の声。
それはジェイルによって視界が阻まれたモララーでさえ、一つの汗を浮かべるほど。

一瞬、彼女の背中が震えた。

爪゚ -゚)「――ッ!!」

それは本当に一瞬だった。
直後、ジェイルの背中から男の拳が突き出される。
数々の小さな部品を、モララーに向かって飛び散らせた。

ノ(!i† ゝ゚ノ「脆い、な」

拳を収める。
支えを失ったジェイルは、そのまま崩れ落ちるように伏す。

85 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 22:04:11.57 ID:eAqpFNCs0
( ・∀・)「ジェイル君……?」

爪゚ -゚)「暴走していたとはいえ、システムは正常に動いておりました」

火花を散らす身体。
しかし、彼女の声はまったく濁っていない。

爪゚ -゚)「おそらく、敵接近による『主人防衛』という最優先行動が――」

ガクン、と彼女の身が跳ねた。
そのまま動かなくなる。

( ・∀・)「……これは」

貫かれた腹部。
内部から、光る物体が見えた。

DATの欠片。

思っていたよりも小さな石だ。
それを右手に握りながら、モララーは少しだけ目を瞑る。

( ・∀・)「……案外、呆気ない御別れになったね」

騒ぎが終われば、彼女は廃棄されることだろう。
せっかく、FCの技術レベルでは作れない貴重な機械を手に入れたと思っていたのだが。

しかしこうなってしまったのだから、今更何を言っても仕方ない。
とりあえず、目の前でニヤニヤしている男をどうにかせねば。

89 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 22:05:47.86 ID:eAqpFNCs0
そこまで思った時だ。

「あぁ!?」

西側出入り口から、幾つのも悲鳴ともいえる叫びが聞こえる。
視線を向ければ、唖然と口を広げているFCの部下達。
彼らはジェイルの姿を見るや、すぐさま駆け出してきた。

「ジジジ、ジェイルさんがぁぁぁぁ!!」
「とりあえず運べ運べ! 部品も全部だ!」
「地下の爺さん達に連絡入れろ! エレベーター動かせ! 速攻で運ぶぞ!」

巨躯の男やモララーが見えていないかのように、彼らはジェイルの身体を抱きかかえる。

「社長!」

( ・∀・)「……何か?」

「俺、見てました! あのデカブツがジェイルさんをやっちまうとこ!
 だから、絶対に絶対に絶対にアイツをブッ飛ばして下さい!」

( ・∀・)「しかし……彼女は君達に牙を剥いていたよ?」

「それが何だって言うんですか!?
 彼女は俺達の仲間だ! それを傷付けたあのデカブツは万死に値する!」

そうだそうだ、と全員が首を振る。

「だから社長! 俺達の怒りの分まで、アイツにかましてやって下さい!」

93 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 22:07:18.95 ID:eAqpFNCs0
真っ直ぐな瞳が幾つもモララーを見つめる。
彼は少しだけ黙った後、

( ・∀・)「……解った」

それを聞いた彼らは安堵した様子で、しかし急ぎ足で退散していった。
ジェイルを複数人で抱え、地下の研究施設まで持っていくつもりだろう。

ノ(!i† ゝ゚ノ「ふン、御涙頂戴の陳腐な話にもならん……下らんな」

( ・∀・)「あぁ、確かにそうだね……私も笑いを堪えるのが大変だったよ。
     しかし私は少々、難しく考え過ぎていたようだ」

ノ(!i† ゝ゚ノ「ほぅ?」

( ・∀・)「廃棄処分は確かに必要なのかもしれない。
     だが私は忘れていたよ……この私こそがFCのルールだということを」

ノ(!i† ゝ゚ノ「上に立つ人間として、その意見は最悪だと解っておるか?」

( ・∀・)「私は元より底辺に属する最低人間だよ……『彼女』が死んだその日から、ね」

103 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 22:08:42.98 ID:eAqpFNCs0
懐から煙草のケースを取り出し、一本だけ指に挟む。

( -∀-)「――――」

目を瞑り、何かの呟きを吐く。
音は吹き込む風によって掻き消されていたが、口の形は女性の名を表していた。

( -∀-)(……もう顔さえも憶えていない君に願おう)

指先に力を流し込みながら

( -∀-)(今だけは――今だけで良いから、これからの行動を許して欲しい)

力の限りを籠めて煙草を握り潰した。
粉々になったそれを風に流しながら、もう片方の手に力を入れる。
その手の中には、DATの欠片。

( ・∀・)(DATは想いを力に具現する、か……)

ノ(!i† ゝ゚ノ「その力を以ってしても我は倒せんよ」

大男は格闘の構えをとった。

ノ(!i† ゝ゚ノ「我が名は『ラバン』。
      貴様のような人間が、想いの力を得た程度で太刀打ち出来るわけがない」

殺気が発せられる。
それは如何なる鈍感を持つ者であっても、はっきりと感じ取れるほど禍々しい。

107 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 22:10:03.74 ID:eAqpFNCs0
( ・∀・)「ふむ」

対して、モララーは腕を軽く掲げる。
一瞬の発光後、その手には2nd−W『ロステック』が握られていた。

ノ(!i† ゝ゚ノ「武器を使うか……弱者には御似合いだな」

( ・∀・)「否定はしないし、出来ない。
     だが要は勝てば良いのだよ、勝てば」

ノ(!i† ゝ゚ノ「何故戦う? DATの欠片さえ渡せば、我は貴様らに手を出すことは無い」

( ・∀・)「可愛い部下に頼まれたからね。
     私の考えが無駄だった、ということを知らせてくれた礼もしなければなるまい」

モララーが突如として姿勢を低下させ、音も無く走り出す。

( ・∀・)「ふっ!」

身を立ち上げる力を利用してロステックを叩き上げる。
豪速のそれは、的確にラバンの顎を捉えようとするが

ノ(!i† ゝ゚ノ「むぅん!」

首を上げていたラバンが、いきなり頭を下げた。
それは槌頭へ向かっての頭突き。

撃音が、その場に大きく響く。

113 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 22:11:33.22 ID:eAqpFNCs0
( ・∀・)「ッ……」

ノ(!i† ゝ゚ノ「我に接近戦を挑むとは愚か也ッ!」

ラバンの周囲に風が収束。
腰を軽く落とし、腕を引き、体重を背後へ傾けた。

――来る。

ゾクリ、と前方から冷気の壁を感じた。
それは錯覚ではあるが、情報として真実を伝えてくる。

今、モララーの体勢は崩れていた。
つまり、ラバンの攻撃を身に受けることは必至。

予想は現実となった。

形容し難い音が腹から響き、内部を通って脳に『直撃』を伝える。
全身の神経が麻痺したかのような感覚。
モララーの腹部を抉りこんだ拳は、そのまま勢いを止めることなく更に押し進む。

(  ∀ )「――くぁっ」

苦悶の声を残しながら背後へと弾け飛んだ。
低空飛翔し、推進力を失った身体は地を滑走する。

(  ∀ )「……げほっ、がはっ」

激痛に耐え切れず、身を折るようにして悶える。
その口の端から一筋の血液が流れ出ていた。

115 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 22:13:04.15 ID:eAqpFNCs0
ノ(!i† ゝ゚ノ「弱いのぉ」

( -∀・)「ッ……あぁ、私は……弱いさ」

痛みが脳を揺さぶるも、しかしモララーはゆっくりと身を起こした。

( -∀・)「強い人間なんて、この世にはいない……誰しも心の支えを必要とする。
     この私も同じく……しかしその人は、もうこの世にはいないがね」

荒い息が、段々と整えられていく。

( -∀・)「……これは、ジェイル君や部下を裏切ろうとしていた分の痛みだ。
     そして『彼女』との約束を一時的に破る罰でもある……」

少しだけ足を震わせながら立ち上がった。
腹部への一撃とはいえ、その衝撃は全身に影響を与えているらしい。
それほどの力を、ラバンという男は持っていた。

ノ(!i† ゝ゚ノ「戯言を……今すぐに殺してやろう」

モララーにトドメを刺すため、地を蹴る。
満身創痍で迎撃するには分が悪過ぎる相手。
そんな状況下で、彼は笑みを浮かべながら呟いた。

( -∀・)「――速度、が欲しいね」

キィン、という何かが鳴り響く音。
同時にラバンの正拳突が腰から飛び出す。
高速かつ破壊的。
直撃を受ければ内臓が潰れ、骨が砕け、皮膚はその衝撃に耐え切れずに破れるだろう。

118 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 22:14:42.42 ID:eAqpFNCs0
ノ(!i† ゝ゚ノ「!?」

それほどの迫力を醸し出す拳は、しかしモララーを捉えなかった。

ありえない、と咄嗟に思う。
あの速度とタイミングの攻撃を回避するなど、それこそ神速を生み出す身体を持っていなければ――

( ・∀・)「これが神の速度か」

真横。
突き出した右腕のせいで死角になっているが、右側面にモララーがいる。
独特な静寂から判断するに、既に攻撃体勢に入っている状態で、だ。

( ・∀・)「次は……腕に力が欲しいね」

またしても応えるように音が響く。
想いを力に変換する音。
そしてそれは、彼の想いを忠実に具現化した。

音は無い。
その速度故に、音が音として発せられる時間さえ与えられないのだ。
それほどの一撃がラバンの脇腹に突き刺さる。

ノ(!i† ゝ゚ノ「ぐふぉ……!?」

信じられない一撃だった。
まるで拳が身体内部に入りこみ、直接暴れているような感覚。

123 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 22:16:16.81 ID:eAqpFNCs0
( ・∀・)「は――はは、ははははは! これぞ『ずっと私のターン』だね!」

音、具現化、攻撃。
その三連事象が流れるようにラバンに襲い掛かる。

( ・∀・)「あぁ! 何と素晴らしきことだろう!
     己を抑える必要を消去するDAT、また面白い玩具だと思わないか!?」

ノ(!i† ゝ゚ノ「馬鹿な……! 想い程度で、そんな力を――」

( ・∀・)「理由は簡単、私の想いは常識外というわけだよ!」

ク、と喉を震わせて笑う。

( ・∀・)「気持ちが良いものだね……これが自在の力か。
     笑いが止まらない。
     さて、次は……指が鋭く硬くなったら嬉しいね」

音、具現化。
指が硬質化したモララーは、一足飛びでラバンの顔面へ跳ぶ。
そのまま左手で彼の後頭部を固定し

( ・∀・)「まず、その目が気に入らない」

ラバンの両目に、指を根元まで突き刺した。

131 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 22:17:49.17 ID:eAqpFNCs0
ノ(!i† ゝ ノ「お、おぉぉぉっぁぁぁぁ!!?」

そのまま指を折り曲げ、内部を蹂躙。
粘着質な音が響く中で

( ・∀・)「おや、だいぶ深い。
     少々人間のそれとは違うようだね」

引き抜く。
血液が付着した指を、ラバンの服で拭って距離をとった。

ノ(!i† ゝ ノ「き、貴様ぁ! 貴様はぁぁぁぁ!!」

( ・∀・)「その声も気に入らない」

再度接近。
モララーの姿を視認出来ないラバンは、ただただ呻きながら位置を探すだけだ。
彼の技量を持ってすれば、音と気配で充分に割り出せたはず。
しかし、両目からくる激痛のせいで集中力が失われていた。

ノ(!i† ゝ ノ「ガッ……ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙!?」

叫声。
声として発せられる予定だったそれは、喉を文字通り潰されたことにより異音として奏でられた。

( ・∀・)「ジェイル君を突き抜いた、その拳が気に入らない」

更なる激音。
骨が割れ砕ける音だ。
モララーの右足が、地に着いたラバンの右拳を踏み砕いている。

136 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 22:19:06.86 ID:eAqpFNCs0
( ・∀・)「何の理由も無いが、君の腕が気に入らない」

その右足を軸に回転し、回し蹴りを叩き込んだ。
鋭い軌跡を描くそれは、ラバンの右上腕部を真っ二つに粉砕。
同時に右踵が砕けた拳の上で捻られ、粉々になった骨肉が混ぜ込まれる。

( ・∀・)「くく、くは……はは、はははははは!!」

声を無くし、そして尚も苦痛にもがくラバンを睥睨しながら

( ・∀・)「さて、次は何を潰そうか」

腕を組み

( ・∀・)「耳? いや、私の美声が聞こえなくなるなど可哀想過ぎるね」

146 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 22:20:20.15 ID:eAqpFNCs0
ふむ、と思考の声を出しながら、視線は苦しむラバンの一部分を捉える。
それは、股間と呼ばれる部位だった。

( ・∀・)「君は異世界の人間……いや、人間ですらないようだが――やはり睾丸はあるのかね?」

ノ(!i† ゝ ノ「げヴぁ!?」

( ・∀・)「何を言っているのか解らん。
     まぁいい……実際に潰してみれば解る」

硬質な床を蹴る音。
つまり接近。

ノ(!i† ゝ ノ「ばべッ……ぶるあぁぁぁぁ!!」

( ・∀・)「もがき苦しみ死にたまえよ阿呆」



グシャリ、という耳障りな音が、一際大きく響いた。




155 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 22:21:32.09 ID:eAqpFNCs0
「――――」

首から上を無くしたラバンが、そのまま地面に崩れ落ちる。

( ・∀・)「冗談だよ、冗談。
     やはり人間はユニークを失ったら駄目だね」

ラバンの頭があった場所には、ロステックの槌頭が叩き込まれていた。
砕かれ、細分化した骨肉は周囲にぶちまけられている。
しかしすぐに黒色の砂となって消滅した。

(  ∀ )「ッ……」

表情が歪む。
顔を伏せ、口元を引き攣らせながら

(  ∀ )「……下らない、私は本当に下らない人間だ。
     やはり復讐などという感情的な行為は、どうしても好きになれない……」

風に吹かれて消えていくラバンの死体。
取り出した煙草を口にくわえながら、ポツリと呟いた。

162 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 22:23:03.19 ID:eAqpFNCs0
と、そこで屋上の西側入り口が開かれた。
飛び込むように出現したのは、三つの人影。

(主^ω^)「屋上キター!!」

( ^ω^)「わーい」

川 ゚ -゚)「む、もしかしてもう終わったのか?」

耳で、入ってきた人間を判別。
片手で顔を押さえつけ、浮かばせていた表情を無理矢理潰す。
一瞬で落ち着きを戻した彼は顔を上げ

( ・∀・)「……あぁ、こちらはもう終わったよ」

(主;^ω^)「アウチ、僕らが一生懸命走ってきた意味がなかったお」

( ・∀・)「もう一つ言わせてもらえば、先ほどからエレベーターは動いている」

(;^ω^)「鼻折り損のくちびる儲けだお」

川 ゚ -゚)「意味が解らない」

この時点で、皆の意識は『安堵』へと向けられていた。
これから起こる『危険』を、誰もがまったく感じ取れていない状態。

167 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 22:24:36.62 ID:eAqpFNCs0
そこでモララーの目が見開かれた。
煙草を落としつつある口が動いたのは直後。

( ・∀・)「何、だと……?」

( ^ω^)「え――」

(主;^ω^)「えぇ!?」

立ち尽くしていたモララーが前のめりに倒れる。
その背後には

ノ(!i† ゝ゚ノ「まだだ……! まだ終わらん!!」

巨躯の男がモララーの後頭部目掛けて拳を突き出していた。
その腕や目、身体の輪郭は闇に揺らいでいる。

(主;^ω^)「無理矢理に復活した……!?」

ノ(!i† ゝ゚ノ「我が身は元々は闇!
      意思さえ残ればこの程度の復活は容易い……!」

川 ゚ -゚)「だが、その身体もボロボロだな」

ノ(!i† ゝ゚ノ「ハッ! そんなものコレがあれば――」

その手にはモララーが持っていたはずのDATの欠片が握られている。

173 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 22:25:49.62 ID:eAqpFNCs0
(;^ω^)「な、なんだってー!!」

ノ(!i† ゝ゚ノ「ふははは! これがあれば勝ったも同然……!」

DATが闇に染まり、その波動がラバンに力を与える。
消えかけていた身体がはっきりと浮き上がり、更に存在感を増す。

ノ(!i† ゝ゚ノ「は、はははは! ははははははは!!」

轟、とラバンを中心に風が唸る。
その迫力たるや、かつてのハインリッヒに匹敵するほどだ。

(;^ω^)「これは負けたかも解らんね」

川 ゚ -゚)「諦めが早いぞ。 とはいえ、相手が悪過ぎるが」

(主^ω^)「まだだお!」

内藤二号がDATの欠片を取り出す。

(主^ω^)「力を貸してくれお! アイツに対抗出来る力が欲しいお!」

彼の願いを、DATの欠片は忠実に具現した。
ラバンの闇色とは対象の、まさに光色と呼べる神々しい光が展開。
内藤二号だけではく、それはブーンとクーの身体も包み込んだ。

178 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 22:27:03.75 ID:eAqpFNCs0
川 ゚ -゚)「こ、れは……」

( ^ω^)「凄いお……何か力が湧いてくるお!」

機械音が響く。
限界突破命令を出していないにも関わらず
ブーンの持つ8th−W『クレティウス』が巨大手甲へと姿を変えていた。
変化はそれだけに留まらない。

川;゚ -゚)「!?」

クーの持っていた透明色の刀である14th−W『ハンレ』。
本来、限界突破が無いはずのそれも光と共に姿を変える。

それは『十三本の刀』だった。
それぞれが鞘に収められ、何かが書かれた符によって一つにまとめられている。

川;゚ -゚)「何だこれは……こんなモノ、見たことがないぞ……!?」

直後、クーの視界が白に染まる。
まるで時間を止めたかのように彼女の身体が止まった。

(;^ω^)「クー……?」

ブーンの心配そうな声に引き戻されたかのように、ビクリと身体が震える。

182 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 22:28:25.79 ID:eAqpFNCs0
川;゚ -゚)「今のは……」

ありえない。
しかし確かに今、自分の心の中に現われたのはハンレの擬似精神だった。
そして彼女は間違いなく、クーに自分の使用方法を教えてくれた。
何故――

ノ(!i† ゝ゚ノ「行くぞッ!」

(主^ω^)「おっしゃ来いお!!」

闇色と光色が、同時に地を蹴り駆け出す。
互いに拳を構え――

「――――!!」

一瞬で距離を無にしてぶつかり合う。
最初から全力だ。
衝撃波が巻き起こり、屋上にあるものを吹き飛ばす。

(主#^ω^)「おぉぉぉぉ!!」

ノ(!i† ゝ゚ノ「ぬぁぁぁぁぁ!!」

連打――いや、瞬打といえるほどの速度で放たれる拳。
それぞれが相手の身体を穿つも、しかし互いに一歩も退かない。

186 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 22:29:40.69 ID:eAqpFNCs0
(主;^ω^)「おっ!?」

衝突は互角に見えるも、押され始めたのは内藤二号だ。

互いが同等の力を持つ場合、勝敗を決するのは『速度』と『体格』と『経験』である。
そのどれもが劣っている内藤二号が押されているのは、当然の結果といえるだろう。

しかし

ノ(!i† ゝ゚ノ「!?」

今度はラバンが押される。
しかも横に、だ。

その方向から向かってくる力は『白色』の力。

(#^ω^)「二号だけに良い格好はさせないお!!」

ブーンだ。
手甲を全展開し、至る所に強化符を撒き散らしながらの連撃。

踏み込み、腰の捻り、肩の力動、拳の速度、身体の筋力。

強化符が攻撃挙動をサポートし、威力速度を底上げする。
そこから発せられるのは限界突破の四文字。

1+1=2。
単純計算で二倍の力がラバンに襲い掛かる。

190 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 22:31:03.34 ID:eAqpFNCs0
そして更に一が足された。

ノ(!i† ゝ゚ノ「ぐっ……!?」

逆方向からの一撃。
それは光を発する透明の刀。

川 ゚ -゚)「これでどうだ……!!」

十三本の刀を束ねて持つクーだ。
初撃に続いて二連、三連、四連とコンビネーションアタックを仕掛ける。
その全てに特色があった。

一本目は引力を操り、二本目は粉砕力を持ち、三本目は刀身が伸び、四本目は自然を操る。

そう、ハンレが変化したこの武器の能力とは

川 ゚ -゚)「全ウェポン能力の同時使用――!!」

何故、この能力が開花したのかは見当がついていた。
内藤二号が発したDATの欠片、それが各々の能力全てを増強させたのだ。
これを言葉にするならば、14th−W『ハンレ』の擬似的限界突破。

全十三の力が、一斉にラバンへと牙を剥く。

ノ(!i† ゝ゚ノ「ガッ……ぐぉ……!?」

三倍の攻撃がラバンに襲い掛かり、その身を砕いていった。
そして遂に攻撃の手が失せる。
すぐさまクーの十三本刀がラバンの足を貫き、位置を固定。

192 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 22:32:45.76 ID:eAqpFNCs0
( ^ω^)「今だお! 二号!」

(主^ω^)「解ったお! 一号!」

二人同時に右足を引き、左手を前へ。
右拳を限界まで握り締め、思い切り振りかぶる。
そして腹の底から思い切り声を発した。

(主#^ω^)「「こ の 世 界 か ら 出 て 逝 け ぇ ぇ ぇ ぇ !!!」」(^ω^#)

神速轟撃。
衝撃波が発生する暇も無いほどの一撃、いや二撃が炸裂した。

ノ(!i† ゝ゚ノ「ぐあぁあぁぁぁぁぁ!!?」

一号の拳が腹を、二号の拳が胸を穿つ。
拳を纏っていた光がラバンの身体を蹂躙し、内部で荒れ狂った。

ラバンの目、口、鼻、耳、亀裂が入った皮膚……その他至る場所から光が漏れる。

ノ(!i† ゝ゚ノ「も、うしわけ――ま、せん――ふぉっくs――」

言葉が終わる前に身体が光に包まれる。
一陣の突風と、一柱の光と共に闇色が消滅。

(主^ω^)「……やったお」

落ちたDATの欠片を手に取り、内藤二号は歓喜の溜息を吐く。

今度は、残りカスさえも残らなかった。

198 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 22:34:23.15 ID:eAqpFNCs0
(主^ω^)「ありがとうございましたですお」

全てが終わり、既に夜の時間が来ている屋上。
そこに十名近い人間が集っていた。
彼らに向けて、内藤二号は頭を下げる。

( ^ω^)「とりあえず事が収まって良かったお」

川 ゚ -゚)「あぁ、そうだな……色々と被害は少なくないが」

(´<_` )「ま、結局こうやってDATの欠片は得られたんだ。
      ここは愚痴を抑えて内藤二号を見送ろう」

ちなみに彼らの隣では、全裸の兄者が横たわっている。

('A`)「……邪魔くせぇから蹴飛ばしていい?
    っていうか、何で記憶が一部だけ無いんだろ……」

从;゚∀从「ささささぁ? 何ででしょーね?」

(主;^ω^)b(ハインリッヒさん、GJだお)

冷や汗を拭った内藤二号は、モララーの方へ向き直る。

(主^ω^)「あの、ジェイルさんのこと……すいませんでしたお」

( ・∀・)「いや、君の責任ではないから謝る必要はない。
     とりあえず修復は可能だと連絡はあったから、安心して良いよ。
     その後を伝えられないことが少しだけ心残りだが……」

206 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 22:35:36.50 ID:eAqpFNCs0
ちなみに戦意喪失したリリオルとノリルメリーは、既にこの世界にはいない。
リリオルはトランプで遊んだ後、闇となって消えた。
ノリルメリーも、弟者の話す兄者珍妙伝を散々聞かされ、泣きながら消えていったらしい。

前者はともかく、後者には同情を隠せない。

(´<_` )「……そういえば、お前はこれからどうするんだ?」

(主^ω^)「別の世界へ行くんだお。
       DATの欠片は、まだ全部集まってないから」

川 ゚ -゚)「何か支援出来ると良いのだがな……流石に世界を渡る術は持っていない」

('A`)「でも、応援してるぜ」

从 ゚∀从「頑張って下さい!」

(主^ω^)「おっおっ、嬉しいお。 頑張るお」

突如、彼の持っているDATが光を発する。
それは世界を越える合図だ。

( ・∀・)「では、これで御別れだが……君の目論見の成功を願っているよ」

( ^ω^)「また来れたら来るお! 今度は一緒に遊ぶお!」

川 ゚ -゚)「今回は色々と騒がしかったからな。
     また次に来れたら、観光案内でもしたいところだ」

(主^ω^)「おk、把握したお!」

214 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 22:37:12.63 ID:eAqpFNCs0
光が強くなる。
それはまるで内藤二号を包み込むように展開された。
風が渦巻き、空間が震える。

(主^ω^)ノシ「ありがとうだお! さよならだお!」

手を振る内藤二号。
そのままの姿勢で、光の中へ包まれていった。
直後、その光は収束しながら消滅。

光の残滓を残しながらも、内藤二号は別世界へと旅立った。

(´<_` )「ふぅ……何気に貴重な体験だったような」

从 ゚∀从「とにかく疲れましたね……帰ってお風呂に入りたいです。
      今日のことは絶対に日記に書きますよ! 友達も出来ましたし!」

( ^ω^)「それは良いことだお。
      ……ところで、兄者さんはどうするお?」

('A`)「放っておきゃいいんじゃね? 面倒だし」

川 ゚ -゚)「だが、風邪をひいてしまうぞ」

(´<_` )「馬鹿は風邪をひかない、という名言を昔の人は残してくれた」

というわけで、寒空の下に置いていかれる兄者であった。

( ・∀・)「…………」

224 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 22:38:46.02 ID:eAqpFNCs0
二週間後。
事後処理が大部分終わったFC。
修理などの作業に追われていた日々も過ぎ去り、いつもの雰囲気が戻ってきていた。

とはいえ、未だ部下の一部は都市ニューソクへ派遣されている。
バーボンハウスの修理のためだ。

ギコ達に何とか取り押さえられたショボンは、鬼と化していた時の記憶を失っていたため
周囲の人間が適当な事情を話したらしい。
よって責任はジェイルへ向けられることは無かったのだが、それでも破壊した事実は変わらない。

というわけでFCが、特別サービスという名目で修復しているのである。

( ・∀・)(ま、もちろんそれ以外にも理由はあるがね)

社長室にあるデスク。
大きな椅子を軋ませ、モララーは思う。

そう、まだバーボンハウスの工事は終わっていない。
主であるショボンでさえも知り得ぬ、ある秘密工事が。

ちなみに最近、夜の社内に全裸の幽霊が出るとの噂がある。
そういえば弟者が、帰ってこない兄の心配をしていたが何処で何をしているのやら。

231 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 22:40:12.36 ID:eAqpFNCs0
と、そこで社長室の扉が開く。

入ってきた人物は音も無く扉を閉め、そのまま一直線に歩いてくる。
両手で盆を持ち、その上には湯気が立ち上るコーヒーカップ。

「モララー様、コーヒーをお持ちしました」

モララーは答えた。

( ・∀・)「『モララー様』ではなく、『御主人様』と呼んで欲しいと言ったはずだが?」

彼女も答える。

爪゚ -゚)「申し訳ございません。
    未だに指定言語がシステムに着床していないので」

( ・∀・)「ま、私は心が異常に広いので五月蝿くは言わない。
     のんびりと慣れたまえ」

爪゚ -゚)「ありがとうございます……しかし」

( ・∀・)「しかし?」

爪゚ -゚)「このやり取り、以前にもしたような記憶が微かに残っております。
    記憶素子に異常があるのでしょうか」

234 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 22:41:34.87 ID:eAqpFNCs0
それを聞いたモララーが、少しだけ口元を歪ませた。

( ・∀・)「いや、それは異常なんかじゃない。
     大切なものだから、ずっと大切に保存しておきたまえよ」

主人の言葉の意味が解らなかったのか、彼女は無表情に首を傾げる。

爪゚ -゚)「どういう意味か、詳しく御願いします」

( ・∀・)「今の君が知っても意味を持たぬモノだ」

爪゚ -゚)「以前の私などあるのでしょうか。
    それならば、何処から何処までが私なのでしょうか」

モララーは、彼女の言葉が可笑しくて仕方ないような様子で笑い始める。

( ・∀・)「君は君だよ……かつてもこれからも何処から何処までも、ね」

尚も首を傾げるジェイル。

しばらくの間、社長室に嬉しそうな笑い声が響き続けた。


                ―終―


247 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 22:42:57.57 ID:eAqpFNCs0


                  ξ゚听)ξつ===【次回予告】)´_ゝ`)




                       次回予告出演者審議中


                         川 ゚ -゚)(^ω^ )
                      ( ,,゚Д゚) U) ( つと ノ(´<_` )
                      | U (  ・∀)(・`   ) と ノ
                       u-u (l    ) (   ノ u-u
                            `u-u'. `u-u'





257 銭湯経営(大分県) 2007/03/15(木) 22:44:31.84 ID:eAqpFNCs0
( ・∀・)「さて、明日の投下作者さんは誰かね?」

爪゚ -゚)「◆HGGslycgr6氏です」

ミ,,"Д゚彡「『( ^ω^)ブーンがピアノを弾かされるようです』を筆頭に
      数々の素晴らしい作品を書いている方ですね」

ノハ#;゚听)「あ、あの……何で私まで引っ張り出されたの? 私、戦護には出てないよ?」

( ;∀;)「ヴぉぇあぁぁぁ」

(´<_` )「どうしたジョルj……って誰だお前モララーの亜種かよ気持ち悪いな」

( ;∀;)「だってブーンがぁぁぁぁツンがぁぁぁぁ」

(´<_` )「すごいキモイんですけど」

(´・ω・`)「あぁ、僕が『( ^ω^)ブーンがピアノを弾かされるようです』を読むように言ったんだ。
      最初はニョロニョロ読んでたんだけど、途中からまったく返事さえ寄越さなくなってね。
      読み終わったらこれさ」

川 ゚ -゚)「ふむ、それほどのパワーを持つ作品というわけだな」

( ^ω^)「これは期待するしかないお」

从 ゚∀从「◆HGGslycgr6さんは一体どのような感動を僕達にもたらしてくれるのでしょーか!
      次回、( ^ω^)ブーンが世界を巡るようです第七回! 問答無用でお楽しみに!!」

ノハ#;゚听)「えっと、個人的にはGさんが好きでした、はい……何か出てきてすいません……」


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