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【合作】( ^ω^)ブーンが世界を巡るようです

第12世界  ギアス◆FpeAjrDI6

641 空気(長屋) 2007/03/22(木) 00:15:18.87 ID:GusS/mdi0

「YesかNoで答えろ」

少年は目の前の自分によく似た男の胸倉を掴み、押し上げる。
深みのある笑みを浮かべながらこう訊ねた。

「さっき言っていたDAT。お前の説明によれば、僕は既に扱うための条件を揃えている。そうかお?」

「……Yes」

一瞬の沈黙のあとに身動き一つせず彼は問いかけに応答する。
依然として彼は身動きを封じられたまま。

そして手に持っていたDATを奪われてしまう。

一層、少年の笑みは深みを増し、掴まれた男はただ睨みつけるだけ。
少年は手の力を緩めることなく呟いた。

「……待っててお、クー」

643 空気(長屋) 2007/03/22(木) 00:16:17.53 ID:GusS/mdi0





     ( ^ω^)ブーンが世界を巡るようです






647 空気(長屋) 2007/03/22(木) 00:19:09.87 ID:GusS/mdi0

(主^ω^)「多分、この辺だお……」

少々疲れたような顔つきで、時空を移動する。
その手には小さな石が握られており、その石はとても強い光を放っていた。

(主^ω^)「……共鳴はしてるお。ここに違いないお。
      それにしてもここは何だお? 物騒だとか無法地帯なんてレベルじゃないお」

DATによる移動は全て石に委ねておいたため、その世界であることは間違いない。

しかしその肝心な世界が無い。
正確には、その世界は成り立っていない。

(主^ω^)「こんなの初めてだお。この世界は確かに存在してる……。けど、ここには何もないお」

暗闇で、しかし真っ白で、何も無い。
人が住むような世界ではなく、単なる空間。

(主^ω^)「寒気がするお……。早いところ見つけて次の世界にイキタス」

視界の悪さと要領の悪さから自然と愚痴が漏れる。探し物を探すにはどう考えても効率が悪い。
そのとき、何者かが彼を呼び止めた。

「誰だお……?」

(主;^ω^)「お?」

振り替えろうともそこには姿が何処にも無く、しかしそれでも声は聞こえてくる。
思わず混乱しそうになるが、声は尚も続けて聞こえてくる。

650 空気(長屋) 2007/03/22(木) 00:22:08.58 ID:GusS/mdi0

「……僕以外にまだ人がいるとは思わなかったお」

淡々と喋る声はどこか寂しそうで、しかし嬉しそうでもあった。
ただ、僕以外。その部分に何かが引っかかった。

(主^ω^)「君は、誰だお?」

思いつくままに、気になり訊ねたいと思ったことをそのまま口にする。
しかし返ってきたのは期待した言葉では無く、悪態と共に冷たい言葉だった。

「……質問を質問で返すなお。お前こそ誰なんだお」

(主^ω^)「……まずここが何処で、君が誰なのか教えてもらいたいお」

負けじとすかさず言い返す。すると相手はそれ以上は言い返さず、黙ってしまう。
嫌な空気だ、と作者は思った。
互いに自分のことは喋らず、情報を求めている。

「……それなら」

(主^ω^)「お?」

「僕はここが何処なのか、どうなっているのかを知っている。そして僕はお前の素性を知りたい」

(主^ω^)「……交換条件かお」

652 空気(長屋) 2007/03/22(木) 00:24:55.58 ID:GusS/mdi0

姿の見えない目の前の男が、笑みを浮かべた気がした。
実際にはまだ彼に男かどうかを判別する術も無い。声色からそう感じ取っただけだ。

「何の目的でここに来たんだお?」

彼の仕事はDATの回収。
しかし軽々しく話すには内容が重すぎる上、何より信用するに足らない人物だ。
姿形すらも見せられない相手を信じろというほうが無茶な話だろう。

(主^ω^)「その問いに答える前に、これだけは先に聞かせてもらいたいお」

「……言ってみろお」

(主^ω^)「僕には君の姿が見えないお。どういうことだお?」

「…………」

(主^ω^)「それに今までにも色々な世界を巡ってきたけど、こんな世界は初めてだお」

真実が知りたい。君が何者なのか。
そう言おうとしたところで、そこで姿の見えない男は口を挟む。

「それは僕がここにいないからだお」

その声は、彼が今までに聞いたどんな声よりも澄んでいて、クリアで。
何より、感情が抜けきっていた。

655 空気(長屋) 2007/03/22(木) 00:28:40.67 ID:GusS/mdi0

ここにいない。それはどういう意味で、いかなる方法によって成されるのか。
しかしそれ以上を聞くことは許可されていない。

(主^ω^)「……そうかお」

「それよりも、この世界の他にも複数の世界があるってのは本当かお」

(主^ω^)「……確かに存在するお」

失言だ、と彼は思った。
どうやら緊張感が少しばかり欠落していたようだ。

しかしこのまま敵対していては目的が達せられない。事実、時間に余裕があるわけでもないのだ。
まずは自分から話すしかないのだろうと、彼は口を開いた。

(主^ω^)「手を貸してほしいお」

「どういうことだお」

(主^ω^)「僕の世界が、奪われそうなんだお」

世界が奪われる。つまり、世界が無くなる。
あまりに現実味の無い言葉だが、男はすんなりとその言葉を受け入れることが出来た。

しかし。

「僕には何も出来ないお」

657 空気(長屋) 2007/03/22(木) 00:29:32.05 ID:GusS/mdi0

何度も試み何度も諦めたことを今また再確認させられ、投げやりな答えを返す。
彼は何も出来ない。したくとも、動けないのだ。

(主^ω^)「どういうことだお?」

「これを。この世界を見て分からないかお」

(主^ω^)「何も見えない。……いや、何もないお」

「それで正解だお」

(主^ω^)「お?」

「この世界は既に終わってるんだお」

すんなりと受け入れるにはあまりに常識外れのことを軽々と言ってのける。
世界が終わってしまうなんてことが本当にあるのか、そう言おうとして彼は留まった。
自分の目の前に広がる光景が、何よりの証拠ではないか。

(主^ω^)「やっぱりここも、元は一つの世界があった場所なのかお……」

「……そうだお」

(主^ω^)「……お? でも君は……」

「それが分からないんだお。気がつけばここにいたんだお」

それ以上は本当に知らないのだろう、そこで言葉は途切れてしまった。
少しだけ考え、彼は一つ決心した。

659 空気(長屋) 2007/03/22(木) 00:32:44.13 ID:GusS/mdi0

全てを話し、自分のことを知ってもらう。何事もまずは交友関係を持った上で話は進むものだ。
そんな自論を持ち出しては信じ、口を開く。

(主^ω^)「……僕は」

互いの持つ情報を、少しずつ交換し共有していく。少しずつ相手を理解していくことで、親近感は沸きやすい。
逆にこういった状況下で気を緩ませてしまえば、
自らは情報という賭け金を失い、相手を優位に近づけてしまう。

つまり。

(主^ω^)「DATと言うものが……」

「DAT?」

(主^ω^)「それは所有者の心に反応して……」

「願うだけかお?」

(主^ω^)「僕は名前を奪われて……」

「覚えてない?」

(主^ω^)「僕はこの世界にあるDATを手に入れるために……」


彼の、負けだ。

661 空気(長屋) 2007/03/22(木) 00:36:03.53 ID:GusS/mdi0

(主^ω^)「僕は僕の世界を守るために、DATを集めなきゃいけないんだお」

先程までとは違い、彼の言葉に強い意志と喋り終えた満足感のようなものを感じる。
しかし、もう遅い。
物事において失敗したとき、どこで間違えたのだろうと自らの行動を振り返ると大概は最初から間違っているものだ。

最初から。
彼と出会ってはいけなかった。世界を巡る順番がいけなかった。何もかも、遅すぎた。

「……そうやって何でも」

(主^ω^)「お?」

「何でも、頑張れば自分の思ったとおりに行くと思ってるのかお?」

(主^ω^)「……どういうことだお」

「最後に一つ教えてやるお。僕の名前は内藤ホライゾン」


「悪いけど、DATは僕が貰うお」


その場に一瞬の輝きと共に一つのモノが形成され、少しずつ形を成していく。
頭部に始まり、胴、四肢が生えその細部が元通りに形成され。

内藤ホライゾンの完成だ。

663 空気(長屋) 2007/03/22(木) 00:39:10.75 ID:GusS/mdi0

( ^ω^)「YesかNoで答えろ」

内藤は目の前の自分によく似た男の胸倉を掴み、押し上げる。
深みのある笑みを浮かべながらこう訊ねた。

( ^ω^)「さっき言っていたDAT。お前の説明によれば、僕は既に扱うための条件を揃えている。そうかお?」

(主^ω^)「……Yes」

一瞬の沈黙のあとに身動き一つせず彼は問いかけに応答する。
依然として彼は身動きを封じられたまま。

そして手に持っていたDATを奪われてしまう。

一層、内藤の笑みは深みを増し、掴まれた男はただ睨みつけるだけ。
内藤は手の力を緩めることなく呟いた。

( ^ω^)「……待っててお、クー」

667 空気(長屋) 2007/03/22(木) 00:40:34.68 ID:GusS/mdi0





     『 IN ( ^ω^)ブーンがギアスを手に入れたようです 』






668 空気(長屋) 2007/03/22(木) 00:43:21.09 ID:GusS/mdi0

場所は変わり、埃まみれの汚い一室。そこに内藤は立ち尽くしていた。

途端に内藤に視界が与えられ、視野が広がる。
視野が広がっているのだから眼球が。そう理解できるのだから脳がある。
そう実感できる体も既に。

内藤は久し振りに感じる肉体という重石に四苦八苦しながら辺りを見渡す。

( ^ω^)「ここは……。一体……」

目の前の錆びれた台所は少しずつ綺麗に、薄汚れたドアも先ほどまでの姿は一切伺わせない。
足元を見れば床の埃が次々に何処かへ消えてしまう。
驚くべきスピードで目の前の全てが変化していく。

そう理解した瞬間、彼の頭に何かが流れ込んできた。

(;^ω^)「何だおッ!?」

何かが。知っている何かが高速で脳内を駆け巡る。
それはあまりに速すぎて、どうしても一つひとつを正確に把握することができない。

徐々に加速し頭の中に居座り続けようとするそれが、急に止まった。
そこでようやく内藤は理解する。

己の記憶だと。

672 空気(長屋) 2007/03/22(木) 00:48:30.90 ID:GusS/mdi0
気がつくとそこは一変して見慣れた室内になっていた。
洒落た家具は部屋の主が持ち込んだものではなく、元から配置されていたものだ。

( ^ω^)「僕の部屋……」

目の前の現実に、頭がついてこない。
とりあえず、右腕を突き出し指を数本動かしてみる。人差し指、中指、薬指……。

(#^ω^)「衝撃のォォォ……!」

( ^ω^)「あ、何か色々と思い出してきた気がするお」

彼は勢いよくソファーに座り込むと、全身の力を抜きソファーに身を委ねる。
一度自分の体をを離れて気がつく。随分と動きにくい体だな、と。

( ^ω^)「そうだ」

内藤は数分前の出来事を思い出す。
実際に数分前かどうかは確認できなかったが、体内時計はせいぜい5分以内だと示した。

DATの存在。
すぐにポケットの中を探ると、先ほどの自分によく似た男から取り上げた小さな石のようなものが入っていた。
そして彼は今一度確認するのだ。全てが夢ではなかったことを。

( ^ω^)「本当に時間は元に戻ったのかお?」

676 空気(長屋) 2007/03/22(木) 00:51:18.74 ID:GusS/mdi0

彼がDATに求めた力は「時間軸の遡り」。
DATの能力が持ち主の意志に、願う心の強さに反応するというのなら、
内藤は心のそこから彼女との生活を望んだ。DATを手に入れる前から、ずっと。

( ^ω^)「とにかく家を出てみないことには何も分からないお」

そう言って彼はソファーから飛び上がり、ジャケットを羽織ると家を飛び出す。

ドアノブのひんやりとした感触が懐かしい。そんなことを思いながら力を込めドアを開けた。
開けた瞬間、肌が冷気を感じる。どうやら外は大分寒い。風も強く、吐いた息も白くなっている。

内藤はゆっくりと方向を変え、ドアをもう閉める。

(;^ω^)「……寒い。これは外に出たくないお」

急いでリビングに向かい、暖房をつける。
ストーブが目的を果たすまでまだ暫く掛かるだろうな、とソファーの上に寝転がり考え込む。

( ^ω^)「あまりに、現実味がないお……」

試しに、恐るおそる腹部を摩ってみるが何もない。
もう一度右手を上に突き出し、指を一本ずつ握りしめてみる。
しかし辺りの物質を原子レベルで分解し再構築することは出来なかった。

そこで彼を呼び出すためのインターホンが鳴り響く。
誰だろうと受話器を取り、「はい、なんですかお」と彼はその呼び出しに応える。

「内藤、いるか?」


677 空気(長屋) 2007/03/22(木) 00:54:42.22 ID:GusS/mdi0

内藤はその声に即座に反応し、勢いよくドアを開ける。
先ほどのように、寒さなど感じない。むしろ体温は上昇しているような気さえする。
抑えきれないほどに鼓動は速く、心音は大きくなるばかり。

川 ゚ -゚)「やぁ、内藤。丁度そこを通ったものでな……ん?」

高鳴る鼓動と心音が内藤の耳を塞ぎ、彼女の声が届かない。
もっと聞きたいのに、と思えば思うほどに悪循環だ。

川;゚ -゚)「何を泣き出しているんだ、君は」

( ;ω;)「お?」

いつの間にか泣いていたことに気付き、急いで服で拭おうとする。
既に先ほどまでの空気は欠片もなく、元のダメ男に戻ってしまっている始末だ。

( ;ω;)「クーだお、クーが、あぁぁ、クーが……」

川;゚ -゚)「そうだぞ、私がクーだ」

そしてやっと実感が沸いた。信じるためのきっかけが出来たのだ。
ここは間違いなく過去で、クーがまだ生きている頃。

――二年前に来ている。


682 空気(長屋) 2007/03/22(木) 00:58:09.09 ID:GusS/mdi0

場所は変わり、小さな個室に男が一人座っていた。

(主^ω^)「おお?」

非常に視界が狭く、両側にすぐそこに壁が。目の前には扉がある。
見たところ一畳ほどの空間。動くのが精一杯といったところで、とても何か作業が出来るような場所ではない。

(主;^ω^)「何で僕はこんな所に閉じ込められているんだお?」

返事はない。付近には誰もいないということだろう。

(主;^ω^)「大体、最近の僕の扱いが酷いと思うんだお。僕は一つの世界を守ろうとしてるんだお?」

実は割と重要なことを口にしているのだが、やはり彼には緊張感が欠落していたようだ。
内藤と同じように、先ほどまでの空気など全く気にしていない。

(主*^ω^)「これからの僕にwktk☆」

彼の周囲は壁に覆われているため、誰も彼の姿を見ることは出来ない。
そこで彼は他人がいないのを良いことに、右手でピースを作り、瞑った目元に横にして当てる。
片方の目を瞑ることで、写真にした際に片方を隠すなりして二面性を見ることが出来るのだ。
ちょっぴり舌を出しお茶目な所をアピール。今年のミスコンはいただきである。

すると、急に目の前のドアが開いた。

(主;^ω^)「……お?」

(;'A`)「あ、入ってたんですか……。スイマセン」

684 空気(長屋) 2007/03/22(木) 01:01:42.14 ID:GusS/mdi0

満面の笑顔に、輝かしい右手のピース。
ほんの少し顔を出す舌が痛々しい。そのとき彼は悟った。これが修羅場。

勢いよく閉められるドア。走り去る足音。もうダメだ。

(主 ω)「バーヤバーヤ……バーヤバーヤ……バーヤバーヤ」

ほんの少し前までの、数秒前までのハイテンションは塵のように消え去り、
強風に飛ばされて何処かへ行ってしまった。

(主# ω)「アイツのせいだお……。アイツが僕のDATを持って行きさえしなければ……」

(主# ω)「許さん、許さんお……」

そう言いながら彼はドアを開け、個室の外に出る。
全体的に青色に染まった広めの部屋に出ると、またすぐにドアがあった。

(主# ω)「ここがどこなのかも分からないし、とにかく進んでやるお」

勢いよく扉を開け、彼は何処かに走り去ってしまう。
走りながらすれ違い様に少年と肩をぶつけそうになり何とか避けた。
その際に律儀にも「あ、すいませんお」と言っている辺り、彼は悪役にはなれそうにない。

(;'A`)「……でもトイレで独り言って流石の俺でもそれはないわ」

685 空気(長屋) 2007/03/22(木) 01:03:30.77 ID:GusS/mdi0

川;゚ -゚)「いい加減に泣き止め!」

( ;ω;)「おっおっお……。ごめんお。もう暫くはどうしようもないお」

彼女が言うには、今は内藤とクーが付き合い始めた次の日の昼頃。
内藤の心情を読み取ることが出来るわけも無く、ただ混乱するばかりだった。

川;゚ -゚)「私が何をしたというのだ」

( ;ωて)「クーは悪くないお。悪いのは……」

そこまで言いかけて、内藤は口を噤んだ。
思い出してしまった。思い出さなければ、このままでいられたのに。しかし、そうもいかなくなってしまった。
どうして今の今まで気がつかなかったのだろう。そうだ、全ての元凶は――

川 ゚ -゚)「ん? 悪いのは?」

(  ω )「いや、何でも無いお……」

内藤の動揺に、クーはそれ以上追求することは無かった。
必死に思案を重ねるが、これからどうするべきかを考えるが思いつかない。
この時代に、ヤツは必ず居るはずだ。その能力を持って。

(  ω )「アイツを……探さないと。僕は忘れてたお」

ツンデレの存在。そして、この能力のことを。

687 空気(長屋) 2007/03/22(木) 01:07:29.83 ID:GusS/mdi0

今すぐにでも見つけ出し、始末するか。それとも他に……。
その、他の案が思い浮かばずに内藤はあと一歩進むことが出来ない。

( ^ω^)「クー」

川 ゚ -゚)「何だ?」

( ^ω^)「悪いけど、このあと用事があるんだお。後でまた会えるかお?」

川 ゚ -゚)「あぁ、構わない」

( ^ω^)「せっかく来てくれたのに、ごめんお」

頭を下げ、本心から彼女に謝る。
それを見て慌てて彼女は顔をあげるように促し、苦笑しながら話し始める。

川 ゚ ー゚)「どうしたんだ、急に。何かあったのか?」

確かにクーの知る昨日までの内藤と、今の内藤とでは全く違って見えるだろう。
一つひとつの大きな動作から細かいところまで。そして彼女を見る視線。
それだけ、この二年という歳月はあまりに長く、濃密な時間だった。
内容の濃い時間を、幸せか不幸せのどちらかで言えるかどうかは別だが、彼にとっては「最高に不幸」だったと言える。

( ^ω^)「ちょっと……。探し物だお」

川 ゚ -゚)「探し物?」

( ^ω^)「僕の奪われた世界と、時間を。奪い返すんだお」


689 空気(長屋) 2007/03/22(木) 01:09:50.18 ID:GusS/mdi0

そう言って彼女とすれ違いながら外に向かう内藤を、クーは呼び止めることはしなかった。

川 ゚ -゚)「そうか……」

何かを察したのだろう、今は好きにさせようと下手に手は出さずに待つことにした。
閉まった扉をもう一度開け、中に入る。
暖房にも熱がこもり、過ごしやすい空間を作り出していた。

川 ゚ -゚)「大変だな、内藤も」

そう呟きながら勝手にキッチンに入ると、水に漬けたままの食器を洗い始めた。
その手つきは手馴れたもので、日頃の成果が見事に役立っていた。

水周りはお世辞にも綺麗とは言えない有様だったが、自炊をしているだけマシだと言える。
食事も自分で作っているようで、弁当で食い繋いでいるわけではないようだ。
しかし見るに栄養バランスまでは行き届いていないようだ。

川 ゚ ー゚)「よし、私が夕食を作っておこう」

幸い、材料なら冷蔵庫に揃っているようだ。
大方買い物に行くのが面倒だと買い溜めをしておいたのだろう。

川 ゚ -゚)「奪われた世界と、時間を」

手馴れた手つきで料理の支度を始めながら、一言だけ呟いた。

川 ゚ -゚)「厨二病……か」


691 空気(長屋) 2007/03/22(木) 01:12:49.75 ID:GusS/mdi0

( ^ω^)「ツンデレは……どこに居るんだお……」

かれこれ数十分、当ても無く歩き続けているが一向に会える気配はなかった。
大体分かりきっていたことだ。以前だってロクに会えた例がない。
突然現れたかと思えば、突然消えてしまう。

( ^ω^)「……お?」

そこでまた一つ、気が付く。
会える会えない以前に、このときまだ自分はツンデレと面識が――ない?

(;^ω^)「アッー!」

どうやら彼の数十分は無駄に終わりそうだ。
同時刻、一人の女性は愛する彼のために手料理を。一人は公園のトイレで修羅場を味わっていた。

彼らは皆、結局のところ自分のために動いている。

復讐することで、自らの区切りを。
努力をしたことで生まれる達成感と感謝の言葉欲しさに。
奪われた世界の奪還。

これら全ては結局、自分のためにしているだけに過ぎない。
他人のためと自分にいい聞かせ、自らの欲のままに動いているだけだ。

( ^ω^)「作者ネガティブ過ぎんだお。時間も相まって最悪だお」

693 空気(長屋) 2007/03/22(木) 01:15:25.90 ID:GusS/mdi0
諦めてそのまま家路に着こうと方向を変える。
その時。ポケットにしまい込んでいたDATが何かに反応した。

( ^ω^)「これは……」

( ^ω^)「そういえば共鳴がどうとかって言ってたお……。これがそうなのかお?」

つまり、DATが共鳴していると言うことはもう一つDATを持つ者が近づいていると言うことだ。
そう理解した瞬間、自然と緊張感が高まり、右手は拳を作っていた。

足音が聞こえる。歩幅は短い。確信はないが、自分よりも小さいだろうと内藤は思った。
足音が一定ではなく、こちらを警戒しているようにもとれる。

( ^ω^)「何だお……早くこいお……」

足音以外に、何か聞こえる。
何かが擦れる様な音。引き摺っている? だとしたら何だ?

近づくにつれ音もはっきりとしてくる。
ここまで来ればお互いにも隠すことは出来ないため、相手も歩幅を一定に、堂々と近づいてくる。
姿は依然として見えぬまま。目先の交差点から現れるのだろう。
曲がり角を睨みつけ、出来る限りの戦闘の態勢をとる。

(;^ω^)「撃滅の……え?」

次の一言を言おうとして、言葉を失う。

('A`)「FOX様の為でな。悪いがお前には死んでもらう」

694 空気(長屋) 2007/03/22(木) 01:16:20.39 ID:GusS/mdi0

(;^ω^)「何で……ドクオが」

('A`)「あ、あれ、俺のこと知ってんの? 不味いなァ……。隠密に事を進めろって言われてんのに」

内藤にギリギリ聞こえるか聞こえないか程度の小さな声で呟き始めるドクオ。
彼は以前の世界で内藤とは交友関係にあった。……内藤は今でもそう思い込んでいる。

手には鉄パイプが。先ほどの擦れるような音はどうやらこれによるもので。
振り上げるのは内藤のためであるようだ。

('A`)「誰だか知らんが、DATを貰うためだ。覚悟してくれ!」

( ^ω^)「ちょっ、待てお!」

しかしドクオは腕を休めることなく振り上げては降ろし、それを繰り返す。
短めのものだったため避けることは容易いが、このままではいつかやられてしまう。
何か武器は無いのか。対抗しうるなにか。

そのときだ。

('A`)「何ボケッとしてんの? 馬鹿にしてるわけ?」

手に持つ武器を振り上げた、敵が目の前に。

目の前にドクオはいた。

695 空気(長屋) 2007/03/22(木) 01:18:05.65 ID:GusS/mdi0

不味い、逃げないと。
そうは思っていてもこの距離では無理だろうと言うことは分かっていた。

( ^ω^)「ドクオ」

搾り出すような声で、内藤は言う。

('A`)「あん?」

(  ω )「自粛しとけお。お前にそんな重役務まる訳が無いんだお」

('A`)「てめェ……何をッ!」

(  ω )「二度と僕の前に現れるなお!」

内藤の片目が真紅に輝き、何かのシルエットが浮かび上がる。
その瞳を見たドクオも、同様に片目を染め上げると、動きを止める。

('A`)「……分かったよ」

振り上げた鉄パイプはゆっくりと降ろされ、ドクオはくるりと振り返り、何処かへと歩き出す。
その姿に言いようのない罪悪感を感じつつ、内藤はその場を後にした。

(  ω )「良かった……。まだ使えたのかお……でも」

(  ω )「僕は……また……」

697 空気(長屋) 2007/03/22(木) 01:19:59.80 ID:GusS/mdi0

彼の使った力は、絶対的な命令を下すことの出来る遵守の力。
ツンデレに出会い、手に入れたものだ。
彼に命じられた場合、いかなる手段をとってでもその命令に従わなければならない。
それが例え、自らの命を落とすことになろうとも。

( ^ω^)「共鳴にしても、FOXにしても、知らない単語がよく出てくるお」

愚痴と言えない程度の悪態をつきながら、彼はもう一度家時に着く。
都合よく、そこは自宅の付近ですぐに家に戻ることが出来た。

( ^ω^)「あれ、鍵開いてるお」

閉めていないのだから、開いているはずだ。
内藤は最後にここを離れたときのことを思い出すことにした。

( ^ω^)「確かクーが来てて、そのまま出かけちゃったんだお」

悪いことをしたな、と頭で考えながらドアノブに手を掛けた。

きっと中に入って暖まっているのだろうと内藤はドアを開け室内に入る。
すると部屋は料理のいい香りで満たされており、食欲をそそらせる。
しかしキッチンの方にはクーは居ない。コンロの火はついていた。

( ^ω^)「……クー?」

698 空気(長屋) 2007/03/22(木) 01:21:34.70 ID:GusS/mdi0
(; ω )「迂闊だったお……。どうして僕はいつも、こう……!」

全力疾走で街中を走り続けてもう一時間以上経つ。
途中に休憩を挟んで入るものの、後先考えずに走り続けたせいで既に疲労は限界に。
行く当ても無くただ走っていても何の意味もない。そんなことは本人も分かっていたことだ。

しかし何もせずに入られなかった。
可笑しなことが続けて起こっているのだ。まだ他に何があっても可笑しくは無い。
ただ、気を抜いてはいけなかった。彼女の表情に安堵し、自らの欲に走ってしまった。
内藤はクーと共に居るべきだった。
僅かな時間だが、それは貴重で二度と手に入らないものなのだから。彼自身、よく分かっていたはずなのに。

(  ω )「ハァ……。ハッ……。どこ……だお。クー……」

「疲れてるようだね」

(  ω )「……その声も、もはや僕にとっては過去だお。ショボ」

「へぇ、僕を知ってるんだ」

振り向くと、そこには彼の言うショボがいた。
長身の困ったような眉毛からなる顔立ちが、とても懐かしい。

(´・ω・`)「やぁ。僕は君を知らないんだけど、何処かで会ったかな」

(  ω )「いや……。人違いかもしれないお」

(´・ω・`)「僕の名前を知っているのに?」

(  ω )「僕の知ってるショボは、僕のことを知っているショボだお」

699 空気(長屋) 2007/03/22(木) 01:23:46.81 ID:GusS/mdi0
即座に理解した。ショボも、間違いなくこちら側のものではないと。
ならばチャンスは一度きり。
内藤のこの力には制限があり、同じ相手には一度しか効かないからだ。

(´・ω・`)「僕にも事情があってね。FOX様のために君のDATが必要だ」

(  ω )「またFOXにDATかお。お前らはFOX村の住人k(ry」

ショボがゆっくりと内藤に近づく。しかし内藤はその場に立ち尽くし、最善の時を待った。
もう一度頭の中で呟く。チャンスは一度きり。

そしてそれは、今――

(  ω )「ショボ、今すぐここを……」

(主#^ω^)「見つけたァ! やっと見つけたおォォォォォ!!!」

内藤の瞳が輝き始めた瞬間、向かいの道路から何者かが走ってきた。
声を張り上げ、全力疾走してくる様は、尋常ではない。

(;^ω^)「アイツ……!」

(´・ω・`)「へぇ、君は……」

(主#^ω^)「僕はこの話の主軸だお! こんな不当な扱い、僕は認めないおッ!」

無駄に軽やかなステップを踏み、近づいてくると思えば一気に飛躍。
華麗に目の前に着地し、その場に溶け込もうとする彼の笑顔は必要以上に眩しかった。

(#^ω^)「何が認めないだお! 黙ってろお、主軸!」

700 空気(長屋) 2007/03/22(木) 01:25:05.35 ID:GusS/mdi0

(主#^ω^)「DATは返してもらうお!」

(´・ω・`)「悪いが君はこの場に相応しくないんだよね」

そう言ってショボは主軸を見据える。全てを見透かされているようだと錯覚する程に。
負けじと睨み返すが、仇となった。

(´・ω・`)「この場から離れて欲しいんだ」

(主#^ω^)「何をいきなり……!」

(´・ω・`)「早くするんだ」

ショボの目つきが変わる。
途端に空気が変わり、主軸に覇気が無くなる。同時に内藤は悪寒を感じた。

(主^ω^)「……分かったお」

(´・ω・`)「それでいいんだ」

(;^ω^)「なっ……どういうことだお!」

内藤はその目で確認することこそ出来なかったが、はっきりと分かる。
自らと同じ能力だと。

(;^ω^)「何故ショボが……」

(´・ω・`)「FOX様がね。DATをくれたんだよ。そしてどうしたいか聞いてきたんだ」

701 空気(長屋) 2007/03/22(木) 01:26:00.44 ID:GusS/mdi0

(´・ω・`)「戦うために、何が欲しいか」

手のひらを見つめ、一気に握りしめる。
まるでDATを握りしめるかのように、力強く、愛おしそうに。

(´・ω・`)「だから僕は答えたんだ。相手と同じ能力が欲しいと」

(´・ω・`)「同じ立場で戦うために」

能力の発動速度は一瞬ではなく、命令する時間に加えほんの僅かなズレがある。
それすらも知られているであろう相手に使うには、この状況。

(; ω )「最悪だお……」

主軸がふらふらとその場から離れ、もと来た道に戻るとする。
この状況を打破するには、間違いなく主軸が必要だ。
そう考えた内藤は彼を止めようとするが、ショボが内藤の目の前に立ち、それを阻止する。

(´・ω・`)「ドクオはやけに物騒だったそうだね」

でも、と言葉を挟む。

(´・ω・`)「僕はそんなことはしない。君に選択肢をあげよう」

選択肢、と聞いて内藤の眉が少しだけ動く。
目の前にいるのはショボだが、まるで自分ではないか。

(´・ω・`)「DATを渡すか、敵対するか。どちらでもいいよ。好きに選ぶといい」

702 空気(長屋) 2007/03/22(木) 01:27:23.15 ID:GusS/mdi0

(´・ω・`)「今すぐ君の持つDATを渡してくれればそれでいい」

(; ω )「DAT……」

(´・ω・`)「そう。それはFOX様が使ってこそのモノなんだ。だからさぁ、早く、さぁ」

ポケットに入った主軸から奪い取ったDAT。
それを渡せばここから逃げることが出来る。そんな考えばかりが浮かんでは消える。

(´・ω・`)「あの娘、君の彼女かな」

(; ω )「!!!」

内藤は即座に理解した。
能力のことではないが、これは交渉しているのではない。命令されているのだ。
DATを渡せばクーを助けられる。しかしそれでは意味がない。

(´・ω・`)「僕の手元には二つのDATがある」

(´・ω・`)「一つは僕が渡されたもの、もう一つはドクオから回収したものだ」

(´・ω・`)「数を重ねればそれだけDATは力を得るんだ。言ってる意味、分かるよね?」

逃げ道が次々と塞がれていく。
少しずつ、着実に。つまり彼が言いたいのはそういうことだろう。
僕の勝ちだ、と。

703 空気(長屋) 2007/03/22(木) 01:28:54.23 ID:GusS/mdi0

(  ω )「でも、ショボ。僕はDATを渡すことは出来ないお」

主軸から奪ったDATを右目に当て、少しずつ眼球に吸い込ませていく。
グロテスクな光景に、ショボは唇をかみ締める。

(;´・ω・`)「何を……いきなり」

(  ω )「数年後、この世界がどうなるか知ってるかお?

突拍子に内藤は尋ねる。しかしそんなことを今の彼が知るはずも無く、
知らないことも分かっていたため、返事を待たずに話を続ける。

(  ω )「この世界は終わるんだお。そして僕も、既に終わってるんだお」

(;´・ω・`)「…………」

(  ω )「世界は一つの物語。物語は主人公が居なくなった時点で幕を下ろす」

両手を広げ、空を見上げる。
いつだったか、彼は哲学に嵌り空の色について考えたことがあった。しかし結論は出ずに終わった。
だが今なら分かる。空は紛れもなく、青だ。

(  ω )「僕が死んだから、君らと僕の世界は終わりを迎える」

(  ω )「それを僕はDATを使って元に戻した」

704 空気(長屋) 2007/03/22(木) 01:30:01.13 ID:GusS/mdi0

(´・ω・`)「……しかしその場合、DATは形を失いその「時間」そのものになる筈だろう?」

確かにDATを武器として使えば形として残るが、この場合は――

(  ω )「ショボ、悪いけどお喋りが過ぎたお」

内藤の口が歪み、やがて笑みに変わる。
確信できる、絶対的な優位。それをこの状況で手に入れることが出来たのだから。
今にも高笑いをしそうなほどの笑みに、少なからず不安を抱くショボ。

(´・ω・`)「何か秘策でも隠していたのかな?」

ショボも笑みを浮かべる。
内藤とは違い、微弱だが、焦りに近い感情が入り混じっていた。

(  ω )「秘策? あぁ、これは確かに秘策だお」


(  ω )「でも少し違うお。これは僕にとってもイレギュラー」

(;´・ω・`)「ッ!?」


ショボの背後にはいつのまにか男が一人立っており、ショボの腕を掴むと捻りあげる。
小さく悲鳴を上げるショボだが、腕は捻り上げられたままだ。
片手で腕を、もう片方の手で口を塞ぐ。ショボに能力を使わせないようにするためだろう。

この展開でこの演出。この男、間違いなく。

706 空気(長屋) 2007/03/22(木) 01:31:22.17 ID:GusS/mdi0

(主^ω^)「これでいいのかお?」

( ^ω^)「助かるお。でもまさか協力してくれるとは思わなかったお」

(主;^ω^)「僕もまさかDATを使って意志の伝達をしてくるとは思わなかったお」

( ^ω^)「頼るのもどうかと思ったお。けど、それしかなかったんだお」

彼は眼球を通して、脳に直接DATを送り込んだ。
内藤と、主軸。二人の思考回路を直結させ意志を共有することで内藤の意図が伝わった。

(;´・ω・`)「……ッ……ッ……!!」

口をふさがれたショボは必死に声を出そうと主軸に抗う。
しかし主軸はそれを許さず、噛み付かれても手を離すことは無かった。

(主^ω^)「あとは頼むお」

(  ω )「……把握した」

(  ω )「ショボ。君に罪が無いことは分かるお」

前だって、君に非はなかったのに。
そう言おうとして内藤は止めた。全ては過ぎたことだと、けじめをつけるために。

「しかしクーは返してもらうお」

(  ω )「内藤ホライゾンが命じる。クーを今すぐ連れてくるんだお」

709 空気(長屋) 2007/03/22(木) 01:32:52.97 ID:GusS/mdi0

全力で、と付け足すとショボは急いでその場から走り去る。
主軸は追わなくていいのかと内藤に問いただすが、
内藤はその場にへなへなと座り込んでしまい返事をすることが出来なかった。

(; ω )「ちょっ……今回はしんどかった……」

(主;^ω^)「さっきまでのオーラが消えてるお。カッコワルス」

(;´ω`)「そうは言ってもこれがデフォだお」

言わなければそのまま過ぎて行く様な事を口にする内藤。
それを口出ししては貶す主軸。
数時間前までの空気を全く感じさせない、やりとりになっていた。

(; ω )「……安心したらゲロ吐きそうってこういう時に使うんだと思うお」

(主^ω^)「さっき君と意志を共有して色々と分かったことがあるお」

依然として本気か知らないがボケようとする内藤を無視し、
地に座り込む内藤の隣りに同じように座ると、主軸は話し始める。

(主^ω^)「君の意志とか、本音とか。色々見えてきたお」

(  ω )「こいつァ中々趣味が悪いぜ……。あ、つーかちょっと戻ってきた。飲み込むしかないか」

(主;^ω^)「真面目に話を聞いてくれお」

712 空気(長屋) 2007/03/22(木) 01:35:15.85 ID:GusS/mdi0

( ^ω^)「あ、そういえば頭のこれ……」

内藤は自らの頭を指差し、得体の知れないものを見るような顔で悶える。

(;^ω^)「おー。何か頭に入ってるんだったお。気付いた瞬間、異物感があばば」

( ^ω^)「これ、どうすればいいんだお?」

(主^ω^)「それなら僕に任せて欲しいお」

主軸は内藤の頭部に頭を当てると、急に内藤の頭が輝き始めゆっくりと小さな石のようなものが出てくる。
それを丁寧に持ち上げ、手のひらに置き内藤に見せる。

(主^ω^)「これで大丈夫だお」

(;^ω^)「うわー、僕はこんなものを頭の中に入れてたんですね……」

(主;^ω^)「…………」

頭を掻き毟る内藤を見ながら、主軸は中々切り出せずにいた。

(主^ω^)「内藤……」

( ^ω^)「呼び捨てにすんな、ぶち殺すぞ」

(主^ω^)「サーセンwwwwwww」

( ^ω^)「これが設定の力かお……!」

713 空気(長屋) 2007/03/22(木) 01:37:31.71 ID:GusS/mdi0
(主^ω^)「内藤君、改めて話があるんだお」

( ^ω^)「何だお」

隣に座っていた主軸が向き直し、誠意を見せる。
それを見た内藤も主軸に合わせて向き直す。

(主^ω^)「今僕が持っているDATは、元々僕が移動用に使っていたものだお」

(主^ω^)「僕の目的はこの世界にあるはずの、もう一つのDATを探すことにあるんだお」

彼も一つの世界を背負っているのだ。半端な覚悟で世界を巡ってきたわけではない。
主軸の言葉にそうだ、と内藤が言葉を遮る。

( ^ω^)「あの時はごめんお。僕の我侭だお」

あの時、とは初見のことだろうと主軸は解釈する。
というよりも、それ以外にほとんど面識がない上にロクな会話がないからだ。

( ^ω^)「もう一度、みんなと笑いたかった。DATならそれが叶うと知って、いてもたってもいられなかったんだお」

主軸は何も喋らずに、内藤を見つめる。
彼の言葉は本心から来るものだということが分かるのはDATによる交流のおかげだろう。
そして、内藤の意志を否定するにはあまりに大きなものだと言うことも、理解した。

( ^ω^)「それと、もう一つのDATなら僕が持ってるお」

717 空気(長屋) 2007/03/22(木) 01:39:36.58 ID:GusS/mdi0

主軸は耳を疑う。
思わず聞き返さずにはいられずに、ありきたりな言葉で返事を返した。

(主;^ω^)「どういうことだお……?」

( ^ω^)「正確には、今僕の手元には無いんだお」

空を指差し、主軸に上を見るよう促す。

( ^ω^)「お前がこの世界に来る前に、僕の元にDATが飛んできたんだお」

内藤は腕を下ろし、もう一度話し始める。
口調は穏やかで、これが本当の彼なんだろうと主軸は思った。

( ^ω^)「僕の元に、というよりこの世界にDATが来た。その存在が、僕に微弱ながら力を与えてくれたんだお」

(主^ω^)「…………」

( ^ω^)「姿が見えなかったのは、僕が完全に実体化出来ていなかったからだお」

淡々と話し続ける内藤をよそ目に、主軸はばつが悪そうな表情をする。
勘付いてしまったからだ。

( ^ω^)「この世界は今、小さなDATで成り立ってるんだお」

718 空気(長屋) 2007/03/22(木) 01:41:32.15 ID:GusS/mdi0

そこでショボがクーを連れて戻ってきた。
何故かショボはボロボロで、しかし表情一つ変えていない。しかしクーは殺意をあたりに撒き散らしていた。
無言のままこの二人がここまでの道のりを歩いてきたかと思うと、実にシュールだ。

川# -)「…………」

( ^ω^)「クー!」

その言葉にクーはすぐさま反応し、クーは内藤の元へと駆けつける。
主軸は思わず目を逸らしたが、二人は意外とさっぱりしていた。

川 ゚ ー゚)「あぁ、大丈夫だ。私は何もされていない」

( ;ω;)「本当かお?」

逆だろ、と突っ込みたい気持ちを抑えながら、主軸は考え事を始めた。
なお、ショボはクーを届けるという命令を果たした後すぐにその場に倒れてしまった。
見たところ軽くない打撲のみで、命に別状は無かった。

少しはなれたところで、主軸は二人を眺めていた。

(主^ω^)「僕はやっぱり……」

しかし意を決して二人を呼ぶ主軸。手が少しだけ、震えていた。

(主^ω^)「今更こんなことを言うのはどうかと思うお。でも言わないといけないお」

719 空気(長屋) 2007/03/22(木) 01:42:47.65 ID:GusS/mdi0

神妙な面持ちで主軸は口を開く。
内藤は何を考えているのか、何も考えていないような、無表情のまま彼の言葉を待つ。

(主^ω^)「僕はDATを持って帰らなければならないお」

( ^ω^)「分かってるお。もちろん、返すつもりだお」

ありがとう、と主軸は呟く。とても小さな声で。
そして、でも、と続く。

(主^ω^)「この世界からDATが無くなった瞬間……」

( ^ω^)「それも分かってるお。元々、この世界は終わってるんだお」

全てを理解していた上での行動だったことに、少なからず驚いていた。
彼を含めた、今をこの世界で生きる全ての人が、自分がDATを持って帰ればこの世界ごと消えてしまう。

もう情に流されるな。身をもって教えられたじゃないか。
そう言い聞かせ、頭では考えてはいても実行には中々移せずにいた。

(主^ω^)「それで、いいのかお……? これを僕に返せば君たちは……」

( ^ω^)「もともと返すつもりだったお。それに」

一度言葉を切り、苦笑しながらもう一度。

(;^ω^)「僕が返さなければお前の世界は元に戻らないんだお?」

720 空気(長屋) 2007/03/22(木) 01:44:08.17 ID:GusS/mdi0
(主 ω )「……助かるお」

押し殺したような声で、ゆっくりと主軸は話す。
そんな彼を見た内藤が、デジャヴを感じつつも口を開く。

( ^ω^)「何泣いてんだお」

泣いている。そう言われて彼は初めて気がついた。内藤の言葉にクーがくすりと笑う。
ロクな思い入れもないこの男に対して、涙を流している自分に主軸は心底驚いた。

( ^ω^)「そんなんで、世界が守れるのかお?」

(主 ω )「……お」

( ^ω^)「僕らのことで悩んでいるなら、簡単だお。忘れてしまえばいいお」

(主 ω )「そんな都合よく行く訳ないお……。君はズルいお」

ズルいと言われ、確かにそうかもと苦笑する。

( ^ω^)「でも、僕には忘れさせることが出来るお」

そう言われ、気がつく。確かにそれを使えば間違いなく、この世界であったことは全て忘れることが出来るだろう。
先ほど目の前で見たその能力。


まだ内藤は主軸にこの能力を使ってはいない。

724 空気(長屋) 2007/03/22(木) 01:47:45.22 ID:GusS/mdi0

(主 ω )「それは……ダメだお……」

( ^ω^)「お?」

(主 ω )「僕は君の過去、いや未来を知ってしまったお。それを、僕は……」

( ^ω^)「それならそれで、構わないお」

(主 ω )「僕は……」

( ^ω^)「だったら、忘れなければいいお」

彼の言葉の意味が分からず、言葉を失う。

( ^ω^)「確かに僕らは消えてしまうけど、誰かが覚えてくれたら僕らは生きてるんだお」

(主 ω )「……お?」

( ^ω^)「だから、気にするなとは言わない。その代わり、忘れないで欲しいお」

(主 ω )「……オッケー。刻んだ……お」

725 空気(長屋) 2007/03/22(木) 01:50:39.07 ID:GusS/mdi0

( ^ω^)「でも口約束だけじゃ不安だお」

(主^ωて)「お?」

( ^ω^)「だから、僕からの我侭をもう一度聞いて欲しいんだお」

内藤の苦笑に主軸が勘付く。
そういうことか、と主軸も少しだけ含み笑いをする。

( ^ω^)「クー。残念だけど、またお別れだお」

川 ゚ ー゚)「ほう、またか。詳しく聞かせてもらおう」

( ^ω^)「……いや、もう別れることもないお」

川 ゚ ー゚)「それでいいんだ」

このときのクーには全てを理解することは出来なかった筈だ。
なのに、何故、彼女は――



(主^ω^)「それじゃ」

( ^ω^)「頑張れお」

727 空気(長屋) 2007/03/22(木) 01:51:42.52 ID:GusS/mdi0






( ^ω^)「内藤ホライゾンが命じる。僕らのこと、忘れるなお」







728 空気(長屋) 2007/03/22(木) 01:52:30.13 ID:GusS/mdi0





     ( ^ω^)ブーンが世界を巡るようです



          『 IN ( ^ω^)ブーンがギアスを手に入れたようです 完』






736 空気(長屋) 2007/03/22(木) 01:56:43.47 ID:GusS/mdi0
おまけ



ξ# )ξ「私が……出てこない……」

(;^ω^)「ツン、落ち着いて。台本には無かったけど、回想として……」

ξ# )ξ「内藤が出てるのに、どうして私が出てないのよ……」

(;^ω^)「それはヒロイン役がクーで……」

ξ# )ξ「台詞が無いのよ、台詞がァァァ!」

(;゚ω゚)「ギアス!」

741 空気(長屋) 2007/03/22(木) 02:01:22.34 ID:GusS/mdi0
次回予告。


(;゚ω゚)「ギアス!」

ξ;゚听)ξ「ギアス!」

(;´゚ω゚`)「ギアス!」

(;゚A゚)「ギアス!」

(主;゚ω゚)「ギアス!」

从;゚ー゚从「ギアス!」

745 空気(長屋) 2007/03/22(木) 02:02:56.66 ID:GusS/mdi0
本当の次回予告。

明日は( ^ω^)ブーンがアイドルマスターを目指すようですの投下です。すいません。明日じゃなくて今日です。
実は僕、元ネタありで書いておきながら元ネタありの小説って敬遠してたんです。
でもこの合作を機に読んで見ようと思い、読み始めました。そしたら、もうすっごい。ワタナベってこんなに可愛かったかって。
最初に何で内藤とツンデレが組まないんだろうとか考えてましたけど、いーやそんなことよりワタナベです。
ずるずる滑るんです。ヒロインで言えば他に比べて格下だと思ってました。しかしそんなことは全く無くて。
どうせならアイドルマスターやりてぇぇぇぇって思ったんですけど家にあるハードって64しかなくて。あ、そういえばムジュラって面白いですよね。
アイマスさんがどのように書くのかによっては下手な事かけないのであれですが、サングラスにバイザーって怪しいです。
サブタイトルは『XENOGLOSSIA GIRL』。何て読むのか。えくせのぐろっしあ ぎる。流石にガールは読めます。
劇場版との事なので非常にwktk。期待していいはずです。


(;^ω^)「長ぇお」

(´・ω・`)「作者が言いたいことをとにかく詰め込んだ感じだね。これは酷い」

ξ# )ξ「台詞が……」

(;^ω^)「ツン、まだ言ってるのかお」

ξ# )ξ「だってブーンのヒロインは私でぇ……」

(*^ω^)「お!」

ξ*゚听)ξ「じょ、冗談よ! 勘違いしないでよね!」

(´・ω・`)「つまりこういう流れが、実は『設定』によるものだったんだよ!」

('A`)「同じ人から二回もパロって落ちにするのはダメだろ……」

747 空気(長屋) 2007/03/22(木) 02:04:25.21 ID:GusS/mdi0
以上で自分の投下を終わります。
こんな時間に付き合っていただいて本当に感謝です。ありがとうございました!

754 空気(長屋) 2007/03/22(木) 02:13:04.74 ID:GusS/mdi0
ちょwwwwwww


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